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第2章 口止め料
5.犯した過ち
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ぼんやりとしたあたまで自分の犯したことを考えると、一気に現実に戻った。
「先、戻るから。
おまえはあとから来い」
「あ、うん」
時任は乱れた髪と服を直し、何事もなかったかのように非常階段を出ていった。
朝香も服と髪を整え非常階段を出ると、トイレに駆け込んだ。
個室で腰を下ろすと、とろりと時任の欲が足のあいだから流れ落ちた。
……あんなこと言ってよかったの?
情欲は朝香の後悔のようにじわじわと流れ出続ける。
……もし本当にそうなったら、今日のことを後悔しないの?
情に流された自分をいまになって悔やんでもしょうがない。
それにあのときはわかっていてもそれがいいと思ったのだ。
……まだそうと決まったわけじゃないし。
そのときになったら考えよう。
気持ちを切り替え個室を出ると、軽く化粧を直した。
教会に入るとすでに座っていた百合恵の隣に滑り込む。
「どこ行ってたの?」
「ちょっと気分が悪くて休んでた」
誤魔化すように笑うと、百合恵が心配そうに顔をのぞき込んできた。
「そういえばちょっと顔色悪いよ?
大丈夫?」
「うん。
もう平気」
あの件は保留にしておこうと決めたのだ。
気にしても仕方ない。
「それにしても時任くんもとうとう結婚かー。
朝香はほんとによかったの?」
「またその話?
私は別に時任のことなんてなんとも」
あの日、酔っぱらってした話にいつまでもこだわる百合恵に苦笑いしかできない。
そもそもあのとき、百合恵があんな話をしなければ時任を意識しなかったし、そうすればこんな関係にもならなかった。
よく考えなくても自分は百合恵を恨んでもいいのかもしれない。
まあもっとも、百合恵があんな話をしなくても遅かれ早かれそうなっていた可能性を否定できないが。
「エー。
朝香は絶対、時任くんが好きだと思ってたのに。
時任くんの方はわかんないけど。
あいつ、なに考えてるのかわかんないし」
唇をとがらせる百合恵を無視して祭壇の方を見ると、時任がすでに何食わぬ顔で立っていた。
朝香の視線に気づいたのか、ちらりと時任の視線がこちらに向かう。
目があうとニヤリ、時任の右の口端が僅かに持ち上がる。
とたんに先ほどのことが思い出されて、一気に顔が熱くなった。
「朝香、どうしたの?
もしかして熱が出てきたとかじゃないよね」
「大丈夫、なんでもない。
……あ、はじまるみたいだよ」
ナイスタイミングで鳴り出した入場の音楽に笑顔で百合恵をかわす。
すぐにドアが開いて花嫁が父親である社長にエスコートされて入場してきた。
花嫁は豪傑な父親とも――朝香とも違い、まるでふれると壊れてしまいそうな人形のように華奢だった。
祭壇の前に時任と花嫁が並ぶと式がはじまる。
「――を妻とすることを誓いますか」
「誓います」
自分を抱いた直後に花嫁との永遠の愛を神に誓う時任を、妙に冷静な目で見ていた。
自分にはきっと、時任の心を手に入れられない。
けれどきっと、それはあのは嫁だって同じだ。
せいぜい、妻の座に甘んじているといい。
……私は私なり、時任を手に入れる。
朝香の手はそっと、すでにそこに命が宿っているかのようにおなかを撫でていた。
「先、戻るから。
おまえはあとから来い」
「あ、うん」
時任は乱れた髪と服を直し、何事もなかったかのように非常階段を出ていった。
朝香も服と髪を整え非常階段を出ると、トイレに駆け込んだ。
個室で腰を下ろすと、とろりと時任の欲が足のあいだから流れ落ちた。
……あんなこと言ってよかったの?
情欲は朝香の後悔のようにじわじわと流れ出続ける。
……もし本当にそうなったら、今日のことを後悔しないの?
情に流された自分をいまになって悔やんでもしょうがない。
それにあのときはわかっていてもそれがいいと思ったのだ。
……まだそうと決まったわけじゃないし。
そのときになったら考えよう。
気持ちを切り替え個室を出ると、軽く化粧を直した。
教会に入るとすでに座っていた百合恵の隣に滑り込む。
「どこ行ってたの?」
「ちょっと気分が悪くて休んでた」
誤魔化すように笑うと、百合恵が心配そうに顔をのぞき込んできた。
「そういえばちょっと顔色悪いよ?
大丈夫?」
「うん。
もう平気」
あの件は保留にしておこうと決めたのだ。
気にしても仕方ない。
「それにしても時任くんもとうとう結婚かー。
朝香はほんとによかったの?」
「またその話?
私は別に時任のことなんてなんとも」
あの日、酔っぱらってした話にいつまでもこだわる百合恵に苦笑いしかできない。
そもそもあのとき、百合恵があんな話をしなければ時任を意識しなかったし、そうすればこんな関係にもならなかった。
よく考えなくても自分は百合恵を恨んでもいいのかもしれない。
まあもっとも、百合恵があんな話をしなくても遅かれ早かれそうなっていた可能性を否定できないが。
「エー。
朝香は絶対、時任くんが好きだと思ってたのに。
時任くんの方はわかんないけど。
あいつ、なに考えてるのかわかんないし」
唇をとがらせる百合恵を無視して祭壇の方を見ると、時任がすでに何食わぬ顔で立っていた。
朝香の視線に気づいたのか、ちらりと時任の視線がこちらに向かう。
目があうとニヤリ、時任の右の口端が僅かに持ち上がる。
とたんに先ほどのことが思い出されて、一気に顔が熱くなった。
「朝香、どうしたの?
もしかして熱が出てきたとかじゃないよね」
「大丈夫、なんでもない。
……あ、はじまるみたいだよ」
ナイスタイミングで鳴り出した入場の音楽に笑顔で百合恵をかわす。
すぐにドアが開いて花嫁が父親である社長にエスコートされて入場してきた。
花嫁は豪傑な父親とも――朝香とも違い、まるでふれると壊れてしまいそうな人形のように華奢だった。
祭壇の前に時任と花嫁が並ぶと式がはじまる。
「――を妻とすることを誓いますか」
「誓います」
自分を抱いた直後に花嫁との永遠の愛を神に誓う時任を、妙に冷静な目で見ていた。
自分にはきっと、時任の心を手に入れられない。
けれどきっと、それはあのは嫁だって同じだ。
せいぜい、妻の座に甘んじているといい。
……私は私なり、時任を手に入れる。
朝香の手はそっと、すでにそこに命が宿っているかのようにおなかを撫でていた。
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