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六
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「……来たぞ、トゥエ!」
切羽詰ったヘクトの叫び声に、トゥエの白昼夢は破られた。
はっとして顔を上げる。トゥエの目にも、土埃が高く舞っているのがはっきりと見えた。
寒気にも似た感覚が、トゥエの背中を這い登る。ついに、来た……!
「やるのか、トゥエ?」
そんなトゥエに、ヘクトの怒鳴り声が降ってくる。
「まだだ」
その声にそう怒鳴り返してから、トゥエは向かって来る土埃をじっと見つめた。なるべくギリギリまで引きつけないといけない。土埃の中に魔物の形が認められるまで、トゥエは短槍を構えたままじっと待った。
ぞくぞくするような感覚が全身を駆け巡る。……今だ!
「いっけー!」
平原には、砦から同心円を描くような形で魔物を足止めするための小細工魔法が仕掛けてある。魔物の姿を見極めたトゥエは、短槍の先を地面に突き立て、呪文を唱え始めた。
周りの地面が、ゆっくりと光りだす。忽ちにして、土埃の勢いが衰えた。しかし、高々ちゃちな小細工。すぐに視界の中に魔物の大柄な姿が入ってくる。ならば、更にけしかけるまで。
「行け、ヘクト!」
トゥエは城壁のヘクトにそう怒鳴った。
「了解!」
待ってましたとばかりのヘクトの声が耳に響く。
次の瞬間、城壁の上から魔物に向かって小さな矢が雨霰と浴びせかけられた。その矢全てに、魔物を傷つける呪文が封入されている。昨日、マチウとヘクトが城兵と砦に逃げこんで来た村人達の中から選んだ屈強な若者とに弓の稽古をつけている間、魔法の心得のあるトゥエとウォリスが一生懸命作成したもの。その上更に、砦にあった投石器を使い、これまた呪文入りの岩石を魔物達に向かって投げつけている。これでは、いくら大軍でも、いや密集した大軍だからこそ、受ける損害は無視できるものではなくなる。トゥエ達は、それを狙ったのだ。
それでも、こちらに向かって来る魔物は後を絶たない。そういった魔物は、トゥエが短槍で相手をする。勿論、トゥエに向かわずにそのまま砦の外壁を登ろうとする輩もいる。だが、この壁にも魔物撃退の呪文を既に掛け済みだ。現に、苦痛の咆哮を上げて魔物達がじりじりと外壁から下がっているのが微かに見える。
これで、何とか足止めはできるだろう。魔物達が繰り出す槍を頑張って受け止めながら、トゥエは確かにそう、感じた。
だが、次の瞬間。不意に、トゥエの目の前にいた魔物達がすうっと消える。先刻までとは明らかに違う空気に、トゥエの全身が総毛立った。
〈……まさか!〉
ある予感に囚われ、はっとして目の前の空間を見つめる。そこに現れたのは、やはり、トゥエの予想と寸分違わぬ人物、だった。小さな金の板を布一面に縫いつけた白いマントと、関節部分に赤を配した黒塗りの細板鎧。そして周りを払うような威圧感。
「……魔皇帝」
短槍を振るトゥエの動作が自然に止まる。そんなトゥエの目の前に、『魔皇帝』カルダーノは殊更ゆっくりとした動作で立ち止まった。
「ほう……」
呟くような声が、トゥエの耳にはっきり聞こえる。次の瞬間。目にも留まらぬ速さで、槍の穂先がトゥエの右頬を掠めた。
「な……!」
一拍遅れてトゥエが動く。だが、トゥエが動く先を読んでいるかのように、魔皇帝の槍は次々とトゥエを襲った。何とかしたいが止められない。トゥエはとうとう城門の前まで下がってしまった。
ここから先は、下がることはできない。ならば。
「……えいっ!」
魔皇帝の一瞬の隙を突いて、槍を構えたまま前へ出る。そのトゥエの槍は、魔皇帝の槍をうまい具合に遠くへ跳ね飛ばした。
「やった!」
二人の様子を見ていたらしい、ヘクトの明らかにほっとした声がトゥエの耳に響く。しかし、次の瞬間。トゥエはいきなり足元を掬われた。
「なっ!」
そのまま、仰向けにひっくり返る。足元を見ると、いつの間にか、下半身の殆どが見たことのない毒々しい色の蔓草に覆われていた。その蔓草は、城壁をも包み込むようにぐんぐんと生えてきている。トゥエのちゃちな呪文など物ともしないその生命力に、城壁の方からどよめきと悲鳴が聞こえてきた。
