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五
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薄明の平原を駆け抜ける風が、鉢巻で止めた栗色の髪をふわりと浮かせる。
その風に促されるように、トゥエは作業をしていた手を止め、ゆっくりと顔を上げた。
まだ明けきらぬ平原は、薄い靄に覆われている。その靄を透かして遠くに見える低い丘を見やり、トゥエは小さく溜息をついた。
〈……もう、着いた頃だろうか?〉
これからのことを思うと、緊張で息苦しくなるほど胸が締めつけられる。そんな心を落ち着かせるように、トゥエは殊更ゆっくりと息を吐き出した。
「準備できたか、トゥエ!」
そんなトゥエの頭上から、元気すぎるくらい元気な声が降ってくる。その声に誘われるように顔を上げると、背後の城壁の上でこちらに向かって大きく手を振っているヘクトと目が合った。
「ああ、大丈夫だ」
心の内を隠すように、殊更元気な声を出す。
城壁の上には、弓を持った兵士達がずらっと並んでいる。その兵士達を動揺させないように、トゥエはヘクトに向かってにっこりと笑いかけた。
「そっちの調子は?」
「準備万端。いつでもいけるぜ」
こんなときでもいつも通りであるヘクトの台詞にほっとする。大丈夫。きっと、勝てる。その思いを胸に抱きながら、トゥエはもう一度、靄の向こうにある丘をしっかりと見つめた。
緩衝地帯を越えてリーニエに攻め込んで来た魔皇帝の部隊は、これまでにないほど大きなものだった。緩衝地帯の村人を守る為に一部隊だけは滅ぼしたものの、残りの部隊は現在、トゥエ達が守るこの砦まであと一息の所にまで迫っていた。おそらく魔皇帝は、渡河点を守るこの砦に全部隊を投入するだろう。それが、トゥエ達の予測。
現在、新都ラフカと魔皇帝との間にあるのは、オク川とトゥエ達が拠っているこの小さな砦だけ。ここを突破されてしまったら、新都の人々はどうなるか。考えただけでもぞっとする。いや、新都だけではない。悪くすると首都であるアデールにまで、魔物の侵略を許してしまう。
この砦にも、近隣の村々から避難して来た人々が大勢居る。ウプシーラの惨状が、トゥエの眼にありありと浮かんでくる。あんな悲惨なことがこの地でも行われる。そう思っただけでも胸がぎゅっと締めつけられた。
砦の人達も、都の人達も、魔物達の餌食にするわけにはいかない。だから、負けるわけにはいかないのだ。
……しかしながら。
どうすれば、圧倒的な力を持つ魔皇帝を撃退することができるのだろうか?
「……方法は、一つだけだ」
昨晩、砦の司令室でリュエルが発した言葉を、トゥエは今でもはっきりと覚えている。王子の首に掛けられた『石』が放つ、鈍い光も。
「奥の手を使う」
そう言いながら、リュエルは目の前に広げられた地図の、砦の前に広がる小さな平原を指差した。
トゥエと、マチウとヘクト、そして神官ウォリスがリュエルの指先を追う。
魔皇帝の軍は、その殆どが魔界から呼び出された醜悪な魔物で構成されている。魔皇帝が砦の攻略に集中している間に、リュエルの持つ『石』が有する『魔物を消す力』でその魔物達を消す。それが、リュエルの明示した作戦だった。砦の周りは平原で、しかも大小の丘が平原の周りを囲んでいる。魔物をおびき出して足止めするには好都合な構造だ。
しかし、前に魔皇帝の戦いを見たことがあるリュエルの後見人エッカート卿の話によると、魔皇帝は魔法系の罠にとても敏感であるらしい。前々からの準備では、彼にすぐ気付かれてしまうかもしれないのだ。回り道をされ、直接ラフカを攻撃されれば元も子もない。
「だから、魔皇帝軍が全て平原に入ってから、魔法を発動させる」
そう話すリュエルの声には今までに無い気迫がこもっていた。
だが。
リュエルの話を聞きながら、トゥエは頭の中で別の策略をめぐらせていた。
魔皇帝が魔法系の罠に敏感なら、砦側が仕掛けた魔法は、それが大掛かりなものであればあるほど、見破られる可能性は大きくなる。そんな敵に、魔法を使うこんな作戦が通用するだろうか? それに。先の戦いで見せた、『石』の振る舞いも気になる。『石』の『力』は不安定で、しかもトゥエがリュエルから離れている時でないと発動しなかった。たった数回のことから類推するのは危険すぎるが、それでも、トゥエが側に居る時には『石』の力は発動しなかったことだけは、確かだ。
