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傭兵の職分
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「……全く」
眼下に広がる光景に、思わず舌打ちする。
環環が今陣取っている丘の上から見える、草がやっと生えそろった平原にあるのは、大きな砂煙の塊。その砂煙の間から、闘っている騎士や歩兵達の姿が見えた。兵士達が身につけている、所属する部隊を示す外套の色から、味方の部隊が苦戦しているのが嫌でも分かる。
〈……あいつ〉
再び、舌打ちする。
敵方は、冬の間に周到な準備をしていたようだ。兵士の数も、彼らの動きも、去年の戦闘時とは違う。しかし今は、そんなことに臍を噛んでいる場合ではない。味方を助けなければ。環は槍を持つ手を少し大きく振ると、馬腹を蹴って飛び出した。
砂煙に向かいながら、脳裏に浮かんだのは、やはり、敵の大将一意のこと。
一意は、この天楚国の北部の支配を任された領主の一人である。身分は騎士。しかし、天楚の王が定めた法を無視し、近隣の、他の領主が支配する土地に侵略し、その領主を殺して略奪を行った為、天楚王が討伐を命じた。現在は、北部を支配する大領主の一人因帰伯を中心に討伐をおこなっている最中である。
環も、天楚の西部に領地を持ち、『六角公』と呼ばれる大領主の一人。領地が遠いので討伐隊に加わるのは免除されていたが、しかし自分は天楚の騎士である。王に逆らう者を、いや、秩序を崩そうとする者を野放しにしておくわけにはいかない。秩序を守り、困った者を助けるのが騎士の務めではないか。だから環は、半ば強引に因帰伯の『助っ人』となり、今は一意の居城を攻める伯の部隊の後詰めをしている、のだが。……やはり、『見ているだけ』は性に合わない。
だから。味方の苦戦のただ中に、真っ直ぐ突っ込む。あっという間に、敵方の色の外套を着た騎士が二人、環の槍の犠牲になった。
「何をしている!」
その勢いを駆って、味方を鼓舞するように叫ぶ。
少し嗄れた声が、自分の歳を自覚させる。だが環は首を一度横に振ってその感情を振り払うと、更に胸を張って声を上げた。
「王に背く謀反人ぞ。倒さずして正義は無いっ!」
声を出しながらも、環の槍は更にもう二人、騎士を馬から落とす。環のその戦闘力と、叫んだその言葉に刺激されたのか、周りの味方達の動きが明らかに変わった。
形勢が、逆転した。漂う雰囲気からそれを察し、環は兜の下でにんまりと笑った。
と、その時。
「うわっ!」
狼狽の声が、環のすぐ側で響く。
その方向へ瞳を動かすよりも先に、環の槍は声のした方へと向かっていた。
「むっ!」
繰り出した槍が弾かれる感覚に、再び気持ちを引き締める。これは、……なかなかの手練れだ。一旦槍を引いて振り向くと同時に、環は目にした人物を一瞬で観察した。
お世辞にも良馬とはいえない馬に乗った、粗末な鎧の兵士。環を助けようと横から槍を繰り出す騎士達を血に汚れた槍で退ける度に、大柄な背中に垂れた金色の巻き毛が揺れた。異国の、者か? 彼のその髪の色から、そう判断する。天楚のある、マース大陸東部に住む人々の大部分は濃い色の髪を持つ。金の髪を持つ人間は西部に多いと聞く。おそらく彼は何らかの理由で故郷から遠く離れてしまった人間に違いない。しかし、強い。環がここまで考察する、ほんの僅かな間に、彼は環を除く周りの敵全てを退けてしまっていた。これは、……心して掛からねばなるまい。
身体中の血が、騒ぐ。
だから。
「……参る」
環は彼に向かって真っ直ぐな攻撃を放った。勿論、何の技巧もない環の槍攻撃はすぐに弾かれる。槍から伝わってくる彼の腕力に感心しながらも、次の瞬間、環の穂先は彼の脇腹を掠めて、いた。既に老年にさしかかろうとしている環には、若者のような腕力は無い。だが、歳と共に増した知恵と技巧だけは、誰にも負けない自信がある。
「……」
そんな環の攻撃に、彼はかなり狼狽したようだ。腰を捻って環の槍をぎりぎりで避けてから顔を上げた彼の、兜に隠れて見えない視線を、環は確かに感じた。
次の瞬間。
「むっ」
彼の姿が、急に大きくなる。慌てて立てた槍の柄が、騎士の槍を受けて強く痺れた。若い。力もある。手の痺れが、はっきりとそれを伝える。しかし、……力だけでは、私は倒せない。
彼の槍を受け止めたまま、腰の捻り一つで愛馬に指示を与える。環の愛馬である極は、海に棲む馬の魔物である『水馬』と、普通の軍馬との子供である。まだ知り合って日が浅いが、意思の疎通は完璧だった。
現に。
「うわっ!」
彼の狼狽が、小気味よく響く。槍にかかる彼の力と、極の俊敏さを利用して、いつの間にか環は彼の背後を取っていた。……槍を繰り出せば彼が屠れる位置に。
だが。
「おっ」
再び狼狽したのは、環の方。環が繰り出した必殺の槍を、彼は馬から落ちることで回避したのだ。馬から落ちた彼は、しかし身体のどこも痛めなかったのだろう、すぐに戦闘の砂埃の間に紛れてしまう。
「ふむ。……こりゃあ、やられたな」
後に残った環は、槍を構えたまま、呆れたとも感心したともつかない声を漏らした。
夕暮れ色に染まった、狭い広場のあちこちに、焚火の炎が見える。
ヴィマンはその光景を一瞥すると、徐ろに焚火の一つに近づいた。
「よう、ヴィマン」
顔見知りになったばかりの男の一人が、ヴィマンに向かって手を挙げる。
「今日も大変だったみたいだな。髪が砂色になってるぜ」
「はは」
男の軽口に、いつも通りの笑いを返す。ここの人々とは違い、ヴィマンの髪の色は元々金色なのだから、『砂色になった』も何もない。瞳の色も、ここに暮らす人々とは違う『碧い瞳』なのだが、暗い場所では殆ど見分けがつかないようで、からかわれたことはない。
「はい、今日の分」
軽口を叩いた男の隣で、鍋のスープをかき混ぜていた恰幅の良い女が、ヴィマンに向かってパンとスープの入った椀を差し出す。
「まだ食料には余裕があるから、お代わりしたけりゃ言いな」
余裕が無くなっているのならば、ここに居る傭兵の殆どはいなくなっている筈だ。そう、心の中で呟きながら、ヴィマンはありがたく椀を受け取った。……傭兵とは、そういうものだ。雇われているだけで、忠誠も正義もない。適当に闘って、形勢不利と見れば逃げ出すだけ。それだけの存在である。自分と同じように雇われている男達の間に腰を下ろし、ヴィマンはパン入りスープを三杯飲み干した。そして大欠伸をしながら徐ろに立ち上がる。
