11 / 37
4 増員 2
しおりを挟む
主砲を撃ちながら後退を続けるCパンゴリン。
徐々にコウキの町へ近づく艦へ、ジン達の乗った馬車がまっしぐら。時折飛んで来る敵の射撃武器が近くの大地を抉り、雇われ御者は悲鳴を上げて泣きそうになる。
だが艦の方もジン達の接近を察知し、敵の攻撃から庇って遮りつつ横腹のハッチを開けた。馬車はそこへ駆け込む。
格納庫に馬車が入ると、すぐにハッチは閉められた。ジン達は急いで馬車から飛び出す。
格納庫にはヴァルキュリナもいて、出て来たメンバーの中にクロカがいるのを見て声を上げた。
「彼女を連れてきてくれたか!」
「あ……シ、シシ、お久しぶり」
作り笑いを浮かべるクロカ。ヴァルキュリナとは知人のようだが、クロカの方はあまり親しみを感じていないようであった。
だがそんな事を気にせず、ジンはヴァルキュリナへ訴える。
「これ以上町に近づけないでくれ。あそこが巻き込まれる」
その脳裏では、魔王軍に襲われて負傷し、犠牲者まで出したハチマの街の人々を思い出していた。
(俺がそんな事を気にするなんてな。転移前には考えた事も無かったのに……)
自分の変化に自分で違和感を覚えるジン。
とはいえ、戦闘に巻き込まれた被害者を目の当たりにしたのがこの世界に転移した後しか無いのだ。そう思えばおかしくはないのかもしれない。
だがそこまで考えるほどの余裕は今のジンには無かった。
一方、ヴァルキュリナは難色を示す。
「まだ補給班が戻っていない。置いていくわけにはいかないから、この戦闘から逃亡はできなくなる。何が何でも勝ってもらう事になるぞ。そんな保証ができるのか?」
「おいおい、アニキが負けると思ってるのか? 白銀級には前に勝ったんだぜ」
抗議するのはゴブオだ。だがそれをジンは圧し留めた。
「それがわかって攻めてくる相手だからな。誰にも勝ちは保証できねぇ」
ジンの言葉に、一瞬、気まずい沈黙が下りた。
それを破ったのはクロカの笑い声。
「シシシ……だったら『ダメだった時は責任とってハラキリする』とでも約束すれば?」
どこか馬鹿にしたような言い方である。
だがそれを聞いたジンは――
「なんだ、そんな事でいいのか。わかった、それでいこう」
町を利用して建物を盾にした方が……地形効果として活用した方が圧倒的に楽である。
だがそれをしないばかりか、自分の命をかけるとまで言い出した。
なぜそんな事を言うのか、実はジン自身にもわからない。
(どう考えても俺らしくねぇ……)
そう思うが、確かに己が言ったのだ。
クロカにして見れば「そこまでできないだろ?」と言うからかい半分だったのである。それがあっさりと受け入れられた。
「え……マジデ?」
彼女が目を丸くするのも仕方ないだろう。
「ちょ、ちょっと、ジン!」
ナイナイが焦る。それも仕方ない事だろう。
だがヴァルキュリナは頷いた。
「了解した。ではジンの提案どおり、町にはこれ以上近づかない。補給班は敵を撃退した後に改めて合流を待つ。これが私の判断だ」
「いや、逃げられない状況で負けたらどうせ艦も落ちて死ぬし……」
クロカが焦りながら言う。
だがジンは笑いながら肩を竦めた。
「悪いな、ドワーフ娘さんよ。乗った早々腕を発揮する暇なくお終いかもな。そうなったらあの世で思う存分殴ってくれ」
「ふざけんな! 私はまだこの世に未練あるっつーの!」
怒鳴るクロカ。青筋を浮かべたままヴァルキュリナへ向き直る。
「ねぇねぇちょいと! COCPは貯まってるね? アイテム作るよ!」
今度はジンが驚く番だ。
「今この場でか!? そんなバカな……」
しかしすぐに思い直した。
(……わけでもねぇのかよ? 魔法がある世界だ、そういう物だと言われたらそうなのかもしれねぇ)
クロカはポケットから羊皮紙を取り出した。
「ほれ、私が準備している物リストだ。ここに書いてある物なら一つ30秒で作れるから!」
羊皮紙を渡されたジンはそれにざっと目を通す。
その頭上から、恐る恐る声をかけるリリマナ。
「ねぇねぇ……ジン、負けたら本当に死んじゃの?」
「そういう事になったみたいだな」
羊皮紙から顔を上げずに答えるジン。
リリマナは一瞬唇を噛むと、必死な声をあげた。
「私、そんな事させないよォ!」
言われてジンは視線をあげる。妖精の少女と目が合うと――その一生懸命な気持ちが見えて――フッとほほ笑んだ。
「ああ。頼りにしてるからよ」
「ウン!」
勢いよく頷くリリマナ。
それから何度か艦が揺れた頃。
ジン達はようやく準備を済ませ、ケイオス・ウォリアーの操縦席にいた。通信をブリッジに繋ぎ、モニター越しにヴァルキュリナへ伝える。
「待たせたな! こちらジン、出るぞ!」
ハッチが開き、ジンのBカノンピルバグが飛び出した。ナイナイ機も、ダインスケン機も。
着地して戦闘態勢をとると……眼前には十以上の敵機の姿。
『うわ……今日の敵部隊は数が多いね』
