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ハイエナのおっさん
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間もなく町というところで、アージュたち三人にイーゼル、フントとハイエナハウンドの群れを加えた一行と、ツァーグ、リスペルら風俗組合一行の二手に分かれた。
ツァーグたちはパド達の首とスピナルグラスの死骸とともに風俗組合へ第一報を速やかに報告する。
続けて商人組合およびボーデンからの使者でであるシュルトにも今回の魔物襲撃事件及び山岳地帯で起きている事態を報告した上で、ボーデン領主の問題として今後の対応について協議を始めなければならない。
また、並行して当初の領主案件であったハイエナハウンド子犬捕獲ミッションの手仕舞いおよび費用清算も速やかに行わなければならない。
一方でアージュ達は、馬車からマジカルホースに乗り換え、町をぐるりと大回りしながらアパートメントを目指した。
イーゼルはなぜかアージュから離れようとしないので、そのままアージュの背に掴まりながらマジカルホースに同乗。
フントのおっさんはハイエナハウンド達とともに、器用にも四本足で走ってついてきている。
そんな様子でしばらく走ると、以前アージュ達がぶっ殺したチンピラどもの隠れ家が見えてきた。
隠れ家といっても、クラウスが魔法で燃やしてしまったので、今は廃墟となった残骸が残るだけだが。
「フントのおっさん、この残骸がいい目印になるから、この辺でハイエナハウンドの連中を休ませてくれるか?」
「わかった」
フントも心得たように頷くと、一声吠える。
するとハイエナハウンド達は、夜の闇に乗じながら、廃墟の陰にその身を隠していった。
そのまま一行はアパートメントに一旦戻り、クラウスはフントと留守番、アージュはナイと商人組合に顔を出しに行く。
ちなみにイーゼルは相変わらずアージュの背中にへばりついている。
三人が商人組合に顔を出すと、眼鏡っ子受付嬢のフリーレが彼らに気付くや否や、カウンターを慌ててくぐりながら駆け寄ってきた。
「ナイさん、何があったの?」
「どうしたの、フリーレ?」
「さっき風俗組合のリスペルがやってきて、キュールさんとヴァントさんを半ば無理やり連れて行ったの。何か大事件が起きたからって!」
するといつの間にか売店のハーグさんもフリーレの隣に並んでいた。
「ほらアージュ、今日の運賃をキュールさんから預かっているよ。ところでクラウスが見当たらないけれど、何かあったのかい?」
ナイはぺこりとお辞儀をしながら、受領証と引き換えにハーグさんから本日分の運賃を受け取るも、二人に今回の件をどう説明したものかと困ってしまう。
するとアージュがつらそうな表情でフリーレたちに説明を始めた。
「実はオレ達がベースキャンプに荷物を届けた直後に謎の魔物に襲われてさ。魔物は何とか風俗組合の人達が倒したんだけれど、向こうもほとんどの人がやられちゃったんだよ」
同時にフリーレ達に見えないように、ナイのわき腹を肘で小突くと、ナイも心得たかのように報告を続けた。
「多分キュールさんとヴァントさんは、この事件のことで呼ばれたのではないでしょうか」
ナイの報告に続けて、アージュもハーグに対し、感謝とばかりにぺこりと頭を下げる。
「クラウスは先にアパートメントで留守番をしているよ。心配してくれてありがとう」
二人の報告にフリーレはぶるりと身を震わせ、ハーグは驚いた表情となるも、すぐに二人へと安堵を示した。
「そうかい、なにはともあれ無事でよかったよ」
「フリーレもハーグさんも、落ち着いてくださいね」
そう挨拶をすると、アージュとナイは、アージュの背中にイーゼルをへばりつかせたまま商人組合から出ていった。
こうした事態なので、フリーレとハーグも幼い子を背負ったアージュの姿には、それほどの疑問を持たなかったようだ。
