たんぽぽxドラッグと銀の弾丸

星 佑紀

文字の大きさ
1 / 4
第壱譚

0001:お師匠様に売られた綴実(つづみ)

しおりを挟む
★ここは、ニホン帝国にある、とある花街『暁』。その一角にひっそりと佇むお茶屋『明星』では、とある小柄な黒髪の青年『綴実つづみ』と、とある白髪の中年男性が、何とも言えない雰囲気で対峙していた。


コッコッコッ…………カポーン(鹿おどしの音)


「……お師匠様、……折り入ってお話とは一体、なんなのですか?(下座で律儀に正座をしている短髪黒髪の青年 綴実)」

「……おう。(上座であぐらを組んで綴実から身体を背けている白髪ロン毛の丸眼鏡をかけた美丈夫)」


★中年ながらも小綺麗に身なりが整っている美丈夫『お師匠様』は、微妙な表情で一点だけを見つめている。


「……その、なんだ、……綴実、……朝餉あさげは食べたのか?(綴実から身体を背けたまま話しかけるお師匠様)」

「……? ええ、とっくの昔にですが。(謎の違和感を覚える綴実)」

「そうか。……なら、単刀直入に言おう。……綴実、……悪いけど、今日から魔法の国 アデル皇国に行って、魔石代を稼いできてくれ。(シュパパッと身体を綴実に向けて要件を言った後に、すぐ身体を背けるお師匠様)」

「………………はい?(お師匠様の言ってる意味がわからない綴実)」

「……だから、アデル皇国へ出稼ぎに行ってこいということだ。(若干早口になるお師匠様)」

「……ええっと、……お師匠様、つかぬ事をお聞きしますが、……それは一体どういう意味で仰っているのですか? ……俺がアデル皇国で出稼ぎなんて、ありえないでしょう?(顔面蒼白な綴実)」

「…………。(微動だにしないお師匠様)」


★ 二人の間に、どんよりとした重たい空気が漂う。……長い沈黙を破ったのは、お師匠様の投げやりなお言葉だった。


「…………売ったんだよ。(ため息をつきつつも、懐から煙管キセルを取り出すお師匠様)」

「……はぇっ? ……何を?(目が点な綴実)」

「…………綴実、……お前をさ。(綴実から顔をそらし、煙管を口に咥える流し目なお師匠様)」

「ななな、なんですって~⁉︎(ワナワナと震える綴実)」


★ 綴実はあまりの動揺に立ち上がった!


「色々と大人の事情があるのだよ、綴実君。(横に置いてある火鉢から火種をもらって煙管を吸うお師匠様)」


★ 綴実は、両手で頭を押さえながら、何やらブツブツと呟いている!


「いやいやいやいや、…………考えられない。……俺を売った? 何故アデルに⁉︎ 頭おかしいでしょ……。お師匠様! いくらで俺を売ったんですか⁉︎(頭が混乱して、心のザワメキがおさまらない綴実)」

「…………魔石ませき半世紀分……かな?(いまいち状況を把握しきれていないお師匠様)」

「魔石半世紀分だと……⁉︎ そんな高価な石と俺が対等な対価になり得るって言うのですか⁉︎ こっちは、寂れた花街の用心棒ですよ⁉︎ ありえない。……お師匠様、絶対騙されてますって‼︎(早口で捲し立てる綴実)」

「まあまあ、落ち着いて聞きなさい、綴実君。……こっちにも、色々事情があってね、……にも、のっぴきならない事情ってものがあるのだよ。……私は、綴実を売って得た魔石を更に高値で売って、生涯安泰で暮らせる。綴実は、アデルに行って、楽しく暮らせる。……等価交換さ。(吸い終わった煙管の灰を、火鉢にトントンと落とすお師匠様)」

「待ってください、お師匠様! それのどこが、等価交換なのですか⁉︎ …………確かに、身寄りのない俺を、貧乏な中でも育ててくれたお師匠様には感謝しかありません。ですが、いきなり他所に俺を売るのは違うでしょう? 何故そんな大事なことを、もっと早くに言ってくれなかったのですか⁉︎(感情が溢れ出て、両目が潤む綴実)」

「つづみ……。(綴実をじいっと見つめるお師匠様)」

「今からでも間に合います。……先方にお断りを入れましょう!(どうにかここに残りたい綴実)」


コンコンコン(障子の縁を小さく叩く音)


★と、二人の空間に、小さな音が入ってきた。


「……綴実、……行くか行かないかは、先方の話を聞いてからにしなさい。(スクっと素早く立ち上がるお師匠)」

「えっ、お師匠様……?(綴実)」


★お師匠様は、スチャッと畳の縁を跨ぎながら移動して、綴実の背後に位置する出入り口の障子を開けた。

★障子の向こうには、鮮血のように真っ赤な瞳に、白糸の滝のような美しい銀色の長髪を後ろで無造作に束ねた、まるで美少女のような男性が立っている。しかし彼の表情は、何やら暗く、曇りまくっていたのであった!


「綴実、紹介するよ。……アデル皇国の筆頭公爵、……偉大なる魔法使い 『エドワード・ロック公爵』様さ。(丸眼鏡がキラッと反射しているお師匠様)」

「──っ⁉︎(あの有名な⁉︎ 驚きで言葉が出ない綴実)」

「──古き友よ、ありがとう。……ニホンのを譲ってくれて。(深刻な表情のロック公爵)」

「……まあ、簡単には譲らないけどな。(丸眼鏡が反射しまくりで、表情が窺い知れないお師匠様)」

「──っ⁉︎(この二人の関係性って何なの⁉︎ 困惑ばかりな綴実)」


★後に分かるが、偉大なる魔法使いと呼ばれたこの男、エドワード・ロックは、『ニホンのたんぽぽ』がを、今か今かと待ち望んで生きてきたのであった‼︎
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

処理中です...