逃げる艦を追いかけてくるのは、犬頭の機体だ。
「猛獣型ケイオス・ウォリアーの中でも、この犬型の奴は生産し易いんだよ」
リリマナの説明を聞きながら、ジンは己のスピリットコマンド【スカウト】で敵の能力を探り、モニターに映し出す。
魔王軍兵 レベル10
Bダガーハウンド
HP:4000/4000 EN:170/170 装甲:1200 運動:95 照準:145
格 ダガーショット 攻撃2500 射程1―4
射 ワイルドバイト 攻撃2600 射程P1
性能的には、今までで最弱といって良かった。
「数は多いが質は伴ってねぇな。連携を強めて粘り強く戦えばなんとかなるだろうよ」
弱いといってもさほど大きく劣っているわけではない。油断は禁物である。
だが油断をしなければ、既に戦い慣れてきていたジン達が後れをとる事もない。
Cパンゴリンは町から逸れた方に移動し、ジン達3機はそれの周りを固めながら戦う。
「敵軍、北北東! 60秒後に距離5! 砲撃用意!」
ブリッジから指示を飛ばすヴァルキュリナ。何人ものクルーとともに操縦する艦は、戦況を把握・予測する能力も高い。それに基づいた指示をいかに出せるかが、この世界の艦長達の【指揮官】スキルで表されている。
指示を聞きながら目標を定め、仲間の攻撃を援護して攻撃を重ね、敵の攻撃からは互いに庇いあう。ジン機の砲撃が敵を撃ち、ダインスケン機の爪が敵を裂く。ナイナイ機はそれらを的確に援護し、艦は遠くの敵を砲撃で、肉薄してきた敵をゴブオの騎獣砲で撃った。
数は多くても各機バラバラに攻めてくる雑兵は着実に数を減らし――最後の機体がやがて倒れた。
(呆気ないな。数が多いとはいえこんな無策で攻めるなんて不自然……)
ジンが嫌な予感を覚えていると、戦闘MAPに新たな敵影が出現する! しかもさっきよりさらに多数が。
「増援か! 一気に出てきて勝負をかける気だな……」
その声を笑う者があった。
『ククク……戦力の逐次投入は悪手だからな。相手がぶつかる気になったらこちらの全てを出す。それがこのワシ、魔王軍親衛隊最強の戦士・マスターファングの戦法よ!』
声の主は増援のうちの一機。ジン達から最も遠く離れた敵陣の最奥、そこに他とは違うアイコンが表示されている。
ジンはそれに【スカウト】のコマンドを放った。
マスターファング レベル15
Sマチェットウルフ
HP:17000/17000 EN:200/200 装甲:1800 運動:100 照準:155
ブラックアイアンフィールド
射 デッドハウリング 攻撃3200 射程1―6
格 ヘッドバット 攻撃3500 射程P1
格 ブレードファング 攻撃4200 射程P1
ブラックアイアンフィールド:2000以下のダメージを無効化するバリア。
やはり白銀級機。胸部や腕部の鎧は量産機より厚く装飾も多く、両手には山刀。その頭は狼のそれで、長い牙が剝きだしている。
(今度はバリア持ちか。ある程度の火力が無ければ絶対に勝てないときやがった)
嫌気がさしながらもジンはステータス画面を切り替える……敵パイロットの能力欄へと。
マスターファング レベル15
格闘183 射撃178 技量200 防御161 回避91 命中121 SP80
ケイオス4 気力+(味方撃墜) 気力限界突破2 ガード2
気力+(味方撃墜):味方が撃破されると気力が余分に上昇
気力限界突破2:気力上限が160
ガード2:気力130以上で被ダメージ-15%
(確か……気力はふつう150が最大値だよな。なるほど……)
「数を出してくるわけだ。量産機を蹴散らしたら、親衛隊は気力限界突破すると。しかもバリアと防御系技能を併用する気満々か……」
敵隊長のステータスを確認してうんざりするシン。
一方、敵――マスターファングは声高に言った。
『そうだ。部下を倒される怒りと悲しみがワシを強くする。我が部隊の血を流した者ども、それ以上の血で償ってもらうぞ!』
「だったら捨て駒前提の戦い方をさせんな! スジが通ってねぇ!」
ジンは怒鳴ったが、もちろん敵は戦法を変えたりはしないのだ。
『どうしよう……敵を倒すほど、親衛隊が強くなっちゃうんだよね?』
「だからって倒さないわけにいかないよォ!」
うろたえるナイナイ、悲鳴みたいな声をあげるリリマナ。
動揺する声を聞きながらジンは檄を飛ばす。
「固まれ! 陣形を組んで援護し合いながら戦え!」
ここまでもその戦い方はしているが、あえてジンはそう指示を出した。
動揺するなと。自分達の戦法を変えるなと。それを伝えたかったからだ。
しかし敵に合わせ、多少の調整はする。敵の増援が真正面から数で圧そうとするが――
「場所を変えるぞ。ここだ!」
味方へ戦闘マップの座標を指示するジン。北から迫る敵の正面からズレた場所――増援の南西へ自軍を誘導した。
そんなジン達を追って、敵は北と東から襲い掛かって来る。そして両軍激突――!
