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2章
16 魔獣咆哮 1
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魔王軍残党をチマラハの街から撃退したガイ達はカサカ村に帰ってきた。
その夜――
「やっぱり私の過去に何かあるのよね」
風呂も夕食も終えて一息つく、寝る前の一時。ミオンはテーブルに着いて敵の大将に言われた事を考えていた。
影針と名乗る暗殺者の言葉を。
『いずれお前を仕留めるよう依頼が来るかもしれん』
テーブルの向かいに座るガイが頷いた。
「なら奴を捕まえればそれもわかるさ」
そう言って軽く笑顔を作る。
ミオンも微笑みを返して頷いた。
互いに微笑みいあながら、しかしガイは考える。
(依頼が来る……という事は、奴は誰かに雇われているんだろう。ミオンが貴族でそっち関係の因縁だとして、ケイト帝国がバラバラになっている現状でしかけて来るなんて……よほど深い恨みか。それとも、今いくつかの領が交戦関係になっているそうだが、そのどこか同士なのか?)
しかし現状では情報が少なすぎて、答えなど出よう筈もなかった。
だが……いや、だからこそ、ガイは余裕を態度で見せる。
「俺はミオンの護衛だからな。どんな理由で何が出てきてもミオンを守っていくだけさ」
ガイが親指を立てて見せると、ミオンはくすくすと笑った。
「頼もしいんだから。そんなカッコイイ態度、他の女の人に見せちゃダメよ?」
するとイムがテーブルの上で小首を傾げる。
「なんで? ガイはカッコイイよ」
苦笑いするガイと楽しそうに笑うミオン。
不安はこの場から消えていた――例えそれが一時的なものにしろ。
――翌日――
「では起動させてください」
「まかせろ! 発進するぜえ!」
スティーナがデータを表示した結晶板を手に通信を送ると、タリンが威勢よく返信した。そして白銀級機のケイオス・ウォリアーが、村の工場敷地内で一歩を踏み出す。
その動作試験を、ガイ達はスティーナの後ろで眺めていた。
午前中に村の主だった面々は会議をひらき、戦力を増強する事を決めた。
よって魔王軍時代にレレン……マスターキメラが乗っていた白銀級機・Sヒートキマイラを使う事にしたのである。
テストパイロットは結局カサカ村に来たタリン。
ララ・リリ・ウスラの三人もついて来ている。
街を守った報酬を要求するタリン達と「お前らはボロ負けてガイ殿達に助けられた側だろうが!」と怒る領主との間で、ギャラに関する諍いが起こったのが原因であった。
体を傾けたまま不格好に動き出すヒートキマイラ。
「しかしな……なぜちゃんと修理していなかったのか?」
「動く程度にはしておいたぞ」
不満げなレレンに鍛冶屋のイアンが答える。
ヒートキマイラはあちこちの装甲版が外れ、首と左腕が外れそうにガクガクしていた。
「それにな……なぜ今まで使おうと思わなかった?」
「野盗やちょっとした魔物ぐらいとしか戦わなかったからな」
不満げなレレンに鍛冶屋のイアンが答える。
ワンオフカスタム機の白銀級機は、修理にもそれなりに金がかかる。必要なければ後回しでも仕方ないのだ。
というよりいずれは分解され、他の機体へ部品を流用される所だった。
「それでもな、あアッー!」
不満げなレレンが悲痛な叫びをあげた。ヒートキマイラがつまづいて転倒したのだ。獅子を模した頭が衝撃で外れて転がる。
操縦席からタリンがよろめきながら出てきて倒れた。
「く、くそっ! なんかバランスが悪いぞ、この機体!」
悪態をつきながらも肩を抑えている。転倒の衝撃でどこか痛めでもしたのだろう。村の尼僧ディアと女神官のリリが急いで駆け寄り、手当を始めた。
それを尻目に、スティーナは落ち着いてガイ達の方へ振り向いた。
「問題点の確認はできました。修理と改造にとりかかりましょう」
――数日後――
「修理が完了しました」
村の工場で皆に告げるスティーナ。その横で頷くイアン。
ガイ達は修理を終えて新品同然に輝く白銀級機を見上げる。
鎧を纏った巨大な戦士。その右肩には山羊、左肩には蛇の頭部を模した大きな肩当て。
胸には雄々しき獅子の顔。
その頭は鬣をもつ兜を被った巨人。
背には折りたたまれた二枚の翼。
「……頭部が変わって翼が生えているんだが」
「新たな名前はSサバイブキマイラです」
納得いかなさそうなレレンへ事もなげに言うスティーナ。
「改造費用はどこから?」
「カーチナガ領主から防衛報酬を取り立てたので、それをつぎ込みました」
不安そうな村長へ事もなげに言うスティーナ。
「これがオレの新しい機体か!」
「そんなわけないでしょう。豆腐で死ぬまで頭を打ってください」
顔を輝かせるタリンへ唾でも吐きそうな顔で言うスティーナ。
そんなスティーナがガイへと振り向く。
「師匠。以前から研究していた機能を実装しました。この機体はこの世でただ一機、師匠のために造られた物です」
「そうか。完成したのか」
呟きながらガイは新型機を見上げる。
ここに新たな白銀級機が誕生した。
その夜――
「やっぱり私の過去に何かあるのよね」
風呂も夕食も終えて一息つく、寝る前の一時。ミオンはテーブルに着いて敵の大将に言われた事を考えていた。
影針と名乗る暗殺者の言葉を。
『いずれお前を仕留めるよう依頼が来るかもしれん』
テーブルの向かいに座るガイが頷いた。
「なら奴を捕まえればそれもわかるさ」
そう言って軽く笑顔を作る。
ミオンも微笑みを返して頷いた。
互いに微笑みいあながら、しかしガイは考える。
(依頼が来る……という事は、奴は誰かに雇われているんだろう。ミオンが貴族でそっち関係の因縁だとして、ケイト帝国がバラバラになっている現状でしかけて来るなんて……よほど深い恨みか。それとも、今いくつかの領が交戦関係になっているそうだが、そのどこか同士なのか?)
