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1章
6 商売開始 4
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武装を確認したガイは村を出て怪獣・クラスターフロッグの正面へと前進する。
勝利のみを考えるなら、村の中で家屋を盾にした方が有利だ。
そうでなくても長射程をほこる敵に真正面から近づくのは賢明とは言えない。
だがガイはそれらを承知の上で、あえて愚を冒した。
対する怪獣はガイの乗機・パンドラピルバグが射程に入るや、くるりと背中を向けた。蓮画像のごとく開いた穴から何の捻りもなく一斉発射!
無数の弾が放物線を描き、ガイ機へと降り注ぐ。
敏捷性にはいまいち欠けるピルパグは、その中にまともに巻き込まれた。
巻き起こる爆発の嵐! 炎と煙の中にガイ機は消えた‥‥。
怪獣はくるりと正面を向くと再び村へ前進する。その火力があれば、カサカ村が灰塵と化すのはあっという間だろう。
だが――怪獣のどてっ腹に光線が突き刺さった!
爆発! 高熱で貫かれ、怪獣が苦悶の声を大音響であげる。
一撃で怪獣は甚大なダメージを受けた。それは予想外の攻撃に何の防御もできなかった事もあるし、光線が大出力だったせいでもある。
その光線の発射元は‥‥怪獣の爆撃による煙が晴れた時、明らかになった。
ガイのパンドラピルバグである。
爆炎のただ中でその機体は持ち堪えたのだ。その重装甲と、二枚の大楯によって。
その盾は両肩の竹の葉のような形の大きな肩当。
光線の発射口は両肩に担いだ大砲。元一門のそれは二門に増えており、接続部分が回転して背中側にマウントされていたのだ。
元々重装甲の砲撃機体だったが、その能力はさらに特化され、堅牢にして不動の大砲と化していた。
ガイがあえて敵の攻撃を受ける位置に出たのは、相手の放火に耐える守備力を見込んだため。
そして攻撃を加えた後に生じる敵の隙をつくためだったのである。
圧倒的有利になったガイ。
しかし敵にはまだ厄介な能力があった。
怪獣が身を翻し、河に飛び込む。巨大な水柱を立ててその姿が消えた。
クラスターフロッグは両生類の怪獣だけあり、水中での行動も得意とするのである。
(逃げた? いや‥‥来る!)
モニターに映る周辺MAPで敵位置を確認するガイ。そこには水中から近づいてくる敵影が映されていた。
魔法仕掛けとはいえ光線兵器は水中に撃っても威力が大きく減衰してしまう。パンドラピルバグ最大の武器は封じられたに近い。
そして、怪獣はガイ機の最寄りの岸辺から姿を現した。
水の中から大きく跳躍し、一気に間合いをつめる気で!
フロッグというだけあり、この怪獣はカエルの跳躍力も有していたのである。
体格で上回る巨体が宙から跳び込んでくる!
だが激しい連射音とともに無数の弾丸が怪獣を迎え撃った。
それを撃つのはもちろんガイ機。
左側の盾をどけると、その手には短機関銃があった。
無数の弾が途切れる事なく撃たれ、怪獣を迎撃し、眼前の地に落とす。
最強の武器が長距離砲なら、敵が接近戦を挑むのは道理。
ならばそれに対する備えも有って当然。
中距離を制圧するため、威力では劣るが連射の利く火器もパンドラピルバグは装備していた。
それでも強靭な生命力に支えられ、怪獣はまだ生きていた。
そして間合いを詰める事自体には成功しているのだ。目の前のガイ機に向かい、クラスターフロッグは両手を振り上げ掴みかかった。
だが接近された時の備えがある事は前述の通り。
そしてそれは一つでは無かった。
カウンターに近い形でピルバグの拳が叩き込まれる!
変形前のBカノンピルバグにも備わっていた近接武器、拳に備わった可動式のナックルガード。それがパンドラピルバグの右拳にも有り、強化された出力で敵をブン殴る事ができる。
既に焼かれ、ハチの巣にされた体に、ずしりと重い拳のストレートは致命的であり‥‥クラスターフロッグは文字通りカエルの潰れるような断末魔をあげて、後ろに倒れた。
――カサカ村――
「え? また逃げたって!?」
「すいません。戦えば意外と強いんですな‥‥」
驚くガイと申し訳なさそうな村長は、全身に火傷を負ってぴくぴくうごめく村の戦士達――ウスラを含む元敗残兵――を見渡す。瀕死の彼らには女神官のリリと村の尼僧ディアが必死に回復魔法をかけて回っていた。
彼らは酔っぱらって倒れたマスターキメラをふん縛ろうとしたのだが、返り討ちかつ一網打尽にされてしまったのである。
(考えてみれば、あいつとまともに戦った事は無かったからなぁ。実力は全然知らなかった‥‥)
苦く思うガイに、女魔術師のララが声をかけてきた。
「頭の悪い酔っ払いだとしか思えなかった相手だから仕方がない。過ぎた事は次回の反省にしよう」
「あのな‥‥無傷でいけしゃあしゃあとそういう事を言うか?」
苦々しく言うガイに、ララはいけしゃあしゃあと言い続ける。
「後衛だからたまたま無傷だっただけ。私がケガしても皆が助かるわけじゃない。私の魔法は効かなかったけど、攻撃が通じなかったのは皆同じ。だから私は何も悪くない。私は悪くない」
「まぁそうかもだけどよ‥‥!」
苦々しく認めるガイに、ララはいけしゃあしゃあと言い続ける。
「じゃ寝床よろしく。来たばかりで私とリリには宿が無い。ガイが今住んでいる所にタダで間借りするから」
「却下アァ!」
さすがにガイとてそれは認めなかった。
勝利のみを考えるなら、村の中で家屋を盾にした方が有利だ。
そうでなくても長射程をほこる敵に真正面から近づくのは賢明とは言えない。
だがガイはそれらを承知の上で、あえて愚を冒した。
対する怪獣はガイの乗機・パンドラピルバグが射程に入るや、くるりと背中を向けた。蓮画像のごとく開いた穴から何の捻りもなく一斉発射!