『撃つよ! いっけぇ!』
僅かに速く迫っていた北側の敵へ、ナイナイ機のMAP兵器が炸裂した! インパルスウェーブに包まれた空間内で、高周波振動が敵機を砕き、耐えた機体も半壊させる。
そこへジン、ダインスケン、母艦からの攻撃が追い打ちをかけた。
だが東から脇腹をつくように残り半数が突っ込んでくる。先陣の、そして北側の部隊の仇をとらんと。
それを再び、MAP兵器・インパルスウェーブが迎え撃った。
(グフフ……勝った。大量のENを消費するMAP兵器を二発も撃った。通常戦闘も考えれば、既に一度は補給装置を使っているだろう)
後方で戦闘を窺いつつ、マスターファングは一人ほくそ笑む。
(しかし補給装置を使えば操縦者の気力は低下する! だから一つの戦闘で何度も補給し続けては、気力制限のある強力な武器は使えない!)
ケイオス・ウォリアーの表示によれば、一度の補給で気力は10低下する。
防戦しながら補給機と連結し、ENタンクや弾倉を交換する作業が、気力の持続に穴をあける故に。
機体に循環している異界流の流れが妨げられる故に。
スタミナ回復魔法の応用で造られた機能が操縦者の精神を鎮めてしまう故に。
それら故に、対象機操縦者の気力を減じる反作用がケイオス・ウォリアーの汎用補給装置にはある。
よって気力制限のある武器を持つ機体、気力が一定以上で発動するスキルの習得者は、むやみやたらと補給装置に頼る事はできないのである。
だからマスター・ファングは笑っているのだ。
(奴らの合体技……その威力でワシを倒すには5発は必要だ。ワシの高まった気力とスキル、この機体の耐久性があればな。だがやつらの機体のEN……180では最大でも4発、ましてやあれだけMAP兵器を撃っていれば3発でもギリギリだろう! だがあれ以上補給を繰り返せば気力が下がって合体技は使えん! やつらの通常武器ではガードスキルとバリアの二重防壁は破れん! 奴らには――もはやワシを倒す術は無いのだ!)
勝ちを確信するマスターファング。
戦闘マップから、彼以外の魔王軍兵士が全て消えた。
マスターファングは笑いながら言う。
『よくもやりおったな。部下達の怨念を受けるがいい』
彼の機体が重々しく歩き出した。ジン達の方へと。
だが歩きながら彼は予想外の事に気づく。
『むう? おかしい……気力が思ったほど高まらん。160に達している筈なのに、なぜ150しかないのだ?』
「MAP兵器でまとめて消された分は、一匹ずつ認識して怒ったり悲しんだりし難いんじゃねぇか?」
ジンはそう言ってやったが、別に確信があるわけではない。
ただ彼が遊んでいたゲームシリーズも、プログラムの都合上、MAP兵器で敵をまとめて倒しても他のキャラの気力には影響しない作品が多かった。ただそれだけだ。
だがマスターファングにはまだ余裕があった。
『小賢しい。しかしこれだけの気力でも、ワシの機体を鋼の塊にする事は可能だ!』
彼の防御系スキル・ガード(レベル2)の発動気力は130である。150なら十分にクリアしているのだ。
『グフフ……残弾もENも既に消耗しているだろう。MAP兵器まで派手に撃ったのではな。貴様らが合体技でなかなかの火力を出す事は知っているが、ワシを倒せるまで撃てねば意味があるまい!』
Sマチェットウルフが、いよいよ射程内に踏み込もうとしていた。
そしてジンのとった行動は。
「いくぞリリマナ!」
「任せて!」
二人そろって――「「ウィークン!!」」
敵の気力を低下させるスピリットコマンドの重ねがけである。
しかしマスターファングは笑っていた。
『その手段はお見通しよ。だが貴様らが飛ばせるのは2発程度のはず。130も気力が残ればワシのスキルは発動する……なにぃッ!?』
笑い顔が凍り付き、驚愕に歪む。
【ウィークン】により、4度もの脱力感がマスターファングを襲ったのだ!
ジンのレベル上がり、SPが増えていたせいもある。
そしてジンがSP回復アイテムをリリマナに用意してもらったからでもある。
「なんだ。意外と美味いじゃねぇか」
SPが50回復する【ミッドナイトポーション】の瓶を、ジンはドリンクホルダーに戻した。黒いポーションはコーラのような味だった。
『おのれ、卑怯な奴らめ! だがワシはまだ負けたわけではない!』
歯軋りしながらも吠えるマスターファング。
ジン達の――というよりMAP兵器担当のBバイブグンザリの消耗次第では、自機Sマチェットウルフを倒しきるほど合体技を出す事はできないだろう。そうなればバリアのある自分の勝ちだ。
その上、合体技は参加するメンバーがいてのもの。一機でも撃墜すればもはや使えない。
マチェットウルフが両手の蛮刀を振り上げる。
格 ブレードファング 攻撃4200 射程P1―1
二刀の刃と二本の牙が敵を八つ裂きにする獰猛な攻撃! それはナイナイのBバイブグンザリを襲った!
炸裂!
