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第1章 獣人が支配する世界
2.奴隷として売られたらしい
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「……はぁ、はぁ」
目が覚めたらやっぱり、檻の中だった。
あれで死んだとしたら……ここはあの世という奴か?
それにしては妙にリアルだけど。
眠る前と同じく、一緒に檻へ入っている人たちは私を遠巻きにしていた。
金髪も赤毛も、黒髪もいる。
目の色もまちまちだ。
「いったい、ここはどこだ……?」
考えても仕方ないことを考えた。
檻馬車はのどかな野原のようなところを走っている。
それこそ、ヨーロッパの片田舎のようなところだ。
家は一軒もないけれど。
檻を引いているのは馬っぽいが馬ではない。
足が六本、あるからね。
三頭の熊の他に、雑用係なのか犬が二頭いた。
二頭の犬はどっちもドーベルマンっぽい。
犬ももちろん服を着て二本足で歩いていた。
「今回は良ものが多かったよな」
檻馬車と並んで歩きながら、熊が中をのぞき込む。
途端にひっ!と短く悲鳴が上がった。
「高く売れそうだ」
高く売れるとはなにがだ?
なんて考えていたら、格子の隙間からあたまをつつかれた。
「なんか一匹、変なのが混ざっているけどな」
「いたっ、痛いってば!」
鋭い爪の先でつつかれたら堪らない。
ううっ、血が出たりしていないよね……?
「まあ、物好きな奴が買うだろ。
売れなかったら肉にすればいい」
「だな」
楽しそうに笑いながら熊が離れていく。
ようやく、自分たちは商品なのだと気づいた。
私のいる檻馬車の前には、男ばかりが入れられた檻馬車が走っている。
ようするに私は、奴隷商に捕まった、ということなんだろうか。
「ブラック企業の次は奴隷か……」
つくづく、自分は奴隷の星の下に生まれたらしい。
せめて、優しいご主人様に買われるように祈ろう。
夕方には街に着いた。
門番はダルメシアンだった。
その門番も私たちについてなにも言わないどころか、狩りはどうだった?
などと訊ねていたところからして、人間が奴隷狩りされるのはここでは普通らしい。
「おかーさん、人間!」
「こら、指を指さないの!」
私たちに興味津々な子供と、それをたしなめる母親は猫だった。
というか、人間はこの檻にいる人間しかいなく、街を歩くのは全員、獣……というか獣人だ。
町並みはヨーロッパのレトロな街のようで、最初にいた村よりは立派だった。
そして同じ檻の人間は貫頭衣とかいうあの、弥生時代の人間が着ているような質素な服に対し、獣人が着ているのは中世だか近世だかの一般ヨーロッパ人のような服だった。
「降りろ」
市場のようなところで檻馬車を降ろされた。
熊たちはトラからお金を受け取り、去っていく。
「歳は?」
正札をつけられる列に並んでいたら、いつのまにか私の番になっていた。
「二十八、です」
さらさらと手に持つ板の上にのった、紙へとトラが書き込んでいく。
「番は?」
「番……?」
とはなんだ?
と少し考えて、ようやく結婚相手はいるのか、という意味だと気づくと同時にトラの怒号が飛んだ。
「番はいるのかって訊いてるんだ!」
「い、いません!」
「二十八にもなって番もいねぇとか、こりゃ売れねぇな」
はぁーっ、とトラが大きなため息をつき、カチンときた。
すみませんね、アラサーにもなって結婚していないどころか彼氏もいなくて。
「変な格好してるしな。
こりゃ、肉いきだろ、肉」
木札に×と大きく書き、それに通っている紐を私の首にかけた。
「お前はこっちだ」
同じ檻の中には、私よりさらに歳……というよりも、老女に近い人間ばかりが集められていた。
ようするに私には価値がないということか。
会社で散々、上司から無能扱いされ、ここでも奴隷として最低評価なんて、なんか落ち込む。
惨めな気分で隅っこに腰を下ろした。
「メシだ」
声とともに動物園の撒き餌のごとく、バケツから檻の中へ黒い物体が撒かれる。
私も、足先に転がってきたそれを拾った。
「パン……なのか?」
握り拳ほどの大きさのそれは、私の持ちうる情報の中ではパンっぽい。
けれど到底、人の食べ物には見えなかった。
地面にも転がされたし。
しかしながらもう丸一日、なにも食べていないので腹が減っている。
――ごくり。
こんなもの、食べ物じゃないだろ、と思いつつも唾が出て喉が鳴る。
ついた土を払っておそるおそる齧りついた。
「かったっ!」
一瞬、歯が折れたかと思った。
それほどまでに、硬い。
囓るのは無理だと、どうにかひとくち大にちぎって口に入れる。
「……」
それはぱっさぱさで、口の中の水分が全部持っていかれた。
マズい、が咀嚼して無理矢理飲み込む。
「うぇーっ」
飲み込めない味ではないが、それでもふたくち目は躊躇した。
けれどきっと、これを食べなければ私はそのうち、飢え死にするのだ。
「命あっての物種だし」
ぶちっ、と思いっきりパンを引きちぎり、また口へと入れた。
目が覚めたらやっぱり、檻の中だった。
あれで死んだとしたら……ここはあの世という奴か?
