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3.犬耳の奴隷少女
10.人間の住む町
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「見ろ、シバタ! 人間の町だ!!」
タンポポの咲き乱れる山道をしばらく下ると、緑の麦畑の中にポツポツと民家が見えてくる。
なんとものどかな光景だ。
「町というか……村だな」
キラキラと春の日差しを反射する透き通った用水路。
板を置いただけの橋を渡ると、ついに俺たちは森を抜け平地に出た。
モンシロチョウがヒラヒラとあぜ道を飛んでいく、ポカポカとした陽気の中、サブローさんを連れて歩く。
「うーん、お散歩日和だ」
「そうだな」
「ワン」
上機嫌でお尻をプリプリ振って歩くサブローさん。
「ああ、サブローさんの肛門は相変わらず目に入れても痛くないほど可愛いなぁ。んん……ギャワイイィ」
「肛門を目に??」
トゥリンが眉をひそめる。
「いや、何でもない」
いけないいけない。折角仲間ができたんだから、変なやつだと思われないようにしないと。
俺は視線をサブローさんの肛門からくるりん尻尾に移した。
ゆったりと大きく尻尾を振って歩くサブローさん。
「よしよし、機嫌も良さそうで何よりだ」
尻尾は犬の感情のバロメーターだ。
犬が嬉しい時に尻尾を振ることは知られているが、それ以外にも様々な感情を俺たちに伝えてくれる。
怒り、不安、怯え、喜び――
だが目の前のサブローさんはゆったりと落ち着いて、足取りも軽やかに見える。
しばらく山道を歩いて疲れているかと思ったが、足取りも軽やかで元気そのものだ。
俺は自分の足元をチラリと見る。
俺もしばらく山道を歩いたはずなのに全然足が疲れない。痛いと感じたことすらない。もしかしてこれが猟師のブーツの効果なのだろうか。
「水虫を治しただけあるな」
農道をしばらく歩いていると、分かれ道に突き当たった。
「どっちだ?」
俺は地図を広げた。
が、マルザ村長お手製の地図は非常に……なんというか大雑把で、位置を確認するのに読解力を要する。
俺たちが地図を広げ「あーでもない、こーでもない」と揉めている所へ、タイミングよく農家のお婆さんがやってきた。第一村人発見だ。
「あのーすみません」
コミュ障の俺がどうしようか迷っていると、トゥリンがなんの躊躇もなくお婆さんに声をかける。
「あれま!!」
お婆さんは心臓発作を起こしそうなほど飛び上がる。
ん? なんだ?
「お婆さん、この道はどっちに進んだらいいんですか?」
トゥリンが気にせず地図を指さしたが、お婆さんは目を大きく見開いたままだ。
「それよりアンタ、その獣は!!」
お婆さんサブローさんを指差し怯えたような顔をする。
「ああ、俺の飼い犬……いや、使い魔です」
「よく見てください、可愛いでしょ?」
俺とトゥリンがサブローさんを交互に撫でて安全なのをアピールしたが、お婆さんはブルリと体を震わせた。
「あれま、使い魔! そうか。よく見たらあんた、エルフだね。エルフの不思議な魔法でも使ったのかねぇ……くわばらくわばら」
「それで、あの、町に行くにはどっちに」
お婆さんは茶焼けた道を指さす。
「右さ行けばオラホノ村につくけんど、オラホノ村には宿も食い物屋も何も無ぇよ」
「そうなんですか。じゃあ、左の道は?」
「こっちはオラガの町に続いてる道だ。ちと遠いが宿をとるならこっちだべな」
「ありがとうございます」
ペコリと頭を下げると、お婆さんは「くわばらくわばら」と言ってそそくさと去っていった。
俺とトゥリンは顔を見合わせた。
「とりあえず左に行ってみるか」
天気もいいしと、俺たちはオラガの町に向かってゆっくりと歩き始めた。
◇◆◇
「何だか雲行きが怪しくなってきたな」
お婆さんと分かれてから少しすると、急に辺りが暗くなってきて冷たい風が吹いてきた。
俺が腕まくりした袖を元に戻しながら空を見上げると、トゥリンが厳しい顔をして道の先を指さす。