「ふん……結構痛いじゃねぇか」
だがその四つの斬撃は、割り込んだジンのBカノンピルバグが食い止めていた。
モニターに表示される情報をジンは読み取る。
(防御して威力を半減させても2000以上のダメージかよ。流石は白銀級、真正直に撃ちあうとやられるな……)
そのジン機の陰でナイナイが叫ぶ。
『今度はこっちが! トライシューっト!』
動きの止まったマチェットウルフへ撃ち込まれる光の輪。一秒と間をあけず続いて炸裂する砲弾と爪手裏剣。
叩きだされたダメージは……4800以上!
三発の同時攻撃が炸裂した瞬間、ウルフの装甲表面は黒く変色し、射撃を弾き返そうとした――これがこの機体のバリア機能である――が、一体となった威力はそれを完全に貫いた。
(ふん、やっぱり限界以上のダメージは全く防げないタイプのバリアか)
予想通りの結果を確認するジン。「減少」ではなく「無効化」と表示された時点でそんな気はしていた。これも昔遊んだゲームと同じだった。
「おのれ! だがまだ……」
『ゲッゲー』
怒りに燃えるマスターファングへ、今度はダインスケンが合体攻撃を放った。完璧な三機同時射撃がさらに白銀級機を撃つ! 再び強烈な攻撃を受けてのけぞるマチェットウルフ。
だが青銅級機なら一撃で倒される威力の攻撃を、それも二度も受けても、白銀級機は倒れないのだ。
『今度はこちらの番よな!』
マスターファングが吠え、マチェットウルフが口から反撃の衝撃波を放つ!
射 デッドハウリング 攻撃3200 射程1―6
だがそれは――Bクローリザードが身を翻して避けた。
ダインスケンのスピリットコマンド【フレア】によって。
(ぐっ……だが他の操縦者全員がそれだけの回避をできるわけでも……)
そう考えるマスターファングの前で――
ジン機とナイナイ機はしかけてこず、合体技に参加できる間合いで機会を伺っていた。
母艦Cパンゴリンは運搬作業用アームを伸ばし、援護防御でダメージを受けたジン機を修理していた。修理・補給装置として使えるアイテム【レスキューマシンナリー】は母艦に積み替えたのだ。
避けられない・耐えられない機体、撃墜されてはいけない母艦。それらはアシスト以外しない、直接ぶつかるのは生存能力のある機体だけ。そういう戦法である。
クローリザードがくいくいと人差し指で「かかってこい」と挑発する。【フレア】をもう何度か使うSPが残っている事は明らかな態度だ。
『貴様ら! 姑息な戦い方しかできんのか!?』
「お前と違って、身内に犠牲者を出したくないからよ」
怒鳴るマスターファング、悪びれないジン。
激怒したマスターファングは再び蛮刀で斬りかかった。今度はジンのピルバグへと。
今度は母艦が割り込んで食い止め、その陰からジンが反撃した。
「対応は臨機応変、かつ作戦通りにな。ほらよ……トライシュートォ!」
三機同時射撃が三度、白銀級機を抉る!
もはや残りHPは3000未満。
しかし、マスターファングは……この期に及んで笑っていた。
『よくやった……だがワシを倒しきる事はできなかったな。あと一撃……そのENはあるか? 無かろう? ならばこちらのバリアを貫ける攻撃はもう無い。ワシの勝ちだ!』
確かにBバイブグンザリにはもう20程度しかENが残っていない。MAP兵器で大量に、通常射撃武器でも少しずつENを消費する以上、他の2機より遥かに消耗は激しい。
そのグンザリが腰部カバーを開け【リカバータンク】を取り出した。ENが250回復するアイテムである。ENを回復したグンザリは、空になった【リカバータンク】を再びしまった。
なおアイテムでのEN回復は補給装置と違い気力が低下しない。
どうやら「ENがまだ残っていた」判定のようだ。
『なんでそんなに回復消耗品が好きなんじゃあ!』
「別に好きじゃねぇ。数値を上げる強化パーツで強いブツが手に入らないだけだからよ」
怒鳴るマスターファング、悪びれないジン。
『いくよ! トライ、シュートッ!』
ナイナイの声とともに三発の弾がマチェットウルフを貫く!
