56 / 139
3.お姉様と木都フェリル
55.お姉様と闇の力
しおりを挟む
「なっ――」
死んでる? アンデッドかよ、このシスター。
「昔から闇魔法だけは得意なんですよねぇ、困ったものです」
何が可笑しいのか笑い続ける神父。こいつ、完全に狂ってやがる。
「まさか、このシスターもあんたが殺したのか?」
ヒイロが眉を顰める。
「ああ、そうだよ。そいつは私の方針に逆らったからね。他のシスターたちもそうだ」
俺はあまり見たくはないがシスターゼラの血の気の失せた顔をまじまじと見た。死人なのだそうだが、顔だけ見れば全く普通の人間と区別がつかない。まだ若い、利発そうな顔。
「この腐れ外道が」
「何とでも言いたまえ。さ、シスターたち、出ておいで。パーティーの時間だ」
神父が指をパチンと鳴らすと奥の部屋から青白い顔をしたシスターたちが現れる。
そう言えば、シスターは三人いるとか言ってたな。
「がアアッ!!」
奥の部屋から現れた、かつてシスターであったであろうその存在。
一人は顔は腐り落ち、骸骨に腐肉が辛うじてついた状態で手足は草に覆われている。
もう一人は、顔があった場所は虚《うろ》の空いた木の幹に完全に変化し、手足のあった場所は根や茎になり、完全に人面樹と成り果てている。
修道服を着ていなかったら、元がシスターだったとは誰も気づかなかっただろう。
「この場所は特に木属性の気が強いからね、こんな風になってしまったんだよ。難しいねえ、蘇生魔法も。でもこの方が腐った臭いなんかもしなくていいから、かえって良かったかもしれないけどね。さすがに人前には出せないけどさ」
無邪気に解説する神父。
一人のシスター、いや、シスターだったモノがモアに襲いかかる。
「イヤッ!」
モアが叫び、クマさんステッキを振ろうとする。
ヤバい。こんな狭い地下室で、モアが魔法を使ったりしたら大変なことに!
しかし、モアが魔法を発動する前に、ゼットが人面樹と化したシスターを切り捨てた。
「よし、ナイスだゼット!」
「だろ?」
そんなゼットの背後から、今度はシスターゼラが再度ナイフで襲いかかる。
「危ない!」
俺はとっさにシスターゼラの腹にパンチを食らわせた。崩れ落ちるシスターの体。
「ガアッ!」
最後に残った一体がヒイロに襲いかかる
ヒイロは一刀両断、その首を刀で切り落とした。
「これでシスターどもはやっつけたか」
「でも、あれ? 神父は?」
俺たちがシスターの相手をしている間に、いつの間にかシト神父の姿は消えていた。
「どこだ?」
「奥の部屋へ逃げたようです!」
アオイが廊下を指さす。
「外じゃなくて奥へ?」
「もしかすると、何かの罠かも知れませんね」
俺たちは、慎重に奥へと続く鉄のドアを開いた。
錆付いたような匂いが出迎える。松明で照らされた部屋の中央には、赤い物で満たされた大きな水槽、そしてその手前には真っ赤に光る魔法陣があり、魔法陣の中には数人の女の子が倒れていた。
俺は倒れている少女のうちの一人に目をやる。昼間会ったあの子、ミヨちゃんだ!
背後でバタン、と鉄の扉が閉まる。
「驚いたかい?」
水槽の後ろから神父が現れた。
「私の秘密の研究成果だ。キミたちにも見てもらおうと思ってね」
研究成果?
「これはまさか」
アオイの表情が曇る。その表情を見て、俺も察した。シト神父が撫でているその巨大な水槽。そこに貯められた赤黒い液体の正体に。
「まさか血か?」
「ご名答!」
子供のように無邪気に喜ぶ神父。
「そいつは子供たちから集めた血だ。ここには特別に魔力の強い子供ばかり集めている。私特製の魔力貯蔵庫さ!」
「なっ!?」
まさか、この赤い液体全部が血かよ!