これは、いけない。大急ぎで蔓草を引き千切り、落ちていた短槍を拾う。そしてそのまま、この蔓草を召喚したであろう魔皇帝へとトゥエは槍を向けて飛び出した。
「無駄だな」
しかし魔皇帝は余裕を持ってトゥエの攻撃をかわすと、トゥエに向けて指を立てる。その指から電撃が迸る。
〈危ないっ!〉
トゥエはとっさに槍を魔皇帝に向かって投げつけた。勿論、その攻撃はあっけなく避けられる。だが、ほんの一瞬だけ、魔皇帝の胸ががら空きになるのを、トゥエは見逃さなかった。
がむしゃらに、魔皇帝の胸に飛び込む。魔皇帝の鎧がナイフも拳も通さないのは百も承知。それでも、トゥエのとるべき行動はこれしかない。
と。
トゥエの指先が、魔皇帝の胸元で微かに光っていた宝石に触れる。
次の瞬間。
〈……え?〉
全身に走った衝撃に、トゥエは思わず突き出した腕を引っ込めた。
その機を魔皇帝が見逃すはずが無い。いきなりの平手打ちで、トゥエの軽い身体は城門の前まですっ飛んだ。
「……くっ」
痛む頬を押さえ、何とか上体を起こす。ふと横を見ると、さっきまでぐんぐんと生えていた蔓草が、綺麗さっぱり消えていた。
〈……え?〉
思わず首を傾げる。だが。次の瞬間、鉄の手甲に包まれた大きな手がトゥエの襟元を掴み、その身体を引き上げた。
「トゥエ!」
ヘクトの叫びが耳を打つ。唇を引き結んだ魔皇帝の顔が、トゥエの目の前にあった。
城壁上の騒ぎが、遠くに聞こえる。息が、苦しい。霞む意識の中で、それでも首に掛かっている魔皇帝の太い手を外そうと、トゥエは精一杯もがいた。自分がどんなことになろうとも、砦からは誰も一歩も出ないこと。トゥエはヘクトや兵士達にそう厳命していた。更に、トゥエ自身が城門に魔法を掛け、誰も外に出られないようにしてある。だから、自分自身でこの状況を脱しないといけない。
と、その時。
「……悪いようにはせぬ。私の軍門に下れ」
思いがけない言葉がトゥエの耳を打つ。この声は確かに、魔皇帝の声。しかし、何故唐突に?
「お前の『力』が、私には必要だ」
ゆっくりと、噛んで含めるような声が続く。だが、トゥエの答えは訊く前から決まっていた。
「断る」
苦しい息の中、それだけをはっきりと声に出す。魔物を使い、人々を惨殺するような奴の味方になんか、誰がなるものか。
「そうか、……惜しいな」
溜息交じりの声と共に、首筋に掛かる力が強くなる。
「まあ、こちらとしても、無抵抗な人々を無造作に殺すような奴らの同類を味方にするわけにはいかない、か」
沈んだ言葉が、薄れゆくトゥエの意識にはっきりと響いた。
為す術も無く、目の前が真っ暗になる。トゥエは死を覚悟した。
と。
不意に、首に掛けられた力が外れる。トゥエの身体は重力のまま、背中から地面に落下した。
「なんと!」
驚きの声が、辺りに響く。
トゥエはゆっくりとその目を開いた。先刻まで周りにいたはずの魔物が、綺麗さっぱり消えている。そして何より、先ほどまでの禍々しい気が、確かに、消えて、いた。
……リュエルの魔法が成功したのだ。
「……くっ」
不利を悟った魔皇帝が、トゥエに背を向ける。
「だが、この感じは……」
マントを翻し、それでも悠然と去って行く魔皇帝の背からおかしな呟きが聞こえてきたのは、トゥエの気のせい、だろう、か……。
目を醒まして最初に飛び込んできたのは、涙でぐしゃぐしゃになったリュエルの顔。
「……良かった、生きてた」
リュエルの震える手が、トゥエの額をゆっくりと撫でる。その手の感触が何となくこそばゆくて、トゥエは全身を駆け抜ける痛みを忘れ思わず笑顔を作った。
「大丈夫ですよ、王子」
リュエルの後ろに、マチウとウォリスの安堵した顔が見える。瞳だけをゆっくりと動かすと、ちゃんと立っている城壁の上で、ヘクトが心配そうにこちらを見ているのが何故かはっきりと見えた。
夜明けの頃とあまり変わっていない辺りの光景にも、ほっとする。色々あったが、ともかく、魔皇帝を撃退して、砦も、都も、大切な人達もちゃんと守ることができた。
リュエルの信頼にも、きちんと答えることが、できたのだ。
良かった。
心からそう思ったトゥエの意識は、次の瞬間、温かい闇へと落ちて、いった。
切羽詰ったヘクトの叫び声に、トゥエの白昼夢は破られた。
はっとして顔を上げる。トゥエの目にも、土埃が高く舞っているのがはっきりと見えた。
寒気にも似た感覚が、トゥエの背中を這い登る。ついに、来た……!