『な、なんという! もっと部下を連れてきていれば……!』
その呟きを残し、白銀級機・Sマチェットウルフは爆発した。
「勝ったぜ。ありがとよ」
戦闘MAPから敵の識別アイコンが全て消えてから、ジンは母艦に通信を送った。
『ああ。町へ補給班を迎えに行くとしよう』
ヴァルキュリナが事務的な口調で返信する。
が……艦が向きを変える中、遅れて通信が続く。
『……ジン。貴方なら勝ってくれると、期待はしていた』
気のせいか。声はいつもより気持ち柔らかかった。
「俺が勝ったわけでもないだろ。文句言ってやれ、ダインスケン」
『ゲッゲー』
ジンが言うとダインスケンが応えた。
徐々にコウキの町へ近づく艦へ、ジン達の乗った馬車がまっしぐら。時折飛んで来る敵の射撃武器が近くの大地を抉り、雇われ御者は悲鳴を上げて泣きそうになる。
だが艦の方もジン達の接近を察知し、敵の攻撃から庇って遮りつつ横腹のハッチを開けた。馬車はそこへ駆け込む。
格納庫に馬車が入ると、すぐにハッチは閉められた。ジン達は急いで馬車から飛び出す。
格納庫にはヴァルキュリナもいて、出て来たメンバーの中にクロカがいるのを見て声を上げた。
「彼女を連れてきてくれたか!」
「あ……シ、シシ、お久しぶり」
作り笑いを浮かべるクロカ。ヴァルキュリナとは知人のようだが、クロカの方はあまり親しみを感じていないようであった。
だがそんな事を気にせず、ジンはヴァルキュリナへ訴える。
「これ以上町に近づけないでくれ。あそこが巻き込まれる」
その脳裏では、魔王軍に襲われて負傷し、犠牲者まで出したハチマの街の人々を思い出していた。
(俺がそんな事を気にするなんてな。転移前には考えた事も無かったのに……)
自分の変化に自分で違和感を覚えるジン。
とはいえ、戦闘に巻き込まれた被害者を目の当たりにしたのがこの世界に転移した後しか無いのだ。そう思えばおかしくはないのかもしれない。
だがそこまで考えるほどの余裕は今のジンには無かった。
一方、ヴァルキュリナは難色を示す。
「まだ補給班が戻っていない。置いていくわけにはいかないから、この戦闘から逃亡はできなくなる。何が何でも勝ってもらう事になるぞ。そんな保証ができるのか?」
「おいおい、アニキが負けると思ってるのか? 白銀級には前に勝ったんだぜ」
抗議するのはゴブオだ。だがそれをジンは圧し留めた。
「それがわかって攻めてくる相手だからな。誰にも勝ちは保証できねぇ」
ジンの言葉に、一瞬、気まずい沈黙が下りた。
それを破ったのはクロカの笑い声。
「シシシ……だったら『ダメだった時は責任とってハラキリする』とでも約束すれば?」
どこか馬鹿にしたような言い方である。
だがそれを聞いたジンは――
「なんだ、そんな事でいいのか。わかった、それでいこう」
町を利用して建物を盾にした方が……地形効果として活用した方が圧倒的に楽である。
だがそれをしないばかりか、自分の命をかけるとまで言い出した。
なぜそんな事を言うのか、実はジン自身にもわからない。
(どう考えても俺らしくねぇ……)
そう思うが、確かに己が言ったのだ。
クロカにして見れば「そこまでできないだろ?」と言うからかい半分だったのである。それがあっさりと受け入れられた。
「え……マジデ?」
彼女が目を丸くするのも仕方ないだろう。
「ちょ、ちょっと、ジン!」
ナイナイが焦る。それも仕方ない事だろう。
だがヴァルキュリナは頷いた。
「了解した。ではジンの提案どおり、町にはこれ以上近づかない。補給班は敵を撃退した後に改めて合流を待つ。これが私の判断だ」
「いや、逃げられない状況で負けたらどうせ艦も落ちて死ぬし……」
クロカが焦りながら言う。
だがジンは笑いながら肩を竦めた。
「悪いな、ドワーフ娘さんよ。乗った早々腕を発揮する暇なくお終いかもな。そうなったらあの世で思う存分殴ってくれ」
「ふざけんな! 私はまだこの世に未練あるっつーの!」
怒鳴るクロカ。青筋を浮かべたままヴァルキュリナへ向き直る。
「ねぇねぇちょいと! COCPは貯まってるね? アイテム作るよ!」
今度はジンが驚く番だ。
「今この場でか!? そんなバカな……」
しかしすぐに思い直した。
(……わけでもねぇのかよ? 魔法がある世界だ、そういう物だと言われたらそうなのかもしれねぇ)
クロカはポケットから羊皮紙を取り出した。
「ほれ、私が準備している物リストだ。ここに書いてある物なら一つ30秒で作れるから!」
羊皮紙を渡されたジンはそれにざっと目を通す。
その頭上から、恐る恐る声をかけるリリマナ。
「ねぇねぇ……ジン、負けたら本当に死んじゃの?」
「そういう事になったみたいだな」
羊皮紙から顔を上げずに答えるジン。
リリマナは一瞬唇を噛むと、必死な声をあげた。
「私、そんな事させないよォ!」
言われてジンは視線をあげる。妖精の少女と目が合うと――その一生懸命な気持ちが見えて――フッとほほ笑んだ。
「ああ。頼りにしてるからよ」
「ウン!」
勢いよく頷くリリマナ。
それから何度か艦が揺れた頃。
ジン達はようやく準備を済ませ、ケイオス・ウォリアーの操縦席にいた。通信をブリッジに繋ぎ、モニター越しにヴァルキュリナへ伝える。
「待たせたな! こちらジン、出るぞ!」
ハッチが開き、ジンのBカノンピルバグが飛び出した。ナイナイ機も、ダインスケン機も。
着地して戦闘態勢をとると……眼前には十以上の敵機の姿。
『うわ……今日の敵部隊は数が多いね』
逃げる艦を追いかけてくるのは、犬頭の機体だ。
「猛獣型ケイオス・ウォリアーの中でも、この犬型の奴は生産し易いんだよ」
