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境内の奇跡
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最近、いつも同じ夢を見て目が覚める。
近所にある神社の境内で、夏のギラギラした日差しから、秋の柔らかい日差しに変わり始めた木漏れ日の中、一人の女性が微笑みかけながら何かを話している。
しかし、何を話してかは思い出せない、顔ももやがかかって思い出せないが、いつも同じ人だとはわかる不思議な夢だ。
「はぁ~、今日も同じ夢か。。。」
俺の名前は、松井尚輝 今年で43歳独身だ。
しがいない営業サラリーマンで、ノルマもギリギリのうだつの上がらない駄目社員だ。
いつも年下の上司に怒られている。
当然、安月給で蓄えもないその日暮らしだ。
俺の唯一の趣味は、コインマジックだが、とても人にお披露目できる腕前ではない。
誰にも見せるわけではなく自己満足の世界だ。
恋愛も何度かはしているが、いつも"いい人"だけどとフラれ続けてる。
当然、今も彼女はいない。
今日も会社の朝礼で課長から怒られる....
「松井~ お前はなんでいつもノルマがギリギリなんだ? あぁん、おまえ入社何年目だぁ?」
(クスクス…だせぇよなぁいい年したおっさんが、みんなの前で怒られるなんて、ああはなりたくないよな…)
若手社員たちのコソコソ話しも聞こえる。。
「すみません。入社20年です。」
「なんでそんだけやってて、お前は進歩しないんだぁ~?」
「申し訳ありません」
「辞めちまえよ」
「申し訳ありません」
とにかく、課長の溜飲が下がるまで、謝り続けるのが日課だ。
今日も営業回りするが、契約は当然0だ。
「はぁ~ また明日、課長に目玉食らうなぁ。。。」
世の中、不景気で厳しく残業も規制されているが、うちの会社がそんなホワイトの訳がなく、多分に漏れなくブラック企業のサービス残業で深夜をまわったところだ。
帰宅中、深夜のコンビニに寄り夜食を買って帰るのが日課だ。
割引のシールが貼られた弁当の値段を確認しながら財布の中身を確認する。
給料日前になるとお札なんて入っていない。
小銭を数え足りてることを確認して購入する。
「はぁ~、今月もなんとか乗り切れたなぁ…」
ため息を1つつくと、幸せが1つ逃げると言うが、ため息をつかないとやってられない心境だ…
「こんな生活が一生続くのか…来世ではいい生活を送りたいなぁ」
家につき
「ただいまぁ…といっても誰もいないしな…」
電気をつけニュースを垂れ流しながら、一人で弁当をたべる。
いつも変わらない日常のルーティンだ。
そんないつもと変わらない毎日を過ごし、夢を見るようになって1週間ほどたったある日、深夜の帰宅途中にふと何気なく、なぜかはわからないけど、近くの神社の境内に足をはこんでみた。
小さいころ、よく遊んでた境内をみてふと懐かしさを覚えていた。
今日は満月で月明かりだけで十分明るい。
『夜になったら大分涼しくなったなぁ。もう秋になりつつあるなぁ』
子供の頃、隠れんぼしたりした場所をフラフラとあるいてると
ちり~ん ちり~ん と音が聞こえて本殿のそばにいくと
『うわぅ!!びっくりしたー』
目が光っているなにかがおり、びっくりしたがよくみると1匹の黒猫がいた。
脚を怪我してるみたいで、か細く『にゃー』と鳴いていた。
首輪をしているので飼い猫だろう。
実家で猫を飼ってた時、突然いなくなりそのまま帰ってこないかった。
その時は家族みんなで心配して悲しんだものだったのをおもいだす。
後で聞いた話だが、実家の飼い猫は交通事故にあい処分されたらしいとのことであった。
「にゃー」
「痛いよな、明日は休みだから病院連れて行ったやるな」
家に連れて帰り、傷口を水であらっておく、染みるらしく相当暴れて、俺の手腕は噛み傷とひっかき傷だらけになった。
『イテテ、ん?首輪になんか書いてあるな?』
首輪には『杏 飼い主連絡先090-✕✕✕✕-✕✕✕✕江戸川』
『飼い主さんの連絡先が書いてあるから、明日病院のあと連絡するか。』
『お前、杏っていうのか。腹減ってないか?』
尚輝はコンビニ弁当からご飯とおかずを少しわけて、猫のまえに置いてあげると、最初は警戒していたがお腹がすいてたのかガツガツと食べ始めた。
次の日の朝に、近所の動物病院に連れていき、消毒と破傷風予防をしてガーゼをあてた。
『お待たせしました、治療費はま5020円になります。』
(5020円あったら何食食べれるんだ。。。)
『さて、治療もおわったから、お前のご主人様に連絡するかぁ』
『にゃー』
『ははは、早く会いたいよな?ちょっと待ってな』
首輪に書かれていた連絡先に電話をしてみる
トルル、トルルル
なんどかのコールのあと女性が電話に出た。
『はい、もしもし?』
『あっすみません、江戸川さんのお電話で間違いないでしょうか?』
『はい、江戸川ですが、どちら様でしょう?』
女性は名前を言われ、少し怪訝そうに訪ねてきた。
『私は松井と申します。あなた様の飼い猫さんを保護してまして首輪に連絡先が書いてあったので連絡させて頂きました。』
『え?杏、いや猫と一緒なんですか?無事ですか?』
慌てて聞き返してくる彼女をすこし落ち着かせるように優しく伝えようとするが、ダメ営業マンらしく上手く伝えられない。
『とにかく猫ちゃんは怪我してたので、本日、病院に連れていき今は元気ですよ。』
『え?怪我してるんですか!?大丈夫なんですか!?』
余計、不安を煽ってしまったよだ。
『お、落ち着いてください。大丈夫で元気ですから。』
『よかったあ~』
少し泣いてるのかすすり声がする。
『いま、大国神社の境内にいるのですが、どうしま『すぐ、伺います』しょ…はい、ではお待ちしております。』
大国神社の境内は、木々に囲まれており木陰が多く、神社特有の神聖なる空気が張りつめてるかんじがして
『小さい頃は感じなかったけど、なんか身を清められるようで好きだなこういう場所は、お前も好きなのか?』
杏も尚輝の横で座り込みあくびをしていた。
夏から秋にかわり始めた柔らかい日差しの木漏れ日の中、境内で遊ぶ子供たちを見ながら、杏を撫でてあげると杏も甘えてきてくれた。
『お前の飼い主さんはどんな人なんだい?』
『にゃー』
『ははは、心配かけるんじゃないぞ』
『杏~!!』
杏に話しかけてたら、女性が杏を呼び、杏も女性の足元に行き体を擦り付けていた。
『杏!大丈夫?元気?お腹すいてない?大丈夫?怪我したの痛くない?』
女性は泣きながら杏を抱きかかえては身体のあっちこっちをさぐってた。
『失礼ですが、江戸川さんですか?』
女性に一応確認をしておく。
『はい、江戸川です。電話をくださった方ですか?』
