恋の講義をお願いできますか？

最終章 もう一緒に仕事はできないけれど

3－11

「ま、……きた、くん。
おねが、い。
もう……」

彼の腕を掴み、熱で浮かされた目で懇願する。
真北くんはびくりと大きく身体を震わせ、僕から目を逸らした。

「森宗さん」

彼が性急に服を脱いでいく。

「初めてだから優しくしようと思ってたのに、そんなに煽ってどうするんですか？」

「え……」

右の口端だけを持ち上げ、ニヤリと真北くんが笑う。
そこには僕のものなんかよりも数段立派なものがそそり立っていて、ごくりと喉が鳴った。

「悪いのは森宗さんですからね？」

たっぷりとそれにローションが垂らされ、僕の後孔にあてがわれる。

「えっ、あっ、僕は初心者だから、お手柔らかに、ね？」

「もう遅いです」

遠慮なくそれが、僕の中に入ってくる。
すでに真北くんが十分解してくれていたからか、僕の身体はすんなりとそれを受け入れた。

「はぁっ」

全部入りきり、真北くんが熱い吐息を吐く。

「森宗さん、痛くないですか？」

ちゅっと、まるであやすかのように彼が僕に口付けを落とす。

「……んっ、大丈夫、だけど、……動くのはゆっくりで、お願い……」

「了解です」

その言葉どおり、僕を気遣うように彼がゆっくりと動き出す。

……なにこれ、苦しいけど気持ちいい……。

「……はぁっ」

堪えた声が、熱を帯びたため息になって落ちていく。

「ん、……はぁっ」

どうしよう、幸せで、頭の中まで全部、ぐちゃぐちゃになって溶けそう。

「まき、た……くん!?」

「はいっ？」

閉じていた目を開いて見えたのは、驚きの光景だった。
真北くんがぽたぽたと、鼻血を垂らしていたのだ。

「真北くん、鼻血、鼻血！」

「えっ、あ？」

拭った手の甲を見て、彼もようやくそれに気づいたようだ。

「あー……」

しかし彼はそれきっり、動かない。

「『あー……』じゃないよ、早く拭いて！
えっと、鼻の根元を押さえるのがいいんだっけ？」

「大丈夫です、もう止まりました」

「ああ、そう……」

どこまでも真北くんは冷静で、取り乱している僕が恥ずかしくなってくる。
いや、こんな事態になっても冷静な真北くんのほうがおかしくないか？
しかも、刺さったままだし。

「えっと……」

「萎えましたか？」

「ちょっと」

そりゃ、僕の上で鼻血を噴かれたらそうなるだろう。
なのに、当の真北くんは平然としている。

「じゃあ」

「んっ」

すぐに唇が重なり、彼に翻弄される。
唇が離れる頃には、またその気になっていた。