そして倫理は崩壊し、落日の魔法使いはダンジョンの発生した世界に沈む

ナントナクカイテク三号

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1章

15 どうしようもない演出

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「部屋の数に限界ってあるのか?」

コクン?

 ベリサマが首を傾げた。近頃部屋に入りまくって魔物を殺して回っていたら一つ変化したとことがある。

 それは照明だ。入ったときは赤みがかった紫だったのに今では青みがかった紫なのだ。

 これが時期や時間を示すものでない限り、何かに関係があるはずだ。

「今考えても仕方ないか。」

 その辺を歩いているゴブリンを盾で撲殺しながら進む。進む。というよりも戻ってきた。

    バカでかい扉の横の棚に指定されていた低位ゴブリンの魔石を30個置く。

    やがて、光に包まれそれが消えるとともに激しい揺れを伴って扉があいた。

「荘厳さでも醸し出してるのか?」

コクン?

「明らかにそれらしい不要な演出とか。」

コクン コクン

 よくゲームとかで明らかに誇張された演出があるが、これもその一つだろう。あちら側の演出家がいるのかもしれない。

 部屋に入るとやはり入り口が閉まった。

 とても広い部屋だ。

 いやいや、感想を抱いている場合ではない。

 魔法の詠唱だ。既に中央にいるゴブリンは杖を掲げていた。

「【土】【干渉】【壁】【強く】【固定】【複製】魔法名“強土双壁”」

 相手の魔法の完成よりも早く魔法を完成。そして、発動させることが出来た。土が盛り上がりオレの左右にゆとりを作りながらも二枚の壁が出来上がる。背後の壁から向こうの壁。

    天井と床。オレはこの部屋を三つに仕切った。

 ゴブリンが生まれ落ちた。天井から落ちてくる。床から這い出してくる。しかしそれだけだ。そこまでの密度にはならない。

 渋谷の交差点ほどもいない。有象無象、貧弱なゴブリンがたくさんいて、それを呼び出した一人じゃ何もできないいじめっ子がいるだけ。

 そう考えたら怖くない。

 この状態でオレは巨大な部屋にいる大量のゴブリンを相手にしているのに実質直線の敵しかいない。

 スキルによるスペック補正は大部屋全体なのにオレが相手するのは直線だけ。ヌルゲーである。

 オレは無策に走り寄ってくるゴブリンにおもむろにショートソードを振りかざし斬りかかる。オレの理解の進まない速さでゴブリンの命はついえた。

「上がりすぎて制御しきれないなっ!?」

 認識しきれない速さの攻撃が可能になり、少し混乱している。いや、かなり。慣れるには時間がいるな。体は反応する。頭が追い付き切らない。

 オレは切って切ってきて、刺して殴って、斬りかかった。右手は既に血糊でべっとりと濡れ、滑って仕方ない。

    ショートソードの方はまだいけそうだ。目の前の敵だけに集中できるのはやりやすい。

 機械のように、作業を繰り返す。柔軟に繰り返す。

 オレはこいつらよりも強い。あのゴブリンよりも強い。

 あの杖持ちよりも強い。

 ただそれだけでいい。

「オレは、生きている。」

 この疲労は、この高揚はその証明だ。


ぎゃぁいぎぃぃーー!?ぎゃぎゃぎゃぁ!!


 あのゴブリンは減って行く配下に驚愕を覚えたのか何度も杖を振りかざす。その度にゴブリンが生まれる。この壁の外はどうなっているのだろうか。

 思考する余裕が生まれてきた。

 動きに目や思考が慣れてきた。

 思考に余裕が生まれる。

 ……また一体ショートソードで殺す。

 足元にはドロップしたものが転がっている。

 邪魔だ。

 壊さない程度の力で壁の方に足で弾く。その繰り返しだ。
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