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第3部 皇国動乱編
嘘を吐いているのは誰だ
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「必要がなくなったって!それって、もしかしてモーネの記憶が戻ってるってこと!?」
「残念ながら、はっきりとは分からない。少なくとも、本人は戻っていないと言っているし、こればっかりは外から確かめることもできないからね。……ただ……」
「……ただ?」
「……ただ話していて時々、ふっとそう感じることがあるんだよ。何というか、こう……モーネが、今までとは違う意識で過ごしている、という気が……」
でも、それだけなら記憶が関係しているとは限らない。
薬のおかげで、中身も本来の年齢にふさわしいところまで成長した結果かもしれないし……。
「……モーネ、魔獣を倒したんだよ」
「そうらしいな。ルートさんから聞いたよ」
「すごい、びっくりした。モーネにそんなことができるなんて……ね、そんな風になるチャンスなんて、ここに来てからの間にはなかったよね?」
「そうだな。本当に、不思議だ」
ソルの言葉に、フォードも深く頷いた。そして……。
「実はモーネの、その後の行動も予想外だった。まさか、目を覚まさないソルの側を離れて戻ってくるなんて……」
「えっ!?それは、じいちゃんが戻って来いって言ったからじゃないの!?」
「そんなはずはない。私は、できることならモーネにソルの側についていて欲しかった。そのために、救護所の手伝いをしながらそこに置いてもらえるよう、タロー先生に手紙も書いたんだぞ?」
「そんな、まさか……」
あの時、目を覚ましたソルの側についていてくれたのはシェリー。そのシェリーは、モーネがフォードに呼ばれて仕方なく帰っていったと言っていた。
でも、今、フォードは自分がモーネを無理に連れ戻した訳ではないと言う。
ならば、シェリーの話が間違い?
そしてモーネは騙されて、或いは自分の意思でソルを置いて帰ったということ?
「手紙は……その手紙はどうしたの?」
「ルートさんに預けた。モーネも最初はソルについている、目を覚ますまで帰らないと言い張ったらしくて、ルートさんだけが1回、こっちに戻ってきたんだ。その後すぐ、薬草の追加を持って行ってくれるというので、手紙はその時に預けた……」
「それって……」
まさか預けられたルートが、握りつぶした?
それとも受け取ったタローが、なかったことにした?
そうでなければモーネ本人が。手紙を振り切って、自分の意思で帰って行ったということも考えられる。
その場合にはシェリーにも、嘘を吐いて。
――それとも、シェリーも嘘を吐いてるのか?
もう何が何だか分からないけれど、とにかく誰かが、何かを隠している。
その結果、何がどう変わったのかすらも、今のソルには分からないけれども。
――でも、とにかく誰かは思ったんだ。あの場所にモーネを置いといたらいけないって。
或いはモーネ自身が、自分はここに居てはいけない、と。
「ただいまー!長く話し込んじゃってごめんね!ソル、改めておかえりー!!」
声と共に扉が開いたかと思うと、モーネが勢いよく飛び込んできた。
「もしかして、ソルがいなかった時の話、フォードおじいちゃんから聞いてたりする?僕も仲間に入れて!」
どうやら、中での会話はモーネに聞かれずに済んだようだ。
それに安心しながらも、どこか複雑な気持ちで2人は顔を見合わせた。――今、ここにいるモーネは、実際には何を考えている?
そんなソル達の思いを知ってか知らずか、モーネは軽い足取りでテーブルに近寄ってきて……。
「あ……この話……してたんだ……」
テーブルの上には大きく開かれた『薬草ノート』
ページには、ソルがスケッチした『アカシゴキ』の絵と、その特徴や作用が書かれている。
「ごめん……ソル。僕、約束したのに……その、枯らしちゃって……」
モーネの顔がみるみる曇っていく。
「だ、黙ってようと思ってた訳じゃないんだよ?ちゃんと、落ち着いたら話そうって思ってたんだけど……」
――もしかして他にも、そういうことがあるんじゃないの?
