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最終章 極悪上司と結婚指環
5.仲良くなりたいな
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翌日は朝、少し早く起きてお弁当を四つ作った。
……うん、四つなのだ。
もちろん三つは、私に京塚主任と杏里ちゃんの分。
あとのひとつは……西山さんの分。
あの、落ち込み方はちょっと見ていられない。
昨日はお昼ごはんを食べてなかったみたいだし、余計なお世話だろうけど、これで元気出してくれたらいいんだけど。
「おはようございまーす」
出勤したら、すでに西山さんは来ていた。
この状況で逃げずに出てくるのは偉い、と少しくらい褒めてあげてもいいのかな。
……なんて、何様? ではあるけれど。
「西山さん、おはようございまず」
「……はよ」
今日も彼の目は虚ろで、ぼーっとただ座っていた。
「これ。
お弁当作ってきたんです。
もしかしてまともに食べてないんじゃないですか?
顔色悪いですよ?
これでも食べて元気出してください」
「……あ、ああ」
戸惑っている彼の机の上に、無理矢理それを置いた。
「やった失敗は仕方ないです。
私も大失敗、しちゃって三島さんに怒鳴られたの、知ってますよね?
でも、次から気をつけたらいいんです。
まずはできることからやって、挽回しましょうよ」
「……」
「じゃあ、頑張って」
西山さんは黙って俯いてしまったけど、逆効果だったのかな。
でも、私にできることはこれくらいだし。
「星谷って優しいのな」
席に戻ったら、京塚主任たちが出勤してきていた。
「優しいって、別にそんな……」
あれを聞かれていたんだと思うと、かなり恥ずかしい。
我ながら、出しゃばったかな、って気もするだけに。
「いや、俺なら、やる気がないなら帰れ、とか言いそうだもん。
あれで西山、ちっとは浮上したらいいな」
「して、くれますかね」
「しないなら、俺が気合い入れるわ」
ニヤッ、と八重歯を見せて京塚主任が笑う。
私もつられて、笑っていた。
今日も京塚主任はもちろん子連れなので、会議室は杏里ちゃんのお部屋だ。
「あーんりちゃん」
「な、なに……?」
私が部屋に入った途端、ご機嫌で塗り絵をしていた杏里ちゃんが止まる。
「これ、なーんだ?」
「……?」
私の手にあるポーチを、彼女は興味津々に見ている。
それはそうだろう、乙女心をくすぐる、可愛いピンクのポーチなんだから。
「なに、それ?」
「じゃーん!
メイク道具だよー」
傍の椅子に座り、ポーチの中身を取り出していく。
アイシャドウにリップ、それにマニキュアと並べれば、杏里ちゃんは目をキラキラ輝かせた。
「お誕生日プレゼント、渡し忘れてたから。
これ、杏里ちゃんに」
「ほんとに!?
いいの!?」
大喜びで手を伸ばしかけた、ものの。
「そ、そんなんで、パパをあげたりしないんだからね」
さっ、と手を戻し、背を向ける。
その割にチラチラと、視線がこちらへ向かっているが。
「んー、私は杏里ちゃんと、お友達になりたいなー、……なんて」
「あ、杏里にトリイッタリしても、無駄なんだからね!」
さらにぷいっ、と彼女の顔がよそを向く。
きっといままで、そういうことも、そういうことを言われることもあったんだろうな。
「そうだねー、私はパパよりも杏里ちゃんと仲良くなりたいな」
「は?」
まじまじと彼女が、私の顔を見た。
「正直言ったら、パパとも仲良くなりたいよ?
でもそれより、杏里ちゃんと仲良くなりたい。
私は杏里ちゃんがだーいすきだから」
笑って杏里ちゃんの顔を見たら、彼女ははぁっとため息をついた。
「バカなの、あなた?
私が可愛くないのはもう知ってるでしょ?」
「えー、杏里ちゃんは可愛いよー。
お友達に、なろ?」
「す、好きにすればいいじゃない!」
真っ赤になった彼女がまた、そっぽを向く。
やっぱり、可愛いなー。
「星谷ー」
ドアの向こうから京塚主任の声が聞こえてきて、慌てて立ち上がる。
「やばっ、あんまりサボってたら怒られる。
これ、好きに使っていいからね!
じゃあ!
……はーい、ここですって!」
ドアを閉める直前、ちらっと見えた杏里ちゃんはさっそく、メイク道具に手を伸ばしてた。
やっぱり好きだよね、そういうの。
子供用の揃えてきたから、心配もないし。
「なにやってたんだ」
「ちょっと懐柔を」
若干、イラついている京塚主任に笑って誤魔化し、仕事を再開する。
杏里ちゃんから落として、いずれ京塚主任を……なんて思惑がゼロだとは言わない。
でも単純に私は、杏里ちゃんと仲良くなりたかった。
これってロリコン?
