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第1章 すべては勘違いから
4.飲み過ぎのイケメン
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翌週の金曜は、楠木課長の歓迎会だった。
「楠木課長、どうぞ」
相変わらず、彼は女子社員に囲まれている。
あんなにつれなくされているのに、飲み会はまた、別らしい。
「モテる男はつれぇな」
私の前で熊田さんは苦笑いを浮かべた。
彼は営業一課で、世話係的立ち位置だ。
「まー、普段は水面下でやりあって、仕事はちゃんとしてるんだからいいんじゃないですかー」
「まーなー」
ぐいっとグラスのビールを飲み干し、彼は手酌で注いだ。
飲み会のお酌文化などここにはない。
飲みたい人間が自分のペースで飲む。
素晴らしいシステムだ。
――なのに。
上座に座る、楠木課長をちらり。
「楠木課長って、けっこういける口なんですね」
空になったグラスへ、すかさず別の女子社員がお酒を注ぐ。
ここはどこぞのクラブか?
とか思ったが、それは口に出さない。
それよりもそれを、楠木課長がまた一気に飲み干したほうが気になる。
座が崩れてきた中盤よりわんこそば状態で注がれるお酒を、彼は無言で飲み続けているが、……大丈夫なんだろうか。
「香坂はあれに混ざらないでいいのかよ?」
ニヤリ、と意地悪く、片頬を歪めて熊田さんが笑う。
「もー、冗談言わないでくださいよ!
ああいうの、私が苦手なの、知ってるじゃないですか!」
「そうだな、悪い、悪い」
熊田さんはゲラゲラ笑いだした。
私が女子社員の群れに交ざるのが苦手なのは、入社以来の付き合いである彼は知っている。
女子社員と仲良くするよりも、熊田さんと飲んでいるほうが楽でいい。
お開きになって帰ろうとしたら、熊田さんに呼び止められた。
「悪いが、送っていってくれないか」
「へっ!?」
熊田さんの肩には案の定、酔い潰れた楠木課長が支えられていた。
「なんで、私が?」
「お前、千早だろ?
課長も千早だっていうからさ」
「うっ」
ええ、ええ。
千早どころか、お隣さんですが?
「……ひとりでかえれ、ますから……」
楠木課長はひとりで立とうとしたが、熊田さんの支えがなくなった途端に足下から崩れていく。
「おっと!」
「……すみません」
慌てて熊田さんにまた支えられ、申し訳なさそうだ。
「いいから黙って、送られておきなさいって」
「……はい」
意気消沈して項垂れてしまった楠木課長はこう、らしくない。
「じゃあ、私が送っていきます!」
「えっ、私が!
私が!」
立候補合戦がはじまったかと思ったら、誰が送るかじゃんけんまでしている。
できることなら喜んでお譲りしたいが。
「お前ら全員、逆方向だろうが。
それに将来の幹部に、傷をつけられるか!」
しっ、しっ、と手を振って熊田さんは女子社員を散らした。
あー、ですよねー。
あきらかにそういう目的っぽい人もいるし。
「そういうわけで悪いが香坂、頼む。
帰りのタクシー賃が浮いたと思えばいいだろ」
「うっ。
……了解、です」
他ならぬ、いつもお世話になっている熊田さんの頼みをむげにできるはずがない。
呼んだタクシーが到着し、熊田さんは楠木課長を乗せた。
その隣へ問答無用へ押し込まれる。
「じゃ、頼んだ!」
バタンとドアが閉まり、タクシーが走りだす。
シートにもたれかかった楠木課長に、意識はない。
「お酒、弱いんだったら、無理して飲まなきゃいいのに」
なんて私の呟きは彼には聞こえない。
「楠木課長、どうぞ」
相変わらず、彼は女子社員に囲まれている。
あんなにつれなくされているのに、飲み会はまた、別らしい。
「モテる男はつれぇな」
私の前で熊田さんは苦笑いを浮かべた。
彼は営業一課で、世話係的立ち位置だ。
「まー、普段は水面下でやりあって、仕事はちゃんとしてるんだからいいんじゃないですかー」
「まーなー」
ぐいっとグラスのビールを飲み干し、彼は手酌で注いだ。
飲み会のお酌文化などここにはない。
飲みたい人間が自分のペースで飲む。
素晴らしいシステムだ。
――なのに。
上座に座る、楠木課長をちらり。
「楠木課長って、けっこういける口なんですね」
空になったグラスへ、すかさず別の女子社員がお酒を注ぐ。
ここはどこぞのクラブか?
とか思ったが、それは口に出さない。
それよりもそれを、楠木課長がまた一気に飲み干したほうが気になる。
座が崩れてきた中盤よりわんこそば状態で注がれるお酒を、彼は無言で飲み続けているが、……大丈夫なんだろうか。
「香坂はあれに混ざらないでいいのかよ?」
ニヤリ、と意地悪く、片頬を歪めて熊田さんが笑う。
「もー、冗談言わないでくださいよ!
ああいうの、私が苦手なの、知ってるじゃないですか!」
「そうだな、悪い、悪い」
熊田さんはゲラゲラ笑いだした。
私が女子社員の群れに交ざるのが苦手なのは、入社以来の付き合いである彼は知っている。
女子社員と仲良くするよりも、熊田さんと飲んでいるほうが楽でいい。
お開きになって帰ろうとしたら、熊田さんに呼び止められた。
「悪いが、送っていってくれないか」
「へっ!?」
熊田さんの肩には案の定、酔い潰れた楠木課長が支えられていた。
「なんで、私が?」
「お前、千早だろ?
課長も千早だっていうからさ」
「うっ」
ええ、ええ。
千早どころか、お隣さんですが?
「……ひとりでかえれ、ますから……」
楠木課長はひとりで立とうとしたが、熊田さんの支えがなくなった途端に足下から崩れていく。
「おっと!」
「……すみません」
慌てて熊田さんにまた支えられ、申し訳なさそうだ。
「いいから黙って、送られておきなさいって」
「……はい」
意気消沈して項垂れてしまった楠木課長はこう、らしくない。
「じゃあ、私が送っていきます!」
「えっ、私が!
私が!」
立候補合戦がはじまったかと思ったら、誰が送るかじゃんけんまでしている。
できることなら喜んでお譲りしたいが。
「お前ら全員、逆方向だろうが。
それに将来の幹部に、傷をつけられるか!」
しっ、しっ、と手を振って熊田さんは女子社員を散らした。
あー、ですよねー。
あきらかにそういう目的っぽい人もいるし。
「そういうわけで悪いが香坂、頼む。
帰りのタクシー賃が浮いたと思えばいいだろ」
「うっ。
……了解、です」
他ならぬ、いつもお世話になっている熊田さんの頼みをむげにできるはずがない。
呼んだタクシーが到着し、熊田さんは楠木課長を乗せた。
その隣へ問答無用へ押し込まれる。
「じゃ、頼んだ!」
バタンとドアが閉まり、タクシーが走りだす。
シートにもたれかかった楠木課長に、意識はない。
「お酒、弱いんだったら、無理して飲まなきゃいいのに」
なんて私の呟きは彼には聞こえない。
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