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④
しおりを挟む「おい、大丈夫か?」
昼休みになってもデスクで座ったまま動かない僕に同期の世良が声を掛けた。
「あ…うん。大丈夫だけど…」
「体調でも悪いのか?二日酔い?」
「別に大丈夫だって」
「ならいいけどよ。つかお前朝から何か変だぞ?事務の子達も気にしてたし」
「ああ…ちょっと寝不足で。悪い」
とっさに嘘をついた。ただただ放っててほしかった。けれど世良に僕の気持ちなど分かるはずもなく、おせっかいを続ける。
「そっか。ま、仕事しなくてもしてるフリだけしとけよ。じゃないと課長がうるせーから」
「そうだな」
同じ年の同じ日に入社してるのだから、言われなくてもそれぐらい知ってるよと思った。
「昼飯行くか?」
「昼飯?」
(ああそっか…今日は弁当持って来てなかった…)
ここ最近は彼女が前日に用意した弁当箱に、朝炊けるように設定しておいた白米を足して持参していた。しかし今朝、僕が起きると彼女は姿を消しており、弁当も用意されていなかった。
世良と会話をした事で一瞬だけ気が紛れたが、すぐに思い出してしまって駄目だった。
「こうやってお前と昼飯行くのわりと久しぶりだよな」
「そうか?この前定食屋行っただろ」
「この前って…お前それ先月の話だろ?」
「そうだっけ?」
「そう。それに最近はずっと弁当持って来てたじゃん?だから誘いにくかったんだよ」
「そっか。じゃあ久しぶりだな」
それから僕達は会社を出て近くの定食屋に寄った。先月行った定食屋だ。相変わらず店内はごった返していたが、そのほとんどはうちの会社の人間だった。世良の言ってた事務員達もそこに居て、僕と世良が店内に入って来たのを見ると、僕達の方をチラチラと見た。
「おばちゃん!俺は生姜焼き定食!…お前は?」
世良はあらかじめ決めていたのだろう。席に着くなりそう言った。
「あ…じゃあ同じで」
店員のおばちゃんは僕の声が聞き取れなかったらしく、「え?」っと近付いて来た。世良が「生姜焼き二つ!」と言い直した。
この一ヶ月ほぼ毎日彼女の手料理を口にしていた僕にとって、ここの生姜焼きは味が濃すぎてくどく感じた。僕はふた口ほど食べるとため息をついて箸を置いた。味噌汁も味噌が沈殿してしまって何か分からない汁物になっていた。世良はそんな僕に気付いていたが何も言わず食べ続けた。
彼女は一体どこに行ったのだろう?彼女のスマホの番号は知っていたがこの一ヶ月一度も電話した事がない。電話番号を登録する事によってメッセージアプリにも彼女の連絡先が追加されたが、それで連絡を取った事もなかった。
もちろん理由はあった。万が一、僕の好意で勝手に彼女を保護した事が問題になった際に余計な証拠を残さない為だ。
「昨日のセックスは良かったね」「今日はフェラで抜いてよ」などと18歳の女子高生との卑猥なメッセージのやり取りが見つかればどうだ?
それを見た彼女の親や警察、教師達はどう思うだろうか?想像するだけでゾッとする展開が待ち受けているだろう。
内容をセーブして必要最低限のやり取りだけをすれば良いだけだとも考えたが、そう考えてる内に何も痕跡を残さないまま一ヶ月が経過してしまっていたのだ。
すると食べ終わった世良が僕に言った。
「お前今日、絶対変だよ。初めは体調でも悪いのかと思ったけど…何かあったのか?俺でよければ相談に乗るけど」
世良の気遣いには感謝したが、語調に好奇心がむき出しになっているのを感じたので何も言わなかった。相談したところで彼女の行方が分かるわけでもないし何も解決はしない。それに何て言えば良いのかも分からなかった。
保護していた家出中の18歳の女子高生が今朝、突然どこかに消えたんだ。ちなみに僕達は毎日セックスをしている、羨ましいだろう?とでも言うか?