「ん、もう寝るのか」
立ち上がったヴィマンに、傭兵仲間の一人が声をかける。
「ああ」
もう一つ、ふわっと欠伸をしつつ、ヴィマンは仲間に頷いた。
「今日は疲れた」
「ああ、強かったよな、あの騎士」
「きっと大将だぜ。良い鎧を着てたし、馬も良かった」
少しの酒で騒ぐ仲間の声を聞きつつ、炎に背を向ける。
闇の脳裏に浮かんだのはやはり、昼間対戦した騎士、だった。
仲間の言う通り、ヴィマンの目から見ても立派な鎧を身に付けていたから、きっと天楚の領主に違いない。しかし昨日までは見たことがなかったから、おそらく敵側の援軍なのだろう。あの騎士を捕らえることができればおそらく、身代金がたっぷり取れる。鎧も馬も身包み剥いで転売すれば、相当な額になるであろう。
しかしながら。
〈強かったな、あいつ〉
腕力で劣る分を、頭脳と俊敏さでカバーしている。あんな奴を、腕力だけの自分が捕らえることができるだろうか。だが、それでも。できることなら、もう一度闘いたい。血の滾りが、ヴィマンの胸をわくわくさせた。
と。
「おっ」
小さな影が、ヴィマンの横をすり抜ける。ヴィマンが驚いている間に、小さな影は目と鼻の先にある小路へと入っていった。あの影の大きさはおそらく、まだ年端もいかぬ子供。そこまで考えて、ヴィマンは思わず首を傾げた。何故、こんな所に子供が? この城は殆ど城塞であり、何もかも戦向きに造られている。住人も、戦に必要な者のみ。女も、飯炊きの婆しか居ない。子供がいるスペースも雰囲気も、この城には無い。ヴィマンがそこまで考えた、丁度その時。
「こっちに逃げたぞ!」
「探せ!」
ヴィマンの背後から、騒々しい声が聞こえてくる。振り向かなくても、その声が近衛兵――この城の主一意が持つ、唯一の正規兵――達のものであることはすぐに判別できた。
「小さいからといって見逃すなよ!」
言葉から察するに、彼らはおそらく先程の小さな影を探しているに違いない。ヴィマンは少し歩き、小路の影になる場所に立ってから、後ろから来る彼らの為に少し身を逸らした。すぐに、揃いの外套に身を包んだ近衛兵が挨拶も無しにヴィマンの横を通り過ぎる。
「ふん」
いつものことながら、いけ好かない奴らだ。ヴィマンは眉間に皺を寄せた。
それはともかく。
「あいつら、行ったぞ」
立っている場所を動かず、目だけで小路の暗がりを探る。すぐに、微かに身動きする小さな影を見つけることができた。
暗闇に目が慣れるにつれ、影の形もはっきりしてくる。ひょろっとした身体に簡素なチュニックのみを着た、髪の長い子供。その、所々破れたチュニックから覗く細い腕にも細い足にも、無残な蚯蚓腫れが走っていた。
「近衛兵に、何かしたのか」
ヴィマンの問いに、首を横に振る子供。きっと引き結んだままの唇が、意志の強さを感じさせた。こんな子供が、どういう理由で近衛兵に追われているのか、そして何故こんな酷い蚯蚓腫れを付けられているのか、理由はさっぱり見当がつかない。だが、華奢な身体に伸びる蚯蚓腫れは、見ていて痛々しすぎる。
だから。
「効くかどうか分からないが」
ベルトに付けてある物入れを探り、軟膏を取り出す。
「塗ってやる。その方が痛くないと思うぜ」
このヴィマンの言葉に驚いたのか、子供の瞳が急に大きくなる。
次の瞬間。
「うわっ」
子供が、飛びついてくる。不意を突かれたヴィマンは、石畳の道に尻餅をついてしまった。
何故? 突然の子供の行動に、正直戸惑う。だが、ヴィマンはすぐに理解した。ヴィマンの目の前にあるのは、汚れた鎧に顔を埋め、泣きじゃくる子供の姿。この子供はおそらく、これまでずっと周りの人間に虐待されていたのだろう。同情の念が、ヴィマンの心を支配した。
だが、その次の瞬間。いきなり、後頭部に強い刺激が走る。
「いっ……」
目の前を星が踊っている間に、今度は背中に強い衝撃を受けた。
「なっ」
振り向くより先に、近衛兵の外套の色が目に入る。油断した。そう思うより早く、ヴィマンの胸から温かい感覚が消えた。
「やっと見つけた」
聞こえてくる冷徹な声に、はっとする。振り向くと、この城の主、一意の、銀の鎧に身を包んだ姿があった。その左手には、チュニックの襟を掴まれて苦しそうに足をばたつかせている子供の姿がある。
「何、を!」
頭と背中の痛みを堪えつつ立ち上がる。例え雇い主でも、子供をこんな風に扱う奴は許せない。だが。立ち上がると同時に、今度は腹に衝撃が走る。鉄の手袋を付けた一意の右拳が、ヴィマンの腹を強く叩いて、いた。
衝撃で、再び尻餅をつく。
「ふん、傭兵風情が」
そんなヴィマンの頭上から、一意の蔑みの声が降ってきた。
俯くと、鎧の腹のところが見事に凹んでいるのが分かる。
「……」
痛みと悔しさで、声も出ない。
一意と近衛兵が去るまで、ヴィマンは顔を上げることすらできなかった。
その夜の内に、ヴィマンは着の身着のままで城から追い出された。
勿論、解雇されたのだ。これまでの賃金も、貰っていない。
「……ふん」
近衛兵が守る城門から少し離れた場所で、毒づく。
「あんな残酷な奴、こっちから願い下げだぜ」
そんなヴィマンの声は、夜の闇に空しく流れた。
「……さて」
前向きに、何か別のことを考えないと、心が沈むのを止めることができない。気を紛らわせる為に、ヴィマンはこれからのことを考え始めた。
〈とりあえず、寝るところを探そう〉
夜の荒野は、獰猛な動物や魔物が跋扈する場所だ。小さいくせに意外に危ない虫達にも注意しなければならない。とりあえずヴィマンは、追い出された城壁の近くで、城門からの光は届くが近衛兵達からは見えない場所に陣取った。春になっていて良かった。正直、そう思う。暖かいから、一日ぐらいなら焚火無しで野宿をしても大丈夫だ。
だが。
〈これから、どうするか〉
何もない場所にごろりと横になって考えるのは、やはり、今後のこと。
南にある帝国の騎士階級出身で、武術は幼い頃から叩き込まれている。他の国で傭兵稼業を続ければ、生活するには困らない。何処かから馬を盗めば、大陸のあちこちで行われている馬上槍試合を荒らして賞金を稼ぐこともできるし、骨の髄まで叩き込まれた武術の腕をアピールして何処かの主君に仕えることも、おそらく可能だろう。だが、いつもならわくわくするようなどの思いつきも、今のヴィマンには空しいことにしか思えなかった。
「……帰りたい」
唐突に、その言葉が出る。だがすぐに、ヴィマンは首を横に振った。……でも、どこへ帰る?
