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ぐっすりと眠り、気持ちよく目が覚めた。
「うーん!」
大きく伸びをした窓の外は、夜露で濡れた葉っぱがキラキラと光っている。
さらに小鳥まで鳴いていて、まさしく爽やかな朝だ。
「おはようございます。
よく眠れましたか?」
簡単に毛布を畳んでいたら、館長が顔を出した。
「はい、おかげさまで」
こんなにすっきりと目覚められたのはひさしぶりだ。
「朝食の準備しますので、ちょっと待っててくださいねー」
「はい、よろしくお願いします」
館長が奥に引っ込み、私は洗面所で顔を洗う。
「うん」
鏡に映る私はあの、土気色でゾンビみたいな顔ではなく、輝いていた。
……まだ、顔色は悪いけれど。
まあ、しばらくゆっくり過ごしてちゃんと食べれば、治るだろう。
「どーぞー」
少しして朝食の準備ができた。
二種類のサンドイッチ、それに果物がテーブルの上に並んでいる。
「いっただきまーす」
うきうきと野菜のサンドイッチをひとくち。
「うーん、美味しい!」
パンはふわふわ、野菜は新鮮でシャキシャキ、塗られたマスタードがさらに野菜の味を引き立てる。
瞬く間に食べ終わり、次は玉子のサンドイッチに手を伸ばす。
「こっちもサイコー」
ザクザクと大きめにカットした、ギリギリ固茹での玉子をマヨネーズで和えて挟んである。
さらに黒こしょうがきりりと味を引き締め、ボリュームはあるがいくつでもいけそうだ。
夢中になってサンドイッチを平らげ、勧められた果物も食べる。
採りたてだというそれらはみずみずしく、また最高だった。
「あー、食べたー」
お腹いっぱいで、大満足だ。
「それはよかったです。
あなたはこの、うさぎのパン屋さんのサンドイッチを食べずに死のうとしていたんですよ?」
意地悪く館長の右の口端が僅かに持ち上がる。
「うっ」
事実なだけについ、胸を押さえていた。
「死を選ばなくてよかったです」
こんなに美味しいものを知らないまま死ぬなんて、人生を大きく損している。
本当に生きると決めてよかったな。
朝食のあと、少し休憩をして図書館を出た。
「この道をまっすぐに行けば元の世界に戻ります。
絶対に逸れてはいけませんよ」
「はい」
帰る道を館長に説明してもらう。
「なにからなにまでありがとうございました」
館長のおかげでまた生きようという気になれた。
感謝してもしきれない。
「いいんですよ。
私もあなたみたいな人にはまだ、生きていてほしいですからね」
眼鏡の向こうで目を細めた彼は泣き出しそうに見えて、胸の奥がつきんと小さく痛んだ。
「……館長はどうして、私を死なせてくれなかったんですか」
今思えば昨晩、彼は私に生を選ばせようと必死だった。
なにが彼をそこまでさせるのだろう。
「それは……」
館長がここではないどこか遠くを見て黙ってしまい、私もそのまま彼が再び口を開くのを待つ。
「秘密、です」
少ししたあと、彼がパチンと片目をつぶってみせる。
それは相変わらず不器用で気が抜けるのと同時に、これ以上聞けなかった。
「じゃあ、お世話になりました」
「あ、そうだ」
ぺこんと頭を下げた私へ、思い出したかのように館長が本を差し出してくる。
「くまのケーキ屋さん、秘伝のレシピです。
お貸ししますよ」
本を受け取っていいのか戸惑った。
「でも、返しに来られないですし……」
ここがもう、この世の場所ではないのはわかっている。
だったら借りられるわけがない。
しかし、くまのケーキ屋さん秘伝のレシピは心が揺れる……。
もしかしたら本当にあのくまのケーキ屋さんの可能性も捨てきれないし。
「大丈夫ですよ、当館の本に貸出期限はありませんので」
にっこりと笑い館長は、迷う私に本を押し付けた。
「ありがとう、ございます」
本を大事に胸に抱く。
彼の気持ちが私を温かくしてくれる。
生きると決めたものの、まだほんの少しだけ残っていた恐怖が消えた。
彼は私の気持ちをわかっていたのかもしれない。
「では、お気をつけて」
手を胸に当て、恭しく彼が頭を下げる。
「はい。
ありがとうございました」
彼に見送られ、一歩踏み出した私の気持ちは広がる青空と一緒で晴れやかだった。
