極秘蜜愛結婚~俺様御曹司のトップシークレットは私!?~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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第1章 襲った償いは秘密の結婚でした!?

3.親バカとシスコン

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日曜、迎えにきた兄を黙って睨む。

「そんな嫌そうな顔することないだろ」

「……」

完全に無視で車に乗り、シートベルトを締めた。
はぁっと小さくため息をつき、兄が車を出す。
父は私を実家に呼びだすとき、必ず兄を迎えにいかせた。
兄が車だからというのと、そうすれば私が無視できなくなるからだ。

実家に帰って座った途端、父から封筒を渡された。

「今度の見合い相手だ」

「だからお見合いはしないって何度言ったらわかるの!?」

中身の確認もせずにテーブルへ叩きつける。
最初からきっとこれだとわかっていたのだ、だから嫌だったのに。

「……だって父さんは死ぬまでに、お前の花嫁姿が見たいから。
もう先は長くない、この間の検査結果も悪かったし」

背中を丸め、ごほごほとわざとらしく父は咳をしているが、ちょっと血糖値と血圧が高いだけで、別にいますぐ命がどうこうとかいう病に冒されているわけではない。

「お父さんが死ぬまでならまだまだ猶予はあるでしょ」

はぁーっとため息をつき、座布団に座り直した。
もう何度、同じやりとりをしてきただろう。

「でもお前、いままで彼氏いたことないだろ。
自力では無理なんじゃね?」

「お兄ちゃん!」

隣でのんきにアイスコーヒーを飲んでいた兄をじろりと睨みつける。
つい先日、合コンにまで乗り込んできて、私が彼氏を作るのを阻止したのは誰よ?

小さいときからずっと、私は父と兄から蝶よ花よと可愛がられてきた。
幼い頃はよかったが、次第にそれは私を縛り付けていく。
私に彼氏なんてものが認められなかった彼らのせいで、中学からは大学までエスカレーター式の女子校へ無理矢理入学させられた。
徹底的に男性排除、温室育ち箱入り娘のできあがりだ。

就職したての当時、本当に大変だった。
家族以外の男とまともに話したことがないのだから。
いつも中尾さんの影に隠れ、大変迷惑をかけた。
いまでは普通に話せるようになったのも、彼女と、上司である倉下部長のおかげだ。
その就職も大反対を受けたんだけど。

就職してからは父から見合いを勧められるようになった。
仕事なんか辞めて家庭に入った方がまし、ということらしい。
それに対抗するために合コンなりに行って適当な彼氏を作ることを考えなかったわけじゃない。
がしかし、就職してはじまった念願のひとり暮らしも、兄の生活圏内。
しかもあのとおり、盗聴器まで仕掛けて私の生活を見張っているくらいだ。
彼氏なんて夢のまた夢。

「だ、だいたい、私のことよりお兄ちゃんはどうなのよ?
妹の方が先に嫁に行くとかあっていいわけ?」

兄のシスコンはこの界隈では有名だ。
そのせいで兄に言い寄る女性なんていない。

「オレは翠が嫁にいくまで、結婚なんてできない。
だからオレが早く結婚できるように、見合いをしろ」

兄はどや顔であたまが痛い。

「そうだぞ、美月家が途絶えるかどうかは翠にかかっている」

どうして父もそこで、そんなことを言わずにお前はさっさと結婚しろ、とか兄を諫めない?
誰かこの、シスコン、親馬鹿コンビを止める人間はいないの?
ひとりでツッコミを入れるのはいい加減、疲れてきた……。
ちなみに母はこうなることがわかっているので、私が来た時点で徒歩五分先の祖母の家に避難している。

「……とにかく。
お見合いはしない。
そのうち好きな人ができたら結婚するから、放っておいて」

「でもな……」

「しないったら、しない!
それでもお見合いを勧めるなら、もう二度と帰ってこないから!」

バン! とテーブルを叩いたら、グラスと共に父と兄が跳ねた。

「……翠が帰ってこないのは嫌だ」

背中をすっかり丸め、父と兄はぼそぼそとなにか言っているが、聞こえないフリ。
たぶんここまで脅したら、しばらくはお見合いの話を持ってこないはず。
それでもひと月も過ぎれば元に戻っているだろうけど。

「やっぱり実家に帰ると疲れる……」

夕食は食べていけと、父はステーキを食べに連れていってくれた。
あれで私の機嫌が取れると思っているんだろうが、私はそこまでチョロくない。

「発表が明日でいまだに連絡がないってことは、……落ちたな」

お風呂から上がり、ベッドでゴロゴロしながら携帯を睨む。
が、どんなに見つめたところで、存在しないメールが浮かび上がってくるわけでもない。

「今回は自信作だったんだけどなー」

小説を本格的に書きはじめてもう四年、誰にも見せずに完全に趣味で書いていた期間も入れると八年になる。
そろそろ、諦め時なんだろうか。
ううん、もう少し、頑張ろう。
せめてこの作品が書き上がり、結果が出るまでは。。
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