ヴィマンが故郷を出た理由は、騎士階級の窮屈な生活が嫌になったから。だから、失踪した第二皇子の探索に託けて帝国を出たのだ。こんな自分が、今更、あの窮屈な生活に戻れるわけがない。それに。涙が溢れてきそうになり、慌てて首を振る。帝国を離れ、行く先々で自由とスリルを満喫しながら探しあてた第二皇子は、既に病に斃れていた。こっそり墓を暴いて確認したのだから、間違いない。
皇子のくせに気さくで優しい人だったと、今にして思う。一緒に武術の訓練をしている時に、悩みを話し合えるくらい仲良くなっておけば、悲劇は避けられたのかもしれない。帝国の皇位継承を巡って同い年の第一皇子と争うことを嫌い、誰にも告げずたった一人で帝国を去った第二皇子の末路を思い、ヴィマンは再び涙を流した。
そして。
ヴィマンが帰れるかもしれない場所は、実は、もう一つある。第二皇子探索の為に立ち寄った、南の港町だ。ヴィマンはそこで、浅黒い肌をした細腰の娘に惚れ、一年程彼女と一緒に過ごした。二人の間には男の子が生まれたが、娘が流行病に斃れたのを機に、子供を娘の父に預け探索の旅を再開したのだ。小さい頃に別れたのだから、子供はおそらく、父のことを全く覚えてはいないだろう。それで良いのだ、とも思う。ふらふらすることしか知らない、こんな情けない父親など、居ない方が良いのだ。
と、すると。……やはり、自分の帰る場所は無い。空しさが、胸を噛む。しかしそれは全て、自分の行動の結果なのだ。
だから。
ヴィマンはただ、頭上の星を見つめるしかなかった。
騒ぎ声で目が醒める。
いつの間にか、周りは朝になっていた。しかし戦闘はまだ始まっていない。こんな時間に何を騒いでいるのだろう。騒ぎ声の元を探して、ヴィマンは強ばった首を動かした。すぐに、騒ぎの場所を見つける。昨夜ヴィマンが追い出された城門の前で、近衛兵が一人の騎馬武者を囲んで騒いでいるのが、見えた。
こっそりと、城門に近づく。敵の敵は味方と言うが、近衛兵に一矢報いるチャンスかもしれない。……いや、一矢報いたい。昨夜追い出される際、近衛兵には散々殴られている。
「うぉぉぉぉっ!」
雄叫びを上げながら、近衛兵に突っ込む。不意を突かれた近衛兵二人が、ヴィマンの錆槍の犠牲となった。だが。流石、というべきか。ヴィマンの登場に驚いた近衛兵達は、しかしすぐに体勢を立て直すと、ヴィマンに向かって一斉に槍を立てた。
〈あちゃぁ……〉
やはり、ダメか。観念の溜息を漏らしつつ、それでも悪あがきで槍を振り回す。次の瞬間、近衛隊の槍の一つがヴィマンの肩を貫通した。
「うっ……」
痛みと衝撃に、尻餅をつく。そのヴィマンの前にあるのは、余裕の笑みを浮かべた近衛兵と、彼らが構えた光る槍。これは……逃げられない。思わず、唇を噛む。
だが。
「……あ」
ヴィマンを串刺しにする筈だった槍は、不意に横から飛んで来た大振りな槍の穂先に弾かれた。この槍には、見覚えがある。顔を上げると、予想通り、昨日闘ったあの『大将』が馬に跨って槍を構えて、いた。
「大丈夫かっ?」
次々と飛んでくる近衛兵達の槍を一人で飄々と躱しながら、『大将』はヴィマンにそう、声をかける。
「逃げろっ!」
俺を、助けてくれるのか? 暫し呆然と、『大将』の戦いぶりを見つめる。だが、『大将』の目的が自分でないことは、すぐに分かった。
「十波っ!」
近衛兵を退けた『大将』が、先程まで近衛兵に囲まれていた騎馬武者に声をかける。
「そなたも逃げろ!」
だが、『大将』に声をかけられた騎馬武者は不満そうに槍を立て、再び近衛兵に突っかかっていった。なるほど、そういうことか。その光景を見て、不意に納得する。それならば。
槍を拾い、首を振ってむりやり肩の痛みを忘れてから、『大将』が作った隙間から騎馬武者の方へと向かう。そして騎馬武者の前で槍を大きく振って近衛兵を遠ざけてから、騎馬武者の手綱を奪って馬の向きを変えた。
「何をするっ!」
甲高い声が、ヴィマンの耳を打つ。だが、そんなことはお構いなしだ。
己の力の残りを全て使い、ヴィマンは騎馬武者を戦線から離脱させるのに成功した。
「ふぅ……」
城壁から大分離れた、小川の側へ、騎馬武者を引っ張っていく。
川原では既に、馬から下りた『大将』が、馬に水を与えていた。
「はい……」
その『大将』へ、途中から諦めたのか大人しくなった騎馬武者の手綱を渡す。次の瞬間、忘れていた痛みを思い出し、ヴィマンは再び川原へ尻餅をついた。
「大丈夫か?」
そんなヴィマンの目の前に、『大将』の手が差し出される。
「あ、はい……」
軽く頭を下げてから、ヴィマンは『大将』の手を取って立ち上がった。痛みはあるが、血は既に止まっている。意外と軽傷だったようだ。
「ありがとう」
そう言いながら、『大将』が兜を取る。眼光鋭い瞳、厳しげに刻まれた顔の皺が、年齢を感じさせた。だが、元の主である一意のような冷たさは感じない。仕えるなら、こんな感じの人の方が良い。ヴィマンは直感的にそう思った。少なくとも、一意のような奴は二度とごめんだ。
「私の名は、六角公環。そなたは?」
そんなことを考えるヴィマンには構わず、『大将』が自分の名を名乗る。そこで出てきた言葉に、ヴィマンは内心「あちゃぁ」と声を上げた。『六角公』といえば、この天楚国の大領主。貴族の中の貴族ではないか。しかも武術の腕も天楚一と聞く。道理で、強い筈だ。
「あ。……ヴィマン、です」
目上の人に対する言葉遣いも、南の帝国での騎士修業の際に教えて貰った筈なのだが、今のヴィマンの頭の中にはそんなものは欠片だって残ってはいない。だからヴィマンは戸惑いつつも、普通に名乗ることにした。……それしかできなかった、ともいう。
「そうか」
だが、ヴィマンの無礼について何も感じなかったのか、六角公はにこやかにヴィマンに笑いかけると、背後に向かって声をかけた。
「ほら、十波もお礼を言いなさい」
二人から離れた所で、件の騎馬武者が馬を下りて川面を見つめている。六角公の声に、武者は不承不承、立派な房飾りのついた兜を脱いだ。
兜から零れ落ちた、艶やかな黒髪に瞠目する。……もしかして、『女』なのか?
