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1章
10 葛藤 2
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――夕刻、ガイ宅――
村長達に引き留められた事をガイはミオンに話した。
彼女は「ふうん」と呟いて考え込む。
「話はまとまらないのね……」
「最悪、勝手に出ていくしかないな。この村には世話になったけど、こっちの都合を全部捨てる訳にもいかない」
少々気まずそうではあるが、ガイは己の考えを口にした。
「そっか……」
特に反対するわけではないが、ミオンはやはり何やら考えているようではある。
そんな二人を交互に見て、イムは涙ぐんでいた。
ガイは彼女に手を伸ばし、自分の肩に乗せる。
「そんな顔するなよ。元々、ミオンが実家に帰るまでの護衛なんだぜ」
「そうね、護衛……護衛なのよね」
ミオンは何かに気づいたように呟いた。
そしてガイの目を正面から見据える。
「魔王軍が大手をふって歩いている時に何日も旅をするのは危ないかもしれないわ」
「えっ?」
突然の言い分に戸惑うガイ。
対して、ミオンの言葉はどんどん勢いがついていった。
「タリンとかいう戦士もガイを狙っているんでしょう? どこかで襲われるかもしれないわよね?」
「あ、うん……」
頷くガイ。しかしミオンが何を言わんとしているのか測りかね、彼女の言葉を待つ。
一瞬、ミオンがにっこりと微笑んだ。
そしてすぐに、大袈裟な芝居がかった口調で嘆いてみせる。
「ガイの手がいっぱいの時に私が襲われたらどうしましょ。ああ、不安になってきちゃったぁ」
急に活き活きしだしたミオンに気圧されつつも、ガイはなんとか言葉を絞り出す。
「いや、でも、タリンの奴が次にいつ来るかなんてわかんねぇし……まだしばらく村に居る事になるけど?」
そんなガイを上目遣いで見つめながら、どこか楽しそうにミオンは言う。
「慎重にこした事はないんじゃないかしら?」
言葉に詰まり、頭を掻いて——やがてガイは小さく頷いた。
「わかったよ。タリンをなんとかするまでは様子見という事にするさ」
イムの顔がぱあっと明るくなった。
(一日で言を翻すのは男らしくねぇか? でもミオンの言い分は間違ってるわけじゃないし……)
内心では逡巡するガイ。
しかし……心のどこかでほんの少し安堵してもいるのだ。本人はそれをほとんど意識していないが。
ガイが少々悩んでいる事を察し、ミオンはしおらしく謝った。
「私の護衛を長引かせちゃって、ごめんね」
「べ、別にいいよ。嫌々じゃないしさ」
彼女の態度を前に慌てるガイ。
それを見て、ミオンは一転にんまりと意地悪く微笑む。
「むしろまんざらじゃなかったり?」
ガイはぐっと言葉に詰まる。
咄嗟に否定しそうになったのだが……なぜかそうしなかった。
狼狽えながら目を逸らし、窓の外が暗くなっている事に気づく。
「そ、それよりメシにしようぜ」
だがそれを聞いたミオンは。
実に楽しそうに宣言した。
「答え次第でご飯の量が変わりまぁす」
「なにそれ!?」
びっくらこくガイを見ながら、にまにまと心底楽しそうに、ミオンは畳みかけてくる。
「ではお答えどうぞ。まだ一緒に居られて、ちょっと嬉しかったりする? はいかいいえで、ね?」
沈黙。
ミオンから期待の眼差しを向けられながら、ガイは「ぐぬぬぬ……」と唸っていたが。
やがて低く唸るように、しかしはっきりと告げる。
「はい、だ」
「やぁだ、もう!」
晴れ晴れながらどこかはにかむような笑顔で、ミオンはガイの背中をぱんぱんと優しく叩く。
「メシ! 大盛りで! そういう事だから!」
だからあえてそう言ったのだ……というガイの必死の姿勢に、ミオンはとても嬉しそうに笑うのだ。
「はいはい」
その日。
どんぶりでおかわりするガイを、差し向かいで食事しながらミオンは心底楽しそうに微笑み続けていた。
テーブルの上ではイムも。
