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8 帰郷 2

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『フフフ……撃て、撃て! 黄金級機ゴールドクラス設計図を手に入れるのだ!』 
 通信機に入って来る、勝ち誇った女の声。
(指揮官だな?)
 直感的にそう思い、ジンは機体を防壁にあいた穴へ向かわせた。爆音は途切れる事なく、壁はひっきりなしに震え、煙をあげて崩れる。穴は広がる一方だ。
 ジンは穴の真ん中へ照準を合わせ、ロングキャノンを撃ち込んだ。
『なーに? まだ抵抗するお馬鹿さんがいるわけ?』
 煙を突き破って撃ち返された砲撃に対する、呆れたような驚いたような声。一瞬攻撃が止んだ。
 ジンは自機を走らせ、立ち込める煙の中を外へ躍り出る。

 まだ明るさを残した星空の下、敵は宙にいた。鳥人間といった姿のケイオス・ウォリアーが羽ばたき、空から弓を撃っていたのだ。
 機体のモニターに敵のアイコンが表示される。手前と奥に敵は二部隊。そのさらに後ろに少し形の違うアイコン……隊長機だ。

 ジンはその隊長機に言い放つ。
「つまらん小細工までしたのに、残念だったな」
『へえ。その言い草……こちらの策をかわしたの』
 その声には少々の苛立ちが感じられた。
 ジンは確信をもつ。
「やっぱりあれはお前らの差し金か……」

 攻めてきたタイミングだけでも疑う余地は無いのだが、一応、魔王軍が毒を盛ったという証拠は無い。
 そこであえて相手のせいだと決めつけて話しかけたのだが、相手は否定する気などさらさら無かったらしい。むしろ笑いを含んだ声で言う。
『別にケイオス・ウォリアーで戦わないといけないという決まりもないものね。とはいえこうなった以上、この魔王軍親衛隊最強の戦士、空戦大隊のマスターコロンが引導を渡してさしあげてよ!』

 勝利を確信する相手に、ジンは言った。
「そいつはあんたが引導渡された後の事かよ?」
 直後、壁の穴の向こうにダインスケン機・BCクローリザードとナイナイ機・BCバイブグンザリが姿を現した。3機が勢揃いである。

 しかし敵の自信は揺るがなかった。
『粋がるのはいいけどね。あの毒はそうそう治療できるものではないの。ほうら、お仲間にまだ苦しんでいる奴がいるわ』
 言われてジンは、二人の顔をモニターに表示させる。ダインスケンに変わった様子は無い。だがナイナイは――時折頭を振りながら、青い顔で何かを堪えているようだった。
「どうして……回復魔法が効いてないの?」
 ジンの肩でリリマナが焦った声をあげる。
 するとモニターに敵――マスターコロンの顔が映った。

 やはり女だ。二十代の中ぐらいだろうか?
 金髪のロングヘアに白い肌。鼻筋は通り、笑みを浮かべる唇は蠱惑的である。おそらく美人なのだろう――が、舞踏会に使うような半仮面で目元を隠しており、素顔の全てはわからない。
 彼女は嬉しそうに笑っていた。
『残念ね! あの毒は私が調合した特殊なもの。とても珍しい、必要達成値が2つある物なのよ!』
「達成値……って何だ?」
 戸惑うジンに、マスターコロンは実に楽しそうに答える。
『魔法が使えない者は知らないでしょうけど、ほぼあらゆる魔法は術者の魔力によって威力が決まるのよ。解毒する場合、毒の威力に勝つ魔力が必要なわけ。その威力に勝って毒を消せたかどうかは魔法を使った術者ならわかるの。そういった、魔力で超えるべきハードルを魔法使いの用語で『必要な達成値』と呼ぶのよ』

