フェアリー・フェロウ~追い出されたフーテン野郎だが、拾い物でまぁなんとか上手くいく~

マッサン

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2章

24 人の世に外れた物 10

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――ケイト帝国の宮殿――


 帰還したガイ達は歓喜をもって迎えられた――のは一瞬の事。
 恐れおののかれていた。帰還途中で合流した【リバーサル】の者達にさえ。

 だが玉座の間で、度肝を抜かれて戸惑う重臣達と【リバーサル】のメンバーを他所に、シャンリーだけはガイ達を丁寧に迎えた。
 かしこまって頭を下げさえして。
「ありがとう。これほどの脅威をよくぞ退けてくれました。貴方達こそ勇者です。魔王を倒した者達にもまさると、私は信じますわ」

「当然じゃな。この世界創生以来最高の勇者の子孫じゃぞい」
 そう言ってふんぞり返る、ガイの生きた先祖・ドライアドのハマ。
 彼女は玉座の間に外から首を突っ込んだ竜神アショーカの頭の上にいた。

 ガイ達が仰天され、恐れられているのは、最上位竜アークドラゴンなんぞと一緒に戻って来たからである。

 ベランダから頭を突っ込む竜神を見て重臣たちは度肝を抜かれたままだった。
「あれは……五行竜のアショーカ!?」
「なんと!? この世界でも最高峰の神格の一つだぞ」
「ヨウファ皇女の魔術の師も最上位竜アークドラゴンだと言うが、人の世に関与する事は避けていたというのに……」
「彼らがいれば、我が帝国の再生は成ったも同然なのでは……」
 まぁ中には早くも欲目を出してガイ達に熱い眼差しを送る者もいたが。

「フゥー……ようやく時代がオレに追いついたようだぜ。やっと世の中が正しくなりやがった」
 思いあがるあまり、タリンは胸をはり過ぎて頭が後ろに仰け反っていた。
 それを横目で睨むスティーナ。
(私達まで同類に思われそう。そのまま頭もげればいいのに)


 シャンリーがガイの眼前へと進み出た。
「ガイ。ケイト帝国の重臣として、来てくれるわね?」
「それは……」
 口ごもるガイ。
 次の言葉を探す。だが、出ない。
(俺はなぜ躊躇ためらっているんだ?)

 迷うガイを見て、シャンリーは一度だけ深呼吸した。
 そして、はっきりと宣言する。
「来てくれるなら……私をあげます。私は貴方に嫁入りし、妻になります」


「「「「「!?」」」」」
 仰天。
 その場のほとんどの者が、一瞬、思考とともに言葉を失った。

「あん? 今さら言う事か?」
 タリンはのほほんと呟いていたが。

「ふざくんなこの女狐がぁー!」
『落ち着くのだ。ガイも子供ではないぞ』
 ハマは激高し、アショーカになだめられていたが。


「あああ姉上? 皇帝になれるのは人間だけ……」
 動揺もあらわなヨウファ皇女。
 重臣達の驚きも同じ理由だ。シャンリー皇女を娶る者が次の皇帝だが、それは人間族でなければならない。
 だがガイが【ウルザルブルン】という特殊な種族である事は、既にこの場の者達は知っていた。

 しかしシャンリーは妹に言い聞かせる。
 周りの者達にも聞こえるように、はっきりと。
「ええ。だから皇帝になるのは、ヨウファ、貴女の将来の夫よ。ガイと私は……そうね、新しい公爵家を作りましょう。世界樹の若木の辺りを領地にすれば、ガイの、世界樹の守護者も兼任できて一石二鳥だわ」

 長いケイト帝国の歴史には前例もある。
 異種族と婚姻するため、上位の継承権を放棄した皇族の存在が。

 だがそれはそれで重臣達はやはりどよめく。
 皆がシャンリーこそ現在のケイト帝国の統治者だと認めていたし、皇帝になる者を夫とすると思い込んでいたからだ。


 そんな中。
 ガイは、シャンリーだけを見つめていた。
「君をくれるのか」
 その顔は、甘く喜んでいる者の表情……では
 まるで観察するかのような目。
「ええ。欲しいでしょう? ずっと欲しかったでしょう?」
 対してそう言うシャンリーは微笑んでいた。
 カサカ村で度々見せていた、茶化すような、面白がっているような、そしてどこか自信のあるような。
 そんな笑みを

「ケイト帝国の、ためにか?」
「ええ。それ有りきなのが私だもの」
 ガイとシャンリー、二人の視線がぶつかる。
 ガイは静かに、シャンリーは笑顔で。
 イムがおろおろと二人の顔を交互に見る。

 シャンリーがガイに近づき、そっと、相手の胸に触れようとした。

「それは受けられない」
 ガイがそう言ったのはシャンリーの掌が触れる直前。
 しかし彼女の手は、ピタリと止まった。

「な、なぜ! これほどの条件の何が不満だと?」
 重臣の一人が取り乱し気味に叫ぶ。
 だがヨウファ皇女が大急ぎで姉とガイの間に割って入り、ガイへ必死に笑いかけた。
「お主は救国の英雄、その意思は無視できんな! 報酬は金で支払うから受け取って帰るが良い」

 ガイも、シャンリーも。
 割り込んだヨウファを止めようとはしない。
 シャンリーの顔から笑顔が消えていた。

「私達の敵にだけは、ならないでね」
「それは、まぁ……そうだな」
 それがこの日、二人の交わした最後の言葉だった。
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