多分翌日には根も葉もない噂もプラスされて、社内はその噂でいっぱいになるだろう。
すると突然、僕達の席に食べ終わった事務員二人がやって来た。
「お疲れ~」
馴れ馴れしく僕の隣に座ったのは二つ歳上の先輩の高島だった。派手な茶髪に下品なアクセサリーを着けた彼女はこの場にふさわしくないひどい香水の香りを撒き散らせた。
高島は後ろ姿はそこそこ良いのだが、顔は瑠花ちゃんと比べるの天と地の差だった。それに何事にもすぐマウントを取ろうとするから僕は彼女が好きではなかったし、この人は典型的な井の中の蛙人間だと思っていた。
「お疲れ様ですぅ」
対面の世良の隣には僕達より一つか二つ後輩にあたる奥田か奥野が座った。多分、奥野だ。こいつは事務職カースト上位の高島の腰巾着の一人だった。目が離れているのが特徴だったので、僕は心の中で彼女をヒラメと名付けていた。
世良は日頃から事務の女性陣と仲が良く、この時も世良に話掛けに来たのだろうと思った。僕は眼前の食べ残した定食に視線を落として存在を消そうとした。すると隣の高島が僕に言った。
「イッチーどうしたの?食欲ないの?」
(イッチー……?)
「まぁ、今日は。多分疲れてんすかね」
「ふーん、なら良いけど」
「朝からちょっと雰囲気おかしかったですもんね」と前に座るヒラメも続けた。
「そうかな?誰にでもそういう日ってあるでしょ?だから心配されるほどの事でもないと思うけど」
僕が答えると高島は話を遮った。
「てかさ、イッチーもそろそろいい歳なんだから彼女の一人でも作りなよ!何なら私が合コンセッティングしてあげよっか?イッチー、顔はそこまで悪くないからいけそーだよ」
(は?何こいつ……?)
この場にいるのがただただ不愉快だった。世良は高島の話にノリノリだったが僕は首をかしげて苦笑した。
「彼女が欲しくなったら相談しますよ。今のところそういうのは大丈夫なんで」
僕が答えると高島はつまらなさそうに「ふーん」と言った。そして世良と二、三言話して席を後にした。僕は彼女の背中を見ながら(てめぇの方こそ人の心配してねーで自分の心配しろよ)と思った。
世良は彼女達が店を出る時に笑顔で手を上げ、こっちに向き直って言った。
「なぁ、お前マジでで合コンしないの?」
「ああ、興味ないよ」
「ったく、何だよ。つまんねーの」
「悪いな。今はそういう気分じゃないんだよ」
「じゃあさ、久しぶりに風俗でも行かね?ネットで見てたら最近新しい店出来たそうだし」
「風俗かぁ……」
僕の脳裏に彼女の膨れっ面が浮かんだ。
「いや、それもいいや。最近そういうの全然なんだ。前ほど性欲無いって言うか」
「お前ほんと大丈夫か?」
「ああ、大丈夫。また気が乗ったら言うからその時行こうぜ」
「おう、分かった」
それから僕達は店を出て、社内の喫煙所で休憩が終わる13時ギリギリまで煙草を吸いながら談笑した。
午後からも僕は上の空で仕事も全然はかどらなかった。この状態が続けばさすがに仕事にも影響が出るだろうと思ったので、明日の朝まで待って彼女が帰って来なければこちらから連絡を入れようと決めた。
そう決めても今日は駄目な日だと身体が訴えていたので、定時になると僕はすぐに会社を出た。
(ほんとあいつどこに行ったんだ?合鍵持たせてるんだから消えるならせめてそれだけは置いていけよな…)
少しむしゃくしゃしてきた。この日僕は何処にも寄らず真っ直ぐ家路に着いた。郵便受けを見たが、彼女の行方の手掛かりになるようなものは入っていなかった。唯一入っていた不動産会社のチラシをくしゃくしゃに丸め、集合ポストに設置されているゴミ箱に投げ入れた。