 いわば走り高跳びのような物だ。
 魔力が跳躍力であり、ハードルとはバーの高さ。

『けれどあの毒、麻痺させる効果と衰弱させる効果の2つがあってね! わざと威力に差をつけて、麻痺の方はそこそこの術者なら簡単に消せるよう調整してあるのよ。もう一つの、衰弱して体調不良を起こす効果は高レベルの術者でないとなかなか消せないけどね!』
 嘲笑うようなマスターコロンの声に、ジンは気づく。
(そうか……ヴァルキュリナは神官戦士とか言ってたな。専門の治療術師ほどの魔力が無いのか)
 武術と魔術の両方を学ぶマルチクラスの悲しさ、片方の技術は専門家に及ばなかったのだ。

『弱い方の効果を消せたから『解毒に成功した』と思い込んだんでしょう? そう思わせるための二重効果だもの! そして弱った体で戦闘に出て、そこで本調子じゃない事を知るわけよ! 私の攻撃に晒される、その時に!』
 勝ち誇るマスターコロン。
 ナイナイが弱々しい声をあげる。
『ごめん、ジン……気力が……力が入らない……』
 ジンは急いでナイナイのステータスを表示させる。
 モニターに出た数値によると――ナイナイの気力は50。これは戦闘可能な数値としては下限の値である。

『あらぁ? 可愛い子じゃない。丁度いいわ、私の物にしちゃいましょ。後の臭そうな二匹はブチ殺して豚の餌ね』
 弱ったナイナイを見て嬉しそうに呟くマスターコロン。
『え、やだ』
 ナイナイの顔はますます青くなるが、相手はまるで気にした様子もない。
『ダーメ。拒否権はなくてよ!』

「ジン、どうするの? 実質二人しか戦えないよォ!」
 肩の上で泣きそうな声をあげるリリマナ。
「チッ、とりあえず街から出て……」
 ジンがそう言った時、通信機から割り込む声があった。
『いや、出なくていい』
 聞きなれた声だ。それが誰なのか、ジンには一瞬でわかった。
「ヴァルキュリナ!」

 ドックから戦艦Cガストニアの巨体が足音を立てて出てくる。
『すまない。話は聞かせてもらった。私の実力不足だ』
 モニターにヴァルキュリナの顔が映った。
「それは今さらいい。それより戦えるのかよ?」
 そうジンが言ったのは、映った彼女の顔色もナイナイに劣らず悪かったからだ。疲労困憊した時のような、精力の無い顔。
『私も力が出ないな……艦の乗員も最小限だ。だから街の地形効果を利用する』
 それは街に籠り、防壁や建物を盾として利用するという事だ。
 以前の通り、ジンはそれに難色を示した。
「いや、それだと住人が巻き込まれるからよ……」

 しかし苦しいながらもヴァルキュリナは毅然と言い放つ。
『ここは国を守るための砦でもある。住人もそれは承知だ。非戦闘員は街の防空壕に避難した。そしてこの街には補給・回復に使える資材が豊富に備蓄されている。それを使いながら戦うんだ!』
 言われたジンは戦闘MAPで街の地形データを確認する。
「確かに……砦や基地としての地形効果だな、これは……」

<防衛基地>回避率:+20% 防御率:+20% HP回復:+10% EN回復:+10%

 修理や補給に使える資材も容易に入手でき、それゆえ回復効果さえある。
 さらにモニターにクロカまで映った。
『あんたらの機体の装備も再調整しておいた。BCバイブグンザリには、前みたいにレスキューマシンナリーを装備させてある。修理と補給はできるよ』
 クロカも苦しそうに汗を流していたが、そう言ってニタリと笑ってみせる。

「よし……壁の穴の所で防衛だ。近づいてきた奴の残骸で壁を埋め直してやるからよ!」
 彼女達の精一杯を目の当たりにし、ジンはこの街を利用させてもらう事にした。
 仲間二人に指示を飛ばす。
「ダインスケン! 俺と並べ! ナイナイとヴァルキュリナはその後ろで援護と修理だ!」
 穴の縁に機体を立たせ、宙を舞う敵機のデータをスピリットコマンド【スカウト】で探り、モニターへ映す。

魔王軍兵 レベル20
Bボウクロウ
HP:4000/4000 EN:170/170 装甲:1200 運動:95 照準:145
格 ダガー   攻撃2500 射程P1―1
射 ロングボウ 攻撃2600 射程1-5

「カラスが夜飛んでるんじゃねぇよ」
 言いながら照準を合わせるジン。
 巨大な矢が周囲の壁を削り、破壊する中、敵機へロングキャノンを撃ち込んだ!