「まさか孤児院もそのために」
「ええ。身よりもない子供たちです。それぐらいしか役に立たないから、仕方ないでしょう」
「ねえ、お姉さま、あれ」
モアが真っ青な顔で俺の袖を引っ張る。
モアの視線の先へ顔を向けると、部屋の隅の暗がりに、小さな骨が散乱していた。
「ま、まさか人間の骨?」
そう、ちょっとやそっと血を抜いたぐらいじゃこんなに大量の血液は集まらない。
この様子じゃ、こいつはかなり前から孤児院の子供たちを殺して魔力源にしていたに違いない。
「ちょっともったいないけど、邪魔をされると困るから、ここの魔力を使うとしよう。子供たちはまだ沢山居るしね」
神父は両手を広げ、何かの呪文を唱え始める。
「何だ?」
「お姉さま、気を付けて!」
すると剣のように太く尖った植物の根が足元の床板を突き破って、生えてくる。俺はそれを紙一重で避けた。
「何だこりゃあ!?」
「お姉さま大丈夫!?」
モアがこちらへ駆けてくる。
瞬間、足元でまたしても何かが蠢いた。
「モア! こっちへ来るな!」
「へ?」
立ち止まったモア。しかしそこへ、強烈な木の根による一撃。モアは跳ね飛ばされ、床板に転がった。
「モア!!」
俺はぐったりと動かなくなってしまったモアに駆け寄る。良かった。気絶してるだけみたいだ。
「貴様!」
「許さない! 紅蓮暗……くうっ!」
なんかカッコイイ技名を詠唱してたヒイロとゼットも木の根ではね飛ばされる。
「なんだ、弱いんですね、キミたち」
くすくす、と神父が無邪気に笑う。
その下半身は大木と融合し、異形の化け物と化していた。
「貴様っ!」
ヒイロがうめく。
「許せねぇ!!」
俺は叫んだ。
死んでる? アンデッドかよ、このシスター。
「昔から闇魔法だけは得意なんですよねぇ、困ったものです」
何が可笑しいのか笑い続ける神父。こいつ、完全に狂ってやがる。
「まさか、このシスターもあんたが殺したのか?」
ヒイロが眉を顰める。
「ああ、そうだよ。そいつは私の方針に逆らったからね。他のシスターたちもそうだ」
俺はあまり見たくはないがシスターゼラの血の気の失せた顔をまじまじと見た。死人なのだそうだが、顔だけ見れば全く普通の人間と区別がつかない。まだ若い、利発そうな顔。
「この腐れ外道が」
「何とでも言いたまえ。さ、シスターたち、出ておいで。パーティーの時間だ」
神父が指をパチンと鳴らすと奥の部屋から青白い顔をしたシスターたちが現れる。
そう言えば、シスターは三人いるとか言ってたな。
「がアアッ!!」
奥の部屋から現れた、かつてシスターであったであろうその存在。
一人は顔は腐り落ち、骸骨に腐肉が辛うじてついた状態で手足は草に覆われている。
もう一人は、顔があった場所は虚《うろ》の空いた木の幹に完全に変化し、手足のあった場所は根や茎になり、完全に人面樹と成り果てている。
修道服を着ていなかったら、元がシスターだったとは誰も気づかなかっただろう。
「この場所は特に木属性の気が強いからね、こんな風になってしまったんだよ。難しいねえ、蘇生魔法も。でもこの方が腐った臭いなんかもしなくていいから、かえって良かったかもしれないけどね。さすがに人前には出せないけどさ」
無邪気に解説する神父。
一人のシスター、いや、シスターだったモノがモアに襲いかかる。
「イヤッ!」
モアが叫び、クマさんステッキを振ろうとする。
ヤバい。こんな狭い地下室で、モアが魔法を使ったりしたら大変なことに!