「急ごう、シバタ」
「ああ」
トゥリンは狩りで外に出ることも多いし、天候の移り変わりに敏感なのだろう。
歩くペースを上げ、オラガ村へと急ぐ。
「町が見えてきたぞ」
遠くにうっすらと見える木造家屋。
ビルのような大きな建物はないが、沢山の家がある。山のそばだけど、思ったより都会かもしれない。
ほっと息をついたその時、額にポツリと雨だれが落ちた。
「あ、雨」
ポツポツと黒い点が地面を染め始める。
「ヤバいぞ、急げ!」
町についた頃には雨はザーザー振りになっていた。急いで近くの建物の屋根の下で雨やどりをする。
ブルブルと震えて毛皮の雨粒を払うサブローさん。柴ドリルだ。
「わっ、冷たいぞ、サブローさん!」
トゥリンが悲鳴を上げる。
「それにしても、日が落ちる前に町に着いてよかったな」
「どこかで宿を取るか」
「ああ」
エルフの村を出てから二日。その間はずっと野宿だったから、そろそろ柔らかいベッドで寝たいところだ。
「ちょうどあそこに宿があるな。行ってみよう」
二人と一匹でずぶ濡れになりながら宿に向かう。
「わっ、なんですかその獣は!」
「うちは獣は持ち込み禁止です!」
だけどやはりと言うべきか、サブローさんが泊まれる宿を探すのは難しい。
付近にあった四、五軒の宿屋は全て断られてしまった。
「どうしよう」
「野宿する?」
「でも雨だし」
そんなことを話していると、ふと一軒の民家が目に飛び込んでくる。
「あの家、馬舎があるな」
木でできた屋根と柵があり、干し草が敷き詰められたその馬舎には馬は一匹もいない。それどころか人すら住んでいないように見える。
「人の気配がない。空き家みたいだな」
「隣の家の住民に聞いてみるか」
隣の家の門を叩く。出てきたのは土佐犬のように筋肉質で勇猛な顔つきのおじさんだった。
おじさんに話を聞くと、そこは一年ほど前から空き家らしい。
「借りたいんなら借りてもいいよ。うちがそこの大家というか、隣の家は元々うちの離れだったんだ」
聞けば、前の住人には一ヶ月銀貨5枚でこの家を貸してたのだという。
俺はトゥリンの顔を見た。
「一ヶ月も居ないよな?」
「そうだな。居ても一週間くらいかな」
「なら銀貨1枚で一週間貸してやるがそれでもいいか?」
「大丈夫です。ありがとうございます」
こうして俺たちは銀貨1枚で馬舎つきの家を借りることとなった。
「すごいぞ、一軒家だ。ちゃんとトイレや台所もあるし」
「ああ。こんないい所が銀貨1枚だなんて」
古い木造の家には、居間、台所、ふろ場、トイレ、寝室。空き部屋が二つもある。
俺は大家のおじさんから貰った使っていない布団を寝室に敷いた。
「ベッドは一つだけど、まあ広いからなんとかなるか」
俺が言うと、トゥリンは顔を赤くした。
「つっ、ついに同衾《どうきん》ということか」
「同衾」の意味は分からなかったが、文脈から察するに一緒に寝るということなのだろう。
「そんな大げさな。昨日も野宿で雑魚寝だっただろ」
「そうだけどぉ」
口を尖らせるトゥリンをよそに、おれは寝室横の引き戸を開けた。
「お、ここから裏口の馬舎に出れるのか」
「サブローさんのベッドはここな!」
トゥリンが嬉しそうにサブローさんを馬舎に追い払う。
サブローさんは「く~ん」と哀れっぽい声を出した。
「とりあえず、濡れた服を乾かすか」
俺が濡れたジャージを脱いでかけていると、トゥリンがソワソワした様子で聞いてくる。
「シバタ、先にご飯食べるか? それともお風呂? それとも」
「ああ。腹減ったし、飯にするか」
「わ、分かった! 飯だな!」
トゥリンはギクシャクとした動作で荷物の中から、ナンみたいなパンとドラゴンの肉を取り出す。
「ドラゴンの肉もこれで最後だな」
「でも町についたから食料はいくらでも調達できるぞ」
「ああ」
俺がちぎったナンをサブローさんに与えていると、トゥリンは目を潤ませて言った。
「風呂場に水は溜めておいたから、食べ終わったらシバタは先に湯あみをしてきてもいいぞ」
「ああ」
何だろう、トゥリンのやつ、さっきから様子がおかしいな。
