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1章
7 冥界の刺客 4
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迫る敵機の足音を聞きながら村の工場に駆け込むガイ。
鍛冶屋のイアン爺さんが、既に四機のケイオス・ウォリアー全てを発進できるよう準備してくれていた。
「ガイ殿! どれで出撃するんじゃ?」
「‥‥こいつだ」
ガイは縄梯子を掴んで機体に乗り込む。
「待ってぇ」
その肩にイムが舞い降りた。そしてハッチが閉まり、機体に火が入る。
――工場の外――
魔王軍魔怪大隊親衛隊マスターボーン‥‥彼は村に乗り込んできた自機へ駆け寄った。くすんだ銀色の鎧を纏い、三角フードの中に髑髏の顔を持つ禍々しい人造巨人へ。
彼の機体は主目の前に来て膝をつく。ハッチが開くと、操縦席にいるのは一体のゾンビ。機体を遠隔召喚するため、マスターボーンは操縦用のゾンビを配置していたのである。
操縦席に乗り込んだマスターボーンは、用済みになったゾンビを外へ蹴り出した。
「ふん、私が本気を出せば村一つなど半日も持たんわ」
そう言うとハッチを閉める。
その時、工場の外にガイの機体が出てきた。重装甲の砲撃機、ダンゴムシの頭を持つBカノンピルバグが。
『ふん、たかが青銅級機で‥‥なにィ!?』
嘲り笑うマスターボーンが途中から驚愕した。
ガイ機の目の前に渦が生じたかと思うと、そこから花吹雪が舞ったのだ。
それが収まった時、ダンゴムシ頭の砲撃機は増加された装甲と大きな肩当を装備し、姿を一変させていた。
初めて見る現象を前に何度も瞬きしたものの、マスターボーンは気を取り直して叫ぶ。
『ええい、たかが増設パーツをつけたぐらいで! この白銀級機Sネクロリッチによって増幅された我が魔術に太刀打ちできるものか』
彼の機体が杖を高々と掲げる。その先端が妖しく緑色に輝いた。
機体の周囲で地面がぼこぼこと盛り上がり、地割れが生じる。そこから現れる巨大な影。それも二体。
骸骨である。家屋より大きな魔物の骸骨。
その形を見てガイが思わず叫んだ。
「あれは今まで倒した怪獣!?」
『そうだ。我が魔術は巨大サイズの魔物さえ容易く生ける屍として操る事ができるのだ』
自信満々のマスターボーン。
彼はガイに敗れた怪獣達を不死の魔物として再生したのである。
が、ちょっと顔を顰めた。
『‥‥しかしスケルトンになるとは?』
巨大なゾンビが出てくる筈だったのだが‥‥。
その答えはガイから返ってきた。
「肉とか臓器は全部素材として回収したからな。一部に骨も含んで」
なるほど、スケルトンになるわけである。言われてよく見れば骸骨のあちこちが欠けている。
魔物の爪や歯、角などは武具や魔法道具の素材としてはポピュラーな物なのだ。
ちょっと苛つくマスターボーン。
『クッ、無駄のない奴! だが半壊スケルトンでも一時の攻撃手段としては成立する!』
屍の保存状況も不死の魔物の作成には結構影響する。しかしガイ機を撃破するまで動けばいいので、マスターボーンはいっそ最初から全力での攻撃を命じる事にした。
勝利とともに骸骨怪獣どもが砕け散ろうと、どうせこの村にはガイ以外に抵抗できる奴などいないのだ。
実際、攻撃手段としては有効だった。
ガイの乗っている機体——パンドラピルバグは敏捷性に劣る事もあり、二体の骸骨怪獣どもを避けて動く事はできない。逆に掴みかかられ、激しい殴打を受ける事となった。
しかも単純なパワーは生前以上だ。
打ちのめされるガイ機を見て高らかに笑うマスターボーン。
『ふはは、どうだ! そいつらの相手をしていてはこちらに対処できまい! だが私は何度でもそいつらを操って蘇らせ、貴様を攻撃させる事ができるのだ! 私は無敵だぁ~』
そう‥‥彼の言う通り、もし骸骨怪獣どもが倒されても再度復活させるだけだ。機体によって増幅された彼の魔力はそれを可能にしている。彼のMPが尽きるまで、不死の怪獣どもは文字通りの不死と言えよう。
舌打ちするガイ。
「多勢に無勢とはいい趣味してやがる」
『負け惜しみは聞こえんな~』
とても嬉しそうに言い返すマスターボーン。ふざけて耳に手を当て、よく聞こうというポーズまで取る。
直後、彼の機体が強烈な光線に撃ち抜かれた!
『うぎゃあー!』
マスターボーン、吹っ飛ぶ機体の中で絶叫!
怪獣の殴打を盾の陰でしのぎつつ、ガイが操縦席で呟く。
「魔術師だから離れての撃ちあいを仕掛けてくると思ったぜ」
ガイが長射程の機体を選んだ理由。それは敵の得意レンジを予想し、それに合わせるためだったのだ。
後衛の魔術師を射撃武器で狙うのは、この世界に古くからある定石の一つである。
だがしかし。
煙を上げる機体を立ち上がらせつつ、マスターボーンは笑っていた。
『く、く、く‥‥それで勝てるつもりか?』
その言葉とともに‥‥高熱で穿たれたSネクロリッチの装甲が、徐々にではあるが塞がってゆくではないか!
