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1章ー義兄
9話 【その後】
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「ごめん、セシリア。」
「もう大丈夫だって...!」
そう言ってセシリアが俺を諭すが、俺の気は晴れない。
下着姿を見てしまった罪悪感もあるが、あの事件での傷痕を完璧に治す事はできないらしい。
傷痕は少しだが、手術痕が残るようだ。
「傷...ごめんな。」
「何で兄さんが謝るの?」
「いや、だって...俺のせいで。」
「悪いのは全部、あの男じゃない。兄さんが謝る事ないわ。」
「...。」
「兄さんだって、私達を守る為に傷を負ったでしょ?私だけじゃない...だから大丈夫よ。」
「あぁ...。」
俺に罪悪感を抱かせないように言ってくれているのだろう。
いつもは凛としているセシリアの声が揺れている。
「それじゃあ、今度、私に魔法を教えてよ。」
「え?魔法。」
「うん。魔法。」
「いくらでも教えてやる...。」
「フフッ、ありがと。」
その後、数分話して俺はセシリアの部屋を後にする。
後、4日程は感染病や傷が開く恐れがある為、病院に入院しなければいけないらしい。
退院したら、魔法を教えてあげないとな。
---------
コンコンッ
「入れ。」
「失礼します。」
目を覚まして2日で退院できた俺は、セシリアを残して先に公爵家へと戻った。
公爵家に戻った俺が、一番に向かったのは父の書斎だ。
事件後の処理とセシリアの件について話さないといけない。
「そこに座れ。」
「はい。失礼します。」
相変わらず威厳の塊の様な人だ。
目の前に居るだけで、圧倒されてしまう。
「ふぅ...とりあえず、身体は大丈夫か。ロベルト。」
「はい。」
「そうか、手の方は?」
「医師の話によると、1ヶ月程度で普段通りに動かせるようになるという事です。」
「そうか...。」
「ところで、父さん。あの事件の事ですが...」
「あぁ。アレは既に牢獄の中だ。」
「そう...ですか。」
あの貴族の男は騎士団が連行した、という話は騎士団の団長と入院中の面談で少し話をしたが、その後はどうなっているのか分からないままだった。
「正直、私はアイツを殺してしまっても構わないと思ったのだがな。私の子供達に消えない傷を与えたのだ、死んで当然だろう。だが奴の家族連中が死刑だけは、と訴えてきた。あのゴミも一応、伯爵家の次男だというからな。私の慈悲で死ぬまで牢獄の中で過ごせるよう取り計らってやったのだ。」
それは慈悲なんかじゃないでしょ、と言いたい所だが、可哀想だとは微塵も思えない。
それだけの事をあの男はしたのだ。
「そ、そうですか。」
「あぁ。」
「...。今回の一件、本当にご迷惑をお掛けしました。」
「気にする事はない。お前達2人は当然の事をしたのだ。弱者を痛ぶる強者など在ってはならない。」
「はい。」
「ふぅ...。ロベルトよ。話は変わるが、お前...家庭教師になる気はないか。」
「はい...??」
話が変わりすぎて状況を上手く理解できない。
「今回の件で、少しいざこざがあってな。お前の怪我が治り次第、ルーフェン公爵家へ家庭教師として出向いてもらいたい。」
「は、はぁ。」
「相手は、シェリア・ルーフェン。お前と同じ歳の子だ。」
シェリア・ルーフェン。
彼女の名は、貴族間でも有名だ。
ルーフェン公爵家の第二公女として生まれ、絶世の美貌を持つ彼女、シェリア・ルーフェンだが、とにかく粗暴で荒れているらしい。
その内容は知らないが。
正直、周りの貴族達の嫉妬から生まれた偽情報だと前までは思っていたが、その彼女と直接会うとなれば話は別だ。
「あの、何故俺なんですか?」
「...行ってみれば分かる。」