食事が終わり、風呂場につくと、風呂桶の中に水が溜まっていた。近くの井戸から水を組み上げたのだろう。触ってみると生ぬるいお湯だ。
トゥリンが魔法で沸かしたのか、元々温泉なのかは分からない。
石鹸は無いが、とりあえずお湯で体を流すと、酷くサッパリした感じがした。
大家さんから貰った古いタオルで体を拭く。
「次どうぞ」
「は、はいっ!」
白いドロワーズ姿のトゥリンが緊張した様子で風呂場に向かう。
俺はベッドに横たわった。
――と、同時に、一日歩き続けた疲れからか、一瞬のうちに眠りに落ちてしまった。
◇◆◇
「――ハッ、寒い!」
そして朝目が覚めると、俺はベッドの下で寝ていた。
ベッドの真ん中にはなぜかサブローさんが寝ていて、ベッドの隅の方にトゥリンが寝ている。
どうやら俺は寝相の悪いサブローさんにベッドから蹴り落とされたらしい。
ほとんど布団のかかっていないトゥリンに布団をかけてやる。
するとサブローさんが目を覚まして俺の顔を舐めようとする。
「うわっぷ!」
俺の顔をひとしきり舐めたサブローさんは、今度は寝ているトゥリンの顔をペロペロと舐め始めた。
「う~んシバタ、こんな所まで舐めるのか! 破廉恥な……むにゃむにゃ」
訳の分からん寝言を言うトゥリン。
俺はバスタオルを被ると、再び床の上で眠りについた。
--------------------------
◇柴田のわんわんメモ🐾
◼犬の尻尾と感情
・尻尾を素早く振る→興奮、喜び
(※嬉しい時以外にも、興奮して攻撃的になっている時にも同様になるので注意が必要)
・尻尾をゆったりと左右に振る→リラックス、信頼、好奇心
・尻尾をピンと立てる→自信、警戒、注目
・尻尾を足の間に挟む→怯え、不安、服従
・水平にゆっくり振る→様子見、心配、不安
タンポポの咲き乱れる山道をしばらく下ると、緑の麦畑の中にポツポツと民家が見えてくる。
なんとものどかな光景だ。
「町というか……村だな」
キラキラと春の日差しを反射する透き通った用水路。
板を置いただけの橋を渡ると、ついに俺たちは森を抜け平地に出た。
モンシロチョウがヒラヒラとあぜ道を飛んでいく、ポカポカとした陽気の中、サブローさんを連れて歩く。
「うーん、お散歩日和だ」
「そうだな」
「ワン」
上機嫌でお尻をプリプリ振って歩くサブローさん。
「ああ、サブローさんの肛門は相変わらず目に入れても痛くないほど可愛いなぁ。んん……ギャワイイィ」
「肛門を目に??」
トゥリンが眉をひそめる。
「いや、何でもない」
いけないいけない。折角仲間ができたんだから、変なやつだと思われないようにしないと。
俺は視線をサブローさんの肛門からくるりん尻尾に移した。
ゆったりと大きく尻尾を振って歩くサブローさん。
「よしよし、機嫌も良さそうで何よりだ」
尻尾は犬の感情のバロメーターだ。
犬が嬉しい時に尻尾を振ることは知られているが、それ以外にも様々な感情を俺たちに伝えてくれる。
怒り、不安、怯え、喜び――
だが目の前のサブローさんはゆったりと落ち着いて、足取りも軽やかに見える。
しばらく山道を歩いて疲れているかと思ったが、足取りも軽やかで元気そのものだ。
俺は自分の足元をチラリと見る。
俺もしばらく山道を歩いたはずなのに全然足が疲れない。痛いと感じたことすらない。もしかしてこれが猟師のブーツの効果なのだろうか。
「水虫を治しただけあるな」
農道をしばらく歩いていると、分かれ道に突き当たった。
「どっちだ?」
俺は地図を広げた。
が、マルザ村長お手製の地図は非常に……なんというか大雑把で、位置を確認するのに読解力を要する。
俺たちが地図を広げ「あーでもない、こーでもない」と揉めている所へ、タイミングよく農家のお婆さんがやってきた。第一村人発見だ。
「あのーすみません」
コミュ障の俺がどうしようか迷っていると、トゥリンがなんの躊躇もなくお婆さんに声をかける。
「あれま!!」
お婆さんは心臓発作を起こしそうなほど飛び上がる。
ん? なんだ?