リリマナの説明を聞きながら、ジンは己のスピリットコマンド【スカウト】で敵の能力を探り、モニターに映し出す。
魔王軍兵 レベル10
Bダガーハウンド
HP:4000/4000 EN:170/170 装甲:1200 運動:95 照準:145
格 ダガーショット 攻撃2500 射程1―4
射 ワイルドバイト 攻撃2600 射程P1
性能的には、今までで最弱といって良かった。
「数は多いが質は伴ってねぇな。連携を強めて粘り強く戦えばなんとかなるだろうよ」
弱いといってもさほど大きく劣っているわけではない。油断は禁物である。
だが油断をしなければ、既に戦い慣れてきていたジン達が後れをとる事もない。
Cパンゴリンは町から逸れた方に移動し、ジン達3機はそれの周りを固めながら戦う。
「敵軍、北北東! 60秒後に距離5! 砲撃用意!」
ブリッジから指示を飛ばすヴァルキュリナ。何人ものクルーとともに操縦する艦は、戦況を把握・予測する能力も高い。それに基づいた指示をいかに出せるかが、この世界の艦長達の【指揮官】スキルで表されている。
指示を聞きながら目標を定め、仲間の攻撃を援護して攻撃を重ね、敵の攻撃からは互いに庇いあう。ジン機の砲撃が敵を撃ち、ダインスケン機の爪が敵を裂く。ナイナイ機はそれらを的確に援護し、艦は遠くの敵を砲撃で、肉薄してきた敵をゴブオの騎獣砲で撃った。
数は多くても各機バラバラに攻めてくる雑兵は着実に数を減らし――最後の機体がやがて倒れた。
(呆気ないな。数が多いとはいえこんな無策で攻めるなんて不自然……)
ジンが嫌な予感を覚えていると、戦闘MAPに新たな敵影が出現する! しかもさっきよりさらに多数が。
「増援か! 一気に出てきて勝負をかける気だな……」
その声を笑う者があった。
『ククク……戦力の逐次投入は悪手だからな。相手がぶつかる気になったらこちらの全てを出す。それがこのワシ、魔王軍親衛隊最強の戦士・マスターファングの戦法よ!』
声の主は増援のうちの一機。ジン達から最も遠く離れた敵陣の最奥、そこに他とは違うアイコンが表示されている。
ジンはそれに【スカウト】のコマンドを放った。
マスターファング レベル15
Sマチェットウルフ
HP:17000/17000 EN:200/200 装甲:1800 運動:100 照準:155
ブラックアイアンフィールド
射 デッドハウリング 攻撃3200 射程1―6
格 ヘッドバット 攻撃3500 射程P1
格 ブレードファング 攻撃4200 射程P1
ブラックアイアンフィールド:2000以下のダメージを無効化するバリア。
やはり白銀級機。胸部や腕部の鎧は量産機より厚く装飾も多く、両手には山刀。その頭は狼のそれで、長い牙が剝きだしている。
(今度はバリア持ちか。ある程度の火力が無ければ絶対に勝てないときやがった)
嫌気がさしながらもジンはステータス画面を切り替える……敵パイロットの能力欄へと。
マスターファング レベル15
格闘183 射撃178 技量200 防御161 回避91 命中121 SP80
ケイオス4 気力+(味方撃墜) 気力限界突破2 ガード2
気力+(味方撃墜):味方が撃破されると気力が余分に上昇
気力限界突破2:気力上限が160
ガード2:気力130以上で被ダメージ-15%
(確か……気力はふつう150が最大値だよな。なるほど……)
「数を出してくるわけだ。量産機を蹴散らしたら、親衛隊は気力限界突破すると。しかもバリアと防御系技能を併用する気満々か……」
敵隊長のステータスを確認してうんざりするシン。
一方、敵――マスターファングは声高に言った。
『そうだ。部下を倒される怒りと悲しみがワシを強くする。我が部隊の血を流した者ども、それ以上の血で償ってもらうぞ!』
「だったら捨て駒前提の戦い方をさせんな! スジが通ってねぇ!」
ジンは怒鳴ったが、もちろん敵は戦法を変えたりはしないのだ。
『どうしよう……敵を倒すほど、親衛隊が強くなっちゃうんだよね?』
「だからって倒さないわけにいかないよォ!」
うろたえるナイナイ、悲鳴みたいな声をあげるリリマナ。
動揺する声を聞きながらジンは檄を飛ばす。
「固まれ! 陣形を組んで援護し合いながら戦え!」
ここまでもその戦い方はしているが、あえてジンはそう指示を出した。
動揺するなと。自分達の戦法を変えるなと。それを伝えたかったからだ。
しかし敵に合わせ、多少の調整はする。敵の増援が真正面から数で圧そうとするが――
「場所を変えるぞ。ここだ!」
味方へ戦闘マップの座標を指示するジン。北から迫る敵の正面からズレた場所――増援の南西へ自軍を誘導した。
そんなジン達を追って、敵は北と東から襲い掛かって来る。そして両軍激突――!
『撃つよ! いっけぇ!』
僅かに速く迫っていた北側の敵へ、ナイナイ機のMAP兵器が炸裂した! インパルスウェーブに包まれた空間内で、高周波振動が敵機を砕き、耐えた機体も半壊させる。
そこへジン、ダインスケン、母艦からの攻撃が追い打ちをかけた。
だが東から脇腹をつくように残り半数が突っ込んでくる。先陣の、そして北側の部隊の仇をとらんと。
それを再び、MAP兵器・インパルスウェーブが迎え撃った。
(グフフ……勝った。大量のENを消費するMAP兵器を二発も撃った。通常戦闘も考えれば、既に一度は補給装置を使っているだろう)
後方で戦闘を窺いつつ、マスターファングは一人ほくそ笑む。
(しかし補給装置を使えば操縦者の気力は低下する! だから一つの戦闘で何度も補給し続けては、気力制限のある強力な武器は使えない!)