しかし、モアが魔法を発動する前に、ゼットが人面樹と化したシスターを切り捨てた。
「よし、ナイスだゼット!」
「だろ?」
そんなゼットの背後から、今度はシスターゼラが再度ナイフで襲いかかる。
「危ない!」
俺はとっさにシスターゼラの腹にパンチを食らわせた。崩れ落ちるシスターの体。
「ガアッ!」
最後に残った一体がヒイロに襲いかかる
ヒイロは一刀両断、その首を刀で切り落とした。
「これでシスターどもはやっつけたか」
「でも、あれ? 神父は?」
俺たちがシスターの相手をしている間に、いつの間にかシト神父の姿は消えていた。
「どこだ?」
「奥の部屋へ逃げたようです!」
アオイが廊下を指さす。
「外じゃなくて奥へ?」
「もしかすると、何かの罠かも知れませんね」
俺たちは、慎重に奥へと続く鉄のドアを開いた。
錆付いたような匂いが出迎える。松明で照らされた部屋の中央には、赤い物で満たされた大きな水槽、そしてその手前には真っ赤に光る魔法陣があり、魔法陣の中には数人の女の子が倒れていた。
俺は倒れている少女のうちの一人に目をやる。昼間会ったあの子、ミヨちゃんだ!
背後でバタン、と鉄の扉が閉まる。
「驚いたかい?」
水槽の後ろから神父が現れた。
「私の秘密の研究成果だ。キミたちにも見てもらおうと思ってね」
研究成果?
「これはまさか」
アオイの表情が曇る。その表情を見て、俺も察した。シト神父が撫でているその巨大な水槽。そこに貯められた赤黒い液体の正体に。
「まさか血か?」
「ご名答!」
子供のように無邪気に喜ぶ神父。
「そいつは子供たちから集めた血だ。ここには特別に魔力の強い子供ばかり集めている。私特製の魔力貯蔵庫さ!」
「なっ!?」
まさか、この赤い液体全部が血かよ!
「まさか孤児院もそのために」
「ええ。身よりもない子供たちです。それぐらいしか役に立たないから、仕方ないでしょう」
「ねえ、お姉さま、あれ」
モアが真っ青な顔で俺の袖を引っ張る。
モアの視線の先へ顔を向けると、部屋の隅の暗がりに、小さな骨が散乱していた。
「ま、まさか人間の骨?」
そう、ちょっとやそっと血を抜いたぐらいじゃこんなに大量の血液は集まらない。
この様子じゃ、こいつはかなり前から孤児院の子供たちを殺して魔力源にしていたに違いない。
「ちょっともったいないけど、邪魔をされると困るから、ここの魔力を使うとしよう。子供たちはまだ沢山居るしね」
神父は両手を広げ、何かの呪文を唱え始める。
「何だ?」
「お姉さま、気を付けて!」
すると剣のように太く尖った植物の根が足元の床板を突き破って、生えてくる。俺はそれを紙一重で避けた。
「何だこりゃあ!?」
「お姉さま大丈夫!?」
モアがこちらへ駆けてくる。
瞬間、足元でまたしても何かが蠢いた。
「モア! こっちへ来るな!」
「へ?」
立ち止まったモア。しかしそこへ、強烈な木の根による一撃。モアは跳ね飛ばされ、床板に転がった。
「モア!!」
俺はぐったりと動かなくなってしまったモアに駆け寄る。良かった。気絶してるだけみたいだ。
「貴様!」
「許さない! 紅蓮暗……くうっ!」
なんかカッコイイ技名を詠唱してたヒイロとゼットも木の根ではね飛ばされる。
「なんだ、弱いんですね、キミたち」
くすくす、と神父が無邪気に笑う。
その下半身は大木と融合し、異形の化け物と化していた。
「貴様っ!」
ヒイロがうめく。
「許せねぇ!!」
俺は叫んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
379
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる