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episode 9
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しおりを挟むside 理人(child)
「ただいま帰りました。」
「おかえり!」
玄関からリュカが帰ってきた音が聞こえて、料理中で忙しい陽に代わって出迎える。
冬の日が昇る少し前の空みたいな色のスーツをすたいりっしゅに着こなしたリュカはとてもかっこいい。
学校の帰り道によく見るサラリーマンの姿はどこかどんよりした感じがするけどリュカはいってらっしゃいの姿とただいまの姿が同じだ。
リュカは僕の"あこがれ"だ。
そんなリュカがお出迎えありがとうといつも僕の頭を撫でてくれる右手は今日は白い箱に占拠されていた。
「リュカ、これなに?」
「んー?お土産、ですかね。
リビングいって開けてごらん。」
リビングに想像より重い白い箱を持っていき、咲と柊を呼んで開けてみた。
中身を見て双子たちが騒ぎ出す。
「……ぷりん?」
「プリンだ!リュカこれなに!?」
そう、箱の中身は瓶に入ったプリンだった。
「はる!リュカがプリンくれた!
たべていい!?」
「プリンー?」
料理する手を止めてリビングに出てきた陽は箱の中身を見て困った顔をした。
それが僕は不思議だった。
だって中には見るからに陽用だろういちごプリンが入っていたから。
カラメルソースの代わりにいちごのジュレが沈んでいて上には生クリームと本物のでっかいいちごが乗っかっているひとつだけ瓶じゃない特別そうなプリン。
だからいつもの満面の笑みで喜ぶかと思った。
「……陽?嬉しくないの?」
僕の呟きに陽はハッとして言う。
「嬉しいよ!
でも今からごはんなのに困っちゃうなぁって思っただけ!
柊もご飯のあとじゃなきゃだめー。」
「えー!しゅうはね、ちょこがいい!」
「柊は甘いのすきだねぇ。」
「……まっちゃ。」
「咲は渋いなぁ。
りぃくんはどれがいい?
なんかたくさんあるよ!」
「僕は紅茶プリンにしようかな。」
「お、珍しいのいったね!美味しそう!
……リュカさんはどうします?」
「私はプレーンにします。」
「じゃあ、冷蔵庫でさらに美味しくなってもらいましょうか。
リュカさん、ありがとうございます。」
陽はどこか仕方ないなぁって表情で、でも嬉しそうに冷蔵庫にしまっていた。
そんな陽はごはんの後、家族の中で一番の顔でプリンを食べていたのは言うまでもなかった。
リュカがたまに何でもない日にプリンを買ってくるのは僕が中学生になっても高校生になってもずっと続いた。
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