「お婆さん、この道はどっちに進んだらいいんですか?」
トゥリンが気にせず地図を指さしたが、お婆さんは目を大きく見開いたままだ。
「それよりアンタ、その獣は!!」
お婆さんサブローさんを指差し怯えたような顔をする。
「ああ、俺の飼い犬……いや、使い魔です」
「よく見てください、可愛いでしょ?」
俺とトゥリンがサブローさんを交互に撫でて安全なのをアピールしたが、お婆さんはブルリと体を震わせた。
「あれま、使い魔! そうか。よく見たらあんた、エルフだね。エルフの不思議な魔法でも使ったのかねぇ……くわばらくわばら」
「それで、あの、町に行くにはどっちに」
お婆さんは茶焼けた道を指さす。
「右さ行けばオラホノ村につくけんど、オラホノ村には宿も食い物屋も何も無ぇよ」
「そうなんですか。じゃあ、左の道は?」
「こっちはオラガの町に続いてる道だ。ちと遠いが宿をとるならこっちだべな」
「ありがとうございます」
ペコリと頭を下げると、お婆さんは「くわばらくわばら」と言ってそそくさと去っていった。
俺とトゥリンは顔を見合わせた。
「とりあえず左に行ってみるか」
天気もいいしと、俺たちはオラガの町に向かってゆっくりと歩き始めた。
◇◆◇
「何だか雲行きが怪しくなってきたな」
お婆さんと分かれてから少しすると、急に辺りが暗くなってきて冷たい風が吹いてきた。
俺が腕まくりした袖を元に戻しながら空を見上げると、トゥリンが厳しい顔をして道の先を指さす。
「急ごう、シバタ」
「ああ」
トゥリンは狩りで外に出ることも多いし、天候の移り変わりに敏感なのだろう。
歩くペースを上げ、オラガ村へと急ぐ。
「町が見えてきたぞ」
遠くにうっすらと見える木造家屋。
ビルのような大きな建物はないが、沢山の家がある。山のそばだけど、思ったより都会かもしれない。
ほっと息をついたその時、額にポツリと雨だれが落ちた。
「あ、雨」
ポツポツと黒い点が地面を染め始める。
「ヤバいぞ、急げ!」
町についた頃には雨はザーザー振りになっていた。急いで近くの建物の屋根の下で雨やどりをする。
ブルブルと震えて毛皮の雨粒を払うサブローさん。柴ドリルだ。
「わっ、冷たいぞ、サブローさん!」
トゥリンが悲鳴を上げる。
「それにしても、日が落ちる前に町に着いてよかったな」
「どこかで宿を取るか」
「ああ」
エルフの村を出てから二日。その間はずっと野宿だったから、そろそろ柔らかいベッドで寝たいところだ。
「ちょうどあそこに宿があるな。行ってみよう」
二人と一匹でずぶ濡れになりながら宿に向かう。
「わっ、なんですかその獣は!」
「うちは獣は持ち込み禁止です!」
だけどやはりと言うべきか、サブローさんが泊まれる宿を探すのは難しい。
付近にあった四、五軒の宿屋は全て断られてしまった。
「どうしよう」
「野宿する?」
「でも雨だし」
そんなことを話していると、ふと一軒の民家が目に飛び込んでくる。
「あの家、馬舎があるな」
木でできた屋根と柵があり、干し草が敷き詰められたその馬舎には馬は一匹もいない。それどころか人すら住んでいないように見える。
「人の気配がない。空き家みたいだな」
「隣の家の住民に聞いてみるか」
隣の家の門を叩く。出てきたのは土佐犬のように筋肉質で勇猛な顔つきのおじさんだった。
おじさんに話を聞くと、そこは一年ほど前から空き家らしい。
「借りたいんなら借りてもいいよ。うちがそこの大家というか、隣の家は元々うちの離れだったんだ」
聞けば、前の住人には一ヶ月銀貨5枚でこの家を貸してたのだという。
俺はトゥリンの顔を見た。
「一ヶ月も居ないよな?」
「そうだな。居ても一週間くらいかな」