 鳥空型ケイオス・ウォリアーは全て飛行可能で、敵地へ素早く攻め込むのには適している。だが反面、このタイプの量産型は脆い。
 カノンピルバグのロングキャノン一撃でほぼ瀕死、援護攻撃が重なった時には容易く撃墜された。
 対してそのロングボウはピルバグに当たっても小さな傷しかつけられない。モニターに表示されるダメージは400少々。強化の進んだ装甲と遮蔽物の多い街の地形が強固な守りとなっていた。
 撃ちあいは不利とみて街へ突っ込む機体もあるが……

「悪いな。近接武器も強化済みだからよ!」
「ケケーッ!」
 ジンのピルバグとダインスケンのクローリザードが跳び、ナイフで斬りかかる敵を叩き落とす。
 二機とも空適応はB……空中戦はできず、宙の敵への命中率は下がる。
 だが強化改造された照準値と、弱ったりとはいえ必死に敵の動向を伝達するヴァルキュリナの【指揮】技能。これらがあれば雑兵ごときにそうそう攻撃を外す二人でも無かった。
 そして二機とも、単機での最強武器は近接武器――その一撃は援護の必要さえなく、半人半鳥のケイオス・ウォリアーを容易く撃破した。


『チッ……張り切ってくれちゃって、まぁ』
 部下が次々と片付けられるのを見て顔をしかめるマスターコロン。
 ジン達の存在は知っていたが、自信作の毒を盛れば戦闘不能――無理をして戦場に出ても衰弱して気力も無し、まともに戦う事などできぬと踏んでいたのだ。
 だが三人中二人が耐え抜き、こうも抵抗するとは……は、やはり不完全だったらしい。
超個体戦闘員スーパーオーガニズムコンバタント……おかしな物を造ろうとするからこんな面倒な事に。しかも計画を任されていた奴が勇者に討たれて、細かいデータが残っていないって何よ?)
 苛々と見ているうちに、部下はほぼ全滅させられてしまった。
(流石にこちらの親衛隊を何機も葬ってきただけあるわ。仕方ない、嫌だけど私自身が手をくだしましょうか)
 戦線にたどり着く頃には部下は一機も残っていないだろうが、それは彼女にとってどうでも良かった。

 自分単機でも勝てる自信は、依然として揺らいでいなかったのだ。


 最後のボウクロウを撃墜したジンは、敵隊長機が真っすぐ飛んで来るのを機体の眼で見る。
 それにも【スカウト】を放ち、その性能を表示させた。

マスターコロン レベル23
Sフィルシーハーピー
HP:15000/15000 EN:200/200 装甲:1400 運動:110 照準:155

(機体性能は大した事ねぇな。運動性の高さが厄介か)
 今まで白銀級機シルバークラスと戦い、倒してきた事で、この程度の性能には既に動じなくなっていたジン。
 それでも敵機の長所は認めつつ、操縦者の能力も確認する。

マスターコロン
レベル23
格闘190 射撃190 技量210 防御150 回避135 命中135 SP96
特殊スキル
ケイオス4 気力+(DEF) 見切り2

※気力+(DEF):被弾・回避すると気力が余分に上昇
※見切り3LV:気力130以上で命中・回避・クリティカル率+10%

(パイロット……は、今までで最高の回避力だな。それをさらにスキルで高める、定番にして手堅い構成……と。命中にスピリットコマンドを使って一気に叩きたい所だが……ナイナイの気力が足りねぇ。どうするか……)
 戦闘によりナイナイの気力も上がってはいるが、最低の状態から始まったので、MAP兵器も合体技も使える値では無い。
 決定打を欠いたまま敵隊長機と戦わねばならない事に若干の焦りを感じつつ、ジンは敵の武器データを確認した。