まあ、それでもいいけど。
……うん、四つなのだ。
もちろん三つは、私に京塚主任と杏里ちゃんの分。
あとのひとつは……西山さんの分。
あの、落ち込み方はちょっと見ていられない。
昨日はお昼ごはんを食べてなかったみたいだし、余計なお世話だろうけど、これで元気出してくれたらいいんだけど。
「おはようございまーす」
出勤したら、すでに西山さんは来ていた。
この状況で逃げずに出てくるのは偉い、と少しくらい褒めてあげてもいいのかな。
……なんて、何様? ではあるけれど。
「西山さん、おはようございまず」
「……はよ」
今日も彼の目は虚ろで、ぼーっとただ座っていた。
「これ。
お弁当作ってきたんです。
もしかしてまともに食べてないんじゃないですか?
顔色悪いですよ?
これでも食べて元気出してください」
「……あ、ああ」
戸惑っている彼の机の上に、無理矢理それを置いた。
「やった失敗は仕方ないです。
私も大失敗、しちゃって三島さんに怒鳴られたの、知ってますよね?
でも、次から気をつけたらいいんです。
まずはできることからやって、挽回しましょうよ」
「……」
「じゃあ、頑張って」
西山さんは黙って俯いてしまったけど、逆効果だったのかな。
でも、私にできることはこれくらいだし。
「星谷って優しいのな」
席に戻ったら、京塚主任たちが出勤してきていた。
「優しいって、別にそんな……」
あれを聞かれていたんだと思うと、かなり恥ずかしい。
我ながら、出しゃばったかな、って気もするだけに。
「いや、俺なら、やる気がないなら帰れ、とか言いそうだもん。
あれで西山、ちっとは浮上したらいいな」
「して、くれますかね」
「しないなら、俺が気合い入れるわ」
ニヤッ、と八重歯を見せて京塚主任が笑う。
私もつられて、笑っていた。
今日も京塚主任はもちろん子連れなので、会議室は杏里ちゃんのお部屋だ。
「あーんりちゃん」
「な、なに……?」
私が部屋に入った途端、ご機嫌で塗り絵をしていた杏里ちゃんが止まる。
「これ、なーんだ?」
「……?」
私の手にあるポーチを、彼女は興味津々に見ている。
それはそうだろう、乙女心をくすぐる、可愛いピンクのポーチなんだから。
「なに、それ?」
「じゃーん!
メイク道具だよー」
傍の椅子に座り、ポーチの中身を取り出していく。
アイシャドウにリップ、それにマニキュアと並べれば、杏里ちゃんは目をキラキラ輝かせた。
「お誕生日プレゼント、渡し忘れてたから。
これ、杏里ちゃんに」
「ほんとに!?
いいの!?」
大喜びで手を伸ばしかけた、ものの。
「そ、そんなんで、パパをあげたりしないんだからね」
さっ、と手を戻し、背を向ける。
その割にチラチラと、視線がこちらへ向かっているが。
「んー、私は杏里ちゃんと、お友達になりたいなー、……なんて」
「あ、杏里にトリイッタリしても、無駄なんだからね!」
さらにぷいっ、と彼女の顔がよそを向く。
きっといままで、そういうことも、そういうことを言われることもあったんだろうな。
「そうだねー、私はパパよりも杏里ちゃんと仲良くなりたいな」
「は?」
まじまじと彼女が、私の顔を見た。
「正直言ったら、パパとも仲良くなりたいよ?
でもそれより、杏里ちゃんと仲良くなりたい。
私は杏里ちゃんがだーいすきだから」
笑って杏里ちゃんの顔を見たら、彼女ははぁっとため息をついた。
「バカなの、あなた?
私が可愛くないのはもう知ってるでしょ?」
「えー、杏里ちゃんは可愛いよー。
お友達に、なろ?」
「す、好きにすればいいじゃない!」
真っ赤になった彼女がまた、そっぽを向く。
やっぱり、可愛いなー。
「星谷ー」
ドアの向こうから京塚主任の声が聞こえてきて、慌てて立ち上がる。
「やばっ、あんまりサボってたら怒られる。
これ、好きに使っていいからね!
じゃあ!
……はーい、ここですって!」
ドアを閉める直前、ちらっと見えた杏里ちゃんはさっそく、メイク道具に手を伸ばしてた。
やっぱり好きだよね、そういうの。
子供用の揃えてきたから、心配もないし。
「なにやってたんだ」
「ちょっと懐柔を」
若干、イラついている京塚主任に笑って誤魔化し、仕事を再開する。
杏里ちゃんから落として、いずれ京塚主任を……なんて思惑がゼロだとは言わない。
でも単純に私は、杏里ちゃんと仲良くなりたかった。
これってロリコン?
まあ、それでもいいけど。
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