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四話 婚約だってさ
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オリエント城。
想像よりはるかにデカい、豪奢なお城だ。
連行されるように長い階段を上り、大きな扉の前まで来た。
鎧姿の男たちは大きな声で、「お連れしました!」と父に向けていた怒鳴り声とは、違う声色を出した。
ゆっくりと扉が開かれる。
「ご苦労だったな」
威厳のある老婦人がそこにいた。
修道院の肖像画で見たことがある。たしか、この国の皇后である人だ。
傍らには父ぐらいの男性が座っている。
こちらも肖像画で見たことがあった。
現国王だ。
「君が、あの女の」
「……」
威厳のある顔つきな割に、失礼な人だ。
ジロジロと品定めするように私を見ている。
こんな場所から早く帰りたい。
不信感はあるが、父と一緒にしたほうがはるかにマシだ。
「なにか、御用でしょうか?」
「あぁ、あなたにお話しがありましてね」
「お話?」
現国王はにっこりとほほ笑んだ。人好きのする笑みだけど、同時に背筋が凍えた。
気持ち悪い。と本能から拒絶したいような、そんな笑み。
「リンド、こちらに」
「はい」
別の入り口から、男の子が入ってきた。
私より少し上ぐらいの男の子だ。
見たことがある。これも肖像画だけど、確か第一王子だったはず。
「君には、このリンドと結婚し女王になってほしい」
「……はい?」
今、なんかとんでもない話が聞こえた気がする。
「父上、失礼ですが」
「うん、なんだい?」
「彼女は?」
第一王子もよく分かっていなかった。
これは駄目じゃないか? 私にも事前に何の話もなかった。いや、それは百歩譲っていいとしよう。
けれど、身内の。しかも、王子に言わないのは、ダメでは?
「お前の婚約者の、ミラ・スレッドだ」
「スレッド!? あの、スレッドですか!?」
王子は目を白黒している。
スレッドはお母さんの家名であるはずだ。はずってのは、家名で呼ばれたことがあまりないからだ。
おい。とか、お前。とか、小娘。とか。お母さんも似たような呼ばれ方だった。いや、これより酷ったけど。
「父上、正気ですか? 彼女はあの血を引いているんですよ?」
「だからこそだ。聖女になる資格、その証となる力を所有しているのは、もはや彼女しかいない」
「だからって」
「イヤなら、自力で探すことだ」
どうやら、この王子は私との婚約がイヤみたいだ。
それはこちらとしても同じだ。
あの。って言いやがった。母さんを侮辱している。それだけのことだが、あぁ腹が立つ。
「お前なんか、認めないからな」
それはこっちの台詞なんだけど?
なにを勘違い、いや、王族に産まれて育ったんだ。常に選ぶ側だったから、選ばれるのは無縁なんだ。
こんなのが、次期王か。腹が立つな。
「それはこっちの台詞よ」
おっと、つい本音が。これには、王様も眉間にしわが。
「まあ、いいさ。仲良くね」
「願い下げです」
「こちらもです」
こうして、婚約は強引に結ばれた。
ていうか、そもそも。
「(聖女の証とか、って何の話?)」
想像よりはるかにデカい、豪奢なお城だ。
連行されるように長い階段を上り、大きな扉の前まで来た。
鎧姿の男たちは大きな声で、「お連れしました!」と父に向けていた怒鳴り声とは、違う声色を出した。
ゆっくりと扉が開かれる。
「ご苦労だったな」
威厳のある老婦人がそこにいた。
修道院の肖像画で見たことがある。たしか、この国の皇后である人だ。
傍らには父ぐらいの男性が座っている。
こちらも肖像画で見たことがあった。
現国王だ。
「君が、あの女の」
「……」
威厳のある顔つきな割に、失礼な人だ。
ジロジロと品定めするように私を見ている。
こんな場所から早く帰りたい。
不信感はあるが、父と一緒にしたほうがはるかにマシだ。
「なにか、御用でしょうか?」
「あぁ、あなたにお話しがありましてね」
「お話?」
現国王はにっこりとほほ笑んだ。人好きのする笑みだけど、同時に背筋が凍えた。
気持ち悪い。と本能から拒絶したいような、そんな笑み。
「リンド、こちらに」
「はい」
別の入り口から、男の子が入ってきた。
私より少し上ぐらいの男の子だ。
見たことがある。これも肖像画だけど、確か第一王子だったはず。
「君には、このリンドと結婚し女王になってほしい」
「……はい?」
今、なんかとんでもない話が聞こえた気がする。
「父上、失礼ですが」
「うん、なんだい?」
「彼女は?」
第一王子もよく分かっていなかった。
これは駄目じゃないか? 私にも事前に何の話もなかった。いや、それは百歩譲っていいとしよう。
けれど、身内の。しかも、王子に言わないのは、ダメでは?
「お前の婚約者の、ミラ・スレッドだ」
「スレッド!? あの、スレッドですか!?」
王子は目を白黒している。
スレッドはお母さんの家名であるはずだ。はずってのは、家名で呼ばれたことがあまりないからだ。
おい。とか、お前。とか、小娘。とか。お母さんも似たような呼ばれ方だった。いや、これより酷ったけど。
「父上、正気ですか? 彼女はあの血を引いているんですよ?」
「だからこそだ。聖女になる資格、その証となる力を所有しているのは、もはや彼女しかいない」
「だからって」
「イヤなら、自力で探すことだ」
どうやら、この王子は私との婚約がイヤみたいだ。
それはこちらとしても同じだ。
あの。って言いやがった。母さんを侮辱している。それだけのことだが、あぁ腹が立つ。
「お前なんか、認めないからな」
それはこっちの台詞なんだけど?
なにを勘違い、いや、王族に産まれて育ったんだ。常に選ぶ側だったから、選ばれるのは無縁なんだ。
こんなのが、次期王か。腹が立つな。
「それはこっちの台詞よ」
おっと、つい本音が。これには、王様も眉間にしわが。
「まあ、いいさ。仲良くね」
「願い下げです」
「こちらもです」
こうして、婚約は強引に結ばれた。
ていうか、そもそも。
「(聖女の証とか、って何の話?)」
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