「やるのか、トゥエ?」
そんなトゥエに、ヘクトの怒鳴り声が降ってくる。
「まだだ」
その声にそう怒鳴り返してから、トゥエは向かって来る土埃をじっと見つめた。なるべくギリギリまで引きつけないといけない。土埃の中に魔物の形が認められるまで、トゥエは短槍を構えたままじっと待った。
ぞくぞくするような感覚が全身を駆け巡る。……今だ!
「いっけー!」
平原には、砦から同心円を描くような形で魔物を足止めするための小細工魔法が仕掛けてある。魔物の姿を見極めたトゥエは、短槍の先を地面に突き立て、呪文を唱え始めた。
周りの地面が、ゆっくりと光りだす。忽ちにして、土埃の勢いが衰えた。しかし、高々ちゃちな小細工。すぐに視界の中に魔物の大柄な姿が入ってくる。ならば、更にけしかけるまで。
「行け、ヘクト!」
トゥエは城壁のヘクトにそう怒鳴った。
「了解!」
待ってましたとばかりのヘクトの声が耳に響く。
次の瞬間、城壁の上から魔物に向かって小さな矢が雨霰と浴びせかけられた。その矢全てに、魔物を傷つける呪文が封入されている。昨日、マチウとヘクトが城兵と砦に逃げこんで来た村人達の中から選んだ屈強な若者とに弓の稽古をつけている間、魔法の心得のあるトゥエとウォリスが一生懸命作成したもの。その上更に、砦にあった投石器を使い、これまた呪文入りの岩石を魔物達に向かって投げつけている。これでは、いくら大軍でも、いや密集した大軍だからこそ、受ける損害は無視できるものではなくなる。トゥエ達は、それを狙ったのだ。
それでも、こちらに向かって来る魔物は後を絶たない。そういった魔物は、トゥエが短槍で相手をする。勿論、トゥエに向かわずにそのまま砦の外壁を登ろうとする輩もいる。だが、この壁にも魔物撃退の呪文を既に掛け済みだ。現に、苦痛の咆哮を上げて魔物達がじりじりと外壁から下がっているのが微かに見える。
これで、何とか足止めはできるだろう。魔物達が繰り出す槍を頑張って受け止めながら、トゥエは確かにそう、感じた。
だが、次の瞬間。不意に、トゥエの目の前にいた魔物達がすうっと消える。先刻までとは明らかに違う空気に、トゥエの全身が総毛立った。
〈……まさか!〉
ある予感に囚われ、はっとして目の前の空間を見つめる。そこに現れたのは、やはり、トゥエの予想と寸分違わぬ人物、だった。小さな金の板を布一面に縫いつけた白いマントと、関節部分に赤を配した黒塗りの細板鎧。そして周りを払うような威圧感。
「……魔皇帝」
短槍を振るトゥエの動作が自然に止まる。そんなトゥエの目の前に、『魔皇帝』カルダーノは殊更ゆっくりとした動作で立ち止まった。
「ほう……」
呟くような声が、トゥエの耳にはっきり聞こえる。次の瞬間。目にも留まらぬ速さで、槍の穂先がトゥエの右頬を掠めた。
「な……!」
一拍遅れてトゥエが動く。だが、トゥエが動く先を読んでいるかのように、魔皇帝の槍は次々とトゥエを襲った。何とかしたいが止められない。トゥエはとうとう城門の前まで下がってしまった。
ここから先は、下がることはできない。ならば。
「……えいっ!」
魔皇帝の一瞬の隙を突いて、槍を構えたまま前へ出る。そのトゥエの槍は、魔皇帝の槍をうまい具合に遠くへ跳ね飛ばした。
「やった!」
二人の様子を見ていたらしい、ヘクトの明らかにほっとした声がトゥエの耳に響く。しかし、次の瞬間。トゥエはいきなり足元を掬われた。
「なっ!」
そのまま、仰向けにひっくり返る。足元を見ると、いつの間にか、下半身の殆どが見たことのない毒々しい色の蔓草に覆われていた。その蔓草は、城壁をも包み込むようにぐんぐんと生えてきている。トゥエのちゃちな呪文など物ともしないその生命力に、城壁の方からどよめきと悲鳴が聞こえてきた。
これは、いけない。大急ぎで蔓草を引き千切り、落ちていた短槍を拾う。そしてそのまま、この蔓草を召喚したであろう魔皇帝へとトゥエは槍を向けて飛び出した。
「無駄だな」
しかし魔皇帝は余裕を持ってトゥエの攻撃をかわすと、トゥエに向けて指を立てる。その指から電撃が迸る。