それにしては妙にリアルだけど。
眠る前と同じく、一緒に檻へ入っている人たちは私を遠巻きにしていた。
金髪も赤毛も、黒髪もいる。
目の色もまちまちだ。
「いったい、ここはどこだ……?」
考えても仕方ないことを考えた。
檻馬車はのどかな野原のようなところを走っている。
それこそ、ヨーロッパの片田舎のようなところだ。
家は一軒もないけれど。
檻を引いているのは馬っぽいが馬ではない。
足が六本、あるからね。
三頭の熊の他に、雑用係なのか犬が二頭いた。
二頭の犬はどっちもドーベルマンっぽい。
犬ももちろん服を着て二本足で歩いていた。
「今回は良ものが多かったよな」
檻馬車と並んで歩きながら、熊が中をのぞき込む。
途端にひっ!と短く悲鳴が上がった。
「高く売れそうだ」
高く売れるとはなにがだ?
なんて考えていたら、格子の隙間からあたまをつつかれた。
「なんか一匹、変なのが混ざっているけどな」
「いたっ、痛いってば!」
鋭い爪の先でつつかれたら堪らない。
ううっ、血が出たりしていないよね……?
「まあ、物好きな奴が買うだろ。
売れなかったら肉にすればいい」
「だな」
楽しそうに笑いながら熊が離れていく。
ようやく、自分たちは商品なのだと気づいた。
私のいる檻馬車の前には、男ばかりが入れられた檻馬車が走っている。
ようするに私は、奴隷商に捕まった、ということなんだろうか。
「ブラック企業の次は奴隷か……」
つくづく、自分は奴隷の星の下に生まれたらしい。
せめて、優しいご主人様に買われるように祈ろう。
夕方には街に着いた。
門番はダルメシアンだった。
その門番も私たちについてなにも言わないどころか、狩りはどうだった?
などと訊ねていたところからして、人間が奴隷狩りされるのはここでは普通らしい。
「おかーさん、人間!」
「こら、指を指さないの!」
私たちに興味津々な子供と、それをたしなめる母親は猫だった。
というか、人間はこの檻にいる人間しかいなく、街を歩くのは全員、獣……というか獣人だ。
町並みはヨーロッパのレトロな街のようで、最初にいた村よりは立派だった。
そして同じ檻の人間は貫頭衣とかいうあの、弥生時代の人間が着ているような質素な服に対し、獣人が着ているのは中世だか近世だかの一般ヨーロッパ人のような服だった。
「降りろ」
市場のようなところで檻馬車を降ろされた。
熊たちはトラからお金を受け取り、去っていく。
「歳は?」
正札をつけられる列に並んでいたら、いつのまにか私の番になっていた。
「二十八、です」
さらさらと手に持つ板の上にのった、紙へとトラが書き込んでいく。
「番は?」
「番……?」
とはなんだ?
と少し考えて、ようやく結婚相手はいるのか、という意味だと気づくと同時にトラの怒号が飛んだ。
「番はいるのかって訊いてるんだ!」
「い、いません!」
「二十八にもなって番もいねぇとか、こりゃ売れねぇな」
はぁーっ、とトラが大きなため息をつき、カチンときた。
すみませんね、アラサーにもなって結婚していないどころか彼氏もいなくて。
「変な格好してるしな。
こりゃ、肉いきだろ、肉」
木札に×と大きく書き、それに通っている紐を私の首にかけた。
「お前はこっちだ」
同じ檻の中には、私よりさらに歳……というよりも、老女に近い人間ばかりが集められていた。
ようするに私には価値がないということか。
会社で散々、上司から無能扱いされ、ここでも奴隷として最低評価なんて、なんか落ち込む。
惨めな気分で隅っこに腰を下ろした。
「メシだ」
声とともに動物園の撒き餌のごとく、バケツから檻の中へ黒い物体が撒かれる。
私も、足先に転がってきたそれを拾った。
「パン……なのか?」
握り拳ほどの大きさのそれは、私の持ちうる情報の中ではパンっぽい。
けれど到底、人の食べ物には見えなかった。
地面にも転がされたし。
しかしながらもう丸一日、なにも食べていないので腹が減っている。
――ごくり。
こんなもの、食べ物じゃないだろ、と思いつつも唾が出て喉が鳴る。
ついた土を払っておそるおそる齧りついた。
「かったっ!」
一瞬、歯が折れたかと思った。
それほどまでに、硬い。
囓るのは無理だと、どうにかひとくち大にちぎって口に入れる。
「……」
それはぱっさぱさで、口の中の水分が全部持っていかれた。
マズい、が咀嚼して無理矢理飲み込む。
「うぇーっ」
飲み込めない味ではないが、それでもふたくち目は躊躇した。
けれどきっと、これを食べなければ私はそのうち、飢え死にするのだ。
「命あっての物種だし」
ぶちっ、と思いっきりパンを引きちぎり、また口へと入れた。
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