5 / 5
2杯目 3口目
しおりを挟む
「で、お前はどうするんだ。戻って取り返すのか?」
「・・・ううん、疲れちゃった。どこかへ行って、のんびりしたいな」
そういう女性の服装は、白い襟にフリルが少しついただけのシンプルな重ね着風の水色の上に膝くらいまでしかない丈の青いスカート。
「そうか。まぁ、なんだ。愚痴くらいは聞く」
ぽりぽりと人差し指で頬をかいてそっぽを向く男性。
ありがとう。そう言って、ぽつりぽつりと話し出すものは、要約すると両親に心配かけないようにしてるけど限界、というものだった。
付き合っている男性の事、仕事の事。お金の事。田舎に引っ越した両親の事。
それに付き合いつつも喜怒哀楽を顔だけに少し出していた。言葉は、掛けなかった。
「ふぅ。聞いてもらえて、少し楽になったわ。あのアパート売り払って、両親のところへ行こうと思う。××君のお財布なんて、今日で終わり」
苦笑するそのココロは、自分でもどこかで止めないと、とは思っていたのだろう。
「なら、さっさと行動するに限る。代金は貰ったから、行け」
顎でしゃくって、出口へと送り出す。
送り出すというよりは無理やり放り出した、に近いそれに微笑みつつ、ごちそうさま、と言って彼女は出て行った。
その後、少しして様子を知ろうとした男性の耳に届いたのは、あの女性が本当にあの後アパートを売って元恋人たちを追い出し、そのお金でとある村へと行った、という事だった。
それに安堵して戻る男性に、犬が話しかける。
「よかったですね、彼女。これから、よりよい人生になってほしいものです。人間は弱いけど強いですからね」
「ま、あん時の代金にしては少ねぇけどな。その後の人生の話数年分、でチャラだな」
言い終わると、ぶさ猫の姿になる。
「さて、次の街ではどんな話が聞けるでしょうねぇ」
微笑みながら遠くを見るマスター。
「今までもやってきた2人旅です。これからも気楽に、のんびりといろんな街を巡りましょう。次にこの町へ来るのもいつになるかわかりませんし、ね」
意味深に聞こえる独り言を、当たり前であるように呟く。
「長い永い時間の中、果たして彼らの行く末は?そして、次に向かうのはあなたの住む町かもしれません。・・・と言ったところでしょうか」
す、とこちらに向いて微笑む。
「そうでしょう?私たちの話の一部分を見ていたあなたの書きそうなものはわかりますからね」
「・・・ううん、疲れちゃった。どこかへ行って、のんびりしたいな」
そういう女性の服装は、白い襟にフリルが少しついただけのシンプルな重ね着風の水色の上に膝くらいまでしかない丈の青いスカート。
「そうか。まぁ、なんだ。愚痴くらいは聞く」
ぽりぽりと人差し指で頬をかいてそっぽを向く男性。
ありがとう。そう言って、ぽつりぽつりと話し出すものは、要約すると両親に心配かけないようにしてるけど限界、というものだった。
付き合っている男性の事、仕事の事。お金の事。田舎に引っ越した両親の事。
それに付き合いつつも喜怒哀楽を顔だけに少し出していた。言葉は、掛けなかった。
「ふぅ。聞いてもらえて、少し楽になったわ。あのアパート売り払って、両親のところへ行こうと思う。××君のお財布なんて、今日で終わり」
苦笑するそのココロは、自分でもどこかで止めないと、とは思っていたのだろう。
「なら、さっさと行動するに限る。代金は貰ったから、行け」
顎でしゃくって、出口へと送り出す。
送り出すというよりは無理やり放り出した、に近いそれに微笑みつつ、ごちそうさま、と言って彼女は出て行った。
その後、少しして様子を知ろうとした男性の耳に届いたのは、あの女性が本当にあの後アパートを売って元恋人たちを追い出し、そのお金でとある村へと行った、という事だった。
それに安堵して戻る男性に、犬が話しかける。
「よかったですね、彼女。これから、よりよい人生になってほしいものです。人間は弱いけど強いですからね」
「ま、あん時の代金にしては少ねぇけどな。その後の人生の話数年分、でチャラだな」
言い終わると、ぶさ猫の姿になる。
「さて、次の街ではどんな話が聞けるでしょうねぇ」
微笑みながら遠くを見るマスター。
「今までもやってきた2人旅です。これからも気楽に、のんびりといろんな街を巡りましょう。次にこの町へ来るのもいつになるかわかりませんし、ね」
意味深に聞こえる独り言を、当たり前であるように呟く。
「長い永い時間の中、果たして彼らの行く末は?そして、次に向かうのはあなたの住む町かもしれません。・・・と言ったところでしょうか」
す、とこちらに向いて微笑む。
「そうでしょう?私たちの話の一部分を見ていたあなたの書きそうなものはわかりますからね」
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
没落貴族か修道女、どちらか選べというのなら
藤田菜
キャラ文芸
愛する息子のテオが連れてきた婚約者は、私の苛立つことばかりする。あの娘の何から何まで気に入らない。けれど夫もテオもあの娘に騙されて、まるで私が悪者扱い──何もかも全て、あの娘が悪いのに。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
拝読致しました。
感想です。
テーマ、伝えたいストーリー、そういった構想は明確に伝わり、展開が楽しみです。
あえて、気になるところを申し上げますと
ベーシックな部分は抜きにして、
(WEB小説なので)
調べる業界用語は確実に書くこと(リアリティの追求)、強調する言葉が多いのが、伏線を逆に邪魔してしまっています。
伏線は、読者に気づかれずに貼るものです。
あとは、キャラクタの行動原理の描写をより深く描写すると
強調、対比が出来、キャラクタがリアルになると思います。
続きを楽しみにしています!
こんにちは。
みゆあんの友人のしゅうしろうです。
とても、興味が出ました!
一緒に創作しませんか?
ありがとうございます!
詳しい話を聞きたいので、またお返事いただきたいです!