鍵を開けて家に入ると玄関に彼女のローファーが綺麗に揃えて置いてあった。
「あっ…!」思わず声を上げる。それに昨日よりも靴が何足か増えている。居間の方に目を向けると電気がついており、ガチャガチャと音がした。小走りで居間に向かうと彼女は制服姿のまま皿を洗っていた。
「あ!たっくんおかえりぃ!」
手を止めて振り返った彼女に一瞬だけぶちギレそうになった。だけどすぐに冷静になる。別に彼女は何も悪い事をしていない。いつもなら寝ている時間に家を出ていただけだ。
僕は震える声を制止ながら言った。
「朝からどこ行ってたの?心配したろ」
すると彼女はニコッとしながら「おばあちゃん家!」と言った。
「荷物も全部無かったからびっくりしたよ」
すると彼女は恥ずかしそうに「ああ~」と言い、荷物を入れ替えたと説明した。どうやら家出してこんな事になると思っていなかった彼女は、自分が持って来た私物が気に入らなかったそうだ。
部屋着や下着にしても最低限の数だったし、靴も何足か持って来たかったようだ。だから学校に行く前に一旦祖母の家に寄ってスーツケースを置いて、学校帰りにそれを持って実家に寄り、荷物の中身を一式入れ替えたそうだった。
「わざわざそんな事しなくても追加で荷物だけ持ってくればよかったんじゃ」
「そう思ったけどスーツケースもこれしか持ってないし、他に代わりになる大きい鞄も無かったの」
「荷物が全部無かったから心配したよ。それに弁当も無かったし…」
彼女は申し訳なさそうに笑った。
「ほんとごめん!心配掛けちゃったよね。それにお弁当は食材が無かったの…」
「あれ、冷蔵庫何も無かったっけ?」
僕が冷蔵庫を開けると、そこにはわずかな調味料と卵しか入っていなかった。
「ほんとだ…買い物行かなきゃやばいな」
「私もついてくっ」
「そう?じゃあ早速出掛けようか。今晩の食材も買わないとだめだし」
そして僕達は一緒に部屋を出た。駐車場に向かいながら僕は聞いた。
「てかさ、実家って…親父さんは?仕事してないなら家に居たろ。話し合いはしたの?」
「ううん、どっか出掛けてた。居たら話そうと思ったけど」
「おばあちゃんは?」
「おばあちゃん?おばあちゃんは全部知ってるよ」
「何て言ってるの?」
「大学生の先輩の家に居るって嘘ついたら迷惑だから家に帰りなさい、それが嫌ならおばあちゃんのとこにおいでって」
それはごもっともだと思った。
「はは、僕は大学生って設定か」
「別におばあちゃんになら全部本当の事話しても良かったけどね」
「まぁ、社会人より大学生の方が暇だからな。そっちの方が気を遣う量がまだマシだと思うよ」
「そうかなぁ」
「うん、そうだよ」
僕達は車に乗り、最寄りのスーパーではなく少し離れたショッピングモールに向かった。
「あぁ…こんな事なら着替えれば良かった…」
彼女は制服のまま口を尖らせて言った。
「別にいいじゃん」
「ええ~だって制服じゃない方がデートっぽいじゃん」
彼女の口から出たデートというワードが少し嬉しかった。
「僕は瑠花ちゃんの制服姿好きだけどね。今さらだけどすごいエロく見える」
「たっくん言ってる事がオヤジだよ」と彼女は笑った。
立体駐車場に車を停め、車を降りようとすると彼女は僕を引き留めた。
「ねぇ」
「ん?どした?」
「おっぱい触って……」
「は?」
エンジンを切って静かな車内がさらに静まり返った。彼女はシャツの第二ボタンまで外しながら半笑いで続ける。
「今日一日たっくんが私の事ずっと考えてたって思うとちょっと濡れてきちゃった…」
「変なやつだな。それにここではさすがにちょっと気が引けるよ」
