転生したらうちの柴犬が最強でした

深水えいな

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3.犬耳の奴隷少女

11.奴隷ショップにて

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「おはよう、シバタ。飯は出来てるぞ」

 二度寝から目が覚めると、トゥリンが台所で何か鍋をかき混ぜていた。

「あれ、鍋買ったのか」

「台所にあった。野菜と肉は買ってきた」

 いつの間に外出していたんだろう。全く気づかなかった。

「近くに沢山店があるぞ。後で見に行ってみよう」

「ああ」

 そしてキノコと鶏肉、野菜の沢山入った鍋で体を温めたあと、俺たちは外に買出しに出かけた。

「まずはちゃんとした地図だな。マルザ村長の地図は分かりにくい。それから武器にポーションに」

「着替えも必要じゃないか? あとは食器とか」

「なるほど。日用品の方が先かな」

 手始めに予備の服を購入する。
 驚くことに、予備の服やロープ、寝袋、カンテラなどを買っても全部で銅貨5枚くらい。驚くほど物価が安い。

「エルフの村の店よりも安いな」

「ああ。エルフの店は山奥だから」

 つまり、あそこで買い物をしなければ次いつ買い物できるか分からない。だから高い金を出しても買い物をする客が多く値段が下がらないということか。

「逆に都会の方が競争原理が働くから安くなるんだな」

 それにしても、俺の服なんて上下合わせても銅貨2枚。

 銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚と同じ。

 ということは、金貨2枚の首輪を付けてるサブローさんは俺の服の100倍の値段の首輪を付けている事になる。

「贅沢な犬だな~お前は」

「わふ~ん」

 俺がサブローさんの首の毛をモシャモシャしていると、いきなり背後から声をかけられた。

「もし、そこのお方」

「へっ? 俺?」

 振り返ると、そこに居たのはでっぷりと太り、ちょび髭を生やした胡散臭いおじさんだった。

「お兄さん、随分と変わった獣を連れてますね。オオカミとも違うし、キツネとも違う」

 ニコニコとサブローさんを指さすおじさん。

「ウウゥ……」

 サブローさんは鼻に皺を寄せ、歯をむきだしにした。

「こら、サブローさんダメだろ!」

「いやいや、お気になさらず」

 相変わらずニコニコと胡散臭い笑を浮かべるおじさん。

「この子は何という獣なんですか?」

「イヌだ」

「イヌ――」

 男は、舌の上で転がすように発音した。

「そうなんですか。この辺ではあまり見ないもので。実はですね、うちにも一匹いるんですよ、その子と似たような獣が」

「何っ!?」

「で、ですね、もしよろしければ、同じ獣かどうか見てほしいのですが」

「シバタ、こいつ、奴隷商人だ」

 トゥリンが小さい声で俺の袖を引っ張る。
 奴隷。この世界には奴隷が存在するのか。

 男は、トゥリンにも目を向けた。
 ビクッと身震いするトゥリン。

「おやまぁ、なんと小さいエルフだ。なるほど、小さいのがお好みですか? でしたら、同じくらいの年のダークエルフもうちでは扱っていますよ? 二人並べたらきっと可愛いはずです」

「いらん」

 ピシャリと言う。

「イヌだけ見せてくれ」

「かしこまりました」

 ニタリと笑う男。
 俺とトゥリンは、男について奴隷ショップへとやってきた。

「本当にこんな所に犬が?」

 大きな瓦屋根の屋敷を見上げる。

「騙されてるんじゃないのか? きっと高い値で奴隷を売りつける気なんだ」

 トゥリンは顔をしかめる。

「売りつけられそうになったら逃げるよ」

 そう言って門を潜ると、突然声が響いた。

 ウウーーーー!!
 アオォォーーーン!!

