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1章ー義兄

8話 【義妹は】

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「セシリアッ!」

手を伸ばした先には何もなかった。
いつもそうだ。

今回もそうなのか。
木目の綺麗な天井を見ながら、落胆する。

自分が嫌で嫌でしょうがない。

「フフッ。妹さんはご無事ですよ。」

「えっ?!」

突然、視界の外から出てきた声に驚く。

「お怪我の方は?」

「えーと、大丈夫です。」

優しい声と共に視界に映ったのは看護服を着たお姉さんだった。
流石、乙女ゲー世界というべきか。
かなり顔が整っていた。

「あのッ!セシリアは...!!」

「妹さんは、あちらで寝ていますよ。歩けますか?」

「は、はい。」

「それでは、お手を。」

看護師に連れられるがまま、木造の施設の中を歩く。
前世の医療施設には劣ってしまうが、この異世界には回復魔法が存在する。

それだけで、この世界の人間の死亡率は前世とは段違いだ。
俺も回復魔法を使えれば良いのだが、この魔法に関しては他の魔法と違い、才能がものをいう。

「こちらです。」

案内されたのは、集中治療室と書かれた個室だった。
それだけで、セシリアの傷が回復魔法でも治せない程のものだった事が分かる。

「セシリアさ~ん。」

看護師がノックをして、セシリアの名前を呼ぶ。

「はい。」

中から聞こえたのは、凛とした鈴の音色の様な声。
今まで何度も聞いてきた、義妹の声だ。
その事に、とてつもない嬉しさを感じたと共に、俺の中で様々な不安が頭をよぎる。

俺みたいな奴が会ってもいいのだろうか、と。
情けない兄に落胆しているのではないか。

弱い俺を許してくれるだろうか。
それに、傷跡や後遺症は。

様々な感情や不安要素が頭の中を埋め尽くす。

「セシリアさん、入りますよー。」

「はい。」

セシリアの返事と共に、看護師は取手を引き中へ入る。
俺は、入るか入らないか、少し悩みながらも部屋に入る事を選んだ。

ここで逃げたら、何か後悔する気がしたのだ。

「セシリアさん、お兄さんがいらっしゃってますよ。」

「へっ?!に、兄さん?!」

そんな声が中から聞こえたが、俺は構わず取手を引き、中へ入る。

「セシリア...。」

俺は下を向きながら、セシリアが寝ているベッドの近くに寄る。
どんな顔をすれば良いか分からない。

「ちょっと、兄さん!」

というか、俺は今どんな顔をしているのだろう。
セシリアを不安にさせてはいないだろうか。

「絶対に前を向かないでね!」

何から謝ろうか、どう謝ろうか、それで頭が一杯だった。
とりあえず、笑おう。

セシリアだって不安の筈だ。
そんな半笑いの様な、引き攣った表情のまま、セシリアの方へと顔を上げる。

「キャアッ!!」

その瞬間、セシリアから悲鳴の声が上がる。
俺は目を大きく見開き、何かあったのではないかと、即座にセシリアに視線を移す。

「見ないでって言ってるでしょッ!!」

最後に見えたのは、豊満な身体に赤色の下着を着た最愛の義妹の姿だった。

「グウェッ!」

やってしまった...。
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