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第1章 すべては勘違いから
1.隣にイケメンが引っ越してきた
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――あの日の軽率な自分の行動を、こんなに後悔することになるなんて思いもしなかった。
もし、あの日に戻れるなら、私は……。
――ピンポーン。
激動の年度末を乗り切ったその休み、うとうとしていたらチャイムが鳴った。
「……なに?」
今日は荷物が届く予定もないし、セールスならもちろん、お断りしたい。
ベッドから出て玄関へ向かい、ドアの外へ声をかける。
「……はい」
私の声は不機嫌全開だったが仕方ない。
だって、朝起きて洗濯なんか済ませ、お昼ごはんを食べて、天気もいいしお昼寝なんて優雅だわ、なんてベッドに入ってうたた寝をはじめたところだったんだから。
「隣に引っ越してきた楠木といいます。
あの、引っ越しのご挨拶に」
すぐに男の声が返ってくる。
そういえば、朝から隣はごたごたしていた。
きっと彼の引っ越しが行われていたのだろう。
「はい。
ご丁寧に……」
ドアを開けて、止まった。
だってそこには眼鏡のイケメンが立っていたから。
緩くパーマをかけた少し長めの髪、黒縁眼鏡の奥からは涼やかな目がこちらを見ている。
ぴっちりめのVネックカットソーと黒のチノパン、それにざっくりカーディガンなんて、イケメンで間違いないよね?
背もスラリと高いし。
ただし、足下がクロックスなのがいただけないけれど、お隣への挨拶ならまあ。
「楠木です。
なにかとご迷惑をおかけするかと思いますが、よろしくお願いします」
男――楠木さんがあたまを下げ、我に返った。
「あっ、香坂……です。
こちらこそ、よろしくお願いします」
「よろしかったらこちら、お使いください」
「ありがとうございます」
楠木さんが差しだす、紙袋を受け取る。
彼の手にはいくつか同じ袋が握られていた。
「では」
「あの!」
去ろうとする彼を、思わず止めていた。
「反対隣の人、夜勤務の人なのでいまは寝てると思います」
別に教える義務はないが、たまに昼間、あの部屋のチャイムを鳴らした宅配業者さんが怒鳴られていたりするので、彼もそうなったら可哀想だ。
「教えてくださり、ありがとうございます。
では、また改めたいと思います」
「あ、夕方、というか夜は出勤ギリギリまで寝ているみたいで、その時間もあれですし、朝、帰ってきても眠気マックスみたいで殺気立っているので……」
本人自体は悪い人ではない……と、思う。
ただ、勤務形態と謎の生活で、こちらからのアプローチは極力避けたほうがいい人なのだ、彼女は。
「わかりました。
ご挨拶は控えたほうがいいみたいですね」
少し考えた末に、ぱっと彼の顔が上がる。
「はい。
そうしたほうが」
「教えてくださって助かりました。
ありがとうございます。
では」
「はい、では」
彼が会釈をしたので、私も軽くあたまを下げてドアを閉める。
「お隣さんがイケメン……」
これはちょっと、生活が潤いそう?
……なーんて同じマンションに住んでいても、よっぽどのことがない限り、顔なんてあわせないけど。
それでも、問題を起こしそうにない、まともそうな人ってだけで安心した。
ちなみに、もらったお品は衣料用洗剤だった。
もし、あの日に戻れるなら、私は……。
――ピンポーン。
激動の年度末を乗り切ったその休み、うとうとしていたらチャイムが鳴った。
「……なに?」
今日は荷物が届く予定もないし、セールスならもちろん、お断りしたい。
ベッドから出て玄関へ向かい、ドアの外へ声をかける。
「……はい」
私の声は不機嫌全開だったが仕方ない。
だって、朝起きて洗濯なんか済ませ、お昼ごはんを食べて、天気もいいしお昼寝なんて優雅だわ、なんてベッドに入ってうたた寝をはじめたところだったんだから。
「隣に引っ越してきた楠木といいます。
あの、引っ越しのご挨拶に」
すぐに男の声が返ってくる。
そういえば、朝から隣はごたごたしていた。
きっと彼の引っ越しが行われていたのだろう。
「はい。
ご丁寧に……」
ドアを開けて、止まった。
だってそこには眼鏡のイケメンが立っていたから。
緩くパーマをかけた少し長めの髪、黒縁眼鏡の奥からは涼やかな目がこちらを見ている。
ぴっちりめのVネックカットソーと黒のチノパン、それにざっくりカーディガンなんて、イケメンで間違いないよね?
背もスラリと高いし。
ただし、足下がクロックスなのがいただけないけれど、お隣への挨拶ならまあ。
「楠木です。
なにかとご迷惑をおかけするかと思いますが、よろしくお願いします」
男――楠木さんがあたまを下げ、我に返った。
「あっ、香坂……です。
こちらこそ、よろしくお願いします」
「よろしかったらこちら、お使いください」
「ありがとうございます」
楠木さんが差しだす、紙袋を受け取る。
彼の手にはいくつか同じ袋が握られていた。
「では」
「あの!」
去ろうとする彼を、思わず止めていた。
「反対隣の人、夜勤務の人なのでいまは寝てると思います」
別に教える義務はないが、たまに昼間、あの部屋のチャイムを鳴らした宅配業者さんが怒鳴られていたりするので、彼もそうなったら可哀想だ。
「教えてくださり、ありがとうございます。
では、また改めたいと思います」
「あ、夕方、というか夜は出勤ギリギリまで寝ているみたいで、その時間もあれですし、朝、帰ってきても眠気マックスみたいで殺気立っているので……」
本人自体は悪い人ではない……と、思う。
ただ、勤務形態と謎の生活で、こちらからのアプローチは極力避けたほうがいい人なのだ、彼女は。
「わかりました。
ご挨拶は控えたほうがいいみたいですね」
少し考えた末に、ぱっと彼の顔が上がる。
「はい。
そうしたほうが」
「教えてくださって助かりました。
ありがとうございます。
では」
「はい、では」
彼が会釈をしたので、私も軽くあたまを下げてドアを閉める。
「お隣さんがイケメン……」
これはちょっと、生活が潤いそう?
……なーんて同じマンションに住んでいても、よっぽどのことがない限り、顔なんてあわせないけど。
それでも、問題を起こしそうにない、まともそうな人ってだけで安心した。
ちなみに、もらったお品は衣料用洗剤だった。
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