無数の弾が放物線を描き、ガイ機へと降り注ぐ。
敏捷性にはいまいち欠けるピルパグは、その中にまともに巻き込まれた。
巻き起こる爆発の嵐! 炎と煙の中にガイ機は消えた‥‥。
怪獣はくるりと正面を向くと再び村へ前進する。その火力があれば、カサカ村が灰塵と化すのはあっという間だろう。
だが――怪獣のどてっ腹に光線が突き刺さった!
爆発! 高熱で貫かれ、怪獣が苦悶の声を大音響であげる。
一撃で怪獣は甚大なダメージを受けた。それは予想外の攻撃に何の防御もできなかった事もあるし、光線が大出力だったせいでもある。
その光線の発射元は‥‥怪獣の爆撃による煙が晴れた時、明らかになった。
ガイのパンドラピルバグである。
爆炎のただ中でその機体は持ち堪えたのだ。その重装甲と、二枚の大楯によって。
その盾は両肩の竹の葉のような形の大きな肩当。
光線の発射口は両肩に担いだ大砲。元一門のそれは二門に増えており、接続部分が回転して背中側にマウントされていたのだ。
元々重装甲の砲撃機体だったが、その能力はさらに特化され、堅牢にして不動の大砲と化していた。
ガイがあえて敵の攻撃を受ける位置に出たのは、相手の放火に耐える守備力を見込んだため。
そして攻撃を加えた後に生じる敵の隙をつくためだったのである。
圧倒的有利になったガイ。
しかし敵にはまだ厄介な能力があった。
怪獣が身を翻し、河に飛び込む。巨大な水柱を立ててその姿が消えた。
クラスターフロッグは両生類の怪獣だけあり、水中での行動も得意とするのである。
(逃げた? いや‥‥来る!)
モニターに映る周辺MAPで敵位置を確認するガイ。そこには水中から近づいてくる敵影が映されていた。
魔法仕掛けとはいえ光線兵器は水中に撃っても威力が大きく減衰してしまう。パンドラピルバグ最大の武器は封じられたに近い。
そして、怪獣はガイ機の最寄りの岸辺から姿を現した。
水の中から大きく跳躍し、一気に間合いをつめる気で!
フロッグというだけあり、この怪獣はカエルの跳躍力も有していたのである。
体格で上回る巨体が宙から跳び込んでくる!
だが激しい連射音とともに無数の弾丸が怪獣を迎え撃った。
それを撃つのはもちろんガイ機。
左側の盾をどけると、その手には短機関銃があった。
無数の弾が途切れる事なく撃たれ、怪獣を迎撃し、眼前の地に落とす。
最強の武器が長距離砲なら、敵が接近戦を挑むのは道理。
ならばそれに対する備えも有って当然。
中距離を制圧するため、威力では劣るが連射の利く火器もパンドラピルバグは装備していた。
それでも強靭な生命力に支えられ、怪獣はまだ生きていた。
そして間合いを詰める事自体には成功しているのだ。目の前のガイ機に向かい、クラスターフロッグは両手を振り上げ掴みかかった。
だが接近された時の備えがある事は前述の通り。
そしてそれは一つでは無かった。
カウンターに近い形でピルバグの拳が叩き込まれる!
変形前のBカノンピルバグにも備わっていた近接武器、拳に備わった可動式のナックルガード。それがパンドラピルバグの右拳にも有り、強化された出力で敵をブン殴る事ができる。
既に焼かれ、ハチの巣にされた体に、ずしりと重い拳のストレートは致命的であり‥‥クラスターフロッグは文字通りカエルの潰れるような断末魔をあげて、後ろに倒れた。
――カサカ村――
「え? また逃げたって!?」
「すいません。戦えば意外と強いんですな‥‥」
驚くガイと申し訳なさそうな村長は、全身に火傷を負ってぴくぴくうごめく村の戦士達――ウスラを含む元敗残兵――を見渡す。瀕死の彼らには女神官のリリと村の尼僧ディアが必死に回復魔法をかけて回っていた。
彼らは酔っぱらって倒れたマスターキメラをふん縛ろうとしたのだが、返り討ちかつ一網打尽にされてしまったのである。
(考えてみれば、あいつとまともに戦った事は無かったからなぁ。実力は全然知らなかった‥‥)
苦く思うガイに、女魔術師のララが声をかけてきた。
「頭の悪い酔っ払いだとしか思えなかった相手だから仕方がない。過ぎた事は次回の反省にしよう」
「あのな‥‥無傷でいけしゃあしゃあとそういう事を言うか?」
苦々しく言うガイに、ララはいけしゃあしゃあと言い続ける。
「後衛だからたまたま無傷だっただけ。私がケガしても皆が助かるわけじゃない。私の魔法は効かなかったけど、攻撃が通じなかったのは皆同じ。だから私は何も悪くない。私は悪くない」
「まぁそうかもだけどよ‥‥!」
苦々しく認めるガイに、ララはいけしゃあしゃあと言い続ける。
「じゃ寝床よろしく。来たばかりで私とリリには宿が無い。ガイが今住んでいる所にタダで間借りするから」
「却下アァ!」
さすがにガイとてそれは認めなかった。
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