『はい、松井と申します。昨夜、ここに杏ちゃんが怪我しているのを見かけたので保護させて頂きました。本日、病院で治療してもらって大丈夫とのことでしたので心配ないかと思います。』
『保護していただいてありがとうございます。もう3日帰ってこなくて心配で心配で。。。』
『そうでしたか。』
『病院につれてってくれたって、治療費いくらですか?』
『いやいや、私が勝手に連れていっただけだからいりません』
『駄目です!こういうのはちゃんとしないと駄目です!』
『はぁ…』
『では、これ領収書です。5020円です。』
『5020円ですね。ちょっと待ってくださいね。』
彼女は財布からお金を取りだし。
『あっ…十円が…』
『あっ5000円でいいですよ。』
『駄目です!お支払します!』
『はぁ…』
『すみません10円5円玉2枚でもいいですか?』
『はい、構いませんよ』
『ありがとうございます。では、5020円これで』
『はい、確かに』
しかし、この女性綺麗な人だなぁ20代半ばくらいかな? おっと初対面の女性の人の年齢気にしちゃ失礼だな
それに、俺とは縁ないだろうし、これでお別れだ。
『あのー、お礼をしたいので、また今度あってもらえませんか?』
『え?いやお礼なんていいですよ。たまたま通りかかったとこにいただけですから。』
『それじゃぁ、私の気がおらまらないのです。』
『はぁ…わかりました。私の携帯番号は先程掛けた番号ですのでそちらにいつでも連絡下さい。』
『ありがとうございます。是非また連絡させていただきます。本当に杏を保護して連絡下さいましてありがとうございました。』
お辞儀をして、なんどもお礼を言う彼女を見送って、境内で少しぼーとしてた。
しかし、どこかで見たことある光景だったな。。。うーんどこで。。。デジャヴ?
……あっ、夢と似てるんだ!
あの夢は予知夢だったのか?
不思議なこともあるもんだなぁ。
いい娘だったなぁ。
綺麗だし、性格もよさそうで、あんな彼女欲しいよなぁ。
でも、俺おじさんだし、あんな娘は相手してくれないよなぁ。
『はぁ~ 帰るか』
それから2日後に彼女から連絡がきて、また休みの日に大国神社で会うことになった。
約束は14時だが、朝からソワソワしてしまい13時には境内についてしまった。
1時間、子供たちの遊ぶ姿などを見て、ぼんやりすごしていたら
約束の15分まえに彼女が現れた。
俺の姿を見つけた彼女は、すこし小走りでやってきた。
『すみません、お待たせしました。』
『いえいえ、全然待ってませんので。こちらこそ、すみません急がせちゃって』
『いえ、私が呼び出したのでやはり、待ってもらうのは失礼かと…』
『それで、今日は?』
『はい、こないだのお礼で焼き菓子を作ったので食べてください。』
『手作りですか?』
『はい、お口に合えばいいんですけど…』
『い…いえ!合わせます!お口のほうを合わせます!』
『あははは、松井さん面白いです。』
『いや、はぁすみません…』
『それでは、本当にありがとうございました。』
『いえ、こちらこそ、こんなにしていただいてありがとうございます。』
『では、失礼します。』
『はい、失礼します。』
クスクスと笑いながら彼女は去っていった。
『はぁ~なんで俺は、この後、少しお茶でもいかがですか?の一言が言えないんだぁ~……もう、これで最後だよなぁ…はぁ~』
家にトボトボ帰り、貰った焼き菓子をたべた。
「う、旨い!!」
久々の人が作ったものを食べて、少し涙が出た。
それから2週間ほど、また毎日怒られてはうだつの上がらない日々を送っていた。
夕方、大国神社の前を通ったら、ちり~んと鈴の音が聞こえた気がした。
また、杏がいたらいいな。と思いながら境内へ向かう、鳥居をくぐって境内に入り本殿の前でしゃがみ込んでる女性がいた。
あ、あれは?
「江戸川さん?」
「!?」
女性は涙を拭いながら慌てて立ち上がる。
「ま、松井さん!?」
「江戸川さん、大丈夫ですか? どこか痛いとかですか?」
「大丈夫です。ご心配かけました。」
「いや、なにもしてませんし、本当に大丈夫ですか?なにかあったなら聞きますよ?」
「いや本当に大丈夫です。」
「それならいいですけど、辛いことがあったなら聞きますよ?なにも知らない第三者の方が話しやす事もありますし。」
「・・・・・・」
しばし、沈黙して境内で遊ぶ子供たちの声だけが聞こえる。
「じゃぁ、少し聞いてもらえますか?」
「はい、喜んで」
「実は…」
そうして彼女は話し出したが、彼氏が浮気してて問い詰めたら逆ギレされて別れる別れないのはなしになって飛び出してしまったと。
彼女に彼氏がいたことにショックを受けつつも、こんな綺麗で性格がいい娘に彼氏がいないことはないと納得もしていた。
「そうですか…、で江戸川さんは彼氏さんとどうしたいのですか?」
「わかりません…、今は混乱してて…彼を許せません!! でも、まだ彼を信じたいし好きな自分もいるしで…」
「そうですか…」
財布を取り出し小銭をさがす、この前もらった5円玉がまだ残っていたので5円玉を取り出す。
「ここに5円玉があります。この5円玉に江戸川さんのモヤモヤした気持ちを集めます。」
「モヤモヤした気持ち…?」
「はい、彼氏さんに対してのモヤモヤした気持ちです。」
「はい…」
「モヤモヤした気持ちを集めた5円玉を、ギュ~~~と握りしめます」
彼女は何も言わず真剣に握りしめたこぶしを見つめる。
十分視線があつまったのを確認して。
スーツの袖にコインを入れ掌をみせる。
「江戸川さんのモヤモヤはこのように消えました。」
「え? え? どうやったんでか? え?」
驚いてる江戸川さんの手をとり、掌に5円玉を乗せる
「そして、江戸川さんにご縁(5円)がありますように。モヤモヤを浄化いたしました。」
「え?なんで?」
「彼氏さんと、ちゃんと話してきてください。江戸川さんが許せない気持ちも、これからどうしたいのかも全部ぶつけてきてください。」
「…………………………はい…もう一度話してきます。 ありがとうございました。」
そう言って彼女は走り去っていった。
「はぁ~、なに俺は背中押してるんだ…。でも、うまくいくといいなぁ。」
(しかし、5回に1回ぐらいしか成功しない奴だったけど上手くいってよかった。)
彼女が幸せになること祈りつつ帰路につく。
また、それから1か月が過ぎ、季節も冬になりつつある。
相変わらず俺は、年下の課長に怒られつつ、なんとかノルマをこなせている状況だ。
「夜になると寒くなってきたな…」
また、深夜に帰宅途中に大国神社の前を通ったら、ちり~ん、ちり~んと音が聞こえた。
境内へ向かう階段をみると黒猫が境内の方へ上っていくのがみえた。
「黒猫? 杏かな?」
境内へ続く階段を上り、鳥居をくくり境内へ入る。
辺りを見回すが猫はいない。
少し境内を歩き探すが見当たらない、すると ちり~ん、ちり~んと鈴の音が聞こえる。