射 ダーティフェザー  攻撃3000 射程1―6  気力低下1
格 ダーティクロー   攻撃3500 射程P1-2 気力低下2
格 ダーティサイクロン 攻撃4000 射程1-3  気力低下3

※気力低下1:敵の気力を5下げる
※気力低下2:敵の気力を10下げる
※気力低下3:敵の気力を15下げる

「なんだこのクソ武器は!」
 怒鳴るジン。
 マスターコロンは実に愉快だと言わんばかりの高笑いをする。
『アハハハ! ハーピーには魔力で敵を弱らせる種も多いのよ』
「普通は歌とか呪いでやるんじゃねぇのか!?」
 ジンの抗議を、彼女はフンと鼻で笑った。
『何いってるの。原点は食卓を汚して犠牲者を苦しめる魔物よ。それに倣い、敵に全力を出させないのが私の戦い方。抜けきった力の中であんた達は死ぬの! かわいそうにねぇ!』

 嘲笑いながら迫るSフィルシーハーピー。
 その足の剣呑な鉤爪がジンのBCカノンピルバグを襲った!
『ここは! せめて僕が!』
 必死に割り込み盾となる、ナイナイのBCバイブグンザリ。
 その装甲に爪が食い込む。そして爪から流し込まれる薬液が機体内で気化・拡散し、機体と感覚の多くを一体化させているナイナイにも作用した。
『う、はぁっ!』
 猛烈な吐き気に苦しむナイナイ。
 自ら割り込んだとはいえ防御態勢はとっているのに、モニターに表示されたダメージは2000に達していた。
『苦しいのは今だけよ! 後でたっぷり、気持ち良くしてあげるから!』
 高らかに笑うマスターコロン。

 しかしその機体が強烈な衝撃に打ちのめされた!
『うう!? この威力は?』
 激しい衝撃でバランスを崩し、マスターコロンは必死に体勢を立て直す。
 彼女の眼前のモニターに表示されるダメージ、4800以上……!

 ハードメイスを叩きこんだ後、BCカノンピルバグは重々しい響きをたてて着地する。
「合体技じゃなくても、まぁそこそこダメージは通るな。俺らの機体も強化されてるからよ」
 同じ値を自機のモニターで確認するジン。
『こ、この私に当てた事はまぁ褒めてやるわ……!』
「ありがとさん。だがそれ程でもねぇ」
 必死で余裕を保とうとするマスターコロンに、ジンは軽口を叩いた。

 実の所、機体の予測命中率は30~40%程度±武器の補正率である。これをヴァルキュリナの【指揮】に頼って上げた所で、60%前後ぐらいにしかならないだろう。
 そこで当然、ジンはスピリットコマンド【ヒット】によって無理やり当てたのである。

 だがそんな事はマスターコロンも薄々感づいていた。
『スピリットコマンドはSPを消耗するもの。それでこの半端な火力を当て続けるなんて、ずっと繰り返せる事ではないわ! 私を倒すまで延々と使える筈が……』
「かもな。だが俺は一人じゃないからよ」
 ジンが言うや、フィルシーハーピーを襲う影がまたも宙へ跳ぶ!

 咄嗟にハーピーは上空へ飛んだ。
 だが影――ダインスケンのBCクローリザードが宙で交差し……リザードの着地から数秒遅れ、ハーピーが墜落する! 地上近くでなんとか宙に留まったものの、胸部の装甲が大きく切り裂かれていた。
 受けたダメージはジンからの一撃と同等以上。
『こ、このトカゲ! 獣が調子に乗るんじゃない!』
 怒鳴りながらハーピーを羽ばたかせるマスターコロン。無数の羽が発射され、鋭い手裏剣となってクローリザードを襲った!