「だったら、魔法はここではなく、向こうの丘で発動させればいい」
そこまで考えたから、トゥエは地図を指差しながら思いのままをはっきりと口に出した。
「護衛にはマチウとウォリスを連れて行けよ。そうすれば、もし砦が落ちて王国が滅びても、王の血筋は残る……」
「トゥエ!」
トゥエの言葉に憤ったのか、いきなり、横にいたマチウの腕がトゥエの襟を掴む。
「お前、リュエルのことを何と思って……!」
そしてそのまま、鉄の手甲に包まれた拳が、トゥエの左頬に入った。いつもは穏やかな兄貴分であるマチウだが、やはり、トゥエの発言はリュエルを侮辱するものだと受け取ったのであろう。彼はやはり、主を侮辱されることに黙ってはいられない騎士性質の人間だ。衝撃でくらくらする頭で、トゥエはそんなことを思った。
「兄貴、やめろよ!」
マチウの行動に驚いたヘクトが二人の間に割ってはいる。
「良いんだよ、マチウ」
しかし、もう一発とトゥエに向かって構えられたマチウの拳を止めたのは、リュエルの穏やかな言葉だった。
肩で息をするマチウの背を軽く叩いたリュエルが、殴られた衝撃で床にへたりこんでいるトゥエの前に立ち、にこっと笑う。
「確かに、失敗する可能性のほうが高い。そう思っているのだろう、トゥエ?」
あくまでも穏やかな言葉が、トゥエを口篭らせる。僅かにこくんと頷くことで、リュエはリュエルの言葉を肯定した。
「しかし、他に方法が無いことも確かだ」
確かに、ただ手を拱いているだけでは、魔皇帝の侵略を抑えることはできない。しかし、『失敗する方法』をわざわざ取ることに意義があるのだろうか?
「大丈夫、失敗はしないさ」
そんなトゥエの気持ちを見透かしたように、リュエルが鷹揚に笑う。
「その為に、色々考えているのだから」
そう言うと、不意にリュエルは机に戻り、地図をじっと見つめた。
「……トゥエの案も、中々面白いな」
敵方もまさか、背後で魔法発動の準備をしているとは思うまい。リュエルは軽くそう呟いた。そしていきなり、まだへたりこんだままのトゥエの方を向き、唐突に問う。
「トゥエ、昼間仕込んだモノだけで、一万の大軍を魔法発動まで足止めできるか?」
「勿論です」
その問いに、トゥエはウォリスの手を借りて起き上がりながら、今度ははっきりと答えた。『魔皇帝を足止めできる仕掛けを』とリュエルに言われてトゥエが用意したものは、魔皇帝にとってはちゃちな魔法仕掛けかもしれないが、うまく使えは時間稼ぎには十分な威力を持っている。
「ならば、私達は丘へ行こう」
そのトゥエを見て、リュエルは再び穏やかに笑う。リュエルの笑顔に不安を覚え、トゥエは思わず俯いた。トゥエが心配しているのは、作戦や友のことだけではない。リュエルが首から下げている得体の知れない『石』。この『石』が、トゥエの心配の源。
確かに、リュエルの持つ『石』は、魔物に囲まれたトゥエ達を助けてくれた。それは、認める。リュエルの持つ『石』が、魔物を悉く消し去った時のことを、トゥエは今でも覚えている。だが、『石』の持つ力は、本当に『魔物を消す』だけなのだろうか? それが、どうも引っかかる。そして、その危険かもしれない『石』を、リュエルは何の疑いもなく持って使っている。そのことが、何となくの嫌悪感の源。……その危惧がどこから来ているのかは、分からないが。
「しかし……!」
だからトゥエは、微笑むリュエルに向かって再び食い下がった。
「この『石』のことだろう、トゥエ」
しかし、トゥエの思いを再び読んだかのように、リュエルはゆっくりと微笑む。
「私のことは心配いらない」
そして、胸にぶら下がっている『石』を軽く叩いてから、リュエルはトゥエを見つめて言った。
「だからトゥエ、砦のことは頼んだよ」
あくまで静かで、そしてしっかりとトゥエを信頼しているリュエルの瞳。その瞳の色に魅せられて、トゥエはただ黙ってこくんと頷く他、無かった。
そして組まれた作戦通り、夜の闇にまぎれて、リュエルはマチウやウォリスと共に砦を去り、丘に向かった。
「頼んだよ、トゥエ」
去り際に囁かれたリュエルの言葉は、今でもトゥエの耳にはっきりと残って、いる。
そこまで信頼されているのなら、答えなければならない。
たとえ頼るものが、得体の知れない『石』の力だったとしても。
けれども……!