音のする方にいくと本殿の縁の下に黒猫がいた。
「杏? 杏なら出ておいで」
名前を呼んだら、「にゃ~」と近くに寄ってきてくれたので抱き上げる。
首輪をみて
「やっぱり、杏か。どうした? また、ご主人様が心配するぞ。」
杏を撫でてると気持ちよさそうにゴロゴロ喉を鳴らしてる。
「うーん、この時間に電話するのは失礼だからどうするかなぁ。。。」
時間は深夜2時を回ったところだ。
「携帯の番号わかってるからショートメールを送っとくか。」
「夜分遅く申し訳ありません。 杏ちゃんをまた保護いたしましたのでご安心ください。また、連絡いたします。おやすみなさい。」
「よし、これでいいか、杏かえろうか? お腹すいてないか?「にゃー」よしよし、また弁当だけど許してくれよ」
家につき、弁当のおかずを杏あげていたら電話が鳴った。 彼女の電話番号が表示されドキドキする。
「もしもし」
「もしもし、松井さんですか?」
「はい」
「夜分遅くにすみません。江戸川です。」
「こんばんは」
「こんばんはです。 すみません、また杏がお世話になってるみたいで…部屋猫なのに最近どこからか抜け出すことが多くて…本当にすみません」
「いえいえ、それでどうしましょう?」
「明日は仕事ありますし‥‥夕方でもいいですか?」
「はい分かりました。私の方はすこし遅くなると思うので19時ごろでもいいですかね?」
「あっはい、大丈夫です。」
「じゃぁ19時に大国神社の境内で待ち合わせいたしましょう」
「はい、よろしくおねがいいたします。 それじゃぁおやすみなさい。」
「はい、おやすみなさい」
電話を切り、思わずガッツポーズして声を殺して叫んだ
「よっっっっしゃゃぁ~ 杏ありがとうな!!! また江戸川さんに会える!しゃ~」
杏を抱きかかえてワシャワシャしてやる。ちょっと嫌そうで睨んでるけどお構いなしにワシャワシャする。
翌日、仕事を早めに切り上げ怒る課長をしり目に逃げるように帰る。
「あ~、明日はまた朝から大目玉だな…でも江戸川さんを待たせるわけにはいかないからぁ…」
一度家に帰り、杏を連れ出して大国神社へ向かう。
19時5分前に境内につく。
すると、彼女が先に待っていた。
「すみません、遅くなりました。」
「いえ、私も今来たところですから。」
「では、杏ちゃんご主人さまのところに帰りな」
と言って杏を手渡す。
「もー杏、どこから抜け出すの!? 心配したんだからね。」
「本当にありがとうございました。」
「いえいえ、あっそういえば、あれから彼氏さんとはうまくいきましたか?」
「…………いえ、あの後、話し合ってもう一度彼を信じてみようとしたんですけど、彼は浮気をやめれなくて結局別れてしまいました。」
「あっ、そうだったんですね‥‥すみません何も知らないのに…」
彼女が別れたと聞いて、喜んでいる自分がいたが、そんな雰囲気じゃないので気持ちを押し殺すのに必死だった。
「いえ、こちらこそ、ご心配かけてすみません。励ましてもらったのにご期待に沿えなくて…」
「いや…私は何もしてないですから…」
「‥‥」
「‥‥」
しばしの沈黙していたが、彼女の電話の音楽が鳴る
「あっ電話…でてもいいですか?」
「どうぞどうぞ、お気になさらず」
「すみません…もしもし? あっお母さん?どうしたの? え?今からうちに来るの? 今じゃなきゃダメ? そう、わかりました。うちで待ってるね、はい、はい、じゃぁね」
「お母さまからですか」
「はい、すみません、母が来ることになったのですみませんが帰らせていただきます。」
「いえ、お気になさらず」
「本当にすみません。このお礼はまたさせていただきますね」
「いえいえ、本当にお気になさらず」
「では、失礼いたします。」
「はい、気を付けて帰ってくださいね。」
彼女を見送り一人、本殿の階段に座り
「そっかぁ、彼氏と別れたんだぁ…チャンスあるかなぁ、今度お礼してくれるっていうから、お茶にでも誘ってみようかなぁ…でも、俺おじさんだしなぁ…はぁ~お金もないし…でも当たって砕けるか!」
彼女が別れたと知ってかなり浮かれていた。
「よし、そうと決まれば、まずはお金稼ぐか!!」
次の日からね営業周りに力を入れて、以前は一度断られたら、そこからアプローチしなかったが何度も電話して足を運んでみた。
最初は居留守をつかわれており、がっかりしていたが挫けず通ってみた。
入口のカウンター越しに、バッテンとされたり、帰れ帰れとシッシッってされていたが、めげずに通ってたら
ある日、手招きされて、話しをしてくれることに。
「急ぎの仕事で、試作品の1回だけなんだけど、これお宅でできる?」
正直、試作品の1回限りの仕事はどこも受けたがらない。
しかし、
「是非やらせてください。」
「本当に?頼むよ」
それから工場にいき、図面を職人に見せる
「いま、忙しいからこの納期は厳しいよ…」
「そこを何とかお願いします。」
「でもねぇ、試作品の1回限りでしょ? なんでそんな仕事取ってくるの…」
「今回は試作品で1回限りかもしれませんけど、品質が良ければ号口量産品を頂けるかもしれません。」
「しかしねぇ」
「また、号口はもらえなくても、これを切っ掛けにA社さんから仕事がもらえるかもしれないじゃないですか!ご無理を言ってるのは承知していますが、是非お願いします。」
「そうは言われてもねぇ…」
「お願いします!!」
何度も頭を下げる
「はぁ~、しょうがない、今回はやるから、ちゃんと美味しい仕事取ってきてよ!」
「はい! ありがとうございます。」
こうして、少しずつだが仕事をとってきて、営業業績もトップ!…とは言えないけど中堅まではきて給料も歩合制分そこそこ増えた。
当然、すぐうまくはいかずに、失敗も多くて、相変わらず課長に怒られる毎日だが…
そうして、季節も冬になったころ彼女から連絡がきた。
「松井さん、今 大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですが何かありました?」
「いえ、この前のお礼がまだだったと思いまして。遅くなりましたが、またお菓子を作ったので良ければと…」
「本当ですか?是非頂きたいです」
「今度のお休みいつですか?」
「ん~明後日ですね」
「あっ、私も明後日なので、明後日でどうですか?」
「いいですよ。はい、はい、じゃぁ、お昼に大国神社で」
そうして約束をして電話を切った。
「しゃっ!!」
と小さくガッツポーズをする。
「お昼なら、そのままお昼ご飯誘ってみよう。」
帰り道、神社の側を回り、おしゃれそうな場所を探して、翌日予約をしといた。
そして、約束の日。
また、約束の1時間前に来しまった。
「すみません、遅くなりました。」
彼女は約束の15分前にきたが、こちらに気づき小走りできた。
「いえいえ、私もさっき来たところですよ」
「ならいいですけど…これ、また焼き菓子を焼きましたので宜しければ召し上がってください。」
「ありがとうございます。この前の凄く美味しくて、また食べたかったんですよ」
「本当ですか?よかった~」
やばい、緊張して心臓が飛び出そうだ…喉もカラッカラだし…よし
「あ・あの~」
「はい?」
「ちょうどお昼ですし、よ・宜しければ一緒に、しょ・食事でも如何ですか?」
「お昼ご飯ですか?」
「はい、宜しければですけど…」
こ、怖い…返事は…聞くのが怖い…
「ん~、いいですよ」
「ほ・本当ですか!?」
「はい」
「ありがとうございます。実は近くのお店予約してまして…」
「え?そうなんですか?あははは、松井さん面白いです。」
「そ、そうですか?」
「はい。」
「では、行きましょうか」
「はい」
昼食の間、杏のことや仕事のことなどいろいろ話してとても楽しい時間をすごした。
会計の際、誘ったのはこっちだからと払おうとしたが、ダメだと割り勘でと叱られてしまった。
また、映画が好きだということで、同じ映画を観たいと意見が合ったので、今度観に行く約束もした。
数日後、夜の帰宅途中に大国神社の前で
「江戸川さん?」
あわてて、目を拭い振り返る彼女がいた。
「あっ、松井さん。こんばんは。」
「こんばんは。なにかありましたか?大丈夫ですか?」
「…はい、仕事でちょっと失敗しちゃいまして、上司に叱られてしまって…」
「なんだ、そんなことですか」
「な、なんだって、なんですか!酷くないですか!こっちは真剣に!!!」
「あっいえすみません。私なんて毎日、上司に怒られていたもんで…」
「そうなんですか?」
「はい、失敗なんて毎日してましたし、契約も取れないしで…、でもですね」
「はい」
「失敗して落ち込むってことは、何が悪かったか考えてるからで、反省してるってことは悪かったところが分かってるから反省できてるわけで、同じ失敗を繰り返さなければいいんですよ。」
「はぁ」
「同じ失敗を繰り返さないように気を付けてれば、それが経験になって次のステップに行けるんです」
「あははは、松井さんって凄いポジティブなんですね。悩んでる私が馬鹿みたいに思えました。」
クスクス彼女は笑っている。
「はぁ、ははは、そう思わないと挫ける毎日でしたから」
でも、それに気づけたのは、彼女と一緒にいたいと頑張ったからなのは内緒にししとこう。
「あははは、ありがとうございます。元気出ました。私もポジティブに考えます。」
「はい、それがいいです。でも反省は忘れちゃだめですよ。」
「はーい」
そうやってクスクス笑いながら彼女と話しながらお互い帰路についた。
それから、何度か映画観にいったり、食事したりとして、なんとクリスマスイヴにも会ってくれると約束してもらえた。
そして、クリスマスイヴは遊園地で遊び、食事をして帰路につく途中に、彼女から大国神社へ寄っていこうと提案があり神社の境内についた。
「少し、酔ってしまったので、ここでお話ししませんか?」
と本殿の階段に座る彼女
「ここでいいんですか?寒くないですか?」
「少し寒い方が、酔いも醒めるのでいいんです」
「はぁでは失礼します」
そういって横に座る
「思い起こせば、ここで杏が保護されて、ここで私たち出会ったんですねぇ」
「そうですねぇ、あの時は暗闇に光る眼が怖かったんですよ」
「あははは、そうなんですか~」
そうやって色々話すうちに、話すことがなくなって無言になった
「あ・あのぉ…」
「はい?」
「え・江戸川さん、は・話があります」
「はい」
「あ・あのぉ....そのぉ....」
江戸川さんは真剣にこっちを見てくれている。
意を決してしゃべりだす
「俺、おじさんだし...お金もないし、貯金もないし.....」
「はい」
「つまらないやつだし...仕事もできなし...イケンメンでもないし...何言ってるんだ俺は....」
言っていて何言ってるかわからなくなって情けなくて、でも江戸川さんのこと大好きになって思い伝えたくて胸いっぱいになって、いつの間にか泣いていた....
「グスッ、な・情けなくてごめんなさい…」
江戸川さんはそっと手の上に両手を添えて
「大丈夫です。最後までお願いします」
「は..い....こんな、情けない俺だけど、江戸川さんのこと大好きです。俺とつき合ってくれませんか」
しばし、静寂がつつむ。
怖くて目を閉じてたが、そっと開けてみたら江戸川さんも泣いていた
「え・江戸川さん?」
彼女は涙をぬぐって話し出した。
「もう、遅いです!」
「え?」
「松井さん遅すぎます!」
「は・はい?」
「私、待ってたんですよ、いつ告白しくれるのかって!」
「じゃぁ、返事は?」
「もちろん、はいです。こんな私で宜しければお願いします。」
「こんな私がいいんです!こんな私しか駄目なんです。」
「あははは。松井さんやっぱり面白いですね。」
「でも、こんな情けないおじさんでいいの?」
「はい、そんな情けないおじさんがいいんです。」
クスクス笑いながら彼女の目に涙が浮かんでた。
「そ・それじゃぁこれからもよろしくお願いいたします。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
軽くお辞儀をして笑いだす二人。
「じゃぁ、身体も冷えますし風邪ひかないうちに今日は帰りますか?」
「そうですね」
「じゃぁいきますか?江戸川さん」
「む~、もう彼女なんですから名前で呼んでください」
そういってむくれる彼女
「あっでも、お互い名前まで知らないですね…」
「あっそうですね、俺は、尚輝です。よろしくお願いします」
「私は、ありす、江戸川ありすって言います。」
「ありすさん、よろしくお願いします」
「む~ありすって呼んでください」
「はぁ、あ・ありす行こうか」
「はい」
そういって、ありすは手を繋いでくれた。
「あっ雪」
雪がちらつく中、二人手を繋いで引っ付くように帰路についていった。
近所にある神社の境内で、夏のギラギラした日差しから、秋の柔らかい日差しに変わり始めた木漏れ日の中、一人の女性が微笑みかけながら何かを話している。
しかし、何を話してかは思い出せない、顔ももやがかかって思い出せないが、いつも同じ人だとはわかる不思議な夢だ。
「はぁ~、今日も同じ夢か。。。」
俺の名前は、松井尚輝 今年で43歳独身だ。
しがいない営業サラリーマンで、ノルマもギリギリのうだつの上がらない駄目社員だ。
いつも年下の上司に怒られている。
当然、安月給で蓄えもないその日暮らしだ。
俺の唯一の趣味は、コインマジックだが、とても人にお披露目できる腕前ではない。
誰にも見せるわけではなく自己満足の世界だ。
恋愛も何度かはしているが、いつも"いい人"だけどとフラれ続けてる。
当然、今も彼女はいない。
今日も会社の朝礼で課長から怒られる....
「松井~ お前はなんでいつもノルマがギリギリなんだ? あぁん、おまえ入社何年目だぁ?」
(クスクス…だせぇよなぁいい年したおっさんが、みんなの前で怒られるなんて、ああはなりたくないよな…)
若手社員たちのコソコソ話しも聞こえる。。
「すみません。入社20年です。」
「なんでそんだけやってて、お前は進歩しないんだぁ~?」
「申し訳ありません」
「辞めちまえよ」
「申し訳ありません」
とにかく、課長の溜飲が下がるまで、謝り続けるのが日課だ。
今日も営業回りするが、契約は当然0だ。
「はぁ~ また明日、課長に目玉食らうなぁ。。。」
世の中、不景気で厳しく残業も規制されているが、うちの会社がそんなホワイトの訳がなく、多分に漏れなくブラック企業のサービス残業で深夜をまわったところだ。
帰宅中、深夜のコンビニに寄り夜食を買って帰るのが日課だ。
割引のシールが貼られた弁当の値段を確認しながら財布の中身を確認する。
給料日前になるとお札なんて入っていない。
小銭を数え足りてることを確認して購入する。
「はぁ~、今月もなんとか乗り切れたなぁ…」
ため息を1つつくと、幸せが1つ逃げると言うが、ため息をつかないとやってられない心境だ…
「こんな生活が一生続くのか…来世ではいい生活を送りたいなぁ」
家につき
「ただいまぁ…といっても誰もいないしな…」
電気をつけニュースを垂れ流しながら、一人で弁当をたべる。
いつも変わらない日常のルーティンだ。
そんないつもと変わらない毎日を過ごし、夢を見るようになって1週間ほどたったある日、深夜の帰宅途中にふと何気なく、なぜかはわからないけど、近くの神社の境内に足をはこんでみた。
小さいころ、よく遊んでた境内をみてふと懐かしさを覚えていた。
今日は満月で月明かりだけで十分明るい。
『夜になったら大分涼しくなったなぁ。もう秋になりつつあるなぁ』
子供の頃、隠れんぼしたりした場所をフラフラとあるいてると
ちり~ん ちり~ん と音が聞こえて本殿のそばにいくと
『うわぅ!!びっくりしたー』
目が光っているなにかがおり、びっくりしたがよくみると1匹の黒猫がいた。
脚を怪我してるみたいで、か細く『にゃー』と鳴いていた。
首輪をしているので飼い猫だろう。
実家で猫を飼ってた時、突然いなくなりそのまま帰ってこないかった。
その時は家族みんなで心配して悲しんだものだったのをおもいだす。
後で聞いた話だが、実家の飼い猫は交通事故にあい処分されたらしいとのことであった。
「にゃー」
「痛いよな、明日は休みだから病院連れて行ったやるな」
家に連れて帰り、傷口を水であらっておく、染みるらしく相当暴れて、俺の手腕は噛み傷とひっかき傷だらけになった。
『イテテ、ん?首輪になんか書いてあるな?』
首輪には『杏 飼い主連絡先090-✕✕✕✕-✕✕✕✕江戸川』
『飼い主さんの連絡先が書いてあるから、明日病院のあと連絡するか。』
『お前、杏っていうのか。腹減ってないか?』
尚輝はコンビニ弁当からご飯とおかずを少しわけて、猫のまえに置いてあげると、最初は警戒していたがお腹がすいてたのかガツガツと食べ始めた。
次の日の朝に、近所の動物病院に連れていき、消毒と破傷風予防をしてガーゼをあてた。
『お待たせしました、治療費はま5020円になります。』
(5020円あったら何食食べれるんだ。。。)
『さて、治療もおわったから、お前のご主人様に連絡するかぁ』
『にゃー』
『ははは、早く会いたいよな?ちょっと待ってな』
首輪に書かれていた連絡先に電話をしてみる
トルル、トルルル
なんどかのコールのあと女性が電話に出た。
『はい、もしもし?』
『あっすみません、江戸川さんのお電話で間違いないでしょうか?』
『はい、江戸川ですが、どちら様でしょう?』
女性は名前を言われ、少し怪訝そうに訪ねてきた。
『私は松井と申します。あなた様の飼い猫さんを保護してまして首輪に連絡先が書いてあったので連絡させて頂きました。』
『え?杏、いや猫と一緒なんですか?無事ですか?』
慌てて聞き返してくる彼女をすこし落ち着かせるように優しく伝えようとするが、ダメ営業マンらしく上手く伝えられない。
『とにかく猫ちゃんは怪我してたので、本日、病院に連れていき今は元気ですよ。』
『え?怪我してるんですか!?大丈夫なんですか!?』
余計、不安を煽ってしまったよだ。
『お、落ち着いてください。大丈夫で元気ですから。』
『よかったあ~』
少し泣いてるのかすすり声がする。
『いま、大国神社の境内にいるのですが、どうしま『すぐ、伺います』しょ…はい、ではお待ちしております。』
大国神社の境内は、木々に囲まれており木陰が多く、神社特有の神聖なる空気が張りつめてるかんじがして
『小さい頃は感じなかったけど、なんか身を清められるようで好きだなこういう場所は、お前も好きなのか?』
杏も尚輝の横で座り込みあくびをしていた。
夏から秋にかわり始めた柔らかい日差しの木漏れ日の中、境内で遊ぶ子供たちを見ながら、杏を撫でてあげると杏も甘えてきてくれた。
『お前の飼い主さんはどんな人なんだい?』
『にゃー』
『ははは、心配かけるんじゃないぞ』
『杏~!!』
杏に話しかけてたら、女性が杏を呼び、杏も女性の足元に行き体を擦り付けていた。
『杏!大丈夫?元気?お腹すいてない?大丈夫?怪我したの痛くない?』
女性は泣きながら杏を抱きかかえては身体のあっちこっちをさぐってた。
『失礼ですが、江戸川さんですか?』
女性に一応確認をしておく。
『はい、江戸川です。電話をくださった方ですか?』
『はい、松井と申します。昨夜、ここに杏ちゃんが怪我しているのを見かけたので保護させて頂きました。本日、病院で治療してもらって大丈夫とのことでしたので心配ないかと思います。』
『保護していただいてありがとうございます。もう3日帰ってこなくて心配で心配で。。。』
『そうでしたか。』
『病院につれてってくれたって、治療費いくらですか?』
『いやいや、私が勝手に連れていっただけだからいりません』
『駄目です!こういうのはちゃんとしないと駄目です!』
『はぁ…』
『では、これ領収書です。5020円です。』
『5020円ですね。ちょっと待ってくださいね。』
彼女は財布からお金を取りだし。
『あっ…十円が…』
『あっ5000円でいいですよ。』
『駄目です!お支払します!』
『はぁ…』
『すみません10円5円玉2枚でもいいですか?』
『はい、構いませんよ』
『ありがとうございます。では、5020円これで』
『はい、確かに』
しかし、この女性綺麗な人だなぁ20代半ばくらいかな? おっと初対面の女性の人の年齢気にしちゃ失礼だな
それに、俺とは縁ないだろうし、これでお別れだ。
『あのー、お礼をしたいので、また今度あってもらえませんか?』
『え?いやお礼なんていいですよ。たまたま通りかかったとこにいただけですから。』
『それじゃぁ、私の気がおらまらないのです。』
『はぁ…わかりました。私の携帯番号は先程掛けた番号ですのでそちらにいつでも連絡下さい。』
『ありがとうございます。是非また連絡させていただきます。本当に杏を保護して連絡下さいましてありがとうございました。』
お辞儀をして、なんどもお礼を言う彼女を見送って、境内で少しぼーとしてた。
しかし、どこかで見たことある光景だったな。。。うーんどこで。。。デジャヴ?
……あっ、夢と似てるんだ!
あの夢は予知夢だったのか?
不思議なこともあるもんだなぁ。
いい娘だったなぁ。
綺麗だし、性格もよさそうで、あんな彼女欲しいよなぁ。
でも、俺おじさんだし、あんな娘は相手してくれないよなぁ。
『はぁ~ 帰るか』
それから2日後に彼女から連絡がきて、また休みの日に大国神社で会うことになった。
約束は14時だが、朝からソワソワしてしまい13時には境内についてしまった。
1時間、子供たちの遊ぶ姿などを見て、ぼんやりすごしていたら
約束の15分まえに彼女が現れた。
俺の姿を見つけた彼女は、すこし小走りでやってきた。
『すみません、お待たせしました。』
『いえいえ、全然待ってませんので。こちらこそ、すみません急がせちゃって』
『いえ、私が呼び出したのでやはり、待ってもらうのは失礼かと…』
『それで、今日は?』
『はい、こないだのお礼で焼き菓子を作ったので食べてください。』
『手作りですか?』
『はい、お口に合えばいいんですけど…』
『い…いえ!合わせます!お口のほうを合わせます!』
『あははは、松井さん面白いです。』
『いや、はぁすみません…』
『それでは、本当にありがとうございました。』
『いえ、こちらこそ、こんなにしていただいてありがとうございます。』
『では、失礼します。』
『はい、失礼します。』
クスクスと笑いながら彼女は去っていった。
『はぁ~なんで俺は、この後、少しお茶でもいかがですか?の一言が言えないんだぁ~……もう、これで最後だよなぁ…はぁ~』
家にトボトボ帰り、貰った焼き菓子をたべた。
「う、旨い!!」
久々の人が作ったものを食べて、少し涙が出た。
それから2週間ほど、また毎日怒られてはうだつの上がらない日々を送っていた。
夕方、大国神社の前を通ったら、ちり~んと鈴の音が聞こえた気がした。
また、杏がいたらいいな。と思いながら境内へ向かう、鳥居をくぐって境内に入り本殿の前でしゃがみ込んでる女性がいた。
あ、あれは?
「江戸川さん?」
「!?」
女性は涙を拭いながら慌てて立ち上がる。
「ま、松井さん!?」
「江戸川さん、大丈夫ですか? どこか痛いとかですか?」
「大丈夫です。ご心配かけました。」
「いや、なにもしてませんし、本当に大丈夫ですか?なにかあったなら聞きますよ?」
「いや本当に大丈夫です。」
「それならいいですけど、辛いことがあったなら聞きますよ?なにも知らない第三者の方が話しやす事もありますし。」
「・・・・・・」
しばし、沈黙して境内で遊ぶ子供たちの声だけが聞こえる。
「じゃぁ、少し聞いてもらえますか?」
「はい、喜んで」
「実は…」
そうして彼女は話し出したが、彼氏が浮気してて問い詰めたら逆ギレされて別れる別れないのはなしになって飛び出してしまったと。
彼女に彼氏がいたことにショックを受けつつも、こんな綺麗で性格がいい娘に彼氏がいないことはないと納得もしていた。
「そうですか…、で江戸川さんは彼氏さんとどうしたいのですか?」
「わかりません…、今は混乱してて…彼を許せません!! でも、まだ彼を信じたいし好きな自分もいるしで…」
「そうですか…」
財布を取り出し小銭をさがす、この前もらった5円玉がまだ残っていたので5円玉を取り出す。
「ここに5円玉があります。この5円玉に江戸川さんのモヤモヤした気持ちを集めます。」
「モヤモヤした気持ち…?」
「はい、彼氏さんに対してのモヤモヤした気持ちです。」
「はい…」
「モヤモヤした気持ちを集めた5円玉を、ギュ~~~と握りしめます」
彼女は何も言わず真剣に握りしめたこぶしを見つめる。
十分視線があつまったのを確認して。
スーツの袖にコインを入れ掌をみせる。
「江戸川さんのモヤモヤはこのように消えました。」
「え? え? どうやったんでか? え?」
驚いてる江戸川さんの手をとり、掌に5円玉を乗せる
「そして、江戸川さんにご縁(5円)がありますように。モヤモヤを浄化いたしました。」
「え?なんで?」
「彼氏さんと、ちゃんと話してきてください。江戸川さんが許せない気持ちも、これからどうしたいのかも全部ぶつけてきてください。」
「…………………………はい…もう一度話してきます。 ありがとうございました。」
そう言って彼女は走り去っていった。
「はぁ~、なに俺は背中押してるんだ…。でも、うまくいくといいなぁ。」
(しかし、5回に1回ぐらいしか成功しない奴だったけど上手くいってよかった。)
彼女が幸せになること祈りつつ帰路につく。
また、それから1か月が過ぎ、季節も冬になりつつある。
相変わらず俺は、年下の課長に怒られつつ、なんとかノルマをこなせている状況だ。
「夜になると寒くなってきたな…」
また、深夜に帰宅途中に大国神社の前を通ったら、ちり~ん、ちり~んと音が聞こえた。
境内へ向かう階段をみると黒猫が境内の方へ上っていくのがみえた。
「黒猫? 杏かな?」
境内へ続く階段を上り、鳥居をくくり境内へ入る。
辺りを見回すが猫はいない。
少し境内を歩き探すが見当たらない、すると ちり~ん、ちり~んと鈴の音が聞こえる。
音のする方にいくと本殿の縁の下に黒猫がいた。
「杏? 杏なら出ておいで」
名前を呼んだら、「にゃ~」と近くに寄ってきてくれたので抱き上げる。
首輪をみて
「やっぱり、杏か。どうした? また、ご主人様が心配するぞ。」
杏を撫でてると気持ちよさそうにゴロゴロ喉を鳴らしてる。
「うーん、この時間に電話するのは失礼だからどうするかなぁ。。。」
時間は深夜2時を回ったところだ。
「携帯の番号わかってるからショートメールを送っとくか。」
「夜分遅く申し訳ありません。 杏ちゃんをまた保護いたしましたのでご安心ください。また、連絡いたします。おやすみなさい。」
「よし、これでいいか、杏かえろうか? お腹すいてないか?「にゃー」よしよし、また弁当だけど許してくれよ」
家につき、弁当のおかずを杏あげていたら電話が鳴った。 彼女の電話番号が表示されドキドキする。
「もしもし」
「もしもし、松井さんですか?」
「はい」
「夜分遅くにすみません。江戸川です。」
「こんばんは」
「こんばんはです。 すみません、また杏がお世話になってるみたいで…部屋猫なのに最近どこからか抜け出すことが多くて…本当にすみません」
「いえいえ、それでどうしましょう?」
「明日は仕事ありますし‥‥夕方でもいいですか?」
「はい分かりました。私の方はすこし遅くなると思うので19時ごろでもいいですかね?」
「あっはい、大丈夫です。」
「じゃぁ19時に大国神社の境内で待ち合わせいたしましょう」
「はい、よろしくおねがいいたします。 それじゃぁおやすみなさい。」
「はい、おやすみなさい」
電話を切り、思わずガッツポーズして声を殺して叫んだ
「よっっっっしゃゃぁ~ 杏ありがとうな!!! また江戸川さんに会える!しゃ~」
杏を抱きかかえてワシャワシャしてやる。ちょっと嫌そうで睨んでるけどお構いなしにワシャワシャする。
翌日、仕事を早めに切り上げ怒る課長をしり目に逃げるように帰る。
「あ~、明日はまた朝から大目玉だな…でも江戸川さんを待たせるわけにはいかないからぁ…」
一度家に帰り、杏を連れ出して大国神社へ向かう。
19時5分前に境内につく。
すると、彼女が先に待っていた。
「すみません、遅くなりました。」
「いえ、私も今来たところですから。」
「では、杏ちゃんご主人さまのところに帰りな」
と言って杏を手渡す。
「もー杏、どこから抜け出すの!? 心配したんだからね。」
「本当にありがとうございました。」
「いえいえ、あっそういえば、あれから彼氏さんとはうまくいきましたか?」
「…………いえ、あの後、話し合ってもう一度彼を信じてみようとしたんですけど、彼は浮気をやめれなくて結局別れてしまいました。」
「あっ、そうだったんですね‥‥すみません何も知らないのに…」
彼女が別れたと聞いて、喜んでいる自分がいたが、そんな雰囲気じゃないので気持ちを押し殺すのに必死だった。
「いえ、こちらこそ、ご心配かけてすみません。励ましてもらったのにご期待に沿えなくて…」
「いや…私は何もしてないですから…」
「‥‥」
「‥‥」
しばしの沈黙していたが、彼女の電話の音楽が鳴る
「あっ電話…でてもいいですか?」
「どうぞどうぞ、お気になさらず」
「すみません…もしもし? あっお母さん?どうしたの? え?今からうちに来るの? 今じゃなきゃダメ? そう、わかりました。うちで待ってるね、はい、はい、じゃぁね」
「お母さまからですか」
「はい、すみません、母が来ることになったのですみませんが帰らせていただきます。」
「いえ、お気になさらず」
「本当にすみません。このお礼はまたさせていただきますね」
「いえいえ、本当にお気になさらず」
「では、失礼いたします。」
「はい、気を付けて帰ってくださいね。」
彼女を見送り一人、本殿の階段に座り
「そっかぁ、彼氏と別れたんだぁ…チャンスあるかなぁ、今度お礼してくれるっていうから、お茶にでも誘ってみようかなぁ…でも、俺おじさんだしなぁ…はぁ~お金もないし…でも当たって砕けるか!」
彼女が別れたと知ってかなり浮かれていた。
「よし、そうと決まれば、まずはお金稼ぐか!!」
次の日からね営業周りに力を入れて、以前は一度断られたら、そこからアプローチしなかったが何度も電話して足を運んでみた。
最初は居留守をつかわれており、がっかりしていたが挫けず通ってみた。
入口のカウンター越しに、バッテンとされたり、帰れ帰れとシッシッってされていたが、めげずに通ってたら
ある日、手招きされて、話しをしてくれることに。
「急ぎの仕事で、試作品の1回だけなんだけど、これお宅でできる?」
正直、試作品の1回限りの仕事はどこも受けたがらない。
しかし、
「是非やらせてください。」
「本当に?頼むよ」
それから工場にいき、図面を職人に見せる
「いま、忙しいからこの納期は厳しいよ…」
「そこを何とかお願いします。」
「でもねぇ、試作品の1回限りでしょ? なんでそんな仕事取ってくるの…」
「今回は試作品で1回限りかもしれませんけど、品質が良ければ号口量産品を頂けるかもしれません。」
「しかしねぇ」
「また、号口はもらえなくても、これを切っ掛けにA社さんから仕事がもらえるかもしれないじゃないですか!ご無理を言ってるのは承知していますが、是非お願いします。」
「そうは言われてもねぇ…」
「お願いします!!」
何度も頭を下げる
「はぁ~、しょうがない、今回はやるから、ちゃんと美味しい仕事取ってきてよ!」
「はい! ありがとうございます。」
こうして、少しずつだが仕事をとってきて、営業業績もトップ!…とは言えないけど中堅まではきて給料も歩合制分そこそこ増えた。
当然、すぐうまくはいかずに、失敗も多くて、相変わらず課長に怒られる毎日だが…
そうして、季節も冬になったころ彼女から連絡がきた。
「松井さん、今 大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですが何かありました?」
「いえ、この前のお礼がまだだったと思いまして。遅くなりましたが、またお菓子を作ったので良ければと…」
「本当ですか?是非頂きたいです」
「今度のお休みいつですか?」
「ん~明後日ですね」
「あっ、私も明後日なので、明後日でどうですか?」
「いいですよ。はい、はい、じゃぁ、お昼に大国神社で」
そうして約束をして電話を切った。
「しゃっ!!」
と小さくガッツポーズをする。
「お昼なら、そのままお昼ご飯誘ってみよう。」
帰り道、神社の側を回り、おしゃれそうな場所を探して、翌日予約をしといた。
そして、約束の日。
また、約束の1時間前に来しまった。
「すみません、遅くなりました。」
彼女は約束の15分前にきたが、こちらに気づき小走りできた。
「いえいえ、私もさっき来たところですよ」
「ならいいですけど…これ、また焼き菓子を焼きましたので宜しければ召し上がってください。」