 だがクロリーザードは俊敏に飛び退き、手裏剣の乱れ撃ちをことごとく避ける。
 スピリットコマンド【フレア】による超回避力……2つのコマンドで命中と回避をどちらも100%にできるダインスケン。SPが底を尽きない短時間の間なら、白銀級機シルバークラスを圧す事さえ可能だ。

「そろそろ終わりが見えたな!」
「いっけェ!」
 ジンが再びメイスで打ちかかり、肩の上でリリマナが発破をかける。
『ひ、ひぃっ!』
 悲鳴をあげて逃げようとするマスターコロン。だが【ヒット】によって必中となったハードメイスが無情にもその背を打ちのめす。
 装甲が砕けて飛び散った。

 だが――まだハーピーは落ちなかった。
 表示されるHPは残り1000程度。瀕死である。
 だがまだ動けたのだ。

『お、おのれぇ! だけど防御にコマンドを使うSPはあるかしら!? さあ、受けなさい!』
 銀の鎧を纏う、長髪の女の貌・翼となった腕・大きな鉤爪をもつ人造魔獣。それが翼を広げて高速で回転を始めた。機体を中心に生じた竜巻が、悪意をもってジンのカノンピルバグを襲う!
 フィルシーハーピー最強の武器・ダーティーサイクロンが反撃で放たれた。
 それはジンのピルバグを覆い、包み、全身を切り裂いた!
 そして破損個所から風に乗って入り込む毒素。感覚を一体化させているジンの神経を容赦なく蝕もうとする!

「なるほど。こりゃキツイ。だがまぁ耐えられるからよ」
 振動する操縦席で呟くジン。
 表示されたダメージは3000以上、決して小さくは無い。しかし修理装置でHPを保ち続けたジン機にとって致命傷でもない。
 さらに――
『な、なんで? 奴の気力が低下しない!?』
 モニターの表示を見ながらマスターコロンは驚愕していた。
 毒の浸食により低下する筈のジンの気力はまるで減らず、130以上の高値を維持していたのだ。

 それは本人も理解していた。その原因も。
「完成していたのか。デバフ無効アイテムが」
 ジンが見た自機のステータス画面によると、装備されているアイテムに見慣れないパーツの名前が表示されている。
 クロカが精彩を欠く顔で、無理矢理ニタリと笑って見せた。
『前々から注文されてたからね。装甲とHPも上がるからジンの機体にはもってこいだろ?』

フルコーティングアーマー:装甲+300、HP+1500。敵武器の特殊効果を完全無効。

 機体の装甲は2110、最大HPは7750に達している。
 敵の量産機から掠り傷しか受けなかったのは、このアイテムによる強化もあったのだ。
「着々と進んでいるな。俺達が……勝つための下準備が」
 呟くジン。

 一方、マスターコロンは壊れる寸前の自機を急浮上させようとしていた。
(な、なんで!? 奴らの情報に基づいて、勝てる手をうった筈なのに――)
 だがその背に衝撃!
 機体が傾き、ついに地に落ちた。
『や、やったぁ……』
 疲れ切った声を漏らすナイナイ。
 ピルバグとハーピーの攻防の最中、スピリットコマンド【コンセントレーション】まで使って狙いをつけていた衝撃波の一撃。その援護攻撃が弱り切った敵機にトドメを刺したのである。
 ほぼ無の気力で撃たれた非力な射撃ではあったが、瀕死のハーピーを叩き落とす威力はなんとか足りた。

 墜落したハーピーから飛び出す脱出装置が見えた。
 ハーピーはそのまま地に伏し、そして爆発した。

『改造されたとはいえ青銅級機ブロンズクラスで、ランクBで……合体技頼りだと聞いていたのに……情報と違うじゃない……なんかズルい……』
 飛び出して転がった座席の側で、仰向けに倒れたまま呻くマスターコロン。
 ジンは一息ついてから、彼女に聞こえるよう通信機ごしに外へ声を送った。
「悪いな。あんたが聞いた時点の俺達より進歩していてよ」
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