ケイオス・ウォリアーの表示によれば、一度の補給で気力は10低下する。
防戦しながら補給機と連結し、ENタンクや弾倉を交換する作業が、気力の持続に穴をあける故に。
機体に循環している異界流の流れが妨げられる故に。
スタミナ回復魔法の応用で造られた機能が操縦者の精神を鎮めてしまう故に。
それら故に、対象機操縦者の気力を減じる反作用がケイオス・ウォリアーの汎用補給装置にはある。
よって気力制限のある武器を持つ機体、気力が一定以上で発動するスキルの習得者は、むやみやたらと補給装置に頼る事はできないのである。
だからマスター・ファングは笑っているのだ。
(奴らの合体技……その威力でワシを倒すには5発は必要だ。ワシの高まった気力とスキル、この機体の耐久性があればな。だがやつらの機体のEN……180では最大でも4発、ましてやあれだけMAP兵器を撃っていれば3発でもギリギリだろう! だがあれ以上補給を繰り返せば気力が下がって合体技は使えん! やつらの通常武器ではガードスキルとバリアの二重防壁は破れん! 奴らには――もはやワシを倒す術は無いのだ!)
勝ちを確信するマスターファング。
戦闘マップから、彼以外の魔王軍兵士が全て消えた。
マスターファングは笑いながら言う。
『よくもやりおったな。部下達の怨念を受けるがいい』
彼の機体が重々しく歩き出した。ジン達の方へと。
だが歩きながら彼は予想外の事に気づく。
『むう? おかしい……気力が思ったほど高まらん。160に達している筈なのに、なぜ150しかないのだ?』
「MAP兵器でまとめて消された分は、一匹ずつ認識して怒ったり悲しんだりし難いんじゃねぇか?」
ジンはそう言ってやったが、別に確信があるわけではない。
ただ彼が遊んでいたゲームシリーズも、プログラムの都合上、MAP兵器で敵をまとめて倒しても他のキャラの気力には影響しない作品が多かった。ただそれだけだ。
だがマスターファングにはまだ余裕があった。
『小賢しい。しかしこれだけの気力でも、ワシの機体を鋼の塊にする事は可能だ!』
彼の防御系スキル・ガード(レベル2)の発動気力は130である。150なら十分にクリアしているのだ。
『グフフ……残弾もENも既に消耗しているだろう。MAP兵器まで派手に撃ったのではな。貴様らが合体技でなかなかの火力を出す事は知っているが、ワシを倒せるまで撃てねば意味があるまい!』
Sマチェットウルフが、いよいよ射程内に踏み込もうとしていた。
そしてジンのとった行動は。
「いくぞリリマナ!」
「任せて!」
二人そろって――「「ウィークン!!」」
敵の気力を低下させるスピリットコマンドの重ねがけである。
しかしマスターファングは笑っていた。
『その手段はお見通しよ。だが貴様らが飛ばせるのは2発程度のはず。130も気力が残ればワシのスキルは発動する……なにぃッ!?』
笑い顔が凍り付き、驚愕に歪む。
【ウィークン】により、4度もの脱力感がマスターファングを襲ったのだ!
ジンのレベル上がり、SPが増えていたせいもある。
そしてジンがSP回復アイテムをリリマナに用意してもらったからでもある。
「なんだ。意外と美味いじゃねぇか」
SPが50回復する【ミッドナイトポーション】の瓶を、ジンはドリンクホルダーに戻した。黒いポーションはコーラのような味だった。
『おのれ、卑怯な奴らめ! だがワシはまだ負けたわけではない!』
歯軋りしながらも吠えるマスターファング。
ジン達の――というよりMAP兵器担当のBバイブグンザリの消耗次第では、自機Sマチェットウルフを倒しきるほど合体技を出す事はできないだろう。そうなればバリアのある自分の勝ちだ。
その上、合体技は参加するメンバーがいてのもの。一機でも撃墜すればもはや使えない。
マチェットウルフが両手の蛮刀を振り上げる。
格 ブレードファング 攻撃4200 射程P1―1
二刀の刃と二本の牙が敵を八つ裂きにする獰猛な攻撃! それはナイナイのBバイブグンザリを襲った!
炸裂!
「ふん……結構痛いじゃねぇか」
だがその四つの斬撃は、割り込んだジンのBカノンピルバグが食い止めていた。
モニターに表示される情報をジンは読み取る。
(防御して威力を半減させても2000以上のダメージかよ。流石は白銀級、真正直に撃ちあうとやられるな……)
そのジン機の陰でナイナイが叫ぶ。
『今度はこっちが! トライシューっト!』
動きの止まったマチェットウルフへ撃ち込まれる光の輪。一秒と間をあけず続いて炸裂する砲弾と爪手裏剣。
叩きだされたダメージは……4800以上!