でも、今この場でそれを口にするには、勇気が足りない。
だって、もし何か1つでも間違えたら。言い方1つ、順番1つでも間違えてしまったら、モーネはここから居なくなってしまうかもしれない、そう思うと口を動かすことはできなくて……。
「……ごめん、これアカシゴキっていう薬草なんだけど。結局、新種でも何でも無かったんだ。リフォルテの話だと、北の町ではよく生えてる草なんだって」
「あ……そう……えっと……」
「だから、商人に頼めば普通に手に入るし、もっと信頼できるリフォルテにお願いすればきちんと品質の良い物を送ってもらえたりもする……っていうか、じいちゃんは多分、途中で気付いてたでしょ?でも、俺が大袈裟に頼んでったせいで、2人とも無理に育てなきゃならなくなって、ごめ……」
「ソル!」
突然、両肩にパンと手が置かれた。優しい気遣うような感じではなく、まるで話を打ち切るみたいに強く。
「薬草園に行こう!今すぐ!」
「え?今すぐ?」
「うん、良いでしょ?フォードおじいちゃん!」
「ああ、構わないよ。ただ、ソルも長旅で疲れてるだろうから、程々にな?」
「はーい、気を付けます。行こ、ソル!」
今度は痛くないくらいの、優しさのこもった力で。手を掴んでくるモーネに引っ張られながら、ソルは薬草園へと連れて行かれた。
「残念ながら、はっきりとは分からない。少なくとも、本人は戻っていないと言っているし、こればっかりは外から確かめることもできないからね。……ただ……」
「……ただ?」
「……ただ話していて時々、ふっとそう感じることがあるんだよ。何というか、こう……モーネが、今までとは違う意識で過ごしている、という気が……」
でも、それだけなら記憶が関係しているとは限らない。
薬のおかげで、中身も本来の年齢にふさわしいところまで成長した結果かもしれないし……。
「……モーネ、魔獣を倒したんだよ」
「そうらしいな。ルートさんから聞いたよ」
「すごい、びっくりした。モーネにそんなことができるなんて……ね、そんな風になるチャンスなんて、ここに来てからの間にはなかったよね?」
「そうだな。本当に、不思議だ」
ソルの言葉に、フォードも深く頷いた。そして……。
「実はモーネの、その後の行動も予想外だった。まさか、目を覚まさないソルの側を離れて戻ってくるなんて……」
「えっ!?それは、じいちゃんが戻って来いって言ったからじゃないの!?」
「そんなはずはない。私は、できることならモーネにソルの側についていて欲しかった。そのために、救護所の手伝いをしながらそこに置いてもらえるよう、タロー先生に手紙も書いたんだぞ?」
「そんな、まさか……」
あの時、目を覚ましたソルの側についていてくれたのはシェリー。そのシェリーは、モーネがフォードに呼ばれて仕方なく帰っていったと言っていた。
でも、今、フォードは自分がモーネを無理に連れ戻した訳ではないと言う。
ならば、シェリーの話が間違い?
そしてモーネは騙されて、或いは自分の意思でソルを置いて帰ったということ?
「手紙は……その手紙はどうしたの?」
「ルートさんに預けた。モーネも最初はソルについている、目を覚ますまで帰らないと言い張ったらしくて、ルートさんだけが1回、こっちに戻ってきたんだ。その後すぐ、薬草の追加を持って行ってくれるというので、手紙はその時に預けた……」
「それって……」
まさか預けられたルートが、握りつぶした?
それとも受け取ったタローが、なかったことにした?
そうでなければモーネ本人が。手紙を振り切って、自分の意思で帰って行ったということも考えられる。
その場合にはシェリーにも、嘘を吐いて。
――それとも、シェリーも嘘を吐いてるのか?
もう何が何だか分からないけれど、とにかく誰かが、何かを隠している。
その結果、何がどう変わったのかすらも、今のソルには分からないけれども。
――でも、とにかく誰かは思ったんだ。あの場所にモーネを置いといたらいけないって。
或いはモーネ自身が、自分はここに居てはいけない、と。
「ただいまー!長く話し込んじゃってごめんね!ソル、改めておかえりー!!」
声と共に扉が開いたかと思うと、モーネが勢いよく飛び込んできた。
「もしかして、ソルがいなかった時の話、フォードおじいちゃんから聞いてたりする?僕も仲間に入れて!」
どうやら、中での会話はモーネに聞かれずに済んだようだ。
それに安心しながらも、どこか複雑な気持ちで2人は顔を見合わせた。――今、ここにいるモーネは、実際には何を考えている?
そんなソル達の思いを知ってか知らずか、モーネは軽い足取りでテーブルに近寄ってきて……。
「あ……この話……してたんだ……」
テーブルの上には大きく開かれた『薬草ノート』
ページには、ソルがスケッチした『アカシゴキ』の絵と、その特徴や作用が書かれている。
「ごめん……ソル。僕、約束したのに……その、枯らしちゃって……」
モーネの顔がみるみる曇っていく。
「だ、黙ってようと思ってた訳じゃないんだよ?ちゃんと、落ち着いたら話そうって思ってたんだけど……」
――もしかして他にも、そういうことがあるんじゃないの?
でも、今この場でそれを口にするには、勇気が足りない。
だって、もし何か1つでも間違えたら。言い方1つ、順番1つでも間違えてしまったら、モーネはここから居なくなってしまうかもしれない、そう思うと口を動かすことはできなくて……。
「……ごめん、これアカシゴキっていう薬草なんだけど。結局、新種でも何でも無かったんだ。リフォルテの話だと、北の町ではよく生えてる草なんだって」
「あ……そう……えっと……」
「だから、商人に頼めば普通に手に入るし、もっと信頼できるリフォルテにお願いすればきちんと品質の良い物を送ってもらえたりもする……っていうか、じいちゃんは多分、途中で気付いてたでしょ?でも、俺が大袈裟に頼んでったせいで、2人とも無理に育てなきゃならなくなって、ごめ……」
「ソル!」
突然、両肩にパンと手が置かれた。優しい気遣うような感じではなく、まるで話を打ち切るみたいに強く。
「薬草園に行こう!今すぐ!」
「え?今すぐ?」
「うん、良いでしょ?フォードおじいちゃん!」
「ああ、構わないよ。ただ、ソルも長旅で疲れてるだろうから、程々にな?」
「はーい、気を付けます。行こ、ソル!」
今度は痛くないくらいの、優しさのこもった力で。手を掴んでくるモーネに引っ張られながら、ソルは薬草園へと連れて行かれた。
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