「うーん!」
大きく伸びをした窓の外は、夜露で濡れた葉っぱがキラキラと光っている。
さらに小鳥まで鳴いていて、まさしく爽やかな朝だ。
「おはようございます。
よく眠れましたか?」
簡単に毛布を畳んでいたら、館長が顔を出した。
「はい、おかげさまで」
こんなにすっきりと目覚められたのはひさしぶりだ。
「朝食の準備しますので、ちょっと待っててくださいねー」
「はい、よろしくお願いします」
館長が奥に引っ込み、私は洗面所で顔を洗う。
「うん」
鏡に映る私はあの、土気色でゾンビみたいな顔ではなく、輝いていた。
……まだ、顔色は悪いけれど。
まあ、しばらくゆっくり過ごしてちゃんと食べれば、治るだろう。
「どーぞー」
少しして朝食の準備ができた。
二種類のサンドイッチ、それに果物がテーブルの上に並んでいる。
「いっただきまーす」
うきうきと野菜のサンドイッチをひとくち。
「うーん、美味しい!」
パンはふわふわ、野菜は新鮮でシャキシャキ、塗られたマスタードがさらに野菜の味を引き立てる。
瞬く間に食べ終わり、次は玉子のサンドイッチに手を伸ばす。
「こっちもサイコー」
ザクザクと大きめにカットした、ギリギリ固茹での玉子をマヨネーズで和えて挟んである。
さらに黒こしょうがきりりと味を引き締め、ボリュームはあるがいくつでもいけそうだ。
夢中になってサンドイッチを平らげ、勧められた果物も食べる。
採りたてだというそれらはみずみずしく、また最高だった。
「あー、食べたー」
お腹いっぱいで、大満足だ。
「それはよかったです。
あなたはこの、うさぎのパン屋さんのサンドイッチを食べずに死のうとしていたんですよ?」
意地悪く館長の右の口端が僅かに持ち上がる。
「うっ」
事実なだけについ、胸を押さえていた。
「死を選ばなくてよかったです」
こんなに美味しいものを知らないまま死ぬなんて、人生を大きく損している。
本当に生きると決めてよかったな。
朝食のあと、少し休憩をして図書館を出た。
「この道をまっすぐに行けば元の世界に戻ります。
絶対に逸れてはいけませんよ」
「はい」
帰る道を館長に説明してもらう。
「なにからなにまでありがとうございました」
館長のおかげでまた生きようという気になれた。
感謝してもしきれない。
「いいんですよ。
私もあなたみたいな人にはまだ、生きていてほしいですからね」
眼鏡の向こうで目を細めた彼は泣き出しそうに見えて、胸の奥がつきんと小さく痛んだ。
「……館長はどうして、私を死なせてくれなかったんですか」
今思えば昨晩、彼は私に生を選ばせようと必死だった。
なにが彼をそこまでさせるのだろう。
「それは……」
館長がここではないどこか遠くを見て黙ってしまい、私もそのまま彼が再び口を開くのを待つ。
「秘密、です」
少ししたあと、彼がパチンと片目をつぶってみせる。
それは相変わらず不器用で気が抜けるのと同時に、これ以上聞けなかった。
「じゃあ、お世話になりました」
「あ、そうだ」
ぺこんと頭を下げた私へ、思い出したかのように館長が本を差し出してくる。
「くまのケーキ屋さん、秘伝のレシピです。
お貸ししますよ」
本を受け取っていいのか戸惑った。
「でも、返しに来られないですし……」
ここがもう、この世の場所ではないのはわかっている。
だったら借りられるわけがない。
しかし、くまのケーキ屋さん秘伝のレシピは心が揺れる……。
もしかしたら本当にあのくまのケーキ屋さんの可能性も捨てきれないし。
「大丈夫ですよ、当館の本に貸出期限はありませんので」
にっこりと笑い館長は、迷う私に本を押し付けた。
「ありがとう、ございます」
本を大事に胸に抱く。
彼の気持ちが私を温かくしてくれる。
生きると決めたものの、まだほんの少しだけ残っていた恐怖が消えた。
彼は私の気持ちをわかっていたのかもしれない。
「では、お気をつけて」
手を胸に当て、恭しく彼が頭を下げる。
「はい。
ありがとうございました」
彼に見送られ、一歩踏み出した私の気持ちは広がる青空と一緒で晴れやかだった。
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