そして倫理は崩壊し、落日の魔法使いはダンジョンの発生した世界に沈む

ナントナクカイテク三号

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1章

14 どうしようもない。嗚呼、慣れなければ

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 部屋を出て通路を行く。

    今日も今日とて代わり映えのしない紫色の光に照らされた黒みがかかった土の通路。

    昨日と違うのは同行者がいるという点か。ベリサマはオレの左肩の辺りを飛んでいる。事前にゴブリン狩りをすることは伝えていた。

 オレはスケベではない。むっつりでもないはずだ。

    しかし、オレは妹一筋だがつい目が行ってしまう。ベリサマは裸だ。一度ハンカチなんかで隠そうとしたら燃えた。

    胸に凹凸はないが一応はある。下も普通の女性と同じ造りだ。下の毛は生えていない。つまり、ちらちら視界に入る。

    まあ、気にしなければいいのだが。その内慣れるか。鎮まれオレのオレ。

 ともかくショートソードを構える。通路の反対側からゴブリンがやって来た。こちらを指さして笑っている。明らかに挑発だ。分かりやすい。

 一応後ろを確認するが問題なかった。少し行ったら罠か伏兵ってところか。オレのスキルによると数体向こうにいるようだ。試してみよう。

「【火】【停止】【大きく】【圧縮】【球】【捕捉】【始動】【破裂】魔法名“火球裂”」

 昨日と同じ魔法だ。昨日と同じステップで魔法が完成し対象に向かう。想起される昨日の熱風。爆音に堪える。

    オレを襲うのは熱風ではなく、灼熱の燃え滾る炎だった。やべぇ!?と思ったときにはもう遅い。苦し紛れに盾だけは顔の前に構えた。

 瞬間、オレは吹っ飛ぶ。

    熱さがおさまったので自分の確認。死んではない。体の状態は所々やけどしてるが問題ない。外傷だから下級外傷ポーションを飲むと完治した。

    地面は昨日のように融解。範囲は昨日よりも広い。少なくとも7体分のドロップを確認し、ありがたく頂戴した。

 ベリサマの恩恵は大きいようだ。それこそ、チートと言っても過言ではない。だからこんなにドロップ率が低いのか。しばらく周回しようか。

 オレは数日この階層を彷徨い続けた。

 ある程度魔道具のストックが溜まり、更に近接・魔法両方に磨きがかかった。慣れたといった方が正しいか。

    戦いを知らない高校生が、戦国時代の武将も真っ青な回数の命のやり取りを繰り広げているのだからそれは当然と言えよう。

ぎゃぁいぎぃぃーー!

 殴りかかってくるゴブリン。前のオレなら盾を構えた。今のオレは素手。振り下ろされる前に一歩を詰め、腕を抑える。そのまま頭を地面に打ち付ける。ゴブリンは動かなくなった。

 続く2体目のゴブリンにも心臓に掌底を当て、衝撃を加えると動かなくなる。ショートソードを使うまでもなかった。

    迫りくるゴブリン。それに対しオレは走って攻撃を往なしながら詠唱を行った。

「【干渉】【土】【鎖】【固定】」

 オレの詠唱で足元の砂が形を成してあたかも生きた鎖のようになる。

    それが1本。

    さらに意に介さず詠唱を続ける。後の「【複製】」の言葉を繰り返すことでそれは何本にも増えた。

「【捕捉】【始動】」

 この言葉でオレに襲い掛かってくるゴブリンを鎖が一斉に拘束し始める。ここまでの練度にするのに何度も失敗した。

    実際のところ何度か残機を使う羽目になった。もう動いているゴブリンはいない。

「【強く】【破裂】魔法名“土鎖裂群”」

 唱え終えると、ゴブリンたちを拘束していた土の鎖は細かい針や刃となって拘束していたゴブリンを切り裂き、そして、穿ちながらはじけ飛んだ。

「自分で作っておいてなんだが、えげつないな。」

コクンコクン

 ベリサマも同意していた。ゴブリンの死体は細かい傷が無数についており、四肢が千切れ、目は潰れていた。

    致命傷に至っていないようなものも転がっているがこれはHPの概念が及ぼしている物だろう。じきにドロップへと消えていった。

 【物理攻撃】とか【魔法攻撃】とか上げる意味の分からないスキルがあったが、ここに関係していた。HPに与えるダメージに直結している。

    それを防ぐことが出来るのは【物理防御】【魔法防御】のスキルしかない。これがないと裸で極寒を歩くに等しい。

 その事実に気付いてから【物理攻撃】【物理防御】【魔法攻撃】【魔法防御】を5まで上げた。

    多分、最初に残機を使ったときはHPが原因で死んだのだろうと結論付けている。


【No125,431,112通常ドロップ 5ポイント獲得】
【No125,431,112【数量増加3】の効果により追加 15ポイント獲得】
【No125,431,112モンスターハウスの単独壊滅達成 180ポイント獲得】
【No125,431,112【数量増加3】の効果により追加 540ポイント獲得】
【No125,431,112偉業の達成 60ポイント獲得】
【No125,431,112【数量増加3】の効果により追加 180ポイント獲得】

 ドロップ品と宝箱の中身を回収した。ベリサマが必死な表情で手伝ってくれたのが可愛くてかわいくて……。

    さておき、オレが何をしていたのかと言うと集大成として、魔物に襲われながら魔法を放つ練習をしていたのだ。

 普通ならば徒党を組みダンジョンに入るのだろう。物理担当の近接職に守られながら魔法職が詠唱し、砲台として殲滅するのが本来のあるべき形なのだろう。

    しかし、オレは一人だ。ベリサマは魔道具と言う括りであり、直接戦えない。だから、一人でやらなければならない。

 最初はショートソードも頻繁に使っていたのだが無理。情報力が多すぎる。

    ショートソードを持つと必然的に攻撃に意識が行き、回避や防御が中途半端になってしまう。詠唱も失敗しやすくなる。だから、ショートソードでの攻撃を控えた。

「ベリサマ行くよ。」

コクン

 ベリサマはオレの肩にちょこんと座った。本人の希望で何も身につけてはいない。

    最近小さな体を見せつけるようになってきたのは気のせいだろうか。

    ともあれ、オレたちは部屋を後にした。

 部屋を出るとその部屋の入り口は自然と塞がる。そしてどこかに新しい部屋が生まれるのだ。
  
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