車の横を子連れの家族が通り過ぎた。
「ほら、人もいるし。帰るまで我慢しろよ」
「ここも触っていいよ?」
彼女は僕の話を無視してスカートの裾を捲り、白い太ももをパンティが見えそうなぐらいまで見せた。
「ほんと駄目だって…我慢できなくなる」
「ふふっ、たっくん可愛い……」
僕は無言で彼女を抱き寄せてキスをした。彼女の唇はリップクリームの桃の香りが漂い瑞々しかった。車内に唾液と唾液が混ざり合ういやらしい音が響く。僕は彼女が外したシャツのボタンの隙間から手をスルりと入れ、彼女の柔らかい胸を揉んだ。
「んっ…あん…たっくん触り方エロいよ…」
「そうかな?別に意識してないけど」
そう言って手探りでブラの隙間から乳首を指で弾いた。僕が触れた時には、すでに彼女の乳首はビンビンに勃起していた。
「あ…もう乳首が反応してる」僕はいたずらっぽく笑う。
「あぁんっ…もうっ…!」
「瑠花ちゃんは感じやすいもんな…」
そして抱き寄せたまま彼女の耳に舌を這わせて、乳首を触っていた右手を下半身に移動させた。ゆっくりと彼女の太ももを撫でると、彼女は撫でる度に身体をビクッと揺らした。
「くすぐったい?」
「んんっ…はあっ…」彼女は答えなかった。僕は右手を太ももからスカートの中に入れた。彼女のパンティは水に浸したかのように濡れていた。僕はパンティの上から何度か陰部を擦り、そしてVラインの隙間から中指を入れた。
中指を第一間接まで入れて、速く動かすと「クチュクチュクチュッ」と音がする。水を張った洗面器に指を入れて同じ事すると似た音が出るなと思った。
「ああっ…あぁんっ…!はぁ…気持ちぃ…んん」
「そりゃ良かった」
次第に中指をどんどん膣の奥へと押し込む。彼女の喘ぎ声は指が奥に行くほど大きくなった。僕は彼女の足をシートに上げてM字開脚の姿勢を取らした。当たり前だがフロントから車内を見ると、開脚した彼女のパンティは丸見えだった。
「やぁん…たっくん恥ずかしいよぉ」
「こういうのちょっと興奮しない?」
僕が笑うと彼女も恥ずかしそうに頷いて「する…」と言った。そして手で顔を覆うように隠した。
僕は周囲の人の目を気にする事なく手マンした。ショッピングモールの駐車場でカーセックスをする勇気は無いくせに、手マンは車体が少し揺れるほど全身を激しく使って行った。
ただでさえ敏感な彼女は喘ぎに喘ぎまくり、すぐに絶頂に達した。
「ああんっ!あっ…!んん!あぁ!イッちゃうよぉ…!!」
「イッちゃえ」
そしてガン!っと指を奥に入れた時に彼女は悲鳴に似た喘ぎ声を上げてイッてしまった。
「ああーーっ!!」
シートにぐったりともたれた彼女の股の下は、パンティから漏れ出した愛液でビトビトになっていた。
「たっくんごめん…汚しちゃった…」
僕は彼女の頭を撫でて、愛液をサッとティッシュで拭き取った。
「気にしなくていいよ。別に汚いものじゃないし」
「ええ~私は何かやだなぁ」
「何でだよ、自分のだろ」と僕は笑い、煙草を吸った。彼女は頬を赤らめぐったりしたまま僕を見ていた。
「これ吸い終わったら中入ろうか」
「やだ」
「へ?何で?」
「私ばっかやられっぱなしだしムカつく…」
「何だよそれ」
彼女は助手席から手を伸ばして僕の股間に触れた。
「ちょー勃ってんじゃん。出して」
「マジかよ」
とは言ったものの、僕はあっさり勃起した性器を出した。
「まだ風呂入ってないから臭うかも」
「もう臭ってるよ」と彼女は笑った。
「でもいいの。たっくんのおちんちんだから…」
そう言って彼女は僕の性器を掴んで、亀頭からゆっくりを包皮を剥いた。彼女はニヤニヤと手を動かしながら聞いた。