その風に促されるように、トゥエは作業をしていた手を止め、ゆっくりと顔を上げた。
まだ明けきらぬ平原は、薄い靄に覆われている。その靄を透かして遠くに見える低い丘を見やり、トゥエは小さく溜息をついた。
〈……もう、着いた頃だろうか?〉
これからのことを思うと、緊張で息苦しくなるほど胸が締めつけられる。そんな心を落ち着かせるように、トゥエは殊更ゆっくりと息を吐き出した。
「準備できたか、トゥエ!」
そんなトゥエの頭上から、元気すぎるくらい元気な声が降ってくる。その声に誘われるように顔を上げると、背後の城壁の上でこちらに向かって大きく手を振っているヘクトと目が合った。
「ああ、大丈夫だ」
心の内を隠すように、殊更元気な声を出す。
城壁の上には、弓を持った兵士達がずらっと並んでいる。その兵士達を動揺させないように、トゥエはヘクトに向かってにっこりと笑いかけた。
「そっちの調子は?」
「準備万端。いつでもいけるぜ」
こんなときでもいつも通りであるヘクトの台詞にほっとする。大丈夫。きっと、勝てる。その思いを胸に抱きながら、トゥエはもう一度、靄の向こうにある丘をしっかりと見つめた。
緩衝地帯を越えてリーニエに攻め込んで来た魔皇帝の部隊は、これまでにないほど大きなものだった。緩衝地帯の村人を守る為に一部隊だけは滅ぼしたものの、残りの部隊は現在、トゥエ達が守るこの砦まであと一息の所にまで迫っていた。おそらく魔皇帝は、渡河点を守るこの砦に全部隊を投入するだろう。それが、トゥエ達の予測。
現在、新都ラフカと魔皇帝との間にあるのは、オク川とトゥエ達が拠っているこの小さな砦だけ。ここを突破されてしまったら、新都の人々はどうなるか。考えただけでもぞっとする。いや、新都だけではない。悪くすると首都であるアデールにまで、魔物の侵略を許してしまう。
この砦にも、近隣の村々から避難して来た人々が大勢居る。ウプシーラの惨状が、トゥエの眼にありありと浮かんでくる。あんな悲惨なことがこの地でも行われる。そう思っただけでも胸がぎゅっと締めつけられた。
砦の人達も、都の人達も、魔物達の餌食にするわけにはいかない。だから、負けるわけにはいかないのだ。
……しかしながら。
どうすれば、圧倒的な力を持つ魔皇帝を撃退することができるのだろうか?
「……方法は、一つだけだ」
昨晩、砦の司令室でリュエルが発した言葉を、トゥエは今でもはっきりと覚えている。王子の首に掛けられた『石』が放つ、鈍い光も。
「奥の手を使う」
そう言いながら、リュエルは目の前に広げられた地図の、砦の前に広がる小さな平原を指差した。
トゥエと、マチウとヘクト、そして神官ウォリスがリュエルの指先を追う。
魔皇帝の軍は、その殆どが魔界から呼び出された醜悪な魔物で構成されている。魔皇帝が砦の攻略に集中している間に、リュエルの持つ『石』が有する『魔物を消す力』でその魔物達を消す。それが、リュエルの明示した作戦だった。砦の周りは平原で、しかも大小の丘が平原の周りを囲んでいる。魔物をおびき出して足止めするには好都合な構造だ。
しかし、前に魔皇帝の戦いを見たことがあるリュエルの後見人エッカート卿の話によると、魔皇帝は魔法系の罠にとても敏感であるらしい。前々からの準備では、彼にすぐ気付かれてしまうかもしれないのだ。回り道をされ、直接ラフカを攻撃されれば元も子もない。
「だから、魔皇帝軍が全て平原に入ってから、魔法を発動させる」
そう話すリュエルの声には今までに無い気迫がこもっていた。
だが。
リュエルの話を聞きながら、トゥエは頭の中で別の策略をめぐらせていた。
魔皇帝が魔法系の罠に敏感なら、砦側が仕掛けた魔法は、それが大掛かりなものであればあるほど、見破られる可能性は大きくなる。そんな敵に、魔法を使うこんな作戦が通用するだろうか? それに。先の戦いで見せた、『石』の振る舞いも気になる。『石』の『力』は不安定で、しかもトゥエがリュエルから離れている時でないと発動しなかった。たった数回のことから類推するのは危険すぎるが、それでも、トゥエが側に居る時には『石』の力は発動しなかったことだけは、確かだ。
「だったら、魔法はここではなく、向こうの丘で発動させればいい」