〈危ないっ!〉
トゥエはとっさに槍を魔皇帝に向かって投げつけた。勿論、その攻撃はあっけなく避けられる。だが、ほんの一瞬だけ、魔皇帝の胸ががら空きになるのを、トゥエは見逃さなかった。
がむしゃらに、魔皇帝の胸に飛び込む。魔皇帝の鎧がナイフも拳も通さないのは百も承知。それでも、トゥエのとるべき行動はこれしかない。
と。
トゥエの指先が、魔皇帝の胸元で微かに光っていた宝石に触れる。
次の瞬間。
〈……え?〉
全身に走った衝撃に、トゥエは思わず突き出した腕を引っ込めた。
その機を魔皇帝が見逃すはずが無い。いきなりの平手打ちで、トゥエの軽い身体は城門の前まですっ飛んだ。
「……くっ」
痛む頬を押さえ、何とか上体を起こす。ふと横を見ると、さっきまでぐんぐんと生えていた蔓草が、綺麗さっぱり消えていた。
〈……え?〉
思わず首を傾げる。だが。次の瞬間、鉄の手甲に包まれた大きな手がトゥエの襟元を掴み、その身体を引き上げた。
「トゥエ!」
ヘクトの叫びが耳を打つ。唇を引き結んだ魔皇帝の顔が、トゥエの目の前にあった。
城壁上の騒ぎが、遠くに聞こえる。息が、苦しい。霞む意識の中で、それでも首に掛かっている魔皇帝の太い手を外そうと、トゥエは精一杯もがいた。自分がどんなことになろうとも、砦からは誰も一歩も出ないこと。トゥエはヘクトや兵士達にそう厳命していた。更に、トゥエ自身が城門に魔法を掛け、誰も外に出られないようにしてある。だから、自分自身でこの状況を脱しないといけない。
と、その時。
「……悪いようにはせぬ。私の軍門に下れ」
思いがけない言葉がトゥエの耳を打つ。この声は確かに、魔皇帝の声。しかし、何故唐突に?
「お前の『力』が、私には必要だ」
ゆっくりと、噛んで含めるような声が続く。だが、トゥエの答えは訊く前から決まっていた。
「断る」
苦しい息の中、それだけをはっきりと声に出す。魔物を使い、人々を惨殺するような奴の味方になんか、誰がなるものか。
「そうか、……惜しいな」
溜息交じりの声と共に、首筋に掛かる力が強くなる。
「まあ、こちらとしても、無抵抗な人々を無造作に殺すような奴らの同類を味方にするわけにはいかない、か」
沈んだ言葉が、薄れゆくトゥエの意識にはっきりと響いた。
為す術も無く、目の前が真っ暗になる。トゥエは死を覚悟した。
と。
不意に、首に掛けられた力が外れる。トゥエの身体は重力のまま、背中から地面に落下した。
「なんと!」
驚きの声が、辺りに響く。
トゥエはゆっくりとその目を開いた。先刻まで周りにいたはずの魔物が、綺麗さっぱり消えている。そして何より、先ほどまでの禍々しい気が、確かに、消えて、いた。
……リュエルの魔法が成功したのだ。
「……くっ」
不利を悟った魔皇帝が、トゥエに背を向ける。
「だが、この感じは……」
マントを翻し、それでも悠然と去って行く魔皇帝の背からおかしな呟きが聞こえてきたのは、トゥエの気のせい、だろう、か……。
目を醒まして最初に飛び込んできたのは、涙でぐしゃぐしゃになったリュエルの顔。
「……良かった、生きてた」
リュエルの震える手が、トゥエの額をゆっくりと撫でる。その手の感触が何となくこそばゆくて、トゥエは全身を駆け抜ける痛みを忘れ思わず笑顔を作った。
「大丈夫ですよ、王子」
リュエルの後ろに、マチウとウォリスの安堵した顔が見える。瞳だけをゆっくりと動かすと、ちゃんと立っている城壁の上で、ヘクトが心配そうにこちらを見ているのが何故かはっきりと見えた。
夜明けの頃とあまり変わっていない辺りの光景にも、ほっとする。色々あったが、ともかく、魔皇帝を撃退して、砦も、都も、大切な人達もちゃんと守ることができた。
リュエルの信頼にも、きちんと答えることが、できたのだ。
良かった。
心からそう思ったトゥエの意識は、次の瞬間、温かい闇へと落ちて、いった。
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