フェアリー・フェロウ~追い出されたフーテン野郎だが、拾い物でまぁなんとか上手くいく~

マッサン

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1章

9 来訪者達 4

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 蛇鱗の鎧を纏ったがごとき、緑色に輝く爬虫類の鱗と獣毛の皮に覆われた体。顔は人のままだが、頭には山羊のような捻じれた角が生えている。

 キマイラ獣人の戦闘形態バトルフォームに変身したマスターキメラが叫んだ。
「今こそ見せてやるぞ。魔王軍・陸戦大隊、最強の精鋭と言われた私の力をな!」
 その右拳が高熱に輝き燃え上がる。
「受けろ炎の牙! ブレイズボルトーー!!」
 声高に叫び、体重を乗せた正拳を繰り出した。
 拳に宿った火炎が閃光のようにほとばしる!

 ガイは腰を落として聖剣で受け止めた。
 炎は爆発し、ガイを吹き飛ばす!
 煙をあげて地面を転がるガイ。

「師匠!」
「ガイ殿!」
 村長と弟子のスティーナがガイを案じて叫ぶ。
 その前で、ガイはよろめきながらなんとか立ち上がった。
 だが……ダメージが小さくないのは誰の目にも明らかだ。

「フッ……よくぞ受け止めた。だが後何発防げるかな?」
 余裕の笑みを浮かべるマスターキメラ・レレン。
 この女幹部を睨みながら、ガイは荒い息を吐いていた。
(こいつ、マジで強かったのか! ダメだ、守りを固めてもそれごと潰される!)

 声高に呼びかけるマスターキメラ。
「その木刀の威力が私に通じるかな? 見せてみろ!」
「クッ……!」
 唇を噛んでガイは聖剣を構える。先ほど怨霊を一撃で倒した剣技の構えを。
 対するマスターキメラは再び拳に炎を宿す。

 ガイが走った!
 炎が打ち出された!
 けんけんの激突――!


 炎が爆発し、ガイは再び地面を転がった。
 それを見下ろすマスターキメラは……立っている。
 そして笑っている。
「誉めてやるぞ。我が炎の拳とこうも渡り合った事をな」
 そう言いながら、自分の肩についた傷を横目で確かめた。

 互いに一撃を加えあいはしたのだ。
 その差が雲泥ではあるが。

 ガイの元パーティメンバー三人もこの戦闘を見ていた。
「ガイが……やられる?」
 おののきながら女魔術師ララが呟く。
 マスターキメラがそちらに目をやった。
「見知った顔があるな。命乞いするなら今のうちと言っておこう」


 三人は奇麗に膝をついて懇願した。
 女神官のリリが――
「命だけはお助けを!」
 重戦士のウスラが――
「忠誠を誓います」
 そしてララが――
「なんなりとご命令を」
 見事に一致した意志を表明する。


「えっ!? もう掌返すの!?」
 驚愕するマスターキメラ。
 自分で言いはしたものの、まさかこうも早いとは思わなかったのだろう。
「せめて師匠が高位呪文の珠紋石じゅもんせきを使ってからにしなさいよ」
 呆れるスティーナ。正直、喋るのが嫌そうだ。

『こうなればスケルトン軍団で……』
 シロウが唸り、尻――杖の先端で地面を突いた。
 途端にぼこぼこと地の下から骸骨が這い出して来る。
「通じるわけないから引っ込めて」
 スティーナは迷惑そうだったが。


 再びよろめきながら立ち上がるガイ。
 しかしその手には既に珠紋石じゅもんせきが……水領域魔法【ディープ・フリーズ】を発生させる結晶が握られていた。

【ディープ・フリーズ】水領域第5レベルの攻撃魔法。敵の全細胞を冷却し、粉々に粉砕する、極めて強力な破壊呪文。

 漂う凍気を感じ、マスターキメラは「ふん」と鼻を鳴らした。
「残念だったな。炎を使うからといって、私は氷属性に弱いというわけではないのだ」
「そうなのか? でも炎を使うけど炎属性は効くんだよな。以前、炎の魔法で不様にやられていたし……」
 かつての戦いを思い出すガイ。

 マスターキメラは青筋立てて怒った。
「無様言うな! 炎属性なら半減するわ! 特定属性50%カットの防具とかあったらお前ら冒険者は涎たらして欲しがるだろ! なめんな!」
「まぁそうだけどさ。氷属性ならそれよりは効きそうだし、やっぱりこれで!」
 ガイは珠紋石じゅもんせきの狙いをつける。その周囲に氷の結晶が舞った。
 村長が期待に目を輝かせる。
「おお、いけそうですぞ!」

 だがしかし。
「そう思うか? ならば教えてやろう。私にはさらに奥の手があると。この……私の全異界流ケイオスを籠めて放つ最大の拳、ブレイズプラズマがな!」
 マスターキメラは拳を腰だめに構えた。再び拳に光と熱が宿る。
 そして正拳を繰り出す……が、今度は熱線が放射状に走った!
 ガイの視界を炎の閃光が縦横に駆け巡り、埋め尽くす。

「なにィ!?」
 圧倒されながらも本能的に珠紋石じゅもんせきを投げつけるガイ。

 もしそうしなければ死んでいただろう。

 一帯が熱線に蹂躙され、高熱であちこちの地面が弾け飛ぶ。
 村人達は悲鳴をあげ、頭を抱えて退いた。


 炎が収まる。
 大地を焦がし、あちこちで煙をあげさせながら。
 その中央で、ガイは三度みたび倒れていた。全身から無残にも煙をあげながら。
 それを見下ろすマスターキメラは、今度はどこにもダメージを受けていない!
「勝負あったな」
 確信してそう呟く。


「し、師匠!」
 泣きそうな声をあげるスティーナ。
『うおぉ……俺のスケルトン軍団が……』
 泣きそうな声をあげるシロウ。
 余波だけで10体ほどいた骸骨は全て粉々になっていた。

 だがしかし。
「なにィ!?」
 マスターキメラが驚愕する。

 ガイがゆっくりと起き上がって来たのだ。
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