「ねぇ、たっくん?今更だけどさ」
「あぁ、気持ちいい…ん?」
「私って…たっくんの何なの?」
「え?」
彼女は手コキを緩める事なく聞いた。
「そういう事しながらする話じゃないと思うけど」
「それとこれは似てるけど別よ。愛と性欲は分けないと」
「うーん…よく分からん」
「ははっ、じゃあ先にスッキリしよっか?私たっくんをすぐイカす自信あるよ」
「ほんとかっ…よ!!」
僕が答えると同時に彼女は性器を咥え、スコスコと竿をしごきながら頭を上下に振った。
「ああ…ちょ…もう無理出そう…!」
「んん~…」
あろう事か僕は一瞬で彼女にイカさせる事となった。彼女は口内に放出された精液を当たり前のように飲み込み「苦っ…」と顔をしかめた。
「苦けりゃ出したらいいのに」
「いいの!もったいないじゃん」
「ええー、そうか?僕が女なら絶対飲まないよ」
僕が言うと「駄目な女ね」と彼女は笑った。
新しい煙草に火を着けると彼女は僕に聞いた。
「それで…私はたっくんの何なの?」
改めて聞かれると答えるのは難しい。彼女とセフレという単語が頭をよぎった。すぐに答えられずに彼女を見ると、彼女は笑いながら「めんどくさい女…とか思ってんでしょ」と膨れた。
「いやいや、そんな事ないって。うーん…友達以上恋人未満的な?」
「そんな中途半端な回答は認めません」
彼女は僕に付き合うという事を意識させた。当然僕は彼女に好意を寄せていたし、付き合うのにも全然抵抗はなかった。ただ唯一歳の差だけが引っ掛かった。
「逆に聞くけどさ、瑠花ちゃんは僕が彼氏で良いの?10歳も歳上だけど…」
「歳なんか関係ないよ。私たっくんが好きだもん」
「僕も瑠花ちゃんの事好きだよ。いなくなった時はすごく心配したし気が気でなかった。ただ…」
「ただ?」
「今の僕達の歳の差はかなり影響あると思うんだ。そりゃもちろん世の中そんな人達はたくさんいるよ?だけどさ、それは50歳と40歳とか35歳とか25歳とかの年齢層だと思うんだよ」
「うん、それで?…たっくんの言ってる事よく分かんないよぉ」
僕は彼女に申し訳ない気持ちとこの場の空気を悪くしたくない一心で口をつぐんだ。だけどここまで言ってそれが一番彼女に失礼な事だと思い、優しく言った。
「だからさ、28歳の僕は今、彼女ができたら意識するのは結婚だろ?年齢的にも…だけど君はまだ18だしそこがちょっと違うと思うんだ。そりゃ長く続けば徐々にそういう考えにもなるだろうけど、スタート時点の意識?が違うじゃん」
「何で?私もう結婚できる歳だよ?」
「そういう事じゃないんだ。まだ若いんだし年相応の彼氏の方が良いんじゃない?って事。僕は社会人だし時間にも制限がある。学生同士のカップルみたいな頻度でデートもできない。だから普通の女子高生が経験するような青春を与えられないと思うんだ。それにどっちかと言うと婚期に焦って寄ってくる女性の方が気も楽なんだよ」
「じゃあたっくんは結婚を前提にしか付き合えないって事なの?」
「必ずしもそうじゃないけど…だけどまぁその方がありがたいかな。一応結婚願望はあるし」
「それに…」この際はっきりさせておこうと僕は続けた。
「正直世間体も気になる。30前の僕が18歳の女子高生と付き合ってるってなると…皆が皆良い顔をしないだろう?え?何で?ってなるのが普通だしあらぬ誤解を招かれても困る」
「そんなの気にしなけりゃいいじゃん。私は気にならないよ」
