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1章
10 葛藤 1
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――村の集会場――
ガイは村の要人達を集めた。
村長のコエトールが至って気楽な様子で訊いてくる。
「改めて話とは何でしょう?」
「村長さん。俺達、用事ができちまってさ。村を離れようと思う」
ガイが要件を告げると、一転、村長は驚愕して慌てふためいた。
「ええっ!? どどど、どんな用事ですか?」
「仕事の守秘義務があるんでそれは言えないんだ」
そう言ってガイは頭を下げる。
ミオンの実家らしいセイカ子爵領……そこへ行くため、ガイは村を離れるつもりだ。
だが村長達に何も告げずに出ていくのも薄情かと思い、こうして一言断りを入れているのである。
元々旅人だったので、特に問題無く出かけられるだろうと思っていたのだが——
だが村長は必死だった。
「しかし魔王軍に襲われたらどうするのです!?」
ガイとてそれを全く考えていないわけではない。
だが……
「ケイオス・ウォリアーは一機だけ持って行くけど、他は残すよ。後はスティーナやイアン爺さんがいればなんとかなるだろ」
マスターキメラを倒した今、この村にさほど強力な魔物は来ないだろうとガイは考えていた。
スティーナは魔法で、イアン爺さんや農夫のタゴサックは腕力で、低級な魔物なら問題なく退けられる。
よって心配はしていなかった。
だが別の者からも声が上がる。
それは敗走してきた領主のカーチナガ子爵だ。
「お待ちくだされ! 我が領の都を魔王軍から解放する件はどうなるのです?」
「え? そんな件いつ決まったんだ?」
全く覚えの無い話に首を傾げるガイ。
「だって! 魔王軍に占領されておるのですぞ?」
それが子爵の言い分だった。
どうもガイが魔物を退治してくれるのが当然、と認識していたようだ。
勇者だの英雄だのと持ち上げられている者はとかくそういう期待をされがちである。
実の所……ガイは力を貸してやるのが嫌なわけではない。
何せセイカ家への招待状を、このカーチナガ子爵に書いてもらったのだ。
その礼と考えれば一働きする事ぐらいはやぶさかではない。
ないのだが……
「そうは言われてもな……占領している部隊を俺一人でなんとかできるとは思えないし」
己の手に負えない事までは流石に引き受ける気にはなれないのだ。
しかし領主は嘆きの声をあげる。
「そ、そんな! 新たな必殺技かスキルをいきなり登場させてどうにかなりませんか?」
「どこから生えるんだよ? そんなご都合主義な……」
呆れるガイ。
しかし領主は頭を下げて拝み倒す。
「どうかお願いします! お金なら領内の村から強制徴収してでも出しまする」
「自腹じゃねーのかよ……」
呆れるガイ。
しかし領主はさらに食い下がる。
「女もつけます! そうだ、元パーティのあの女子どもを……」
「それ報酬じゃなくて嫌がらせだろ! なんであんたの物みたいになってるのかわかんねーし」
呆れるガイ。
しかし領主……ではなく、その横にいる農夫のタゴサックが真剣に提案した。
「いっそ次の領主の座をガイ殿に与える、というのはいかがか。今の領主は磔にしましょうぞ」
「えーっ!?」
領主は驚きと衝撃で目を剥いた。
だが意外にも、別の所から待ったがかかる。
「それはならん! ガイ殿が村から出て行ってしまう!」
村長のコエトールだ。
彼には村の安全を考える義務があるのだ。
そんな村長を横目に、今度はスティーナが提案。
「なら師匠を領主にした上で、居住地をこの村に遷都するのはどう? 村長はクビだけど……」
「そ、それもならん! 私の地位と村だけは守ってくれ!」
慌てふためく村長。
「ワシの地位と財産もじゃ!」
慌てふためく領主。
「そこら辺の本音は隠せよ!」
呆れて怒鳴るガイ。
まぁなんやかんや相談の末、明日あらためて考えようという事になった。