 建物の中から響く遠吠えのような声。

「なっ……オオカミ!?」

 動揺するトゥリン。

「あおーーん」

 すると突然、サブローさんも鼻を上に上げて遠吠えし始めた。

「どうしたんだサブローさん」

「サブローさんは、他の犬が遠吠えしてるとつられて遠吠えすることがあるんだ」

 ちなみに他の犬の遠吠え以外にも、救急車や竿竹屋、石焼き芋、選挙カーにも反応する。

 これは犬の遠吠えとマイクの周波数が近いためだ。

「ふふ、仲間の声に反応しているようですね。さあ行きましょう」

 奴隷ショップの中に入る。

 中には、人間やエルフ、角や羽、尻尾のついた人間が牢の中に繋がれていた。

 俺は思わずサブローさんがいた犬の保護シェルターを思い出した。あそこの方がまだ広くて綺麗でマシに思える。

「きゅん……」

 小さく震えるサブローさんを、俺はギュッと抱きしめた。

「大丈夫だ」

「さて、着きましたよ、ここです」

 一番奥の部屋を指さす男。

 そこには、白い毛に黒の模様が入ったオオカミのような生き物が横たわっていた。

「モモ、お客さんだよ!」

 男が呼びかけると、モモと呼ばれたその獣はピクリと耳を動かすと、ゆっくりと身を起こした。

 体はサブローさんと同じくらいの大きさだが、顔つきは幼く、まだ幼獣のように見える。

 トゥリンが眉をひそめる。

「なんだ、ただのオオカミの子供じゃないか」

「いや」

 俺はその獣をじっと見つめた。
 確かに、見た目はハイイロオオカミに似ている。

 けど――

「ワン」

 モモはサブローさんを見ると、びっくりした顔で小さく吠えた。

「こら!」

 途端、奴隷商の男はモモをバシリと鞭で叩く。

「きゅん」

 モモは丸まってビクビクと震えた。

「すみませんねぇ、まだ子供なので、躾がなっていないんですよ」

「いえ」

 俺はサブローさんをトゥリンに預けると、モモにゆっくりと近寄りその体をじっと観察した。

 いや、狼じゃない。
 
「イヌだ。子犬だな。シベリアンハスキーだろうか」

 異世界の犬種はよく分からないから、もしかすると全く未知の犬種かもしれないが、どちらにせよこいつは犬だ。俺は確信した。

「そうですか! 実はこの子、中々人に慣れなくて引き取り手が居ないんです。銀貨5枚でお譲りしますがどうでしょう?」

 揉み手をしながら嬉しそうに奴隷商は言う。

 俺は即答した。

「いいだろう」

「ちょっと、シバタ!!」

 わなわなと震え出すトゥリン。

「この子を飼うのに何か手続きは必要なのか?」

「いえ、特に獣を飼育するのに届け出は必要ありませんよ」

「そうか」

 ぐい、とトゥリンが俺の腕を引っ張る。

「どうすんだ、うちにはサブローさんも居るんだぞ」

「一匹も二匹もそんなに変わらん」

「ええ……」

 俺は問答無用で支払いを済ませ、モモの鎖を引っ張った。

「見ろ、鎖も首輪もついてる。なんてお得なんだ」

「は、はあ」

「ケージとかは必要かな? トイレシーツとかこの世界にあるのかな。そもそもトイレトレーニングは」

 ブツブツ呟く俺に、トゥリンは大きなため息をついた。

「勝手にしてくれ」


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◇柴田犬司《しばたけんじ》 18歳

職業:勇者
所持金:銀貨5枚、銅貨4枚
通常スキル:言語適応、血統書開示《ステータス・オープン》
特殊スキル:なし
装備:柴犬、猟師のブーツ
持ち物:レッドドラゴンの首輪  散歩用綱、黄金のウ〇チシャベル、麻のウ〇チ袋 
仲間:トゥリン  (エルフ) 、 モモ  (犬?)new

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「シバター、晩御飯出来たぞ」

 トゥリンの声で目を覚ます。
 どうやら買い物の後ベッドで少し横になるつもりがいつの間にか寝てしまったようだ。

「ああ、今行く」

 俺はベッドから起き上がろうとした。

 が、その時異変に気づく。


「起きたですか、ご主人」



 見知らぬ女の子の声。
 恐る恐る横を見る。すると――


 俺の横には、犬の耳と尻尾が生えた、見知らぬ裸の女の子が寝ていた。


 メッシュみたいにところどころ黒い毛の混じった銀色の長い髪。

 ピンと立った獣の耳にフサフサの尻尾――そして人間の体。


「ごはんですか、ご主人。早く行きましょう!」

 女の子はパタパタと尻尾を振ると、ニコリと笑った。


 え? 何これ?


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◇柴田のわんわんメモ🐾


◼飼い主登録

・犬が生後91日をすぎたら、狂犬病の予防接種を病院でうける必要がある。その時に病院からもらう、「注射済証明書」を持って30日以内に市区町村役場か保健所で飼い犬登録をしよう。狂犬病の予防接種をした時に、病院が犬の登録を代行してくれることもある


◼シベリアンハスキー

・白地に黒、茶色などの毛。オオカミに似たも外見の大型犬。シベリア北部で先住民が犬ぞりを引く犬として飼育していた
・かつて『動物のお医者さん』に出てくる犬として大ブームを巻き起こしたものの、捨て犬が続出するという悲劇に見舞われた
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