47 / 147
1章
9 来訪者達 6
しおりを挟む
――その日の夜――
今のカサカ村には回復魔法の使い手が3人いる。村の司祭、尼僧のディア、ガイの元パーティメンバー・リリだ。
だから魔王軍を撃退した後、ガイも治療を受ける事はできた。しかし何十人もケガ人がいるとなれば、一人一人を完治させる事はできない。回復アイテムは沢山あるが、今や村の売り物で、必要以上には使えない。
というわけで、ガイは小さな傷をあちこちに残したまま帰宅する事になった。
夕餉の支度をしながら出迎えたミオンは少なからず驚いた。
「今回は随分苦戦したのね」
「その分、成果もあったさ。聖剣の使い方がわかった」
そう言うとガイは手に握った木刀を見る。
(まぁまだ能力がありそうだけどな……)
それは直感によるもので、根拠は無いが。
――数時間後――
風呂と夕食をすませ、包帯を巻いて着替えたガイ。
テーブルについてミオンに声をかける。
「ミオンのいた街も教えてもらえる事になった。行ってみよう」
「えっ!?」
食器を洗い終えたばかりのミオンは驚いて目を丸くした……が、すぐに領主カーチナガ子爵からの情報だと思い至る。
動揺しつつも頷いた。
「そ、そう……まぁミオン違いという事も、あるかもしれないけど、ね」
「それをはっきりさせるためにもだ」
ガイの口調は強く、意思と圧が篭っていた。
しばしの沈黙。
やがてミオンがくすりと笑う。
「この生活も結構楽しくはあったわ。ちょっぴり名残惜しい気もするかな」
そう言うとガイの側に来て肩にしなだれかかった。
「ね? あ・な・た」
いつもならガイは照れながらも恥ずかしがって焦り、それをミオンが楽しんで笑う所だ。
が……
ガイはゆっくりと優しく、けれどしっかりと、ミオンを己の体から離した。
「!?」
いつにない反応にミオンは驚く。
一方、ガイはテーブルに視線を落とし、目を合わそうとしない。
「そう……」
ミオンは沈んだ声でそう呟くと、静かに自分の部屋へ戻った。
それを横目で見送るガイは、再びテーブルへ視線を落とすと……ぐっと奥歯を噛みしめた。
(未練がましいぞ、仕事でやってる偽装夫婦だろ。いつまでも鼻の下のばしてんじゃねぇよ、ガイ!)
そんなガイにイムがふわふわと飛んできて、肩に停まった。
心配してガイの顔を覗き込む。
「どうしたの?」
「もうじきミオンは実家に帰るかも、て事だ」
ぶっきらぼうにガイが言うと、イムは一瞬驚いた後、目に見えて落ち込んだ。
「どこか行っちゃうの? やだよ……」
ガイが視線をあげた。
妖精の少女に――どこか陰のある――微笑みを向ける。
「我儘言うな。俺は……一緒にいるから」
今のカサカ村には回復魔法の使い手が3人いる。村の司祭、尼僧のディア、ガイの元パーティメンバー・リリだ。
だから魔王軍を撃退した後、ガイも治療を受ける事はできた。しかし何十人もケガ人がいるとなれば、一人一人を完治させる事はできない。回復アイテムは沢山あるが、今や村の売り物で、必要以上には使えない。
というわけで、ガイは小さな傷をあちこちに残したまま帰宅する事になった。
夕餉の支度をしながら出迎えたミオンは少なからず驚いた。
「今回は随分苦戦したのね」
「その分、成果もあったさ。聖剣の使い方がわかった」
そう言うとガイは手に握った木刀を見る。
(まぁまだ能力がありそうだけどな……)
それは直感によるもので、根拠は無いが。
――数時間後――
風呂と夕食をすませ、包帯を巻いて着替えたガイ。
テーブルについてミオンに声をかける。
「ミオンのいた街も教えてもらえる事になった。行ってみよう」
「えっ!?」
食器を洗い終えたばかりのミオンは驚いて目を丸くした……が、すぐに領主カーチナガ子爵からの情報だと思い至る。
動揺しつつも頷いた。
「そ、そう……まぁミオン違いという事も、あるかもしれないけど、ね」
「それをはっきりさせるためにもだ」
ガイの口調は強く、意思と圧が篭っていた。
しばしの沈黙。
やがてミオンがくすりと笑う。
「この生活も結構楽しくはあったわ。ちょっぴり名残惜しい気もするかな」
そう言うとガイの側に来て肩にしなだれかかった。
「ね? あ・な・た」
いつもならガイは照れながらも恥ずかしがって焦り、それをミオンが楽しんで笑う所だ。
が……
ガイはゆっくりと優しく、けれどしっかりと、ミオンを己の体から離した。
「!?」
いつにない反応にミオンは驚く。
一方、ガイはテーブルに視線を落とし、目を合わそうとしない。
「そう……」
ミオンは沈んだ声でそう呟くと、静かに自分の部屋へ戻った。
それを横目で見送るガイは、再びテーブルへ視線を落とすと……ぐっと奥歯を噛みしめた。
(未練がましいぞ、仕事でやってる偽装夫婦だろ。いつまでも鼻の下のばしてんじゃねぇよ、ガイ!)
そんなガイにイムがふわふわと飛んできて、肩に停まった。
心配してガイの顔を覗き込む。
「どうしたの?」
「もうじきミオンは実家に帰るかも、て事だ」
ぶっきらぼうにガイが言うと、イムは一瞬驚いた後、目に見えて落ち込んだ。
「どこか行っちゃうの? やだよ……」
ガイが視線をあげた。
妖精の少女に――どこか陰のある――微笑みを向ける。
「我儘言うな。俺は……一緒にいるから」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ
リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。
先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。
エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹?
「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」
はて、そこでヤスミーンは思案する。
何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。
また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。
最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。
するとある変化が……。
ゆるふわ設定ざまああり?です。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
{完結保証}規格外の最強皇子、自由に生きて無双する〜どこへ行っても、後世まで語られる偉業を残していく、常識外れの皇子〜
Saioonji
ファンタジー
母に殴られ、命を奪われた――そのはずだった。
だが目を覚ました先は、白く豪奢な王城の一室。
赤子の身体、仕えるメイド、そして“皇子”という立場。
前世では愛されず、名前すら価値を持たなかった少年が、
今度は世界の中心に生まれ落ちてしまった。
記憶を失ったふりをしながら、
静かに、冷静に、この世界を観察する皇子。
しかし彼の中には、すでに常識外れの思考と力が芽生えていた。
――これは復讐でも、救済でもない。
自由を求めただけの少年が、
やがて国を、歴史を、価値観そのものを揺るがしていく物語。
最強であることすら、彼にとってはただの前提条件だった。
重複投稿作品です
小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる