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1章
12 改造と計画と 2
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――カサカ村の難民区画――
仮設住宅がごちゃごちゃ並ぶ通りを向こうに、スティーナが結晶板を手にしていた。
「では稼働試験も兼ねて作業を始めてもらいます」
彼女がそう言うと、通りを背に立つ白銀級機のケイオス・ウォリアーからタリンが通信を返す。
『腕利きテストパイロット様に任せろ!』
その機体を見ながらガイは感心していた。
「えらく外見が変わったな」
「はい。元は死霊魔術を増幅して使う機体でしたが、そんな技術をもっている者がこの村にいませんので。師匠が使う事を前提に前衛型の装備へ変更しました。今の名称はSバスタードスカルです」
そう説明するスティーナが、祖父の鍛冶屋イアンと共に改造した本人である。
フードローブ状の外装は外され、今や鎧で武装した骸骨戦士といった形状だ。
背中には大きめの剣を背負っており、それが主武器である事は一目瞭然。
「ま、それでいいか。不死怪獣を召喚しろと言われても俺はそんな魔術を習得していないしな」
納得するガイだが、スティーナは説明する。
「シロウが使われていますから、不死怪物召喚能力はまだ残っていると思いますよ。それも今からテストしましょう」
「え?」
驚くガイの前でスティーナが結晶板に手を触れた。そこに文字と映像が浮かび上がる。
それは地球でいう所のタブレットPCのような役目を果たす装置で、眼前の機体との通信、各部の現状や動作状態を表示していた。
そこに操縦席内部も映っている。
得意満面のタリンと、それが握るハンドルが。
そのハンドルはシャフトで支えられたシロウの頭蓋骨を左右に貫通している。
形状としては、地球のバイクやスクーターのそれに近い。
「では召喚能力を使ってください」
『任せろ!』
『まぁやるのは俺なんだが』
スティーナの指示に威勢よく応えるタリン、一言加える髑髏のシロウ。その両眼が禍々しい赤色に輝いた。
すると側の大地が盛り上がり、巨大な生物の骸骨が這い出して来る。
その形状は以前ガイが退治した雷竜の物だった。
「ゲーッ! マジで出て来た!」
驚くガイの横でスティーナが指示を出す。
「ではそれを使役しながら作業を開始してください」
『任せろ!』
『まぁやるのは俺なんだが』
威勢よく応えるタリン、一言加える髑髏のシロウ。
『儂らもいるぞい』
イアンの声とともに二機の量産型ケイオス・ウォリアーがやってくる。
計3機の機体は巨大なシャベルやつるはしを使い、大きな溝を掘り始めた。
いつの間にやら来ていた村長のコエトールと領主のカーチナガもその作業を見守る。
給水・排水、両方の側溝を掘るのが新型機の動作試験なのである。
それにより作業の精密性や機体の持続力、不具合の有無を探るわけだが――
Sバスタードスカルは問題無くシャベルを使っているものの、不死の怪獣は土を力任せにまき散らしていた。
「機体はいいとして‥‥不死怪物の方は作業が雑だな」
「精密な事はできませんね」
難しい顔をするガイと、結晶板にデータを記録するスティーナ。
そんな話をしていると、怪獣の骸骨が崩れて消えた。
「‥‥すぐ壊れたな」
「持続時間もたいした事ありませんね」
難しい顔をするガイと、結晶板にデータを記録するスティーナ。
「要するに【骸骨の杖】で呼べる魔物がデカくなっただけと」
「まぁ召喚する魔物が巨大になったぶん、パワーアップはしました。文字通りパワーだけは」
難しい顔をするガイと、結晶板にデータを記録するスティーナ。
そこでふとガイに疑問が浮かぶ。
「シロウはもう取り外しできないんだっけ?」
「できますよ。杖としては使えませんので、ただの喋る髑髏になりますが」
スティーナが説明していると、タリンの嬉しそうな声が通信機能を通じて聞こえて来た。
『ヒャッハー! オレ様絶好調ー! ガイィ! 今日からこの村最強の男はオレだ! 媚びろ! へつらえ! 女を用意しろ!』
機体データに問題が無い事を確認し、スティーナは顔をあげてガイを見る。
「仕上がりは上々です。となると、あの男はもう用済みですね。川にでも流しますか?」
だがガイは。
腕組みして何やら考え込んでいた。
「いや‥‥やってもらいたい事ができた」
仮設住宅がごちゃごちゃ並ぶ通りを向こうに、スティーナが結晶板を手にしていた。
「では稼働試験も兼ねて作業を始めてもらいます」
彼女がそう言うと、通りを背に立つ白銀級機のケイオス・ウォリアーからタリンが通信を返す。
『腕利きテストパイロット様に任せろ!』
その機体を見ながらガイは感心していた。
「えらく外見が変わったな」
「はい。元は死霊魔術を増幅して使う機体でしたが、そんな技術をもっている者がこの村にいませんので。師匠が使う事を前提に前衛型の装備へ変更しました。今の名称はSバスタードスカルです」
そう説明するスティーナが、祖父の鍛冶屋イアンと共に改造した本人である。
フードローブ状の外装は外され、今や鎧で武装した骸骨戦士といった形状だ。
背中には大きめの剣を背負っており、それが主武器である事は一目瞭然。
「ま、それでいいか。不死怪獣を召喚しろと言われても俺はそんな魔術を習得していないしな」
納得するガイだが、スティーナは説明する。
「シロウが使われていますから、不死怪物召喚能力はまだ残っていると思いますよ。それも今からテストしましょう」
「え?」
驚くガイの前でスティーナが結晶板に手を触れた。そこに文字と映像が浮かび上がる。
それは地球でいう所のタブレットPCのような役目を果たす装置で、眼前の機体との通信、各部の現状や動作状態を表示していた。
そこに操縦席内部も映っている。
得意満面のタリンと、それが握るハンドルが。
そのハンドルはシャフトで支えられたシロウの頭蓋骨を左右に貫通している。
形状としては、地球のバイクやスクーターのそれに近い。
「では召喚能力を使ってください」
『任せろ!』
『まぁやるのは俺なんだが』
スティーナの指示に威勢よく応えるタリン、一言加える髑髏のシロウ。その両眼が禍々しい赤色に輝いた。
すると側の大地が盛り上がり、巨大な生物の骸骨が這い出して来る。
その形状は以前ガイが退治した雷竜の物だった。
「ゲーッ! マジで出て来た!」
驚くガイの横でスティーナが指示を出す。
「ではそれを使役しながら作業を開始してください」
『任せろ!』
『まぁやるのは俺なんだが』
威勢よく応えるタリン、一言加える髑髏のシロウ。
『儂らもいるぞい』
イアンの声とともに二機の量産型ケイオス・ウォリアーがやってくる。
計3機の機体は巨大なシャベルやつるはしを使い、大きな溝を掘り始めた。
いつの間にやら来ていた村長のコエトールと領主のカーチナガもその作業を見守る。
給水・排水、両方の側溝を掘るのが新型機の動作試験なのである。
それにより作業の精密性や機体の持続力、不具合の有無を探るわけだが――
Sバスタードスカルは問題無くシャベルを使っているものの、不死の怪獣は土を力任せにまき散らしていた。
「機体はいいとして‥‥不死怪物の方は作業が雑だな」
「精密な事はできませんね」
難しい顔をするガイと、結晶板にデータを記録するスティーナ。
そんな話をしていると、怪獣の骸骨が崩れて消えた。
「‥‥すぐ壊れたな」
「持続時間もたいした事ありませんね」
難しい顔をするガイと、結晶板にデータを記録するスティーナ。
「要するに【骸骨の杖】で呼べる魔物がデカくなっただけと」
「まぁ召喚する魔物が巨大になったぶん、パワーアップはしました。文字通りパワーだけは」
難しい顔をするガイと、結晶板にデータを記録するスティーナ。
そこでふとガイに疑問が浮かぶ。
「シロウはもう取り外しできないんだっけ?」
「できますよ。杖としては使えませんので、ただの喋る髑髏になりますが」
スティーナが説明していると、タリンの嬉しそうな声が通信機能を通じて聞こえて来た。
『ヒャッハー! オレ様絶好調ー! ガイィ! 今日からこの村最強の男はオレだ! 媚びろ! へつらえ! 女を用意しろ!』
機体データに問題が無い事を確認し、スティーナは顔をあげてガイを見る。
「仕上がりは上々です。となると、あの男はもう用済みですね。川にでも流しますか?」
だがガイは。
腕組みして何やら考え込んでいた。
「いや‥‥やってもらいたい事ができた」
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