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烏
しおりを挟む「あなたはどなたですか」
「私は人間です」
「どうしてあなたは 人間なのですか」
「それは 人と人の間に 生まれたからです」
「ではあなたの両親は どうして人間なのですか」
「両親もまた 人と人との間に生まれたからです」
「あなたは 自分が烏でないことを 証明できますか」
「できます」
「ではあなたは何故 烏でないのですか」
「私には 羽はございません 嘴もございません 色も黒くありません」
「では 羽があり 嘴があり 黒いものは 皆烏なのですか」
「そうではありません」
「ではあなたは何故 烏でない理由を そう述べたのですか」
「少なくとも その特徴を持ったものが 烏であり 私はそれに該当しないからです」
「ではあなたは 自分の姿を見たことがあるのですか」
「あります」
「どうやってですか」
「鏡 を 使ってです」
「鏡に映る あなたの姿が 本当のあなたの姿であると どうやって証明できますか」
「鏡は 光を反射して 物体を映します」
「光が反射してあなたの目に映っているその姿が 本当に自分なのか 証明できますか」
「わかりません」
「あなたは 自分が生きていると 証明できますか」
「できます」
「どうやってですか」
「私の心臓は しっかり動いています」
「今 心臓が動いている という事実そのものが 幻想でないという 証明ができますか」
「わかりません」
「あなたは 自分の両親が本当に自分の両親であるという 証明ができますか」
「できます」
「どうやってですか」
「私の両親は 私とよく 顔が似ています」
「世の中には 似ている顔など万とあります その中で その人たちが両親であると 言い切れる根拠はありますか」
「ありません」
「あなたは あなたの恋人が 本当にあなたを愛しているという 証明ができますか」
「できます」
「どうやってですか」
「私の恋人は 私をいつも抱きしめてくれます 私に口づけをしてくれます 私を好きだと言ってくれます 私を離さないと言ってくれます 私は彼女を信じています」
「では その言葉 その行動が 本当に 彼女の心から 心の底から でてきているものだと 証明できますか」
「私は 彼女を信じています」
「その言葉 その行動が 嘘でないという証明はできますか」
「私は 彼女を信じています」
「彼女の腹を切り裂いて 内なる心を 見たことがあるのですか」
「ありません」
「では 絶対的な根拠に基づいた 信用なのですか」
「違います」
「本当であって欲しいという あなたの気持ち あなたのエゴも 信用には含まれているのではないですか」
「そうです」
「ではあなたは 彼女の その言葉 その行動が 嘘でないという証明はできますか 」
「できません」
「では、もう一度お聞きします」
「はい」
「あなたは 自分が烏でないことを 証明できますか」
「できません 私はもしかしたら 烏なのかもしれません」
「あなたは 自分が烏でないことを 証明できますか」
「できません 私はもしかしたら 烏なのかもしれません」
「あなたは 自分が烏でないことを 証明できますか」
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