上 下
278 / 424
捻られてゆく腕

2

しおりを挟む
摩耶は、更にダイヤルを回し、理絵の腕に限界まで負荷をかけた。彼女の悲鳴は更に大きくなり、肘はもう、わずかな衝撃にも耐えられない状態、折れる寸前に達していた。

摩耶は苦痛に呻く理絵に近づき、左手の枷を外した。
摩耶の予想外の行動にゲストはおろか、香奈恵までが怪訝そうな顔をしている。

無理はなかった。この行動は、摩耶のアドリブだったからだ。

摩耶はリモコンを持って理絵に近づいた。

理絵は、自由になった左腕で限界まで捻られた右腕を押さえ、少しでも庇おうとしていたが、摩耶は無理矢理その左腕にリモコンを握らせた。

ある機能を作動させて。。

理絵が左手でリモコンを持つと同時に、十字架が再び動きだした。

しかし、動き出したのは右腕の部分ではなかった。

十字架の、理絵の足を拘束している部分、その丁度右の太股の裏あたりから、銀色に輝く鋭い何かが、ゆっくりと飛び出してきた。

その鋭いものは、すぐに理絵の太股の裏に突き当たり、食い込んでいった。

「あっ!ああああ~っっ!な、何なの?嫌、痛い!痛い!痛い!」

理絵が早くも痛みに叫び始めた。

十字架から飛び出してきたもの、それは、五寸釘程もある太くて長い針であった。その針が、理絵の太股を串刺しにしようとしていた。

「お願い!もう助けて!痛いぃぃ~っ!もう嫌だあ~っ!」

理絵は、泣きながら摩耶に懇願した。
太股に食い込んでいく針の痛みに耐え兼ね、体を捩ると、今度は目一杯捻られた右肘が悲鳴を上げ、激痛が走った。
太股からは、血が流れ落ち始めている。

摩耶は、理絵に握らせたリモコンを彼女の左手ごと持ち上げ、彼女の顔の前に持っていった。

「理絵、いい? よく聞きなさい」

場内に、摩耶の厳しい口調の声が響き渡る。

しおりを挟む

処理中です...