「因帰伯の娘、十波嬢だ」
武者を紹介する六角公の言葉が、ヴィマンの洞察を裏付ける。確かに、叫んでいた声は甲高かったし、顔立ちは女に見える。しかし体格は普通の男並みだ。鎧姿だけでは絶対に女には見えない。しかし彼女の顔立ちは、好みだ。ヴィマンの頬は知らず知らずのうちに弛んでいた。
そんなヴィマンを一瞥して、十波は再び川面に視線を戻す。その瞳に涙が光ったのを、ヴィマンは見逃さなかった。
「八百……」
悲しげな呟きが、ヴィマンの心を打つ。
「大丈夫じゃ」
今にも泣き声を上げそうな十波の肩を、六角公が優しく叩いた。
「因帰伯はきちんと考えておる。孫のことだからな」
だが。
「大丈夫なわけ無いじゃない!」
次の瞬間、響いたのは、悲痛な叫び。
「交渉の役に立たないと分かれば、すぐに殺されるわ。一意はそういう男よ。かつての夫だもの、あいつの思考は誰よりも分かってる」
十波の叫びに、六角公が一瞬目を伏せたのを、ヴィマンは見逃さなかった。返答に言い淀む、姿も。
「あいつの侵略は非道よ。許すわけにはいかないんでしょ、小父様」
「ああ、そうだ」
「だったら、交渉も何も無いじゃない! 絶対殺されるわっ!」
とうとう、十波は両手を顔に当て、わっと泣き出した。
「八百は、……私の娘なのよ」
おそらく、十波の言っていることは殆ど真実なのだろう。六角公の行動からそう察する。そして。彼女の顔立ちから昨夜の子供のことを思い出し、ヴィマンははっとした。……一意から逃げようともがいていたあの子供が、彼女の娘、八百だ。顔立ちがそっくりだから、間違いない。
だから。
「あの」
十波の震える背中に、自信なく声をかける。
昨夜飛び込んできた、震える小さな背が、目の前の彼女の震えに重なる。できることなら、八百をあの残酷な父親から助け出し、この母親の許に返してやりたい。ヴィマンは心からそう、思った。だが。……正直なところ、助け出せるかどうか、自信がない。
〈えい、ままよ〉
それでも、やらないよりマシだ。そう、気持ちを奮い立たせ、ヴィマンは自分が考えた即席の作戦を口にした。
その日の、夕方。
〈……案外、簡単だったな〉
昨夜追い出された筈の、一意の城塞の中を、ヴィマンは誰にも咎められることなく歩いていた。
あの後、六角公と作戦について話し合ってから鎧を変え、戦闘でのごたごたに紛れて城塞内に侵入した。勿論、城門の所で近衛兵に確認されたが、それは上手くやり過ごしている。自慢の金髪を殆ど坊主にまで刈り上げたうえ、碧い瞳はつばの広い兜を目深に被って隠したのだ。十波の父、因帰伯に仕える兵士から借りてきた鎧が少し窮屈だが、大体の所ここまでは上手くいっている。後は、……八百を探すだけだ。一意の娘だから、彼の屋敷に監禁されているに違いない。そう思い、一意の屋敷の方へと足を向ける。
と、その時。
「また逃げたぞ!」
「探せ!」
聞き慣れた近衛兵の声が、ヴィマンの耳に入る。どうやら、八百に又逃げられたようだ。あいつら、案外間が抜けている。ヴィマンは思わずくすりと笑った。……それはともかく。
かくれんぼなら、慣れている。探すのも、探されるのも。小さい頃は武術の訓練が嫌でしばしば祖父や父から隠れ回っていたし、少し大きくなってからは、様々な理由で王宮のあちこちに隠れてしまう第二皇子を探すのに散々苦労したのだから。
だからすぐに、小路の奥に小さな影を見つける。脅かさないように、ヴィマンは静かに近づくと、震える影に向かって優しく声をかけた。
「八百」
細かく震えていた影が、びくっと一つ大きく震える。
「お母さんに、頼まれた」
だが、次のヴィマンの言葉で、影の震えはぴたっと止まった。
「お母さん?」
大きな瞳が、ヴィマンを見つめる。
「ああ。お前のお母さん、十波っていうんだろう?」
ヴィマンの言葉にこくんと頷く影。
次の瞬間。影はヴィマンの胸の中に、有った。
「昨日の、騎士さんだ」
胸の中で、子供が呟く。覚えていて、くれたのだ。こんな情けない奴のことを。
子供の言葉に胸が温かくなるのを、ヴィマンは確かに感じて、いた。
払暁と同時に、城門の外が騒がしくなる。打ち合わせ通り、六角公が攻撃を始めたのだろう。
不意の攻撃に慌て、次々と傭兵や近衛兵が外へ飛び出して行く様子を、目の端に捉える。その光景ににやりと笑うと、ヴィマンは盗んだ馬に八百と乗り、外套で八百を隠した。彼らに紛れて外へ飛び出す。それが、作戦。
だが。
もう少しで外、というところで、悪戯な風がヴィマンの外套を持ち上げる。城門を守っていた近衛兵に、八百の姿が露わになった。
「あっ!」
あっという間に、周りを囲まれる。
「八百、掴まってろ!」
ヴィマンは八百を残して馬から滑り下りると、槍を大きく振って進路を開き、馬の尻を叩いた。驚いた馬は真っ直ぐ、八百を乗せたまま六角公の陣地へと向かっていく。
〈これで、大丈夫だ〉
安堵したヴィマンの胸に、近衛兵の槍が迫る。それは何とかギリギリで躱したが、別の槍が強かにヴィマンの頬を打った。
「つっ……」
目の前に、星が舞う。やはり、俺は格好良い『騎士』にはなれなかった。突き付けられた死の槍を呆然と見つめながら、ヴィマンは何故かそんなことを思って、いた。
次の瞬間。ヴィマンに向かった槍が、鮮やかな光の線に阻まれる。
「十波っ!」
ヴィマンの目の前にいたのは、鮮やかな房のついた兜と輝く鎧を身につけた騎馬武者の姿。しかし、何故? 昨日は確か、「そんな杜撰な作戦には賛成できない」と言って一人でさっさと陣に帰ってしまったのに。だが。……助かるなら、どんな助太刀でも構わない。ヴィマンは残りの力を全て使って立ち上がると、十波が作ってくれた逃げ道を全速力で駆け抜けた。
辿り着いたのは、昨日の川原。
敵が追ってこないのを確認してから、ヴィマンは川原に大の字に寝転んだ。
すぐに地面から、馬の足音が聞こえてくる。顔を動かすと、十波がすぐ横に立っているのが見えた。
「助かった。ありがとう」
寝転んだまま、十波に向かって礼を言う。情けないが、起き上がる気力は既に無かった。
「お礼を言うのはこっちの方だわ」
だが十波は、ヴィマンの非礼など全く気にしていないというように首を横に振った。
「八百を助けてくれてありがとう」
十波の素直な言葉が、ヴィマンの心をほっとさせる。
とにかく、やり遂げることができたらしい。心が軽くなるのが、すぐに分かった。おそらくこれが『充足感』というもの、なのだろう。心地良い感覚に、ヴィマンは思わずふっと笑った。
と、その時。再びの足音に、首の向きを変える。大きな馬が、十波とヴィマンの方へと近づいてきていた。あの馬は、六角公の馬。そして、馬上にいるのは。