カットした果物をかじりつつ、嬉しそうに言う。
「ずっと一緒がいいね」
村長達に引き留められた事をガイはミオンに話した。
彼女は「ふうん」と呟いて考え込む。
「話はまとまらないのね……」
「最悪、勝手に出ていくしかないな。この村には世話になったけど、こっちの都合を全部捨てる訳にもいかない」
少々気まずそうではあるが、ガイは己の考えを口にした。
「そっか……」
特に反対するわけではないが、ミオンはやはり何やら考えているようではある。
そんな二人を交互に見て、イムは涙ぐんでいた。
ガイは彼女に手を伸ばし、自分の肩に乗せる。
「そんな顔するなよ。元々、ミオンが実家に帰るまでの護衛なんだぜ」
「そうね、護衛……護衛なのよね」
ミオンは何かに気づいたように呟いた。
そしてガイの目を正面から見据える。
「魔王軍が大手をふって歩いている時に何日も旅をするのは危ないかもしれないわ」
「えっ?」
突然の言い分に戸惑うガイ。
対して、ミオンの言葉はどんどん勢いがついていった。
「タリンとかいう戦士もガイを狙っているんでしょう? どこかで襲われるかもしれないわよね?」
「あ、うん……」
頷くガイ。しかしミオンが何を言わんとしているのか測りかね、彼女の言葉を待つ。
一瞬、ミオンがにっこりと微笑んだ。
そしてすぐに、大袈裟な芝居がかった口調で嘆いてみせる。
「ガイの手がいっぱいの時に私が襲われたらどうしましょ。ああ、不安になってきちゃったぁ」
急に活き活きしだしたミオンに気圧されつつも、ガイはなんとか言葉を絞り出す。
「いや、でも、タリンの奴が次にいつ来るかなんてわかんねぇし……まだしばらく村に居る事になるけど?」
そんなガイを上目遣いで見つめながら、どこか楽しそうにミオンは言う。
「慎重にこした事はないんじゃないかしら?」
言葉に詰まり、頭を掻いて——やがてガイは小さく頷いた。
「わかったよ。タリンをなんとかするまでは様子見という事にするさ」
イムの顔がぱあっと明るくなった。
(一日で言を翻すのは男らしくねぇか? でもミオンの言い分は間違ってるわけじゃないし……)
内心では逡巡するガイ。
しかし……心のどこかでほんの少し安堵してもいるのだ。本人はそれをほとんど意識していないが。
ガイが少々悩んでいる事を察し、ミオンはしおらしく謝った。
「私の護衛を長引かせちゃって、ごめんね」
「べ、別にいいよ。嫌々じゃないしさ」
彼女の態度を前に慌てるガイ。
それを見て、ミオンは一転にんまりと意地悪く微笑む。
「むしろまんざらじゃなかったり?」
ガイはぐっと言葉に詰まる。
咄嗟に否定しそうになったのだが……なぜかそうしなかった。
狼狽えながら目を逸らし、窓の外が暗くなっている事に気づく。
「そ、それよりメシにしようぜ」
だがそれを聞いたミオンは。
実に楽しそうに宣言した。
「答え次第でご飯の量が変わりまぁす」
「なにそれ!?」
びっくらこくガイを見ながら、にまにまと心底楽しそうに、ミオンは畳みかけてくる。
「ではお答えどうぞ。まだ一緒に居られて、ちょっと嬉しかったりする? はいかいいえで、ね?」
沈黙。
ミオンから期待の眼差しを向けられながら、ガイは「ぐぬぬぬ……」と唸っていたが。
やがて低く唸るように、しかしはっきりと告げる。
「はい、だ」
「やぁだ、もう!」
晴れ晴れながらどこかはにかむような笑顔で、ミオンはガイの背中をぱんぱんと優しく叩く。
「メシ! 大盛りで! そういう事だから!」
だからあえてそう言ったのだ……というガイの必死の姿勢に、ミオンはとても嬉しそうに笑うのだ。
「はいはい」
その日。
どんぶりでおかわりするガイを、差し向かいで食事しながらミオンは心底楽しそうに微笑み続けていた。
テーブルの上ではイムも。
カットした果物をかじりつつ、嬉しそうに言う。
「ずっと一緒がいいね」
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