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第3章 こんなに幸せでいいのかな
1.お家の探検
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朝、起きたら肩の傷は痛まなくなっていた。
いや、それどころかけっこうな深さだったのに、もうほとんど塞がっている。
「アプリコットは治癒魔法にたけているからな。
薬草もよく効く」
朝食を食べながらレオンさんが教えてくれた。
あのうさぎさんはかなり優秀らしい。
今日も朝食はサンドイッチだった。
もしかしたらパンに挟むだけで手早くできるから、かもしれない。
「とはいえ、まだ全快したわけじゃないからな。
チハルはのんびりしておけ」
「……はい」
うー、いままで社畜だったから、のんびりってどうしていいのかわからないんだよね。
奴隷の檻の中ですら、なにもすることがないのに恐怖を抱いてしまっていたくらいだ。
食事が終わり、レオンさんは仕事があるからと部屋を出ていった。
皿は洗わなくていい、絶対に外に出るなと何度も私に言い聞かせるのは忘れない。
「そんなに繰り返さなくなって、大丈夫なのに」
絶対、絶対だぞ! と数歩ごとに振り返って言うレオンさんを思いだしておかしくなってくる。
しばらくは淹れてもらったお茶を飲んでいたものの、それも飲み終わると本格的に暇になった。
「うーっ。
家から出なきゃいいんだよね?
じゃあ、家の中を探検しよう!」
いい考えだとばかりに早速、椅子を立った。
まずはいまいるダイニングキッチンから伸びる階段を上り、二階へ。
「ここは寝室なわけだけど……」
小さな板間の、向こうにあるドアの向こうは、ここに来て私が寝ていた寝室だ。
「で、こっちは?」
寝室と対角線上にあるドアを開く。
そこは屋根裏のようで、少しの荷物があるほかは埃が積もってがらんとしていた。
「え、じゃあレオンさんはどこで寝てたの?」
寝室がひとつだなんて考えてもいなかった。
二階にはほかに、部屋はない。
一階の、ダイニングキッチン横の小部屋は、風呂として使うとき以外はトイレとして利用する。
「残るはここしかないわけだけど」
ひとつ深呼吸してドアを開ける。
「きゃっ、人間!」
向こうが見えた途端、随分可愛らしい悲鳴が聞こえてきた。
「チハル、どうかしたのか?」
かけていた眼鏡を外し、レオンさんが私の前に立つ。
イタチ……フェレット……どっちかはわからないけど、とにかく依頼主のお嬢さんの視線がちらちらと私に向かう。
人間の私が珍しいんだろうな、と思っていたけれど、すぐにそれだけじゃないことに気づいた。
途端にみるみる、身体が熱を持っていく。
「あっ、えっと。
……なんでもないです」
消え入りそうな声でそれだけ言い、レオンさんの鼻先で速攻、バタン! と大きな音を立ててドアを閉めた。
「……ううっ。
恥ずかしすぎる」
そうなのだ、灰色狼に服をダメにされて着替えたが相変わらず、私のいまの服はレオンさんのシャツ一枚。
彼は大きいのでお尻は隠れるとはいえ、そんな格好でしかも裸足とくれば、たとえ獣人だったとしてもふしだらに見えるだろう。
「服……服……なんとかしないと……」
街に人間用の服なんて売っているんだろうか。
あったとしてもたぶん、あの貫頭衣なんだろうな……。
「……はぁーっ。
裁縫なんてできないし……」
いきなりの大問題に、あたまが痛い。
ひとりで、あーとか、うーとか奇声を発しているあいだに、仕事が一段落したのかレオンさんが裏に来た。
「なんだ、変な声を出して」
私に声をかけながら魔法でかまどに火をつけ、やかんをかける。
湯が沸くまでのあいだにハムや野菜を準備し、サンドイッチを作った。
「昼メシにしよう」
「……そうですね」
朝とまったく同じメニューが食卓に並ぶ。
作ってもらって文句はないので、黙ってそれを食べた。
「あのー、レオン、さん」
「なんだ?」
相変わらずレオンさんは食べるのが早く、二、三口でサンドイッチがなくなる。
「人間用の服とか、手に入らないでしょうか……?」
これは切実な問題なのだ。
たとえ、一歩もこの家から出ないとしても、ずっとこの格好は非常にマズい。
お客様と来たときに、特に。
「服……?」
レオンさんの視線が、私のあたまのてっぺんからつま先まで往復する。
「すまない、すっかり忘れていた!」
忘れていた、ということは、どうにかしてくれようという気はあったのか?
「あとで仕立屋を呼ぶから少し待ってくれ。
そうだよな、ずっと俺の服というわけにはいかないよな」
「えっと。
……お願い、します」
これで服問題は解決だと喜んでいいのかな?