そうこうしているうちに夕も暮れ、閑散とした市場にアージュアージュにへばりついているイーゼル、それからナイの三人は向かった。
「晩飯を買わなきゃな」
アージュは行きつけの肉屋に出向くと、今日は猪の骨付きあばら肉を購入しがてら、市場の後ろにぞんざいに積み上げられている山を指差した。
「おばはん、あれいくら?」
すると山を一瞥した店番のおばはんが、興味深そうな表情となる。
「タダって訳ではないけど、ひと山百リルくらいでいいよ。ところであんなもんどうするんだい?」
「へへっ」
アージュはその場で笑ってごまかすと、肉とともにそれらを荷車に山積みにしてアパートへと帰っていった。
「あ、おかえり。フントのおっさんもおとなしいもんだよ」
アージュ達がアパートに戻ると、クラウスはいつものように部屋で荷物の整理を行っており、何故かフントのおっさんは玄関横の土場ですぐにでも逃げ出せるような姿勢で構えている。
どうやら部屋に残るナイの香りがフントのおっさんたちには緊張につながるらしい。
この場から逃げ出さなければならないという本能がもたらす警告からなのだろう。
「おっさん、邪魔だから中に入ってろ」
アージュはそう言いながらおっさんの尻を後ろから蹴り飛ばし、無理やり部屋に入れる。
フントは文句を言いたそうな表情を一瞬見せたが、アージュの背後には蟲の姫が控えている。
ここで姫を怒らせるわけにはいかない。
そう判断したフントは、無言でアージュに従った。
「それじゃとりあえず飯にするか」
飯となればナイは止まらない。
「アージュ、今日は煮込むの? 焼くの?」
アージュの後ろで荷車を引っ張ってきたナイが、心底楽しみだと言った表情でアージュに問いかけた。
「今日は時間もあまりねえしな。バラしてから手早く酒で蒸し焼きにするか」
「何それ美味しそう!」
ナイはフントのことなど一切構わずに、アージュとともに台所に消えてしまう。
クラウスとともに、その場に置いてかれてしまったフントは困ってしまう。
「クラウスさんといったか、俺はどうすればいい?」
「とりあえず座っていればいいと思うよ」
黒髪の少年にも、うっとおしいようにつき放された犬のおっさんは、もうしばらくその場で正座をする羽目となった。
ツァーグたちはパド達の首とスピナルグラスの死骸とともに風俗組合へ第一報を速やかに報告する。
続けて商人組合およびボーデンからの使者でであるシュルトにも今回の魔物襲撃事件及び山岳地帯で起きている事態を報告した上で、ボーデン領主の問題として今後の対応について協議を始めなければならない。
また、並行して当初の領主案件であったハイエナハウンド子犬捕獲ミッションの手仕舞いおよび費用清算も速やかに行わなければならない。
一方でアージュ達は、馬車からマジカルホースに乗り換え、町をぐるりと大回りしながらアパートメントを目指した。
イーゼルはなぜかアージュから離れようとしないので、そのままアージュの背に掴まりながらマジカルホースに同乗。
フントのおっさんはハイエナハウンド達とともに、器用にも四本足で走ってついてきている。
そんな様子でしばらく走ると、以前アージュ達がぶっ殺したチンピラどもの隠れ家が見えてきた。
隠れ家といっても、クラウスが魔法で燃やしてしまったので、今は廃墟となった残骸が残るだけだが。
「フントのおっさん、この残骸がいい目印になるから、この辺でハイエナハウンドの連中を休ませてくれるか?」
「わかった」
フントも心得たように頷くと、一声吠える。
するとハイエナハウンド達は、夜の闇に乗じながら、廃墟の陰にその身を隠していった。
そのまま一行はアパートメントに一旦戻り、クラウスはフントと留守番、アージュはナイと商人組合に顔を出しに行く。
ちなみにイーゼルは相変わらずアージュの背中にへばりついている。
三人が商人組合に顔を出すと、眼鏡っ子受付嬢のフリーレが彼らに気付くや否や、カウンターを慌ててくぐりながら駆け寄ってきた。