「お母さん!」
六角公に助け下ろされるのもそこそこに、八百が飛び出して十波の胸に顔を埋める。
安堵の気持ちが再び身体中に満ちてくるのを、ヴィマンは確かに感じた。
そして。
「あの」
十波の胸で十分に泣いた八百が、きらきらとした瞳でヴィマンを見つめる。
「助けてくれてありがとう」
その時、傭兵は初めて、満面の笑みを浮かべた。
眼下に広がる光景に、思わず舌打ちする。
環環が今陣取っている丘の上から見える、草がやっと生えそろった平原にあるのは、大きな砂煙の塊。その砂煙の間から、闘っている騎士や歩兵達の姿が見えた。兵士達が身につけている、所属する部隊を示す外套の色から、味方の部隊が苦戦しているのが嫌でも分かる。
〈……あいつ〉
再び、舌打ちする。
敵方は、冬の間に周到な準備をしていたようだ。兵士の数も、彼らの動きも、去年の戦闘時とは違う。しかし今は、そんなことに臍を噛んでいる場合ではない。味方を助けなければ。環は槍を持つ手を少し大きく振ると、馬腹を蹴って飛び出した。
砂煙に向かいながら、脳裏に浮かんだのは、やはり、敵の大将一意のこと。
一意は、この天楚国の北部の支配を任された領主の一人である。身分は騎士。しかし、天楚の王が定めた法を無視し、近隣の、他の領主が支配する土地に侵略し、その領主を殺して略奪を行った為、天楚王が討伐を命じた。現在は、北部を支配する大領主の一人因帰伯を中心に討伐をおこなっている最中である。
環も、天楚の西部に領地を持ち、『六角公』と呼ばれる大領主の一人。領地が遠いので討伐隊に加わるのは免除されていたが、しかし自分は天楚の騎士である。王に逆らう者を、いや、秩序を崩そうとする者を野放しにしておくわけにはいかない。秩序を守り、困った者を助けるのが騎士の務めではないか。だから環は、半ば強引に因帰伯の『助っ人』となり、今は一意の居城を攻める伯の部隊の後詰めをしている、のだが。……やはり、『見ているだけ』は性に合わない。
だから。味方の苦戦のただ中に、真っ直ぐ突っ込む。あっという間に、敵方の色の外套を着た騎士が二人、環の槍の犠牲になった。
「何をしている!」
その勢いを駆って、味方を鼓舞するように叫ぶ。
少し嗄れた声が、自分の歳を自覚させる。だが環は首を一度横に振ってその感情を振り払うと、更に胸を張って声を上げた。
「王に背く謀反人ぞ。倒さずして正義は無いっ!」
声を出しながらも、環の槍は更にもう二人、騎士を馬から落とす。環のその戦闘力と、叫んだその言葉に刺激されたのか、周りの味方達の動きが明らかに変わった。
形勢が、逆転した。漂う雰囲気からそれを察し、環は兜の下でにんまりと笑った。
と、その時。
「うわっ!」
狼狽の声が、環のすぐ側で響く。
その方向へ瞳を動かすよりも先に、環の槍は声のした方へと向かっていた。
「むっ!」
繰り出した槍が弾かれる感覚に、再び気持ちを引き締める。これは、……なかなかの手練れだ。一旦槍を引いて振り向くと同時に、環は目にした人物を一瞬で観察した。
お世辞にも良馬とはいえない馬に乗った、粗末な鎧の兵士。環を助けようと横から槍を繰り出す騎士達を血に汚れた槍で退ける度に、大柄な背中に垂れた金色の巻き毛が揺れた。異国の、者か? 彼のその髪の色から、そう判断する。天楚のある、マース大陸東部に住む人々の大部分は濃い色の髪を持つ。金の髪を持つ人間は西部に多いと聞く。おそらく彼は何らかの理由で故郷から遠く離れてしまった人間に違いない。しかし、強い。環がここまで考察する、ほんの僅かな間に、彼は環を除く周りの敵全てを退けてしまっていた。これは、……心して掛からねばなるまい。
身体中の血が、騒ぐ。
だから。
「……参る」
環は彼に向かって真っ直ぐな攻撃を放った。勿論、何の技巧もない環の槍攻撃はすぐに弾かれる。槍から伝わってくる彼の腕力に感心しながらも、次の瞬間、環の穂先は彼の脇腹を掠めて、いた。既に老年にさしかかろうとしている環には、若者のような腕力は無い。だが、歳と共に増した知恵と技巧だけは、誰にも負けない自信がある。
「……」
そんな環の攻撃に、彼はかなり狼狽したようだ。腰を捻って環の槍をぎりぎりで避けてから顔を上げた彼の、兜に隠れて見えない視線を、環は確かに感じた。
次の瞬間。
「むっ」
彼の姿が、急に大きくなる。慌てて立てた槍の柄が、騎士の槍を受けて強く痺れた。若い。力もある。手の痺れが、はっきりとそれを伝える。しかし、……力だけでは、私は倒せない。
彼の槍を受け止めたまま、腰の捻り一つで愛馬に指示を与える。環の愛馬である極は、海に棲む馬の魔物である『水馬』と、普通の軍馬との子供である。まだ知り合って日が浅いが、意思の疎通は完璧だった。
現に。
「うわっ!」
彼の狼狽が、小気味よく響く。槍にかかる彼の力と、極の俊敏さを利用して、いつの間にか環は彼の背後を取っていた。……槍を繰り出せば彼が屠れる位置に。
だが。
「おっ」
再び狼狽したのは、環の方。環が繰り出した必殺の槍を、彼は馬から落ちることで回避したのだ。馬から落ちた彼は、しかし身体のどこも痛めなかったのだろう、すぐに戦闘の砂埃の間に紛れてしまう。
「ふむ。……こりゃあ、やられたな」
後に残った環は、槍を構えたまま、呆れたとも感心したともつかない声を漏らした。
夕暮れ色に染まった、狭い広場のあちこちに、焚火の炎が見える。
ヴィマンはその光景を一瞥すると、徐ろに焚火の一つに近づいた。
「よう、ヴィマン」
顔見知りになったばかりの男の一人が、ヴィマンに向かって手を挙げる。
「今日も大変だったみたいだな。髪が砂色になってるぜ」
「はは」
男の軽口に、いつも通りの笑いを返す。ここの人々とは違い、ヴィマンの髪の色は元々金色なのだから、『砂色になった』も何もない。瞳の色も、ここに暮らす人々とは違う『碧い瞳』なのだが、暗い場所では殆ど見分けがつかないようで、からかわれたことはない。
「はい、今日の分」
軽口を叩いた男の隣で、鍋のスープをかき混ぜていた恰幅の良い女が、ヴィマンに向かってパンとスープの入った椀を差し出す。
「まだ食料には余裕があるから、お代わりしたけりゃ言いな」
余裕が無くなっているのならば、ここに居る傭兵の殆どはいなくなっている筈だ。そう、心の中で呟きながら、ヴィマンはありがたく椀を受け取った。……傭兵とは、そういうものだ。雇われているだけで、忠誠も正義もない。適当に闘って、形勢不利と見れば逃げ出すだけ。それだけの存在である。自分と同じように雇われている男達の間に腰を下ろし、ヴィマンはパン入りスープを三杯飲み干した。そして大欠伸をしながら徐ろに立ち上がる。
