フェアリー・フェロウ~追い出されたフーテン野郎だが、拾い物でまぁなんとか上手くいく~

マッサン

文字の大きさ
46 / 147
1章

9 来訪者達 5

しおりを挟む
 ガイはゆっくりと起き上がって来た。
 あちこちに火傷を負い、服も焦げ目と泥で汚したまま、「ふう」と小さく溜息をつく。
「首の皮一枚て所だが……まだギリ、なんとかなってる」

 そう言いながら、ガイは手にした木刀――聖剣から自分に活力が流れ込むのを感じていた。
 装備した者の傷を癒す【自動回復ヒーリング能力】を持つ武具が希少ながら有る……この聖剣もその一つだったのだ。
 おかげでなんとか、致命傷を免れた。

 それを見ぬけたわけではないが、ガイが生きている事は確かなのだ。マスターキメラが叫ぶ。
「クッ……ならば改めてトドメを刺すまで! 剣もアイテムも通じないお前には打つ手はあるまい!」
 そう言われたガイは……聖剣の峰をなにやら眺めていた。
 訝しむマスターキメラ。
「何をしている。今さら木刀に別の能力でもあると言うのではあるまいな」

「このくぼみがちょっと気になってな」
 ガイの言う通り、柄のすぐ上……刀身の付け根あたりに半球状のくぼみがあるのだ。
 遠目にそれを見たスティーナが小首を傾げる。
「何かを入れる穴でしょうか」

(入れる物と言ったって……)
 少し考え、ガイは腰の鞄から珠紋石じゅもんせきを取り出した。これは【アイスボール】の呪文効果がある結晶である。

【アイスボール】水領域第4レベルの攻撃呪文。球状の範囲内に煌めく氷の結晶を大量に含んだ凍気が吹き荒れる。

 しかしガイはそれを投げつけず、聖剣の穴にセットした。
 実になんともピッタリ嵌る。
 すると剣から無機質な声が響くではないか。
『アイスボール』
「何その声!?」
 驚くマスターキメラ。

 その眼前で、聖剣が煌めく氷の結晶を含む白い輝きに包まれた。
 ガイは新たな力を得た聖剣を構えて踏み込む。
「氷球・一文字斬り!」
 凍気を帯びた剣筋が襲いくる中、マスターキメラは慌てて最大の奥義を放った。
「くっ!? ブレイズプラズマー!」


 熱線と凍気の激突!
 それは爆発を起こして互いをかき消しあう。
 しかし威力全てを無にする事はできず――


 ガイは新たな傷を負い、吹き飛ばされていた。
 だが転倒する事なく着地し、なんとか踏み止まる。荒い息を吐きながらも、聖剣の【自動回復ヒーリング能力】で傷が癒えるのを待った。

 マスターキメラも吹き飛ばされていた。
 彼女もたたらを踏みつつ持ち堪えるが、その顔には焦りと驚愕がありありと浮かんでいる。

「二つの威力が一つに……?」
 唸るマスターキメラ。
 ガイの手元では、聖剣にはめ込んだ珠紋石じゅもんせきが粉となって砕けていた。ガイは「ふう」と溜息一つ。
「やっぱ壊れるのか。でも威力が上乗せされるのは助かるな」


 マスターキメラは改めて身構える。その拳に光と熱がまたも宿った。
「クッ……よくぞ互角に達した。ならば後は地力の勝負」
 一方、ガイは。
 聖剣の峰をまた眺めていた。
「穴はな。今度は両方に入れてみるか」
「えっなにそれズルい!」
 思わず叫ぶマスターキメラ。

 もちろん構わず、ガイは珠紋石じゅもんせきを二つ取り出す。さっきと同じ物をもう一度、もう一つは大気領域の呪文が籠められた物を。
 それらをはめ込まれた聖剣からまたも無機質な声が響く。
『アイスボール。ホワールウインド』

【ホワールウインド】大気領域第4レベルの攻撃呪文。激しい旋風が敵を包み、風の刃で切り刻む。

 刀身を包む空気の渦。その中ではダイヤモンドダストが煌めく。
 二重の魔力を帯びた聖剣をガイは構え、走った。
「氷球竜巻・一文字斬り!」
「な、なんの! ブレイズプラズマー!」
 マスターキメラが高熱に燃える拳を打ち出し、無数の熱線が駆け巡る。


 熱線と氷嵐の激突!
 それは爆発を起こして互いをかき消しあう。
 だが今度は明らかに片方へ力が傾いており――

 マスターキメラが吹き飛んだ。踏ん張るも何もない、高々と宙へ。
 凍てつき切り裂かれたその体が、村の側を流れる大河へ落ちた。水柱が大きく上がる。

 ガイは木刀を下ろし、深く大きく息を吐いた。そして一言……
「勝った」


 魔王軍の雑兵どもが我先にと逃げ出した。
 頭を潰された彼らに、戦意も指揮も無かった。
 それを見た村人達が歓声をあげる。
 スティーナがガイの側に駆け寄って来た。
「やりましたね師匠!」

 だがガイは己が握る聖剣をしげしげと眺めていた。
(この聖剣、あつらえたみたいにあまりにも俺に都合のいい能力なんだが……なんでだ?)
 イムが飛んできて肩に着地したので、ガイは彼女に目をやる。
 視線が合うと、イムはにっこりと微笑んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき
ファンタジー
冒険者ナザルは油使い。 魔力を油に変換し、滑らせたり燃やしたりできるユニークスキル持ちだ。 その特殊な能力ゆえ、冒険者パーティのメインメンバーとはならず、様々な状況のピンチヒッターをやって暮らしている。 実は、ナザルは転生者。 とある企業の中間管理職として、人間関係を良好に保つために組織の潤滑油として暗躍していた。 ひょんなことから死んだ彼は、異世界パルメディアに転生し、油使いナザルとなった。 冒険者の街、アーランには様々な事件が舞い込む。 それに伴って、たくさんの人々がやってくる。 もちろん、それだけの数のトラブルも来るし、いざこざだってある。 ナザルはその能力で事件解決の手伝いをし、生前の潤滑油スキルで人間関係改善のお手伝いをする。 冒険者に、街の皆さん、あるいはギルドの隅にいつもいる、安楽椅子冒険者のハーフエルフ。 ナザルと様々なキャラクターたちが織りなす、楽しいファンタジー日常劇。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

{完結保証}規格外の最強皇子、自由に生きて無双する〜どこへ行っても、後世まで語られる偉業を残していく、常識外れの皇子〜

Saioonji
ファンタジー
母に殴られ、命を奪われた――そのはずだった。 だが目を覚ました先は、白く豪奢な王城の一室。 赤子の身体、仕えるメイド、そして“皇子”という立場。 前世では愛されず、名前すら価値を持たなかった少年が、 今度は世界の中心に生まれ落ちてしまった。 記憶を失ったふりをしながら、 静かに、冷静に、この世界を観察する皇子。 しかし彼の中には、すでに常識外れの思考と力が芽生えていた。 ――これは復讐でも、救済でもない。 自由を求めただけの少年が、 やがて国を、歴史を、価値観そのものを揺るがしていく物語。 最強であることすら、彼にとってはただの前提条件だった。 重複投稿作品です 小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...