ちんこと女神さま

halsan

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ゲスとちんこと女神さま 転

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 イケメンは二人を別々の単体女優としてデビューさせることにしました。

 姫さまは腐っても王族ですので、まずはイメージビデオから。
 これを有料会員限定のサイトで取扱います。

 一方のリリィには、過酷な撮影が待っていました。
 そう、それはそれは過酷な撮影だったのです。
 
 沢山の男に囲まれたリリィは抵抗しました。
 しかし監督は容赦なしです。

「お前がそんなだと撮影が進まないんだよ!汁男優しるだんゆうにだって、生活がかかっているんだよ!」

 他人の生活のことを言われると、小市民のリリィは何も返せません。
 皆に迷惑をかけているんだと脅かされると、自分が悪いように思えてしまいます。
 こうして泣きながら、リリィは撮影を続けました。
 
 何本か撮影したあるとき、リリィは意を決して、マネージャーに契約解除をお願いしました。
 するとマネージャーは、少し驚いた顔をしてから、ちょっと待っていてねとリリィに告げます。

「それじゃもう一度言ってくれる?」
 マネージャーに促され、リリィはもう一度彼にお願いしました。
 涙を流しながら。

「契約を解除させてください」

「はいオーケー。ばっちり録音させてもらったよ」
 必死なリリィのお願いをもてあそぶかのように、マネージャーはリリィの前に契約書を突き出し、小さく書かれた『解約条項』を指差しました。
 
「読めるかな?」

 リリィはマネージャーに促されるまま契約書に目を走らせ、走らせ、走らせ……。
 リリィは絶望しました。

「さて、それじゃこの場で、違約金を用意してもらおうかな」
 解約条項のところには、次のように記載されていたのです。
 
「乙が契約を破棄する場合は、宣言と同時に違約金を即金にて甲に支払わなければならない。支払えない場合は、乙はこれまでの出演作に関する権利をすべて放棄した上で乙の引退作を撮影し、この権利を甲に譲渡しなければならない」

 引退作と銘打めいうった撮影で、リリィは文字通り『ぼろ雑巾』にされてしまいました。
 人間としての尊厳を奪いつくされて。

 その日、リリィは池に身を投げました。

 さて、女神さまはちんこにあることをお願いすると、何十年かぶりにお忍びで地上に姿を現しました。
 その姿はちょっときれいな街娘。
 でも、瞳の奥にえっちな光をまばたかせ、しっとりと濡れた唇がつややかに光るさまは男心をくすぐります。
 
「ここね」

 女神さまはリリィから聞きだした芸能プロダクションの場所を確認すると、その近くの交差点で網を張ることにしました。
 すると、女神さまのフェロモンに誘われるかのように、一人の黒服が女神さまに近づいてきます。

「ねえ、芸能界に興味はないかな?」
 お決まりのセリフです。
「別に……」
 女神さまは興味なさそうな返事をします。
 でも、その場から逃げるようなそぶりは見せません。

「きっとあなたなら、テレビや映画とかで引っ張りだこですよ」
 女神さまはちょっとだけ反応して、ちらりと黒服に視線をやります。

「最初はフォトジェニックからはじめるのもお勧めですよ?」
「どうしようかしら」

「大丈夫ですよ。ちゃんとしたプロダクションですから」
 黒服が差し出した名刺には『あんあんプロモーション』と記載されていました。
「そういうことなら……」

 こうして女神さまは、スラムにあるプロダクション会社の扉をくぐりました。
 
 女神さまをお迎えしたのは、イケメン社長と数人の男たち。
 ソファに座らされた女神さまの前に、契約書が差し出されます。
 
「まずは契約をいたしましょう」

 イケメン社長の笑顔とは裏腹に、いつの間にか女神さまの後ろには男達が、女神さまを威圧するかのように並んでいます。
 どうやら契約をしないと帰さないつもりのようです。

 契約書を見ると、『甲』のところには既に『あんあんプロモーション 代表取締役社長 池野いけの 面太めんた』と記載されています。
「ここにサインをしてください」
 社長が指差すのは『乙』の場所。
 
「ここにサインをすればいいのね」
 女神さまは契約書が動かないように左手で契約書の表面を押さえ、右手でサインを記入しました。
 
女神めがみ 沙真さま
 そのとき、ほんの少しだけ契約書が光ったような様子を見せましたが、誰も気が付きませんでした。

 早速イケメン社長は表情を楽しそうに歪めます。
「へえ、いい名前だね。それじゃ沙真ちゃん、早速撮影を開始しよう」
「いやです」
 いきなりの撮影拒否です。

 すると社長はふーんといった表情で女神さまを見つめました。
 イケメン社長は思いました。
 「いい女だ。一回の撮影でつぶすのはちょっと惜しい」
 しかし一方で、先日撮影した引退モノが、姫さまモノを凌駕する勢いで大人気なのも事実。
 そしたら最初からぼろ雑巾になってもらおうかと、イケメン社長は画策しました。

「それじゃ契約解除するの?」
「解除します」
「ちょっと待ってね」

 イケメン社長はボイスレコーダーを用意すると、もう一度女神さまに問いかけました。
「契約解除するの?」
「はい、契約解除します」
「はい録音完了」

 イケメン社長は一層表情をゆがめると、契約書を女神さまの前にかざし、、解約条項を指差しました。

「残念でした。ここを読んでくれる?」
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