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デモンストレーター デビュー

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我妻香奈恵から話があったその2週間後、摩耶はいよいよデモンストレーターとしてステージに上がる日を迎えた。

魅麗は、香奈恵が何かを企んでいるに違いないと、摩耶がステージに上がる事に反対したが、摩耶は平気だった。

香奈恵に煙たがられている摩耶にとって、近い将来彼女と一戦交える日が来ることは分かり切っていた。それならば早い方がいい。

夜7時、摩耶は魅麗を連れて会場に向かった。今回はデモンストレーターとしてイベントに臨む為、ゲストとは別ルートでの会場入りだ。
摩耶は控え室に入ると、黒いスーツに着替えた。
そして、椅子に腰掛け出番を待っていると、そこに香奈恵が現れた。

香奈恵は、自信に満ち溢れた表情で摩耶を見ると、ニヤリと笑いながら言った。

「いよいよデビューだわね。がんばってね。」

「はい。香奈恵様。私をデモンストレーターに指名して下さってありがとうございます。」

摩耶が丁寧に礼を言うと、香奈恵は不敵な笑みを浮かべて答えた。

「あなたはスカウトとしても優秀だけど、本来はこっちの方が適正があるんじゃないかと思っただけよ。」

摩耶はわざとらしく大きく頷いた。

「さすが、何でもお見通しですね。確かに、私は本来こっちの方が数倍好きです。適正があるかは別としてですが。。」

香奈恵はフンと鼻を鳴らして摩耶を見た。

「フフフッ、謙遜しなくてもいいのよ。せいぜいお手並み拝見といくわ。」

そう言うと、香奈恵は部屋の出口に向かった。そして、ドアのところでこちらを振り向いて言った。

「あなた、本当に可愛いわね。」

「ステージに上がれば、すぐに人気者になれるわ。」

彼女の怪しく光る目を見て、魅麗の表情が変わった。
そして、香奈恵が出ていった後、魅麗は深刻な顔で摩耶に言った。

「やはり。。香奈恵様が摩耶様をステージに上げようとした理由がこれではっきりしましたね。」

魅麗は摩耶をじっと見つめている。

「摩耶様をデモンストレーターとしてデビューさせ、ゲスト達の目に晒し、そして。。」

摩耶は、魅麗を見つめ返して言った。

「ゲスト達に私をメインキャストにリクエストさせ、ステージ上で合法的に私を潰す。」

魅麗は大きく頷いた。

「例えゲストがリクエストしても、本来摩耶様が選出などされる筈はありませんが、香奈恵様が何か裏工作をしてくる事は間違いないと思います。ステージ上で一度メインキャストとして発表されてしまえば、ゲスト達への建前上、上層部も手を出せませんし。」

「おもしろくなってきたわね。」

摩耶は魅麗に笑いかけると、出口に向かった。

「さあ、せいぜい人気が出る様がんばらなくっちゃね。」

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