そこまで考えたから、トゥエは地図を指差しながら思いのままをはっきりと口に出した。
「護衛にはマチウとウォリスを連れて行けよ。そうすれば、もし砦が落ちて王国が滅びても、王の血筋は残る……」
「トゥエ!」
トゥエの言葉に憤ったのか、いきなり、横にいたマチウの腕がトゥエの襟を掴む。
「お前、リュエルのことを何と思って……!」
そしてそのまま、鉄の手甲に包まれた拳が、トゥエの左頬に入った。いつもは穏やかな兄貴分であるマチウだが、やはり、トゥエの発言はリュエルを侮辱するものだと受け取ったのであろう。彼はやはり、主を侮辱されることに黙ってはいられない騎士性質の人間だ。衝撃でくらくらする頭で、トゥエはそんなことを思った。
「兄貴、やめろよ!」
マチウの行動に驚いたヘクトが二人の間に割ってはいる。
「良いんだよ、マチウ」
しかし、もう一発とトゥエに向かって構えられたマチウの拳を止めたのは、リュエルの穏やかな言葉だった。
肩で息をするマチウの背を軽く叩いたリュエルが、殴られた衝撃で床にへたりこんでいるトゥエの前に立ち、にこっと笑う。
「確かに、失敗する可能性のほうが高い。そう思っているのだろう、トゥエ?」
あくまでも穏やかな言葉が、トゥエを口篭らせる。僅かにこくんと頷くことで、リュエはリュエルの言葉を肯定した。
「しかし、他に方法が無いことも確かだ」
確かに、ただ手を拱いているだけでは、魔皇帝の侵略を抑えることはできない。しかし、『失敗する方法』をわざわざ取ることに意義があるのだろうか?
「大丈夫、失敗はしないさ」
そんなトゥエの気持ちを見透かしたように、リュエルが鷹揚に笑う。
「その為に、色々考えているのだから」
そう言うと、不意にリュエルは机に戻り、地図をじっと見つめた。
「……トゥエの案も、中々面白いな」
敵方もまさか、背後で魔法発動の準備をしているとは思うまい。リュエルは軽くそう呟いた。そしていきなり、まだへたりこんだままのトゥエの方を向き、唐突に問う。
「トゥエ、昼間仕込んだモノだけで、一万の大軍を魔法発動まで足止めできるか?」
「勿論です」
その問いに、トゥエはウォリスの手を借りて起き上がりながら、今度ははっきりと答えた。『魔皇帝を足止めできる仕掛けを』とリュエルに言われてトゥエが用意したものは、魔皇帝にとってはちゃちな魔法仕掛けかもしれないが、うまく使えは時間稼ぎには十分な威力を持っている。
「ならば、私達は丘へ行こう」
そのトゥエを見て、リュエルは再び穏やかに笑う。リュエルの笑顔に不安を覚え、トゥエは思わず俯いた。トゥエが心配しているのは、作戦や友のことだけではない。リュエルが首から下げている得体の知れない『石』。この『石』が、トゥエの心配の源。
確かに、リュエルの持つ『石』は、魔物に囲まれたトゥエ達を助けてくれた。それは、認める。リュエルの持つ『石』が、魔物を悉く消し去った時のことを、トゥエは今でも覚えている。だが、『石』の持つ力は、本当に『魔物を消す』だけなのだろうか? それが、どうも引っかかる。そして、その危険かもしれない『石』を、リュエルは何の疑いもなく持って使っている。そのことが、何となくの嫌悪感の源。……その危惧がどこから来ているのかは、分からないが。
「しかし……!」
だからトゥエは、微笑むリュエルに向かって再び食い下がった。
「この『石』のことだろう、トゥエ」
しかし、トゥエの思いを再び読んだかのように、リュエルはゆっくりと微笑む。
「私のことは心配いらない」
そして、胸にぶら下がっている『石』を軽く叩いてから、リュエルはトゥエを見つめて言った。
「だからトゥエ、砦のことは頼んだよ」
あくまで静かで、そしてしっかりとトゥエを信頼しているリュエルの瞳。その瞳の色に魅せられて、トゥエはただ黙ってこくんと頷く他、無かった。
そして組まれた作戦通り、夜の闇にまぎれて、リュエルはマチウやウォリスと共に砦を去り、丘に向かった。
「頼んだよ、トゥエ」
去り際に囁かれたリュエルの言葉は、今でもトゥエの耳にはっきりと残って、いる。
そこまで信頼されているのなら、答えなければならない。
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