しかし現状では情報が少なすぎて、答えなど出よう筈もなかった。
だが……いや、だからこそ、ガイは余裕を態度で見せる。
「俺はミオンの護衛だからな。どんな理由で何が出てきてもミオンを守っていくだけさ」
ガイが親指を立てて見せると、ミオンはくすくすと笑った。
「頼もしいんだから。そんなカッコイイ態度、他の女の人に見せちゃダメよ?」
するとイムがテーブルの上で小首を傾げる。
「なんで? ガイはカッコイイよ」
苦笑いするガイと楽しそうに笑うミオン。
不安はこの場から消えていた――例えそれが一時的なものにしろ。
――翌日――
「では起動させてください」
「まかせろ! 発進するぜえ!」
スティーナがデータを表示した結晶板を手に通信を送ると、タリンが威勢よく返信した。そして白銀級機のケイオス・ウォリアーが、村の工場敷地内で一歩を踏み出す。
その動作試験を、ガイ達はスティーナの後ろで眺めていた。
午前中に村の主だった面々は会議をひらき、戦力を増強する事を決めた。
よって魔王軍時代にレレン……マスターキメラが乗っていた白銀級機・Sヒートキマイラを使う事にしたのである。
テストパイロットは結局カサカ村に来たタリン。
ララ・リリ・ウスラの三人もついて来ている。
街を守った報酬を要求するタリン達と「お前らはボロ負けてガイ殿達に助けられた側だろうが!」と怒る領主との間で、ギャラに関する諍いが起こったのが原因であった。
体を傾けたまま不格好に動き出すヒートキマイラ。
「しかしな……なぜちゃんと修理していなかったのか?」
「動く程度にはしておいたぞ」
不満げなレレンに鍛冶屋のイアンが答える。
ヒートキマイラはあちこちの装甲版が外れ、首と左腕が外れそうにガクガクしていた。
「それにな……なぜ今まで使おうと思わなかった?」
「野盗やちょっとした魔物ぐらいとしか戦わなかったからな」
不満げなレレンに鍛冶屋のイアンが答える。
ワンオフカスタム機の白銀級機は、修理にもそれなりに金がかかる。必要なければ後回しでも仕方ないのだ。
というよりいずれは分解され、他の機体へ部品を流用される所だった。
「それでもな、あアッー!」
不満げなレレンが悲痛な叫びをあげた。ヒートキマイラがつまづいて転倒したのだ。獅子を模した頭が衝撃で外れて転がる。
操縦席からタリンがよろめきながら出てきて倒れた。
「く、くそっ! なんかバランスが悪いぞ、この機体!」
悪態をつきながらも肩を抑えている。転倒の衝撃でどこか痛めでもしたのだろう。村の尼僧ディアと女神官のリリが急いで駆け寄り、手当を始めた。
それを尻目に、スティーナは落ち着いてガイ達の方へ振り向いた。
「問題点の確認はできました。修理と改造にとりかかりましょう」
――数日後――
「修理が完了しました」
村の工場で皆に告げるスティーナ。その横で頷くイアン。
ガイ達は修理を終えて新品同然に輝く白銀級機を見上げる。
鎧を纏った巨大な戦士。その右肩には山羊、左肩には蛇の頭部を模した大きな肩当て。
胸には雄々しき獅子の顔。
その頭は鬣をもつ兜を被った巨人。
背には折りたたまれた二枚の翼。
「……頭部が変わって翼が生えているんだが」
「新たな名前はSサバイブキマイラです」
納得いかなさそうなレレンへ事もなげに言うスティーナ。
「改造費用はどこから?」
「カーチナガ領主から防衛報酬を取り立てたので、それをつぎ込みました」
不安そうな村長へ事もなげに言うスティーナ。
「これがオレの新しい機体か!」
「そんなわけないでしょう。豆腐で死ぬまで頭を打ってください」
顔を輝かせるタリンへ唾でも吐きそうな顔で言うスティーナ。
そんなスティーナがガイへと振り向く。
「師匠。以前から研究していた機能を実装しました。この機体はこの世でただ一機、師匠のために造られた物です」
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呟きながらガイは新型機を見上げる。
ここに新たな白銀級機が誕生した。
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