「なら銀貨1枚で一週間貸してやるがそれでもいいか?」
「大丈夫です。ありがとうございます」
こうして俺たちは銀貨1枚で馬舎つきの家を借りることとなった。
「すごいぞ、一軒家だ。ちゃんとトイレや台所もあるし」
「ああ。こんないい所が銀貨1枚だなんて」
古い木造の家には、居間、台所、ふろ場、トイレ、寝室。空き部屋が二つもある。
俺は大家のおじさんから貰った使っていない布団を寝室に敷いた。
「ベッドは一つだけど、まあ広いからなんとかなるか」
俺が言うと、トゥリンは顔を赤くした。
「つっ、ついに同衾《どうきん》ということか」
「同衾」の意味は分からなかったが、文脈から察するに一緒に寝るということなのだろう。
「そんな大げさな。昨日も野宿で雑魚寝だっただろ」
「そうだけどぉ」
口を尖らせるトゥリンをよそに、おれは寝室横の引き戸を開けた。
「お、ここから裏口の馬舎に出れるのか」
「サブローさんのベッドはここな!」
トゥリンが嬉しそうにサブローさんを馬舎に追い払う。
サブローさんは「く~ん」と哀れっぽい声を出した。
「とりあえず、濡れた服を乾かすか」
俺が濡れたジャージを脱いでかけていると、トゥリンがソワソワした様子で聞いてくる。
「シバタ、先にご飯食べるか? それともお風呂? それとも」
「ああ。腹減ったし、飯にするか」
「わ、分かった! 飯だな!」
トゥリンはギクシャクとした動作で荷物の中から、ナンみたいなパンとドラゴンの肉を取り出す。
「ドラゴンの肉もこれで最後だな」
「でも町についたから食料はいくらでも調達できるぞ」
「ああ」
俺がちぎったナンをサブローさんに与えていると、トゥリンは目を潤ませて言った。
「風呂場に水は溜めておいたから、食べ終わったらシバタは先に湯あみをしてきてもいいぞ」
「ああ」
何だろう、トゥリンのやつ、さっきから様子がおかしいな。
食事が終わり、風呂場につくと、風呂桶の中に水が溜まっていた。近くの井戸から水を組み上げたのだろう。触ってみると生ぬるいお湯だ。
トゥリンが魔法で沸かしたのか、元々温泉なのかは分からない。
石鹸は無いが、とりあえずお湯で体を流すと、酷くサッパリした感じがした。
大家さんから貰った古いタオルで体を拭く。
「次どうぞ」
「は、はいっ!」
白いドロワーズ姿のトゥリンが緊張した様子で風呂場に向かう。
俺はベッドに横たわった。
――と、同時に、一日歩き続けた疲れからか、一瞬のうちに眠りに落ちてしまった。
◇◆◇
「――ハッ、寒い!」
そして朝目が覚めると、俺はベッドの下で寝ていた。
ベッドの真ん中にはなぜかサブローさんが寝ていて、ベッドの隅の方にトゥリンが寝ている。
どうやら俺は寝相の悪いサブローさんにベッドから蹴り落とされたらしい。
ほとんど布団のかかっていないトゥリンに布団をかけてやる。
するとサブローさんが目を覚まして俺の顔を舐めようとする。
「うわっぷ!」
俺の顔をひとしきり舐めたサブローさんは、今度は寝ているトゥリンの顔をペロペロと舐め始めた。
「う~んシバタ、こんな所まで舐めるのか! 破廉恥な……むにゃむにゃ」
訳の分からん寝言を言うトゥリン。
俺はバスタオルを被ると、再び床の上で眠りについた。
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◇柴田のわんわんメモ🐾
◼犬の尻尾と感情
・尻尾を素早く振る→興奮、喜び
(※嬉しい時以外にも、興奮して攻撃的になっている時にも同様になるので注意が必要)
・尻尾をゆったりと左右に振る→リラックス、信頼、好奇心
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