クールタイムという名の先送りは重要な会議には頻繁に必要となる物なのだ。
ガイは村の要人達を集めた。
村長のコエトールが至って気楽な様子で訊いてくる。
「改めて話とは何でしょう?」
「村長さん。俺達、用事ができちまってさ。村を離れようと思う」
ガイが要件を告げると、一転、村長は驚愕して慌てふためいた。
「ええっ!? どどど、どんな用事ですか?」
「仕事の守秘義務があるんでそれは言えないんだ」
そう言ってガイは頭を下げる。
ミオンの実家らしいセイカ子爵領……そこへ行くため、ガイは村を離れるつもりだ。
だが村長達に何も告げずに出ていくのも薄情かと思い、こうして一言断りを入れているのである。
元々旅人だったので、特に問題無く出かけられるだろうと思っていたのだが——
だが村長は必死だった。
「しかし魔王軍に襲われたらどうするのです!?」
ガイとてそれを全く考えていないわけではない。
だが……
「ケイオス・ウォリアーは一機だけ持って行くけど、他は残すよ。後はスティーナやイアン爺さんがいればなんとかなるだろ」
マスターキメラを倒した今、この村にさほど強力な魔物は来ないだろうとガイは考えていた。
スティーナは魔法で、イアン爺さんや農夫のタゴサックは腕力で、低級な魔物なら問題なく退けられる。
よって心配はしていなかった。
だが別の者からも声が上がる。
それは敗走してきた領主のカーチナガ子爵だ。
「お待ちくだされ! 我が領の都を魔王軍から解放する件はどうなるのです?」
「え? そんな件いつ決まったんだ?」
全く覚えの無い話に首を傾げるガイ。
「だって! 魔王軍に占領されておるのですぞ?」
それが子爵の言い分だった。
どうもガイが魔物を退治してくれるのが当然、と認識していたようだ。
勇者だの英雄だのと持ち上げられている者はとかくそういう期待をされがちである。
実の所……ガイは力を貸してやるのが嫌なわけではない。
何せセイカ家への招待状を、このカーチナガ子爵に書いてもらったのだ。
その礼と考えれば一働きする事ぐらいはやぶさかではない。
ないのだが……
「そうは言われてもな……占領している部隊を俺一人でなんとかできるとは思えないし」
己の手に負えない事までは流石に引き受ける気にはなれないのだ。
しかし領主は嘆きの声をあげる。
「そ、そんな! 新たな必殺技かスキルをいきなり登場させてどうにかなりませんか?」
「どこから生えるんだよ? そんなご都合主義な……」
呆れるガイ。
しかし領主は頭を下げて拝み倒す。
「どうかお願いします! お金なら領内の村から強制徴収してでも出しまする」
「自腹じゃねーのかよ……」
呆れるガイ。
しかし領主はさらに食い下がる。
「女もつけます! そうだ、元パーティのあの女子どもを……」
「それ報酬じゃなくて嫌がらせだろ! なんであんたの物みたいになってるのかわかんねーし」
呆れるガイ。
しかし領主……ではなく、その横にいる農夫のタゴサックが真剣に提案した。
「いっそ次の領主の座をガイ殿に与える、というのはいかがか。今の領主は磔にしましょうぞ」
「えーっ!?」
領主は驚きと衝撃で目を剥いた。
だが意外にも、別の所から待ったがかかる。
「それはならん! ガイ殿が村から出て行ってしまう!」
村長のコエトールだ。
彼には村の安全を考える義務があるのだ。
そんな村長を横目に、今度はスティーナが提案。
「なら師匠を領主にした上で、居住地をこの村に遷都するのはどう? 村長はクビだけど……」
「そ、それもならん! 私の地位と村だけは守ってくれ!」
慌てふためく村長。
「ワシの地位と財産もじゃ!」
慌てふためく領主。
「そこら辺の本音は隠せよ!」
呆れて怒鳴るガイ。
まぁなんやかんや相談の末、明日あらためて考えようという事になった。
クールタイムという名の先送りは重要な会議には頻繁に必要となる物なのだ。
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