いや、それどころかけっこうな深さだったのに、もうほとんど塞がっている。
「アプリコットは治癒魔法にたけているからな。
薬草もよく効く」
朝食を食べながらレオンさんが教えてくれた。
あのうさぎさんはかなり優秀らしい。
今日も朝食はサンドイッチだった。
もしかしたらパンに挟むだけで手早くできるから、かもしれない。
「とはいえ、まだ全快したわけじゃないからな。
チハルはのんびりしておけ」
「……はい」
うー、いままで社畜だったから、のんびりってどうしていいのかわからないんだよね。
奴隷の檻の中ですら、なにもすることがないのに恐怖を抱いてしまっていたくらいだ。
食事が終わり、レオンさんは仕事があるからと部屋を出ていった。
皿は洗わなくていい、絶対に外に出るなと何度も私に言い聞かせるのは忘れない。
「そんなに繰り返さなくなって、大丈夫なのに」
絶対、絶対だぞ! と数歩ごとに振り返って言うレオンさんを思いだしておかしくなってくる。
しばらくは淹れてもらったお茶を飲んでいたものの、それも飲み終わると本格的に暇になった。
「うーっ。
家から出なきゃいいんだよね?
じゃあ、家の中を探検しよう!」
いい考えだとばかりに早速、椅子を立った。
まずはいまいるダイニングキッチンから伸びる階段を上り、二階へ。
「ここは寝室なわけだけど……」
小さな板間の、向こうにあるドアの向こうは、ここに来て私が寝ていた寝室だ。
「で、こっちは?」
寝室と対角線上にあるドアを開く。
そこは屋根裏のようで、少しの荷物があるほかは埃が積もってがらんとしていた。
「え、じゃあレオンさんはどこで寝てたの?」
寝室がひとつだなんて考えてもいなかった。
二階にはほかに、部屋はない。
一階の、ダイニングキッチン横の小部屋は、風呂として使うとき以外はトイレとして利用する。
「残るはここしかないわけだけど」
ひとつ深呼吸してドアを開ける。
「きゃっ、人間!」
向こうが見えた途端、随分可愛らしい悲鳴が聞こえてきた。
「チハル、どうかしたのか?」
かけていた眼鏡を外し、レオンさんが私の前に立つ。
イタチ……フェレット……どっちかはわからないけど、とにかく依頼主のお嬢さんの視線がちらちらと私に向かう。
人間の私が珍しいんだろうな、と思っていたけれど、すぐにそれだけじゃないことに気づいた。
途端にみるみる、身体が熱を持っていく。
「あっ、えっと。
……なんでもないです」
消え入りそうな声でそれだけ言い、レオンさんの鼻先で速攻、バタン! と大きな音を立ててドアを閉めた。
「……ううっ。
恥ずかしすぎる」
そうなのだ、灰色狼に服をダメにされて着替えたが相変わらず、私のいまの服はレオンさんのシャツ一枚。
彼は大きいのでお尻は隠れるとはいえ、そんな格好でしかも裸足とくれば、たとえ獣人だったとしてもふしだらに見えるだろう。
「服……服……なんとかしないと……」
街に人間用の服なんて売っているんだろうか。
あったとしてもたぶん、あの貫頭衣なんだろうな……。
「……はぁーっ。
裁縫なんてできないし……」
いきなりの大問題に、あたまが痛い。
ひとりで、あーとか、うーとか奇声を発しているあいだに、仕事が一段落したのかレオンさんが裏に来た。
「なんだ、変な声を出して」
私に声をかけながら魔法でかまどに火をつけ、やかんをかける。
湯が沸くまでのあいだにハムや野菜を準備し、サンドイッチを作った。
「昼メシにしよう」
「……そうですね」
朝とまったく同じメニューが食卓に並ぶ。
作ってもらって文句はないので、黙ってそれを食べた。
「あのー、レオン、さん」
「なんだ?」
相変わらずレオンさんは食べるのが早く、二、三口でサンドイッチがなくなる。
「人間用の服とか、手に入らないでしょうか……?」
これは切実な問題なのだ。
たとえ、一歩もこの家から出ないとしても、ずっとこの格好は非常にマズい。
お客様と来たときに、特に。
「服……?」
レオンさんの視線が、私のあたまのてっぺんからつま先まで往復する。
「すまない、すっかり忘れていた!」
忘れていた、ということは、どうにかしてくれようという気はあったのか?
「あとで仕立屋を呼ぶから少し待ってくれ。
そうだよな、ずっと俺の服というわけにはいかないよな」
「えっと。
……お願い、します」
これで服問題は解決だと喜んでいいのかな?
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