父の意味深な言葉と、曇った表情に、俺はただ頷く事しかできなかった。
「もう大丈夫だって...!」
そう言ってセシリアが俺を諭すが、俺の気は晴れない。
下着姿を見てしまった罪悪感もあるが、あの事件での傷痕を完璧に治す事はできないらしい。
傷痕は少しだが、手術痕が残るようだ。
「傷...ごめんな。」
「何で兄さんが謝るの?」
「いや、だって...俺のせいで。」
「悪いのは全部、あの男じゃない。兄さんが謝る事ないわ。」
「...。」
「兄さんだって、私達を守る為に傷を負ったでしょ?私だけじゃない...だから大丈夫よ。」
「あぁ...。」
俺に罪悪感を抱かせないように言ってくれているのだろう。
いつもは凛としているセシリアの声が揺れている。
「それじゃあ、今度、私に魔法を教えてよ。」
「え?魔法。」
「うん。魔法。」
「いくらでも教えてやる...。」
「フフッ、ありがと。」
その後、数分話して俺はセシリアの部屋を後にする。
後、4日程は感染病や傷が開く恐れがある為、病院に入院しなければいけないらしい。
退院したら、魔法を教えてあげないとな。
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コンコンッ
「入れ。」
「失礼します。」
目を覚まして2日で退院できた俺は、セシリアを残して先に公爵家へと戻った。
公爵家に戻った俺が、一番に向かったのは父の書斎だ。
事件後の処理とセシリアの件について話さないといけない。
「そこに座れ。」
「はい。失礼します。」
相変わらず威厳の塊の様な人だ。
目の前に居るだけで、圧倒されてしまう。
「ふぅ...とりあえず、身体は大丈夫か。ロベルト。」
「はい。」
「そうか、手の方は?」
「医師の話によると、1ヶ月程度で普段通りに動かせるようになるという事です。」
「そうか...。」
「ところで、父さん。あの事件の事ですが...」
「あぁ。アレは既に牢獄の中だ。」
「そう...ですか。」
あの貴族の男は騎士団が連行した、という話は騎士団の団長と入院中の面談で少し話をしたが、その後はどうなっているのか分からないままだった。
「正直、私はアイツを殺してしまっても構わないと思ったのだがな。私の子供達に消えない傷を与えたのだ、死んで当然だろう。だが奴の家族連中が死刑だけは、と訴えてきた。あのゴミも一応、伯爵家の次男だというからな。私の慈悲で死ぬまで牢獄の中で過ごせるよう取り計らってやったのだ。」
それは慈悲なんかじゃないでしょ、と言いたい所だが、可哀想だとは微塵も思えない。
それだけの事をあの男はしたのだ。
「そ、そうですか。」
「あぁ。」
「...。今回の一件、本当にご迷惑をお掛けしました。」
「気にする事はない。お前達2人は当然の事をしたのだ。弱者を痛ぶる強者など在ってはならない。」
「はい。」
「ふぅ...。ロベルトよ。話は変わるが、お前...家庭教師になる気はないか。」
「はい...??」
話が変わりすぎて状況を上手く理解できない。
「今回の件で、少しいざこざがあってな。お前の怪我が治り次第、ルーフェン公爵家へ家庭教師として出向いてもらいたい。」
「は、はぁ。」
「相手は、シェリア・ルーフェン。お前と同じ歳の子だ。」
シェリア・ルーフェン。
彼女の名は、貴族間でも有名だ。
ルーフェン公爵家の第二公女として生まれ、絶世の美貌を持つ彼女、シェリア・ルーフェンだが、とにかく粗暴で荒れているらしい。
その内容は知らないが。
正直、周りの貴族達の嫉妬から生まれた偽情報だと前までは思っていたが、その彼女と直接会うとなれば話は別だ。
「あの、何故俺なんですか?」
「...行ってみれば分かる。」
父の意味深な言葉と、曇った表情に、俺はただ頷く事しかできなかった。
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