三発の同時攻撃が炸裂した瞬間、ウルフの装甲表面は黒く変色し、射撃を弾き返そうとした――これがこの機体のバリア機能である――が、一体となった威力はそれを完全に貫いた。
(ふん、やっぱり限界以上のダメージは全く防げないタイプのバリアか)
予想通りの結果を確認するジン。「減少」ではなく「無効化」と表示された時点でそんな気はしていた。これも昔遊んだゲームと同じだった。
「おのれ! だがまだ……」
『ゲッゲー』
怒りに燃えるマスターファングへ、今度はダインスケンが合体攻撃を放った。完璧な三機同時射撃がさらに白銀級機を撃つ! 再び強烈な攻撃を受けてのけぞるマチェットウルフ。
だが青銅級機なら一撃で倒される威力の攻撃を、それも二度も受けても、白銀級機は倒れないのだ。
『今度はこちらの番よな!』
マスターファングが吠え、マチェットウルフが口から反撃の衝撃波を放つ!
射 デッドハウリング 攻撃3200 射程1―6
だがそれは――Bクローリザードが身を翻して避けた。
ダインスケンのスピリットコマンド【フレア】によって。
(ぐっ……だが他の操縦者全員がそれだけの回避をできるわけでも……)
そう考えるマスターファングの前で――
ジン機とナイナイ機はしかけてこず、合体技に参加できる間合いで機会を伺っていた。
母艦Cパンゴリンは運搬作業用アームを伸ばし、援護防御でダメージを受けたジン機を修理していた。修理・補給装置として使えるアイテム【レスキューマシンナリー】は母艦に積み替えたのだ。
避けられない・耐えられない機体、撃墜されてはいけない母艦。それらはアシスト以外しない、直接ぶつかるのは生存能力のある機体だけ。そういう戦法である。
クローリザードがくいくいと人差し指で「かかってこい」と挑発する。【フレア】をもう何度か使うSPが残っている事は明らかな態度だ。
『貴様ら! 姑息な戦い方しかできんのか!?』
「お前と違って、身内に犠牲者を出したくないからよ」
怒鳴るマスターファング、悪びれないジン。
激怒したマスターファングは再び蛮刀で斬りかかった。今度はジンのピルバグへと。
今度は母艦が割り込んで食い止め、その陰からジンが反撃した。
「対応は臨機応変、かつ作戦通りにな。ほらよ……トライシュートォ!」
三機同時射撃が三度、白銀級機を抉る!
もはや残りHPは3000未満。
しかし、マスターファングは……この期に及んで笑っていた。
『よくやった……だがワシを倒しきる事はできなかったな。あと一撃……そのENはあるか? 無かろう? ならばこちらのバリアを貫ける攻撃はもう無い。ワシの勝ちだ!』
確かにBバイブグンザリにはもう20程度しかENが残っていない。MAP兵器で大量に、通常射撃武器でも少しずつENを消費する以上、他の2機より遥かに消耗は激しい。
そのグンザリが腰部カバーを開け【リカバータンク】を取り出した。ENが250回復するアイテムである。ENを回復したグンザリは、空になった【リカバータンク】を再びしまった。
なおアイテムでのEN回復は補給装置と違い気力が低下しない。
どうやら「ENがまだ残っていた」判定のようだ。
『なんでそんなに回復消耗品が好きなんじゃあ!』
「別に好きじゃねぇ。数値を上げる強化パーツで強いブツが手に入らないだけだからよ」
怒鳴るマスターファング、悪びれないジン。
『いくよ! トライ、シュートッ!』
ナイナイの声とともに三発の弾がマチェットウルフを貫く!
『な、なんという! もっと部下を連れてきていれば……!』
その呟きを残し、白銀級機・Sマチェットウルフは爆発した。
「勝ったぜ。ありがとよ」
戦闘MAPから敵の識別アイコンが全て消えてから、ジンは母艦に通信を送った。
『ああ。町へ補給班を迎えに行くとしよう』
ヴァルキュリナが事務的な口調で返信する。
が……艦が向きを変える中、遅れて通信が続く。
『……ジン。貴方なら勝ってくれると、期待はしていた』
気のせいか。声はいつもより気持ち柔らかかった。
「俺が勝ったわけでもないだろ。文句言ってやれ、ダインスケン」
『ゲッゲー』
ジンが言うとダインスケンが応えた。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
天才王子、引き篭もる……いや、引き篭もれない
戯言の遊び
ファンタジー
平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」
辺境に飛ばされた“元サラリーマン王子”、引き篭もるつもりが領地再生の英雄に――!
現代日本で社畜生活を送っていた青年・レオンは、ある日突然、
中世ヨーロッパ風の王国「リステリア」の第五王子として転生する。
怠惰で引き篭もり体質なレオンは、父王により“国の厄介払い”として
荒れ果てた辺境〈グレイア領〉の領主を任される。
だが、現代知識と合理的な発想で領内を改革していくうちに、
貧困の村は活気を取り戻し――気づけば人々からこう呼ばれていた。
『良領主様』――いや、『天才王子』と。
領民想いのメイド・ミリア、少女リィナ、そして個性派冒険者たちと共に、
引き篭もり王子のスローライフ(予定)は、今日もなぜか忙しい!
「平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」
社畜転生王子、引き篭もりたいのに領地がどんどん発展していく!
――働きたくないけど、働かざるを得ない異世界領主譚!
こちらは、以前使っていたプロットを再構成して投稿しています
是非、通学や通勤のお供に、夜眠る前のお供に、ゆるりとお楽しみ下さい
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる