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2章 軌跡
12話 【作戦】
しおりを挟む「ゴブリンの数は、見張りだけで11体。中に居る数を合わせて推定50体程度だろう。だがもしも予想が外れてた時の為に、80体はいると推定して、作戦を立てる。良いな?」
あの洞窟から、少し離れた茂みでロイが討伐についての話を切り出す。
ロイの話に、俺達4人は首を縦に振る。
「まず、あの見張り役のゴブリンだが、、、。俺とロベルトの2人でやる。」
やれません。
と、即答してやりたがったが、ロイなりの考えがあるのだろう、と俺は首を縦に振る。
「俺が前衛で、ロベルトが後衛。ロベルトには自分を守りながら俺の援護に回ってもらいたい。できそうか?」
「あぁ。でも、俺達2人でやりきれるのか?2対11なんて無謀だと思うんだが。」
まぁ、この戦力差で勝負をするという事自体、無謀といえるのだが。
「あぁ。俺1人で8体くらいなら、相手取れる。が、時間がかかる。だからロベルト、お前の力が必要なんだ。」
そう言い切るロイの表情には、何処か余裕があった。
長年積み上げてきた冒険者としての経験がそうさせるのだろうか?
そんな、ロイに必要とされている事に少し高揚感を抱く。
「...分かった。」
「よし、、、。じゃあ残った3人だが、まず俺達が見張りと戦闘を始めたら、中のゴブリン達が湧いて出てくるかもしれない。それを防ぐ為に3人には、なるべく洞窟の近くに待機してもらって、俺とロベルトが仕掛けた際と同時にアルを先頭にして洞窟の穴を塞いで欲しい。」
「塞ぐのか?どうやって?」
アルの疑問はロイ以外のこの場にいる者、全員が思った事だろう。
「洞窟の入り口は見たか?」
「あぁ。」
「あの洞窟は、入り口からどんどん中が広がっていく構造になってるんだろう。遠目から見ただけで性格なデカさは分からないが、入り口は人間2人分位の大きさな筈だ。」
確かに、入り口はあまり広くはなかった。
ゴブリン達の大きさからしたら広く感じそうだが、人間の大きさからしたら、少し狭く感じる。
「あぁ、そういう事か。」
アルがロイの言葉に頷き、笑い合う。
...どゆこと?
この2人のやり取りについていけない。
「どういう事よ?」
どうやら、シェリアも分かっていなかったらしい。
「あぁ、すまん。えっとな、、、アルには、洞窟の入り口を塞いでもらう。盾の固有魔法と嬢ちゃんの援護魔法で、俺達の戦いが終わるまで、いわゆる壁になってほしい。」
固有魔法、初めて聞くその単語に、驚きを隠せない。
固有という事は、オリジナル魔法、という解釈で良いのだろうか?
「私は?」
フィアが尋ねる。
「あぁ。フィアにはアルの援護を頼みたい。俺達がなるべくそっちに向かわせない様に戦うつもりだが、もしもそっちにいった場合は、アルを守ってくれ。今回の作戦のキーマンはアルだからな。アルが死ねば、俺達も全滅する。」
「分かったわ。」
「よし、大体、イメージは固まったな、、、。じゃあ最後だが、洞窟内にいるゴブリン達は、こいつでやる。」
ロイがそう言って、太腿のポーチから皮袋を取り出す。
「何だそれ?」
水だろうか?
紙袋の中身が液状だという事は見ただけでも分かった。
「油だ。最後はコイツで奴らを全滅する。」
油、、、。
確かに、油を使って、洞窟内を燃やせば効率よくゴブリン達を殲滅できる。
「うし、じゃあ。移動するぞ。」
そう言って、俺達は2人と3人に分かれて指定の位置に着く。
「頼むぞ、ロベルト。」
どうやら最初に仕掛けるのは俺の魔法らしい。
胃が痛くてしょうがないが、期待に応えたい。
プシュッ
そんな効果音と共に、俺の火の魔法が見張り役のゴブリンへと向かって猛威を振るう。
棒立ちしていたゴブリンが、俺の魔法に気づくがもう遅い。
ゴブリンが、悲鳴を上げながら黒く染まっていく。
相手がどれだけ非道な魔物だとしても、こういう死ぬ前のもがぎに、少し罪悪感を感じる。
「良くやった!行くぞ!」
「あぁ!」
ロイが、ゴブリン達に向かって駆け出す。
俺も後ろを全力で追いかける。
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