「ん、もう寝るのか」
立ち上がったヴィマンに、傭兵仲間の一人が声をかける。
「ああ」
もう一つ、ふわっと欠伸をしつつ、ヴィマンは仲間に頷いた。
「今日は疲れた」
「ああ、強かったよな、あの騎士」
「きっと大将だぜ。良い鎧を着てたし、馬も良かった」
少しの酒で騒ぐ仲間の声を聞きつつ、炎に背を向ける。
闇の脳裏に浮かんだのはやはり、昼間対戦した騎士、だった。
仲間の言う通り、ヴィマンの目から見ても立派な鎧を身に付けていたから、きっと天楚の領主に違いない。しかし昨日までは見たことがなかったから、おそらく敵側の援軍なのだろう。あの騎士を捕らえることができればおそらく、身代金がたっぷり取れる。鎧も馬も身包み剥いで転売すれば、相当な額になるであろう。
しかしながら。
〈強かったな、あいつ〉
腕力で劣る分を、頭脳と俊敏さでカバーしている。あんな奴を、腕力だけの自分が捕らえることができるだろうか。だが、それでも。できることなら、もう一度闘いたい。血の滾りが、ヴィマンの胸をわくわくさせた。
と。
「おっ」
小さな影が、ヴィマンの横をすり抜ける。ヴィマンが驚いている間に、小さな影は目と鼻の先にある小路へと入っていった。あの影の大きさはおそらく、まだ年端もいかぬ子供。そこまで考えて、ヴィマンは思わず首を傾げた。何故、こんな所に子供が? この城は殆ど城塞であり、何もかも戦向きに造られている。住人も、戦に必要な者のみ。女も、飯炊きの婆しか居ない。子供がいるスペースも雰囲気も、この城には無い。ヴィマンがそこまで考えた、丁度その時。
「こっちに逃げたぞ!」
「探せ!」
ヴィマンの背後から、騒々しい声が聞こえてくる。振り向かなくても、その声が近衛兵――この城の主一意が持つ、唯一の正規兵――達のものであることはすぐに判別できた。
「小さいからといって見逃すなよ!」
言葉から察するに、彼らはおそらく先程の小さな影を探しているに違いない。ヴィマンは少し歩き、小路の影になる場所に立ってから、後ろから来る彼らの為に少し身を逸らした。すぐに、揃いの外套に身を包んだ近衛兵が挨拶も無しにヴィマンの横を通り過ぎる。
「ふん」
いつものことながら、いけ好かない奴らだ。ヴィマンは眉間に皺を寄せた。
それはともかく。
「あいつら、行ったぞ」
立っている場所を動かず、目だけで小路の暗がりを探る。すぐに、微かに身動きする小さな影を見つけることができた。
暗闇に目が慣れるにつれ、影の形もはっきりしてくる。ひょろっとした身体に簡素なチュニックのみを着た、髪の長い子供。その、所々破れたチュニックから覗く細い腕にも細い足にも、無残な蚯蚓腫れが走っていた。
「近衛兵に、何かしたのか」
ヴィマンの問いに、首を横に振る子供。きっと引き結んだままの唇が、意志の強さを感じさせた。こんな子供が、どういう理由で近衛兵に追われているのか、そして何故こんな酷い蚯蚓腫れを付けられているのか、理由はさっぱり見当がつかない。だが、華奢な身体に伸びる蚯蚓腫れは、見ていて痛々しすぎる。
だから。
「効くかどうか分からないが」
ベルトに付けてある物入れを探り、軟膏を取り出す。
「塗ってやる。その方が痛くないと思うぜ」
このヴィマンの言葉に驚いたのか、子供の瞳が急に大きくなる。
次の瞬間。
「うわっ」
子供が、飛びついてくる。不意を突かれたヴィマンは、石畳の道に尻餅をついてしまった。
何故? 突然の子供の行動に、正直戸惑う。だが、ヴィマンはすぐに理解した。ヴィマンの目の前にあるのは、汚れた鎧に顔を埋め、泣きじゃくる子供の姿。この子供はおそらく、これまでずっと周りの人間に虐待されていたのだろう。同情の念が、ヴィマンの心を支配した。
だが、その次の瞬間。いきなり、後頭部に強い刺激が走る。
「いっ……」
目の前を星が踊っている間に、今度は背中に強い衝撃を受けた。
「なっ」
振り向くより先に、近衛兵の外套の色が目に入る。油断した。そう思うより早く、ヴィマンの胸から温かい感覚が消えた。
「やっと見つけた」
聞こえてくる冷徹な声に、はっとする。振り向くと、この城の主、一意の、銀の鎧に身を包んだ姿があった。その左手には、チュニックの襟を掴まれて苦しそうに足をばたつかせている子供の姿がある。
「何、を!」
頭と背中の痛みを堪えつつ立ち上がる。例え雇い主でも、子供をこんな風に扱う奴は許せない。だが。立ち上がると同時に、今度は腹に衝撃が走る。鉄の手袋を付けた一意の右拳が、ヴィマンの腹を強く叩いて、いた。
衝撃で、再び尻餅をつく。
「ふん、傭兵風情が」
そんなヴィマンの頭上から、一意の蔑みの声が降ってきた。
俯くと、鎧の腹のところが見事に凹んでいるのが分かる。
「……」
痛みと悔しさで、声も出ない。
一意と近衛兵が去るまで、ヴィマンは顔を上げることすらできなかった。
その夜の内に、ヴィマンは着の身着のままで城から追い出された。
勿論、解雇されたのだ。これまでの賃金も、貰っていない。
「……ふん」
近衛兵が守る城門から少し離れた場所で、毒づく。
「あんな残酷な奴、こっちから願い下げだぜ」
そんなヴィマンの声は、夜の闇に空しく流れた。
「……さて」
前向きに、何か別のことを考えないと、心が沈むのを止めることができない。気を紛らわせる為に、ヴィマンはこれからのことを考え始めた。
〈とりあえず、寝るところを探そう〉
夜の荒野は、獰猛な動物や魔物が跋扈する場所だ。小さいくせに意外に危ない虫達にも注意しなければならない。とりあえずヴィマンは、追い出された城壁の近くで、城門からの光は届くが近衛兵達からは見えない場所に陣取った。春になっていて良かった。正直、そう思う。暖かいから、一日ぐらいなら焚火無しで野宿をしても大丈夫だ。
だが。
〈これから、どうするか〉
何もない場所にごろりと横になって考えるのは、やはり、今後のこと。
南にある帝国の騎士階級出身で、武術は幼い頃から叩き込まれている。他の国で傭兵稼業を続ければ、生活するには困らない。何処かから馬を盗めば、大陸のあちこちで行われている馬上槍試合を荒らして賞金を稼ぐこともできるし、骨の髄まで叩き込まれた武術の腕をアピールして何処かの主君に仕えることも、おそらく可能だろう。だが、いつもならわくわくするようなどの思いつきも、今のヴィマンには空しいことにしか思えなかった。
「……帰りたい」
唐突に、その言葉が出る。だがすぐに、ヴィマンは首を横に振った。……でも、どこへ帰る?