「ありがとうございます。この前の凄く美味しくて、また食べたかったんですよ」
「本当ですか?よかった~」
やばい、緊張して心臓が飛び出そうだ…喉もカラッカラだし…よし
「あ・あの~」
「はい?」
「ちょうどお昼ですし、よ・宜しければ一緒に、しょ・食事でも如何ですか?」
「お昼ご飯ですか?」
「はい、宜しければですけど…」
こ、怖い…返事は…聞くのが怖い…
「ん~、いいですよ」
「ほ・本当ですか!?」
「はい」
「ありがとうございます。実は近くのお店予約してまして…」
「え?そうなんですか?あははは、松井さん面白いです。」
「そ、そうですか?」
「はい。」
「では、行きましょうか」
「はい」
昼食の間、杏のことや仕事のことなどいろいろ話してとても楽しい時間をすごした。
会計の際、誘ったのはこっちだからと払おうとしたが、ダメだと割り勘でと叱られてしまった。
また、映画が好きだということで、同じ映画を観たいと意見が合ったので、今度観に行く約束もした。
数日後、夜の帰宅途中に大国神社の前で
「江戸川さん?」
あわてて、目を拭い振り返る彼女がいた。
「あっ、松井さん。こんばんは。」
「こんばんは。なにかありましたか?大丈夫ですか?」
「…はい、仕事でちょっと失敗しちゃいまして、上司に叱られてしまって…」
「なんだ、そんなことですか」
「な、なんだって、なんですか!酷くないですか!こっちは真剣に!!!」
「あっいえすみません。私なんて毎日、上司に怒られていたもんで…」
「そうなんですか?」
「はい、失敗なんて毎日してましたし、契約も取れないしで…、でもですね」
「はい」
「失敗して落ち込むってことは、何が悪かったか考えてるからで、反省してるってことは悪かったところが分かってるから反省できてるわけで、同じ失敗を繰り返さなければいいんですよ。」
「はぁ」
「同じ失敗を繰り返さないように気を付けてれば、それが経験になって次のステップに行けるんです」
「あははは、松井さんって凄いポジティブなんですね。悩んでる私が馬鹿みたいに思えました。」
クスクス彼女は笑っている。
「はぁ、ははは、そう思わないと挫ける毎日でしたから」
でも、それに気づけたのは、彼女と一緒にいたいと頑張ったからなのは内緒にししとこう。
「あははは、ありがとうございます。元気出ました。私もポジティブに考えます。」
「はい、それがいいです。でも反省は忘れちゃだめですよ。」
「はーい」
そうやってクスクス笑いながら彼女と話しながらお互い帰路についた。
それから、何度か映画観にいったり、食事したりとして、なんとクリスマスイヴにも会ってくれると約束してもらえた。
そして、クリスマスイヴは遊園地で遊び、食事をして帰路につく途中に、彼女から大国神社へ寄っていこうと提案があり神社の境内についた。
「少し、酔ってしまったので、ここでお話ししませんか?」
と本殿の階段に座る彼女
「ここでいいんですか?寒くないですか?」
「少し寒い方が、酔いも醒めるのでいいんです」
「はぁでは失礼します」
そういって横に座る
「思い起こせば、ここで杏が保護されて、ここで私たち出会ったんですねぇ」
「そうですねぇ、あの時は暗闇に光る眼が怖かったんですよ」
「あははは、そうなんですか~」
そうやって色々話すうちに、話すことがなくなって無言になった
「あ・あのぉ…」
「はい?」
「え・江戸川さん、は・話があります」
「はい」
「あ・あのぉ....そのぉ....」
江戸川さんは真剣にこっちを見てくれている。
意を決してしゃべりだす
「俺、おじさんだし...お金もないし、貯金もないし.....」
「はい」
「つまらないやつだし...仕事もできなし...イケンメンでもないし...何言ってるんだ俺は....」
言っていて何言ってるかわからなくなって情けなくて、でも江戸川さんのこと大好きになって思い伝えたくて胸いっぱいになって、いつの間にか泣いていた....
「グスッ、な・情けなくてごめんなさい…」
江戸川さんはそっと手の上に両手を添えて
「大丈夫です。最後までお願いします」
「は..い....こんな、情けない俺だけど、江戸川さんのこと大好きです。俺とつき合ってくれませんか」
しばし、静寂がつつむ。
怖くて目を閉じてたが、そっと開けてみたら江戸川さんも泣いていた
「え・江戸川さん?」
彼女は涙をぬぐって話し出した。
「もう、遅いです!」
「え?」
「松井さん遅すぎます!」
「は・はい?」
「私、待ってたんですよ、いつ告白しくれるのかって!」
「じゃぁ、返事は?」
「もちろん、はいです。こんな私で宜しければお願いします。」
「こんな私がいいんです!こんな私しか駄目なんです。」
「あははは。松井さんやっぱり面白いですね。」
「でも、こんな情けないおじさんでいいの?」
「はい、そんな情けないおじさんがいいんです。」
クスクス笑いながら彼女の目に涙が浮かんでた。
「そ・それじゃぁこれからもよろしくお願いいたします。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
軽くお辞儀をして笑いだす二人。
「じゃぁ、身体も冷えますし風邪ひかないうちに今日は帰りますか?」
「そうですね」
「じゃぁいきますか?江戸川さん」
「む~、もう彼女なんですから名前で呼んでください」
そういってむくれる彼女
「あっでも、お互い名前まで知らないですね…」
「あっそうですね、俺は、尚輝です。よろしくお願いします」
「私は、ありす、江戸川ありすって言います。」
「ありすさん、よろしくお願いします」
「む~ありすって呼んでください」
「はぁ、あ・ありす行こうか」
「はい」
そういって、ありすは手を繋いでくれた。
「あっ雪」
雪がちらつく中、二人手を繋いで引っ付くように帰路についていった。
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