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第10話
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「さっき話してたのは、もしかして精霊と?」
お互いを激しく求め合うように口づけを交わした後、セルジュは聞いてきた。
精霊の姿を見ることが出来ないセルジュからすれば、シャルロッテは1人で話してるように見えただろう。
「ええ、水の精霊王の姫がここの泉が好きなの」
横目で泉を見ると、アルテミシアがうっすらと実体化していた。シャルロッテの視線に気が付くと、悪戯っ子のような笑みを浮かべる。
「今も居るの?」
「居るわ」
セルジュは泉を見やった。セルジュの視線が向いた途端、アルテミシアは姿を消す。
精霊は自身の姿が見えなくとも人の前では実体化しない。基本的に精霊は人間が嫌いなのだ。彼等は自然に近しい存在。自らの利益の為に自然を破壊する人間という生き物を憎み、蔑んでいる。
アルテミシア曰く、そうした感情以外にも精霊としての矜持から姿を現さないそうだ。
例外なのが、スフォルトゥーナの民だ。彼等は自然を守り、精霊と良き関係を築き上げながら暮らしてきた。精霊はスフォルトゥーナの民だけを隣人として認めており、彼等の前でしか姿を見せない。
「その水の精霊王の姫って君に加護を与えてくれたの?」
「そうよ。水の精霊の本性は治癒力。本来、生き物に備わっている自然治癒能力を底上げしたり、精神と肉体を強くして怪我や病気になりにくいようにしたり出来るの」
セルジュの怪我を治したのも、アルテミシアの加護があったから出来たのだ。
彼はそうかと返事をすると、真剣な眼差しを泉に向けた。
「アルテミシア様、僕は貴女様の姿を拝見する事は叶いませんが、どうか僕の声を聞いてくださいませんか」
セルジュは泉に向かって話し始める。アルテミシアは興味をそそられたのか姿を現した。
「まずは貴女様の加護のおかげで僕の命が助かったこと、御礼申し上げます。シャルロッテが見つけてくれなければ、きっとあの場所で息絶えていたでしょう」
少し離れた場所からでも血の臭いが漂う程の出血量だった。頭部にあった大きな傷は、確実にセルジュの命を削っていただろう。
「そして、僕は彼女に恋をしました。一緒に暮らすうち、彼女の優しさと温かさに惹かれていきました」
セルジュは隣に立つシャルロッテを優しく抱き寄せた。
「僕は彼女の隣でこれから先の人生を歩んでいきたい。僕が彼女を幸せにするところを見ていてください」
真っ直ぐと見つめる彼の視線の先には、見えないはずのアルテミシアがいた。
アルテミシアは、そっと微笑むとセルジュの額に触れる。
『それは、私に対する宣戦布告?』
「貴方が……アルテミシア様……」
セルジュの瞳に映る精霊の姫君。妖艶に笑う美しい精霊は、指を鳴らした。
すると、泉の水から小さな精霊達が現れる。彼等は歌い、踊りながら、セルジュとシャルロッテの周りをぐるぐると回った。
『初めはあんまり貴方のこと好きじゃなかったのだけれど、そこまでシャルロッテへの愛を告白されたら私も応援しないとね』
小さな水の精霊達は、セルジュの肩に乗ったり、シャルロッテの頬に体をすり寄せたりした。愛らしいその姿は、セルジュにも見えているらしい。
『2人に祝福あれ。健全で屈強な精神と肉体を』
水の精霊王の姫君から与えられた祝福は、初々しく恋を育み始めた2人にふさわしいものだった。
彼等はお互いを見合うと、どちらかともなく微笑みあった。
お互いを激しく求め合うように口づけを交わした後、セルジュは聞いてきた。
精霊の姿を見ることが出来ないセルジュからすれば、シャルロッテは1人で話してるように見えただろう。
「ええ、水の精霊王の姫がここの泉が好きなの」
横目で泉を見ると、アルテミシアがうっすらと実体化していた。シャルロッテの視線に気が付くと、悪戯っ子のような笑みを浮かべる。
「今も居るの?」
「居るわ」
セルジュは泉を見やった。セルジュの視線が向いた途端、アルテミシアは姿を消す。
精霊は自身の姿が見えなくとも人の前では実体化しない。基本的に精霊は人間が嫌いなのだ。彼等は自然に近しい存在。自らの利益の為に自然を破壊する人間という生き物を憎み、蔑んでいる。
アルテミシア曰く、そうした感情以外にも精霊としての矜持から姿を現さないそうだ。
例外なのが、スフォルトゥーナの民だ。彼等は自然を守り、精霊と良き関係を築き上げながら暮らしてきた。精霊はスフォルトゥーナの民だけを隣人として認めており、彼等の前でしか姿を見せない。
「その水の精霊王の姫って君に加護を与えてくれたの?」
「そうよ。水の精霊の本性は治癒力。本来、生き物に備わっている自然治癒能力を底上げしたり、精神と肉体を強くして怪我や病気になりにくいようにしたり出来るの」
セルジュの怪我を治したのも、アルテミシアの加護があったから出来たのだ。
彼はそうかと返事をすると、真剣な眼差しを泉に向けた。
「アルテミシア様、僕は貴女様の姿を拝見する事は叶いませんが、どうか僕の声を聞いてくださいませんか」
セルジュは泉に向かって話し始める。アルテミシアは興味をそそられたのか姿を現した。
「まずは貴女様の加護のおかげで僕の命が助かったこと、御礼申し上げます。シャルロッテが見つけてくれなければ、きっとあの場所で息絶えていたでしょう」
少し離れた場所からでも血の臭いが漂う程の出血量だった。頭部にあった大きな傷は、確実にセルジュの命を削っていただろう。
「そして、僕は彼女に恋をしました。一緒に暮らすうち、彼女の優しさと温かさに惹かれていきました」
セルジュは隣に立つシャルロッテを優しく抱き寄せた。
「僕は彼女の隣でこれから先の人生を歩んでいきたい。僕が彼女を幸せにするところを見ていてください」
真っ直ぐと見つめる彼の視線の先には、見えないはずのアルテミシアがいた。
アルテミシアは、そっと微笑むとセルジュの額に触れる。
『それは、私に対する宣戦布告?』
「貴方が……アルテミシア様……」
セルジュの瞳に映る精霊の姫君。妖艶に笑う美しい精霊は、指を鳴らした。
すると、泉の水から小さな精霊達が現れる。彼等は歌い、踊りながら、セルジュとシャルロッテの周りをぐるぐると回った。
『初めはあんまり貴方のこと好きじゃなかったのだけれど、そこまでシャルロッテへの愛を告白されたら私も応援しないとね』
小さな水の精霊達は、セルジュの肩に乗ったり、シャルロッテの頬に体をすり寄せたりした。愛らしいその姿は、セルジュにも見えているらしい。
『2人に祝福あれ。健全で屈強な精神と肉体を』
水の精霊王の姫君から与えられた祝福は、初々しく恋を育み始めた2人にふさわしいものだった。
彼等はお互いを見合うと、どちらかともなく微笑みあった。
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