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第1章 すべては勘違いから
3.イケメンの苦労
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滅多にない好条件物件とあって、楠木課長は人気だけれど。
「楠木課長。
よろしくお願いします」
「……。
そこ、置いててください」
語尾にハートマークが確実についた声で女子社員――浅井さんから差しだされた書類をちらりとだけ見て、彼はすぐに画面へ視線を戻した。
「今晩、お食事とかどうですか?
私、美味しい……」
「……はぁーっ」
塩対応にもめげずに果敢に攻めた彼女だけど、さすがにため息をつかれて固まった。
「前任からの引き継ぎ書類の処理が終わっていませんので、僕は今日、残業なんです。
あなたが手伝ってくださるのならかまいませんが」
トントン、と彼がペンの先で叩いた書類は確かに、大量に山積みされていた。
定年退職した前任課長は終わりのほう、急ぎじゃない仕事は次の奴に回せばいいと彼に押しつけた結果だ。
「え、えーっと……。
あ、私、今晩、用事があるんだった……」
そろりそろりと後ずさり、ダッシュで彼女が逃げる。
しかしながら楠木課長はそれをガン無視で仕事を続けていた。
「ひぃーっ、なんだあれ!
面白すぎんだろ!」
「……熊田さん、性格悪すぎ」
四十過ぎのおじさん社員は、私の肩をバンバン叩きながら笑っている。
まあそりゃ、面白くないかっていわれたら……面白いけど。
「しっかし、浅井でもダメかー。
どんなのがタイプなんだろうな、あの課長は?」
「さあ?」
浅井さんは福岡支社の中で何本かの指に入る美女だ。
彼女がにっこり微笑めば、男性社員は誰だってお願いを聞いてくれる……とかいう噂だ。
ほんとか嘘かは知らないけど。
楠木課長はおいておいて、熊田さんには効かないし。
「ま、どうでもいいけどな。
……んで。
『丸坂百貨店』のトイレ改修の件だけどよ」
「はい」
熊田さんがようやく本題を切りだし、私も姿勢を正した。
「楠木課長。
よろしくお願いします」
「……。
そこ、置いててください」
語尾にハートマークが確実についた声で女子社員――浅井さんから差しだされた書類をちらりとだけ見て、彼はすぐに画面へ視線を戻した。
「今晩、お食事とかどうですか?
私、美味しい……」
「……はぁーっ」
塩対応にもめげずに果敢に攻めた彼女だけど、さすがにため息をつかれて固まった。
「前任からの引き継ぎ書類の処理が終わっていませんので、僕は今日、残業なんです。
あなたが手伝ってくださるのならかまいませんが」
トントン、と彼がペンの先で叩いた書類は確かに、大量に山積みされていた。
定年退職した前任課長は終わりのほう、急ぎじゃない仕事は次の奴に回せばいいと彼に押しつけた結果だ。
「え、えーっと……。
あ、私、今晩、用事があるんだった……」
そろりそろりと後ずさり、ダッシュで彼女が逃げる。
しかしながら楠木課長はそれをガン無視で仕事を続けていた。
「ひぃーっ、なんだあれ!
面白すぎんだろ!」
「……熊田さん、性格悪すぎ」
四十過ぎのおじさん社員は、私の肩をバンバン叩きながら笑っている。
まあそりゃ、面白くないかっていわれたら……面白いけど。
「しっかし、浅井でもダメかー。
どんなのがタイプなんだろうな、あの課長は?」
「さあ?」
浅井さんは福岡支社の中で何本かの指に入る美女だ。
彼女がにっこり微笑めば、男性社員は誰だってお願いを聞いてくれる……とかいう噂だ。
ほんとか嘘かは知らないけど。
楠木課長はおいておいて、熊田さんには効かないし。
「ま、どうでもいいけどな。
……んで。
『丸坂百貨店』のトイレ改修の件だけどよ」
「はい」
熊田さんがようやく本題を切りだし、私も姿勢を正した。
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