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4.いわなきゃわかんない!
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「なんで泣くんだ!?」
泣き出してしまった私に、珍しく大室課長は慌てていた。
おろおろとハンカチを出してはこれじゃないと引っ込め、最終的にぎゅっと自分の肩に私の顔を押しつけた。
「なんで泣いてるのかわからんが、とりあえず泣きやめ」
「……だって最後だって」
「は?
なに、おまえも会社で隠れてヤるの、好きだったのか?」
ムカっときて、思いっきりおなかにグーパン食らわせたら、ぐふっと変な声を上げて大室課長は身体をくの字に折り曲げた。
「それは!
大室課長でしょう!?
私は、その、……仕方なく」
「ならこれで最後なら、いいだろ」
「だから。
なんで最後なんですか?
もう私に飽きましたか?」
また涙がぼろぼろこぼれてくる。
最悪だ、これじゃまるで私は、聞き分けのない女みたい。
「は?
飽きる?
……ちょっと待て、状況を整理しよう」
「整理もなにも。
大室課長は私と別れる気なんですよね?」
「別れる?
それこそなんの話だ?」
どこまでもとぼける大室課長に苛々した。
別れたいならきれいにすっぱり云えばいいじゃない。
「私とこれで別れるから、最後なんでしょう?!」
泣きたくないのに涙は勝手に出てくる。
さらには呆然としている大室課長に腹は立つし、もうぐっちゃぐちゃでどうしていいのかわからない。
「あー、いや。
おまえに、プロポーズしようと思ってて」
突然、大室課長がなにを云い出したのかわからない。
だって、最後だって。
「結婚したら同じ支店にはいられなくなるから、会社でヤるのはこれで最後かな、……って」
「……は?」
照れながらこの人がなにを云っているのか、いまいち理解できない。
「ちょっと待ってください。
状況を整理していいんですか?」
「いや、だからさっきから俺、そう云ってるよな」
「……うるさいです」
ぎろりと睨むと、滅多に私はそんなことをしないからか、びくんと怯えるように背中を震わせて大室課長は黙った。
「私に、プロポーズするつもりだと?」
「ああ」
「それで、結婚したら同じ支店にはいられなくなるから、会社でその、こんなことをするのは最後だと?」
「そうだけど」
だったらさっきまで、私が泣いたり怒ったりしたのはなんだったんだー!
「なんでちゃんと云わないんですか!?」
「勝手に誤解したのはおまえだろ!?」
半ば逆ギレすると、さらに大室課長にキレられた。
「紛らわしいこと云うからですよ!」
「はぁっ!?
俺のせいかよ!?」
「だいたい、云いにくそうに目、逸らしたりするから!」
「照れてたんだろ!」
「誤解してるってわかってたんなら、早く云ってくれればいいのに!」
「おまえが聞かなかったんだろ!」
「いつも遠回しに云って、察しろっていうのが無理なんですよ!」
「あーもー、悪かったな!
じゃあ、はっきり云ってやるよ!
俺と結婚してくれ!」
「最初っからそう云えばいいんですよ!」
「それで、返事は!?
おまえだっていっつも、云わなくてもわかってるだろって、わかんねーんだよ!」
「ありがとうございます、こちらこそ、末永くよろしくお願いします!
ってこれでいいんですか!?」
おおーっ、周りから聞こえるどよめきと、ぱちぱちという拍手の音で我に返った。
大室課長も同じだったようで、思わず見合わせた顔をゆっくりと、いつの間にか開いていたドアの外に向けると、大勢の人が集まっていた。
どうも、私たちの怒鳴り合いは外にまで聞こえていたらしい。
「あー、えっと。
……ありがとうございます」
こうしてプロポーズは最悪なものになり、後日、大室課長が仕切り直したのはいうまでもない。
泣き出してしまった私に、珍しく大室課長は慌てていた。
おろおろとハンカチを出してはこれじゃないと引っ込め、最終的にぎゅっと自分の肩に私の顔を押しつけた。
「なんで泣いてるのかわからんが、とりあえず泣きやめ」
「……だって最後だって」
「は?
なに、おまえも会社で隠れてヤるの、好きだったのか?」
ムカっときて、思いっきりおなかにグーパン食らわせたら、ぐふっと変な声を上げて大室課長は身体をくの字に折り曲げた。
「それは!
大室課長でしょう!?
私は、その、……仕方なく」
「ならこれで最後なら、いいだろ」
「だから。
なんで最後なんですか?
もう私に飽きましたか?」
また涙がぼろぼろこぼれてくる。
最悪だ、これじゃまるで私は、聞き分けのない女みたい。
「は?
飽きる?
……ちょっと待て、状況を整理しよう」
「整理もなにも。
大室課長は私と別れる気なんですよね?」
「別れる?
それこそなんの話だ?」
どこまでもとぼける大室課長に苛々した。
別れたいならきれいにすっぱり云えばいいじゃない。
「私とこれで別れるから、最後なんでしょう?!」
泣きたくないのに涙は勝手に出てくる。
さらには呆然としている大室課長に腹は立つし、もうぐっちゃぐちゃでどうしていいのかわからない。
「あー、いや。
おまえに、プロポーズしようと思ってて」
突然、大室課長がなにを云い出したのかわからない。
だって、最後だって。
「結婚したら同じ支店にはいられなくなるから、会社でヤるのはこれで最後かな、……って」
「……は?」
照れながらこの人がなにを云っているのか、いまいち理解できない。
「ちょっと待ってください。
状況を整理していいんですか?」
「いや、だからさっきから俺、そう云ってるよな」
「……うるさいです」
ぎろりと睨むと、滅多に私はそんなことをしないからか、びくんと怯えるように背中を震わせて大室課長は黙った。
「私に、プロポーズするつもりだと?」
「ああ」
「それで、結婚したら同じ支店にはいられなくなるから、会社でその、こんなことをするのは最後だと?」
「そうだけど」
だったらさっきまで、私が泣いたり怒ったりしたのはなんだったんだー!
「なんでちゃんと云わないんですか!?」
「勝手に誤解したのはおまえだろ!?」
半ば逆ギレすると、さらに大室課長にキレられた。
「紛らわしいこと云うからですよ!」
「はぁっ!?
俺のせいかよ!?」
「だいたい、云いにくそうに目、逸らしたりするから!」
「照れてたんだろ!」
「誤解してるってわかってたんなら、早く云ってくれればいいのに!」
「おまえが聞かなかったんだろ!」
「いつも遠回しに云って、察しろっていうのが無理なんですよ!」
「あーもー、悪かったな!
じゃあ、はっきり云ってやるよ!
俺と結婚してくれ!」
「最初っからそう云えばいいんですよ!」
「それで、返事は!?
おまえだっていっつも、云わなくてもわかってるだろって、わかんねーんだよ!」
「ありがとうございます、こちらこそ、末永くよろしくお願いします!
ってこれでいいんですか!?」
おおーっ、周りから聞こえるどよめきと、ぱちぱちという拍手の音で我に返った。
大室課長も同じだったようで、思わず見合わせた顔をゆっくりと、いつの間にか開いていたドアの外に向けると、大勢の人が集まっていた。
どうも、私たちの怒鳴り合いは外にまで聞こえていたらしい。
「あー、えっと。
……ありがとうございます」
こうしてプロポーズは最悪なものになり、後日、大室課長が仕切り直したのはいうまでもない。
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