フェアリー・フェロウ~追い出されたフーテン野郎だが、拾い物でまぁなんとか上手くいく~

マッサン

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1章

8 山中の死闘 2

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――なんだかんだでまた数日経過――


 村人、難民、敗残兵、召喚スケトルン。皆の働きで山中の隠し畑もほぼ形になりつつあった。
 そこへ通じる藪の中の道――前もって知らなければ道だと見抜くのは至難の通路――の入り口にて、ガイは村長とタゴサックにカモフラージュした地面の板と藪の中の鋼線を見せる。
 首を傾げる村長コエトール。
「ガイ殿、これは?」
トラップだよ。見つかりたくないんだろ? 役人が来なさそうな所に畑を作るのは当然として、近づいたら妨害もするんだ」
 説明し、板と鋼線を配置する。もはや素人目ではどこにあるのか判別する事は不可能だ。

 感心するタゴサック。
「さすがガイ殿! お上の犬を生かして返さぬわけですな!」
「違うよ! 警報と移動壁を併用して、近づかれたら通り道を壁で塞ぐんだよ!」
 声を荒げながらも、ガイは二人を道の奥へ連れて行った。

 そこでは鍛冶屋のイアンが地面に金属のレールを埋め込んでいる。その上を滑車で動く、藪に見せかけた壁も。
「このレール、土で埋まらないように普段から管理するんだぜ」
 ガイが注意すると、タゴサックは嬉しそうに何度も頷く。
「そして近づいた犬どもを藪の向こうから竹槍で急所へ一撃……」
「じゃねーよ! 麓へUターンする獣道っぽい通路をわざと見える所に作って誘導するんだよ!」
 ガイは怒鳴りながら元来た方向――道の出入り口を指さした。


 隠し畑へ通じる道の入り口に隠された板。それをある程度以上の重量で踏むと、鋼線で引っ張られて畑のすぐ傍で鳴子が音を出す。これは警報装置の一種だ。
 藪の中の道は細く曲がりくねっているので、通過にはある程度の時間がかかる。その間に畑への出口を藪の壁で塞げば、そこは行き止まりにしか見えない。
 その脇に人が通る事のできる空間を用意しておけば、侵入者は畑に気づく事なく追い払われてしまう……という複合罠なのだ。

 ガイの職業クラス工兵エンジニアは、本来は軍のために現場で建築や工作に従事するものである。その訓練を積んだガイにとって、今回の仕事は得意分野なのだ。


 感心する村長に、感心と不満がない混ぜのタゴサック。
 そんな二人を前にするガイの肩が、後ろからつつかれた。

「師匠。畑の方ですが」
 弟子のスティーナである。
「今度はそっちか。村長が違法のヤクでも植えたのか?」
「いや、そんな覚えは……」
 ガイの言葉に戸惑う村長。
 少し困った表情のスティーナ。
「師匠は村人をあまり信用していませんね。まぁでもそうじゃなくて、今から植える作物なんですが」
「俺も選別に加わったけど、どうかしたか?」
 そう訊きながらもガイはスティーナとともに畑へ向かった。


 畑は既にほぼ完成しており、側溝掘りをシロウの召喚するスケルトン軍団が行っている。杖の先端が地面を叩く度に次々とスケルトンが生まれるのだが――細い手足でスクワットしながら繰り返し尻を地面に突き刺しているようにしか見えない。

 その傍でスティーナは既に植えられている植物を指さす。
「カエンタケがありますね。かなり強い毒キノコの」
「まぁ火属性の素材になるからな……」
 赤く細長い、傘の無いキノコを腕組みして眺めるガイ。

 さらにスティーナはくるくる巻いた赤い花弁の花を指さす。
「ヒガンバナもありますね。これも毒性の」
「まぁ闇属性の、即死系の素材になるからな……」
 曼珠沙華まんじゅしゃげとも呼ばれる植物を眺めるガイ。

 さらにスティーナは青々とした柑橘類の木を指さす。
「ジャバラで聖属性も賄えますね」
「まぁ飲食物用に採ってきた物なんだがな……」
 そう言いつつミオンの悪戯っぽい微笑を思い浮かべるガイ。

 さらにスティーナは畑をぐるりと見渡す。
「他にもいろいろ、ほぼ全属性の素材がありますが。これ全部、この山とかその近辺で採れた物ですか?」
「……不自然なのはわかってるよ。こんな狭い範囲で都合よく揃うわけないもんな。ほんと、どうなってるんだろ」
 ガイは己の肩を見た。

 そこに座っていたイムが、大きな瞳でガイを見上げる。
 どれもこれもイムが見つけた物ばかりなのだ。
「ガイ、嬉しい?」
「ああ……まぁ役に立つしさ。感謝してるぜ」
 ガイがそう答えると、イムは照れ臭そうに「えへへ」と笑った。

 だがふと何かに気づいたように顔を上げる。
 そしてふらふらと飛び立ち、山の奥へと向かって行くではないか。
「イム? どうしたんだ?」
 ガイが声をかけてもイムは隠し畑からさらに山奥へと飛んでいく。声が届いた様子もない。
 不思議に思いながらガイはイムの後を追った。彼女は頭ほどの高さを飛んでおり、追いかける事はできる。


 しばらく山の中を追うと、やがて拓けた場所に出た。
 広場のような場所があり、そこだけ木が生えていない。やわらかな日差しは差し込んでおり、足首程度の草が生え、広場の中央には茸が輪を描いている。

 その中央にイムは着地していた。
 そこでガイへと振り向く。
「ここに来て」
 イムの手には破れた葉っぱの破片が握られていた。
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