「再生能力!?」
驚くガイにマスターボーンが勝ち誇った。
『理解したか? 魔王軍親衛隊の強大さを!』
魔術師系クラスが虚弱であろうと、それの乗る機体は装甲・耐久性に優れる高性能機だった。
鍛冶屋のイアン爺さんが、既に四機のケイオス・ウォリアー全てを発進できるよう準備してくれていた。
「ガイ殿! どれで出撃するんじゃ?」
「‥‥こいつだ」
ガイは縄梯子を掴んで機体に乗り込む。
「待ってぇ」
その肩にイムが舞い降りた。そしてハッチが閉まり、機体に火が入る。
――工場の外――
魔王軍魔怪大隊親衛隊マスターボーン‥‥彼は村に乗り込んできた自機へ駆け寄った。くすんだ銀色の鎧を纏い、三角フードの中に髑髏の顔を持つ禍々しい人造巨人へ。
彼の機体は主目の前に来て膝をつく。ハッチが開くと、操縦席にいるのは一体のゾンビ。機体を遠隔召喚するため、マスターボーンは操縦用のゾンビを配置していたのである。
操縦席に乗り込んだマスターボーンは、用済みになったゾンビを外へ蹴り出した。
「ふん、私が本気を出せば村一つなど半日も持たんわ」
そう言うとハッチを閉める。
その時、工場の外にガイの機体が出てきた。重装甲の砲撃機、ダンゴムシの頭を持つBカノンピルバグが。
『ふん、たかが青銅級機で‥‥なにィ!?』
嘲り笑うマスターボーンが途中から驚愕した。
ガイ機の目の前に渦が生じたかと思うと、そこから花吹雪が舞ったのだ。
それが収まった時、ダンゴムシ頭の砲撃機は増加された装甲と大きな肩当を装備し、姿を一変させていた。
初めて見る現象を前に何度も瞬きしたものの、マスターボーンは気を取り直して叫ぶ。
『ええい、たかが増設パーツをつけたぐらいで! この白銀級機Sネクロリッチによって増幅された我が魔術に太刀打ちできるものか』
彼の機体が杖を高々と掲げる。その先端が妖しく緑色に輝いた。
機体の周囲で地面がぼこぼこと盛り上がり、地割れが生じる。そこから現れる巨大な影。それも二体。
骸骨である。家屋より大きな魔物の骸骨。
その形を見てガイが思わず叫んだ。
「あれは今まで倒した怪獣!?」
『そうだ。我が魔術は巨大サイズの魔物さえ容易く生ける屍として操る事ができるのだ』
自信満々のマスターボーン。
彼はガイに敗れた怪獣達を不死の魔物として再生したのである。
が、ちょっと顔を顰めた。
『‥‥しかしスケルトンになるとは?』
巨大なゾンビが出てくる筈だったのだが‥‥。
その答えはガイから返ってきた。
「肉とか臓器は全部素材として回収したからな。一部に骨も含んで」
なるほど、スケルトンになるわけである。言われてよく見れば骸骨のあちこちが欠けている。
魔物の爪や歯、角などは武具や魔法道具の素材としてはポピュラーな物なのだ。
ちょっと苛つくマスターボーン。
『クッ、無駄のない奴! だが半壊スケルトンでも一時の攻撃手段としては成立する!』
屍の保存状況も不死の魔物の作成には結構影響する。しかしガイ機を撃破するまで動けばいいので、マスターボーンはいっそ最初から全力での攻撃を命じる事にした。
勝利とともに骸骨怪獣どもが砕け散ろうと、どうせこの村にはガイ以外に抵抗できる奴などいないのだ。
実際、攻撃手段としては有効だった。
ガイの乗っている機体——パンドラピルバグは敏捷性に劣る事もあり、二体の骸骨怪獣どもを避けて動く事はできない。逆に掴みかかられ、激しい殴打を受ける事となった。
しかも単純なパワーは生前以上だ。
打ちのめされるガイ機を見て高らかに笑うマスターボーン。
『ふはは、どうだ! そいつらの相手をしていてはこちらに対処できまい! だが私は何度でもそいつらを操って蘇らせ、貴様を攻撃させる事ができるのだ! 私は無敵だぁ~』
そう‥‥彼の言う通り、もし骸骨怪獣どもが倒されても再度復活させるだけだ。機体によって増幅された彼の魔力はそれを可能にしている。彼のMPが尽きるまで、不死の怪獣どもは文字通りの不死と言えよう。
舌打ちするガイ。
「多勢に無勢とはいい趣味してやがる」
『負け惜しみは聞こえんな~』
とても嬉しそうに言い返すマスターボーン。ふざけて耳に手を当て、よく聞こうというポーズまで取る。
直後、彼の機体が強烈な光線に撃ち抜かれた!
『うぎゃあー!』
マスターボーン、吹っ飛ぶ機体の中で絶叫!
怪獣の殴打を盾の陰でしのぎつつ、ガイが操縦席で呟く。
「魔術師だから離れての撃ちあいを仕掛けてくると思ったぜ」
ガイが長射程の機体を選んだ理由。それは敵の得意レンジを予想し、それに合わせるためだったのだ。
後衛の魔術師を射撃武器で狙うのは、この世界に古くからある定石の一つである。
だがしかし。
煙を上げる機体を立ち上がらせつつ、マスターボーンは笑っていた。
『く、く、く‥‥それで勝てるつもりか?』
その言葉とともに‥‥高熱で穿たれたSネクロリッチの装甲が、徐々にではあるが塞がってゆくではないか!
「再生能力!?」
驚くガイにマスターボーンが勝ち誇った。
『理解したか? 魔王軍親衛隊の強大さを!』
魔術師系クラスが虚弱であろうと、それの乗る機体は装甲・耐久性に優れる高性能機だった。
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