「僕も何年か前までならそうだったよ。自分の人生に他人なんて関係ねー!って感じだった。ちょっと人と違う事が格好良いと思ってたし個性が大事だとも思ってた。だけど社会に出て徐々に変わったんだ。なるべく波風立てたくないっていうか…平凡であり無難な人生を求めてしまう」
「何それ全然分かんない」
「情けないけど結局僕は勇気が無いんだよ。他人から後ろ指指されてでも、自分がこう!って思った事を貫く勇気がさ」
彼女は伏し目がちで頷いた。
「けどこの一ヶ月瑠花ちゃんと一緒にいれてすごく幸せに感じた。僕は君が大切だし愛おしく思う。多分この感情は愛だろう」
「え…?」
「別に今日からセックス出来なくなったとしても君を愛おしいと思う気持ちは消えない。一緒に居られるだけで良い」
これはほとんど本心だったが、少し見栄を張った。
「さんざんセックスしといてあれなんだけど…ほんの少しだけ時間くれない?君の彼氏になる覚悟がしたい。ノリじゃなくて真剣に付き合いたいからさ」
「うん…!」彼女の目には涙が溜まっていたが、口を尖らせて必死に堪えていた。僕は見て見ぬふりをしたが、彼女の必死の抵抗に少し笑えた。
「何で笑うの?」
「別に。何でもないよ」
彼女は顔を背けて鼻をすすった。僕はまた笑ってしまいそうだったので先に車から降りた。
「遅くなっちまったな。早いこと飯買わねーと」
僕達ははや足でエスカレーターに乗り、一階にあるスーパーを目指した。制服姿の彼女を連れて歩く僕にすれ違う人々はちらりと視線を送る。
(あ~嫌だな。これ絶対援交に見えるよな、着替えさせたらよかった)
僕が頭を抱えてると、彼女は急に立ち止まり僕に言った。
「ねぇねぇ、お願い聞いてくれる?」
「どうした?」
「プリクラ撮ろうよ」
「はい?今?」
僕は唖然とした。
「やだよ。それにプリクラなんて何年も撮ってねぇーし」
「たっくんはどうせ盛れないから別にいいじゃない。すぐ終わるから!行こっ」
彼女は強引に僕の手を取り、ゲームコーナの隅に設置されているプリクラ機に向かった。最後に撮ったのはいつぶりだろう?どちらにせよ僕が目にしたプリクラ機は自分の知っている機種とは違った。
それにプリクラコーナーも昔と違って(女子専用)や(カップル専用)みたいな文言がでかでかと表記されており、男同士で撮っていた頃が嘘みたいに現在は男子禁制の雰囲気があった。
もちろん回りは女子高生や女子大生だらけ。カップルもいたが、とにかく女だらけだった。僕はなるべく早くこの場を去りたがったが、彼女は機種を真剣に選んでいる。
「何してんの?機種なんて何でもいいじゃん」
「ちっちっ、たっくんは黙ってなさい」
「早くしてよ、ここにいるの恥ずいわ」
「ははっ、ちょっと待ってぇ」
居心地が悪すぎて僕は彼女が機種を決めるまで少し離れる事にした。プリクラコーナーを出た所にあるガチャガチャコーナーで何気なくガチャガチャを眺めて待った。
(へぇー。最近のガチャガチャはどれも高けぇんだな。…うわっ、これ千円もするじゃん)
ガチャガチャを見ていると背後から男の声がした。
「おっ!こんなとこで何してんだよ」
「え?」
振り返るとそこには世良がいた。
「えっ…何で…?」
驚きのあまり言葉に詰まった。世良は笑いながら「夕飯の買い物だよ」と言った。
「お、おお…そうなんだ。じ、じゃあな」
僕は同様しながら世良に背を向けた。すると僕の前に彼女がいた。
「たっくんお待たせ、空いてるし早く撮ろっ」
僕は彼女を一瞥し、振り返って世良を見た。世良も僕と同様に言葉を失っている。そして僕に向かって言った。
「一条…お前何してんだ…?」
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