ヴィマンが故郷を出た理由は、騎士階級の窮屈な生活が嫌になったから。だから、失踪した第二皇子の探索に託けて帝国を出たのだ。こんな自分が、今更、あの窮屈な生活に戻れるわけがない。それに。涙が溢れてきそうになり、慌てて首を振る。帝国を離れ、行く先々で自由とスリルを満喫しながら探しあてた第二皇子は、既に病に斃れていた。こっそり墓を暴いて確認したのだから、間違いない。
皇子のくせに気さくで優しい人だったと、今にして思う。一緒に武術の訓練をしている時に、悩みを話し合えるくらい仲良くなっておけば、悲劇は避けられたのかもしれない。帝国の皇位継承を巡って同い年の第一皇子と争うことを嫌い、誰にも告げずたった一人で帝国を去った第二皇子の末路を思い、ヴィマンは再び涙を流した。
そして。
ヴィマンが帰れるかもしれない場所は、実は、もう一つある。第二皇子探索の為に立ち寄った、南の港町だ。ヴィマンはそこで、浅黒い肌をした細腰の娘に惚れ、一年程彼女と一緒に過ごした。二人の間には男の子が生まれたが、娘が流行病に斃れたのを機に、子供を娘の父に預け探索の旅を再開したのだ。小さい頃に別れたのだから、子供はおそらく、父のことを全く覚えてはいないだろう。それで良いのだ、とも思う。ふらふらすることしか知らない、こんな情けない父親など、居ない方が良いのだ。
と、すると。……やはり、自分の帰る場所は無い。空しさが、胸を噛む。しかしそれは全て、自分の行動の結果なのだ。
だから。
ヴィマンはただ、頭上の星を見つめるしかなかった。
騒ぎ声で目が醒める。
いつの間にか、周りは朝になっていた。しかし戦闘はまだ始まっていない。こんな時間に何を騒いでいるのだろう。騒ぎ声の元を探して、ヴィマンは強ばった首を動かした。すぐに、騒ぎの場所を見つける。昨夜ヴィマンが追い出された城門の前で、近衛兵が一人の騎馬武者を囲んで騒いでいるのが、見えた。
こっそりと、城門に近づく。敵の敵は味方と言うが、近衛兵に一矢報いるチャンスかもしれない。……いや、一矢報いたい。昨夜追い出される際、近衛兵には散々殴られている。
「うぉぉぉぉっ!」
雄叫びを上げながら、近衛兵に突っ込む。不意を突かれた近衛兵二人が、ヴィマンの錆槍の犠牲となった。だが。流石、というべきか。ヴィマンの登場に驚いた近衛兵達は、しかしすぐに体勢を立て直すと、ヴィマンに向かって一斉に槍を立てた。
〈あちゃぁ……〉
やはり、ダメか。観念の溜息を漏らしつつ、それでも悪あがきで槍を振り回す。次の瞬間、近衛隊の槍の一つがヴィマンの肩を貫通した。
「うっ……」
痛みと衝撃に、尻餅をつく。そのヴィマンの前にあるのは、余裕の笑みを浮かべた近衛兵と、彼らが構えた光る槍。これは……逃げられない。思わず、唇を噛む。
だが。
「……あ」
ヴィマンを串刺しにする筈だった槍は、不意に横から飛んで来た大振りな槍の穂先に弾かれた。この槍には、見覚えがある。顔を上げると、予想通り、昨日闘ったあの『大将』が馬に跨って槍を構えて、いた。
「大丈夫かっ?」
次々と飛んでくる近衛兵達の槍を一人で飄々と躱しながら、『大将』はヴィマンにそう、声をかける。
「逃げろっ!」
俺を、助けてくれるのか? 暫し呆然と、『大将』の戦いぶりを見つめる。だが、『大将』の目的が自分でないことは、すぐに分かった。
「十波っ!」
近衛兵を退けた『大将』が、先程まで近衛兵に囲まれていた騎馬武者に声をかける。
「そなたも逃げろ!」
だが、『大将』に声をかけられた騎馬武者は不満そうに槍を立て、再び近衛兵に突っかかっていった。なるほど、そういうことか。その光景を見て、不意に納得する。それならば。
槍を拾い、首を振ってむりやり肩の痛みを忘れてから、『大将』が作った隙間から騎馬武者の方へと向かう。そして騎馬武者の前で槍を大きく振って近衛兵を遠ざけてから、騎馬武者の手綱を奪って馬の向きを変えた。
「何をするっ!」
甲高い声が、ヴィマンの耳を打つ。だが、そんなことはお構いなしだ。
己の力の残りを全て使い、ヴィマンは騎馬武者を戦線から離脱させるのに成功した。
「ふぅ……」
城壁から大分離れた、小川の側へ、騎馬武者を引っ張っていく。
川原では既に、馬から下りた『大将』が、馬に水を与えていた。
「はい……」
その『大将』へ、途中から諦めたのか大人しくなった騎馬武者の手綱を渡す。次の瞬間、忘れていた痛みを思い出し、ヴィマンは再び川原へ尻餅をついた。
「大丈夫か?」
そんなヴィマンの目の前に、『大将』の手が差し出される。
「あ、はい……」
軽く頭を下げてから、ヴィマンは『大将』の手を取って立ち上がった。痛みはあるが、血は既に止まっている。意外と軽傷だったようだ。
「ありがとう」
そう言いながら、『大将』が兜を取る。眼光鋭い瞳、厳しげに刻まれた顔の皺が、年齢を感じさせた。だが、元の主である一意のような冷たさは感じない。仕えるなら、こんな感じの人の方が良い。ヴィマンは直感的にそう思った。少なくとも、一意のような奴は二度とごめんだ。
「私の名は、六角公環。そなたは?」
そんなことを考えるヴィマンには構わず、『大将』が自分の名を名乗る。そこで出てきた言葉に、ヴィマンは内心「あちゃぁ」と声を上げた。『六角公』といえば、この天楚国の大領主。貴族の中の貴族ではないか。しかも武術の腕も天楚一と聞く。道理で、強い筈だ。
「あ。……ヴィマン、です」
目上の人に対する言葉遣いも、南の帝国での騎士修業の際に教えて貰った筈なのだが、今のヴィマンの頭の中にはそんなものは欠片だって残ってはいない。だからヴィマンは戸惑いつつも、普通に名乗ることにした。……それしかできなかった、ともいう。
「そうか」
だが、ヴィマンの無礼について何も感じなかったのか、六角公はにこやかにヴィマンに笑いかけると、背後に向かって声をかけた。
「ほら、十波もお礼を言いなさい」
二人から離れた所で、件の騎馬武者が馬を下りて川面を見つめている。六角公の声に、武者は不承不承、立派な房飾りのついた兜を脱いだ。
兜から零れ落ちた、艶やかな黒髪に瞠目する。……もしかして、『女』なのか?
