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2章 軌跡
間話ーセシリア・フィンセントSide
しおりを挟む兄さんがいなくなって5日が経った。
フィンセント公爵家にその知らせが来たのは4日前。
私が、王都に出向いていた際の出来事だった。
王都から帰ると、父は頭を抱えたまま机の上に伏していた。
兄さんと公女様...後にこの国の公爵家、王の忠臣となる2人の跡取りが1度に行方不明になったのだ。
当然、両家に反発する貴族達が現れる。
父とルーフェン公爵家がその勢力を抑えつけてはいるが、そう長くは持たないだろう。
「はぁ...兄さん、、、。」
兄さんが家庭教師に行って4日が経った日の夕刻、兄さんと公女様は行方不明になったそうだ。
貴族達は、兄さんとシェリア公女が恋仲になり、駆け落ちでもしたのではないかと、要らぬ噂で周りを焚き付け半分デモの様な形で、両家を糾弾している様だ。
普通に考えたら、4日で恋に落ち、駆け落ちを考えるなんて有り得ないだろう。
有り得ない事だが、そういうバカみたいな話も貴族達が力を合わる事で、公爵家という立ち位置を貶める程の効力を発揮する事になる。
本当に貴族連中はマトモな人間が少ない。
ちょっとでも上にのし上がろうと醜い連中ばかりだ。
特に、バウラー伯爵。
彼は、公爵家を陥れようとしているのが、貴族連中の中でもより顕著に表れている。
「駆け落ちではないか?」
「公爵家が何かを隠しているのではないか?」
など、こじ付けては手のひらを返して、如何にも中立的な位置にいるかの様な立ち回りをしているが、こちら側からしたら、公爵家を叩き落とそうとしているのが見え見えなのだ。
「はぁ、、、。」
最近ため息が多くなった気がする。
兄さんは無事だろうか、と考える度に胸がソワソワする。
焦っているのだろうか。
父とルーフェン公爵様は、兄さんと公女様の行方を、広範囲に渡って探している様だが、手掛かりすら掴めていないらしい。
「早く、帰ってきて、、、。」
無力な私には、そう願う事しかできない。
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