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2章 軌跡
11話【魔物の恐ろしさ】
しおりを挟む「ここがドーナ村?」
「ああ、ここがドーナ村だ...。」
俺の呟きに、アルが答える。
村の入り口の木堀には血がびっしりと張り付いている。
何だろう、嫌な予感しかしない。
「うしっ、全員降りたな?じゃっ、クエスト内容を発表する。ドーナ村を襲ったゴブリン共の殲滅。以上だ。遠征の時の決まりはさっき話した通りだから、なるべく早く終わらせて置いてかれない様にしねぇとな。」
ロイの話では、どうやら、こういう遠征を行う際には、最後尾のパーティーから一番近くの村や区域のクエストを受けていくらしい。
そうすれば、最前列にいるパーティーと最後尾にいるパーティーの足並みが良い感じにそろうのだそうだ。
「よし、入るぞ。」
スンッと鼻を刺すような刺激臭が塀の近くで臭った。
死体...だろうか。
そう考えた瞬間、一気に目が覚める。
そう、この世界はゲームではない。
一回死んだらリスタートなどないのだと、自分に何度も言い聞かせる。
ーーーーーーーーー
「おいおい、ひでぇな。これは。」
村の中に入った途端、ロイ以外のパーティー会員が押し黙る。
黒ずんだ血液がそこら中の家に飛び散って、黒く変色している。
それだけで、どれだけ悲惨な事がこの村であったのか容易に想像する事ができる。
俺たちが、村の入り口で唖然としていると、
村民2人に介護される様に、一番奥の住居から、腰の曲がったおばあさんが出てきた。
村人達の扱い的にも、村の長とみて間違いなさそうだ。
「冒険者の方ですか?」
「はい。」
「ゴブリン共の巣を?」
「はい。」
「そうですか、、、。私は、、。村人達がゴブリン達に殺されているというのに何にも出来ずに...。逆に守って貰うばかりで。無念でなりません...!どうかあのゴブリン達を。どうか...!」
「はい...!」
おばあさんの話を聞いた、ロイの顔つきは普段とは打って変わって、殺気に満ち溢れていた。
今まで見てきた大人達の中でも、独特な雰囲気を放つロイに緊張感を覚える。
「よし、行くぞ。」
そう言って、馬車とは反対方向に向かうロイ。
その行動にどういう意図があるのだろうか。
「なぁ、ロイ。何でこっち側に行ってるんだ?」
素朴な疑問だった。
「ん?あぁ。さっきの村見たろ?女の人が多かったよな?」
「あぁ。」
確かに、女性が大半だった気がするが、それがどうかしたのだろうか?
「ゴブリン達は頭がキレる。だからまず最初に力のある男を狙うんだ。何故だか分かるか?」
「...対抗できなくする為?」
「まぁ、半分正解で半分不正解だな。」
「...?」
「ゴブリンは、人口がなるべく少ない場所を狙う。それは攻めやすいってのもあるが、報復を免れる為でもある。」
「報復?」
「あぁ。あいつらは狡猾だからな。人間を襲ったら、いづれ何らかの形で報復されるっていうのを分かってる。例えば、自分達の住処を襲われたり、な。だからその報復を免れる為に、まずは障害となり得る、力のある男手を襲うんだ。」
「...。」
え?
ゴブリンって初級モンスターとかそんなんじゃないんですか?
と言ってやりたかったが、流石の俺でもあの惨状を見た後にそんなフザけた事を口にするのは拒まれる。
「そして、男手を大半殺し終えた後は、一旦自分達の住処に戻るんだ。女性しかいなければ、報復を恐れる事もないし、ましてやゴブリン側からしてみれば、女手しかいない村はいつでも摂取する事のできる、絶好の狩場になるわけだ。」
「...そう、、、か。」
ゴブリン達の悪どさ、狡猾さを知っていくに連れ、この世界の魔物の純度が高いというのが分かる。
本来、雑魚モブ扱いされる筈のゴブリンでさえ、人間の集落を壊滅する事ができるのだ。
これから北に近づくに連れ、魔物のクラスは上がっていくと受付嬢が言っていた。
俺たちは果たして生き残る事ができるのだろうか。
「そして、ゴブリンの好む洞窟はこの近くには、この先にある1つだけしかない。つまりそこが奴らの住処って事になる。」
「そこまで、分かるのか。」
「まぁな。村に着く前に、馬車の中でここらの地図は頭の中に入れておいたから...シッ。止まれ!」
途中で話を切って、後ろから付いてきていた俺たちに注意を促す。
「ゴブリンの巣だ。見張もいる。一旦様子を見るぞ。」
普段よりも芯の通った声で指示を出すロイの声に、より一層、緊張感が高まる。
俺の後ろにいたシェリア達もそれを感じ取ったのだろう。
ゴクッと、を呑む音が聞こえた。
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