「ナイさん、何があったの?」
「どうしたの、フリーレ?」
「さっき風俗組合のリスペルがやってきて、キュールさんとヴァントさんを半ば無理やり連れて行ったの。何か大事件が起きたからって!」
するといつの間にか売店のハーグさんもフリーレの隣に並んでいた。
「ほらアージュ、今日の運賃をキュールさんから預かっているよ。ところでクラウスが見当たらないけれど、何かあったのかい?」
ナイはぺこりとお辞儀をしながら、受領証と引き換えにハーグさんから本日分の運賃を受け取るも、二人に今回の件をどう説明したものかと困ってしまう。
するとアージュがつらそうな表情でフリーレたちに説明を始めた。
「実はオレ達がベースキャンプに荷物を届けた直後に謎の魔物に襲われてさ。魔物は何とか風俗組合の人達が倒したんだけれど、向こうもほとんどの人がやられちゃったんだよ」
同時にフリーレ達に見えないように、ナイのわき腹を肘で小突くと、ナイも心得たかのように報告を続けた。
「多分キュールさんとヴァントさんは、この事件のことで呼ばれたのではないでしょうか」
ナイの報告に続けて、アージュもハーグに対し、感謝とばかりにぺこりと頭を下げる。
「クラウスは先にアパートメントで留守番をしているよ。心配してくれてありがとう」
二人の報告にフリーレはぶるりと身を震わせ、ハーグは驚いた表情となるも、すぐに二人へと安堵を示した。
「そうかい、なにはともあれ無事でよかったよ」
「フリーレもハーグさんも、落ち着いてくださいね」
そう挨拶をすると、アージュとナイは、アージュの背中にイーゼルをへばりつかせたまま商人組合から出ていった。
こうした事態なので、フリーレとハーグも幼い子を背負ったアージュの姿には、それほどの疑問を持たなかったようだ。
そうこうしているうちに夕も暮れ、閑散とした市場にアージュアージュにへばりついているイーゼル、それからナイの三人は向かった。
「晩飯を買わなきゃな」
アージュは行きつけの肉屋に出向くと、今日は猪の骨付きあばら肉を購入しがてら、市場の後ろにぞんざいに積み上げられている山を指差した。
「おばはん、あれいくら?」
すると山を一瞥した店番のおばはんが、興味深そうな表情となる。
「タダって訳ではないけど、ひと山百リルくらいでいいよ。ところであんなもんどうするんだい?」
「へへっ」
アージュはその場で笑ってごまかすと、肉とともにそれらを荷車に山積みにしてアパートへと帰っていった。
「あ、おかえり。フントのおっさんもおとなしいもんだよ」
アージュ達がアパートに戻ると、クラウスはいつものように部屋で荷物の整理を行っており、何故かフントのおっさんは玄関横の土場ですぐにでも逃げ出せるような姿勢で構えている。
どうやら部屋に残るナイの香りがフントのおっさんたちには緊張につながるらしい。
この場から逃げ出さなければならないという本能がもたらす警告からなのだろう。
「おっさん、邪魔だから中に入ってろ」
アージュはそう言いながらおっさんの尻を後ろから蹴り飛ばし、無理やり部屋に入れる。
フントは文句を言いたそうな表情を一瞬見せたが、アージュの背後には蟲の姫が控えている。
ここで姫を怒らせるわけにはいかない。
そう判断したフントは、無言でアージュに従った。
「それじゃとりあえず飯にするか」
飯となればナイは止まらない。
「アージュ、今日は煮込むの? 焼くの?」
アージュの後ろで荷車を引っ張ってきたナイが、心底楽しみだと言った表情でアージュに問いかけた。
「今日は時間もあまりねえしな。バラしてから手早く酒で蒸し焼きにするか」
「何それ美味しそう!」
ナイはフントのことなど一切構わずに、アージュとともに台所に消えてしまう。
クラウスとともに、その場に置いてかれてしまったフントは困ってしまう。
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