「因帰伯の娘、十波嬢だ」
武者を紹介する六角公の言葉が、ヴィマンの洞察を裏付ける。確かに、叫んでいた声は甲高かったし、顔立ちは女に見える。しかし体格は普通の男並みだ。鎧姿だけでは絶対に女には見えない。しかし彼女の顔立ちは、好みだ。ヴィマンの頬は知らず知らずのうちに弛んでいた。
そんなヴィマンを一瞥して、十波は再び川面に視線を戻す。その瞳に涙が光ったのを、ヴィマンは見逃さなかった。
「八百……」
悲しげな呟きが、ヴィマンの心を打つ。
「大丈夫じゃ」
今にも泣き声を上げそうな十波の肩を、六角公が優しく叩いた。
「因帰伯はきちんと考えておる。孫のことだからな」
だが。
「大丈夫なわけ無いじゃない!」
次の瞬間、響いたのは、悲痛な叫び。
「交渉の役に立たないと分かれば、すぐに殺されるわ。一意はそういう男よ。かつての夫だもの、あいつの思考は誰よりも分かってる」
十波の叫びに、六角公が一瞬目を伏せたのを、ヴィマンは見逃さなかった。返答に言い淀む、姿も。
「あいつの侵略は非道よ。許すわけにはいかないんでしょ、小父様」
「ああ、そうだ」
「だったら、交渉も何も無いじゃない! 絶対殺されるわっ!」
とうとう、十波は両手を顔に当て、わっと泣き出した。
「八百は、……私の娘なのよ」
おそらく、十波の言っていることは殆ど真実なのだろう。六角公の行動からそう察する。そして。彼女の顔立ちから昨夜の子供のことを思い出し、ヴィマンははっとした。……一意から逃げようともがいていたあの子供が、彼女の娘、八百だ。顔立ちがそっくりだから、間違いない。
だから。
「あの」
十波の震える背中に、自信なく声をかける。
昨夜飛び込んできた、震える小さな背が、目の前の彼女の震えに重なる。できることなら、八百をあの残酷な父親から助け出し、この母親の許に返してやりたい。ヴィマンは心からそう、思った。だが。……正直なところ、助け出せるかどうか、自信がない。
〈えい、ままよ〉
それでも、やらないよりマシだ。そう、気持ちを奮い立たせ、ヴィマンは自分が考えた即席の作戦を口にした。
その日の、夕方。
〈……案外、簡単だったな〉
昨夜追い出された筈の、一意の城塞の中を、ヴィマンは誰にも咎められることなく歩いていた。
あの後、六角公と作戦について話し合ってから鎧を変え、戦闘でのごたごたに紛れて城塞内に侵入した。勿論、城門の所で近衛兵に確認されたが、それは上手くやり過ごしている。自慢の金髪を殆ど坊主にまで刈り上げたうえ、碧い瞳はつばの広い兜を目深に被って隠したのだ。十波の父、因帰伯に仕える兵士から借りてきた鎧が少し窮屈だが、大体の所ここまでは上手くいっている。後は、……八百を探すだけだ。一意の娘だから、彼の屋敷に監禁されているに違いない。そう思い、一意の屋敷の方へと足を向ける。
と、その時。
「また逃げたぞ!」
「探せ!」
聞き慣れた近衛兵の声が、ヴィマンの耳に入る。どうやら、八百に又逃げられたようだ。あいつら、案外間が抜けている。ヴィマンは思わずくすりと笑った。……それはともかく。
かくれんぼなら、慣れている。探すのも、探されるのも。小さい頃は武術の訓練が嫌でしばしば祖父や父から隠れ回っていたし、少し大きくなってからは、様々な理由で王宮のあちこちに隠れてしまう第二皇子を探すのに散々苦労したのだから。
だからすぐに、小路の奥に小さな影を見つける。脅かさないように、ヴィマンは静かに近づくと、震える影に向かって優しく声をかけた。
「八百」
細かく震えていた影が、びくっと一つ大きく震える。
「お母さんに、頼まれた」
だが、次のヴィマンの言葉で、影の震えはぴたっと止まった。
「お母さん?」
大きな瞳が、ヴィマンを見つめる。
「ああ。お前のお母さん、十波っていうんだろう?」
ヴィマンの言葉にこくんと頷く影。
次の瞬間。影はヴィマンの胸の中に、有った。
「昨日の、騎士さんだ」
胸の中で、子供が呟く。覚えていて、くれたのだ。こんな情けない奴のことを。
子供の言葉に胸が温かくなるのを、ヴィマンは確かに感じて、いた。
払暁と同時に、城門の外が騒がしくなる。打ち合わせ通り、六角公が攻撃を始めたのだろう。
不意の攻撃に慌て、次々と傭兵や近衛兵が外へ飛び出して行く様子を、目の端に捉える。その光景ににやりと笑うと、ヴィマンは盗んだ馬に八百と乗り、外套で八百を隠した。彼らに紛れて外へ飛び出す。それが、作戦。
だが。
もう少しで外、というところで、悪戯な風がヴィマンの外套を持ち上げる。城門を守っていた近衛兵に、八百の姿が露わになった。
「あっ!」
あっという間に、周りを囲まれる。
「八百、掴まってろ!」
ヴィマンは八百を残して馬から滑り下りると、槍を大きく振って進路を開き、馬の尻を叩いた。驚いた馬は真っ直ぐ、八百を乗せたまま六角公の陣地へと向かっていく。
〈これで、大丈夫だ〉
安堵したヴィマンの胸に、近衛兵の槍が迫る。それは何とかギリギリで躱したが、別の槍が強かにヴィマンの頬を打った。
「つっ……」
目の前に、星が舞う。やはり、俺は格好良い『騎士』にはなれなかった。突き付けられた死の槍を呆然と見つめながら、ヴィマンは何故かそんなことを思って、いた。
次の瞬間。ヴィマンに向かった槍が、鮮やかな光の線に阻まれる。
「十波っ!」
ヴィマンの目の前にいたのは、鮮やかな房のついた兜と輝く鎧を身につけた騎馬武者の姿。しかし、何故? 昨日は確か、「そんな杜撰な作戦には賛成できない」と言って一人でさっさと陣に帰ってしまったのに。だが。……助かるなら、どんな助太刀でも構わない。ヴィマンは残りの力を全て使って立ち上がると、十波が作ってくれた逃げ道を全速力で駆け抜けた。
辿り着いたのは、昨日の川原。
敵が追ってこないのを確認してから、ヴィマンは川原に大の字に寝転んだ。
すぐに地面から、馬の足音が聞こえてくる。顔を動かすと、十波がすぐ横に立っているのが見えた。
「助かった。ありがとう」
寝転んだまま、十波に向かって礼を言う。情けないが、起き上がる気力は既に無かった。
「お礼を言うのはこっちの方だわ」
だが十波は、ヴィマンの非礼など全く気にしていないというように首を横に振った。
「八百を助けてくれてありがとう」
十波の素直な言葉が、ヴィマンの心をほっとさせる。
とにかく、やり遂げることができたらしい。心が軽くなるのが、すぐに分かった。おそらくこれが『充足感』というもの、なのだろう。心地良い感覚に、ヴィマンは思わずふっと笑った。
と、その時。再びの足音に、首の向きを変える。大きな馬が、十波とヴィマンの方へと近づいてきていた。あの馬は、六角公の馬。そして、馬上にいるのは。
「お母さん!」
六角公に助け下ろされるのもそこそこに、八百が飛び出して十波の胸に顔を埋める。
安堵の気持ちが再び身体中に満ちてくるのを、ヴィマンは確かに感じた。
そして。
「あの」
十波の胸で十分に泣いた八百が、きらきらとした瞳でヴィマンを見つめる。
「助けてくれてありがとう」
その時、傭兵は初めて、満面の笑みを浮かべた。
0
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